第68話 魔王様、クッキー食べません?
「……お前、それはないだろ?リカルダさんに謝れよ」
ドス黒いオーラをまとい、本性丸出しでドークにキレるルア。顔がマジ切れの顔だ。
「おい、顔がすごいことになってんぞ…」
キレるルアに対し、ウェルミナはリカルダを見ていた。
「…リカルダ?どうしたのよ?」
ウェルミナの心配の声に、リカルダは、
「いや、別に何も?」
リカルダは何もなかったかのように、ニコッと笑う。
(〜っ!どうしてすぐに自分の気持ちを隠すのよ!)
すぐ自分の気持ちを隠すリカルダに、ウェルミナはじれったさを感じていた。
(助けて欲しいなら、ちゃんと言いなさいよ!どうして言わないのよ!)
「ところで、まだ続ける気なのか?」
そう考えているウェルミナと裏腹に、リカルダは面倒くさそうな顔をしてドークらに問う。
「いやまだだ!」
ドークは懐から、ある緑の液体が入った瓶を取り出した。
バシャー!
とリカルダに何か緑の液体をかける。
「ちょっ!何、リカルダにかけてんのよ!?」
液体をかけられたリカルダに、ウェルミナは駆け寄った。
「大丈夫!リカルダ!?ん…?」
リカルダから漂う草の匂いに、ウェルミナははっとなる。
「薬草の匂い…?」
“薬草”と聞いたオルダスの顔が険しくなる。
「薬草?ドーク!もしやその液体は、誘草ではないだろうな?」
凄いまずそうな顔をするオルダスに、ドークはオルダスから目を逸らした。
「誘草…?さて、何のことかなー?」
震えがまじる棒読みのドークの言葉に、オルダスはこれが誘草だと確信した。
「マズイぞ!リカルダ!今すぐ体を洗え!」
え?体を洗う?
「誘草って、魔物を誘う匂いを分泌させるっていうやつじゃねーか!」
会話を聞いてジルの瞳に、焦りの色が浮かんだ。
「これって、相当ヤバいやつなのか?」
「みたいね…リカルダ、あそこに井戸があるからそこで洗いましょ!」
ウェルミナが井戸へとリカルダを押す…すると、
ブオォーッン!
後ろから何かが破壊される音がした。
後ろを振り返ってみると、そこには巨大なトレントと思われる魔物がリカルダ達を見下ろしていた…
《その頃、魔王の城・エントランスでは…》
リリスとアガリアレプトが、噴水の手摺りに座り喋り込んでいた。
「そうなんですの?てっきり、何処かで油を売っているのかと思ってましたわ」
「そうなんだよ。新入りのネビロスっていう悪魔が、テロリアで勇者ハイルの子と人間達にフルボッコにされちゃったらしいよ。可哀想にね…」
「ですわね。大勢の人間達の前で死ぬなんて、悪魔の恥ですわね。私もならないよう気をつけないといけないですわね」
「当分、ハイルの息子さんには気をつけないと…」その話を聞いてリリスは身震いした。
「やあ!2人共、元気かい?」
エントランスに、ボロボロのダンタリオンを引きずったガープがやってきた。
「うわぁ…相変わらずだね」
アガリアレプトが引いた様子で、ダンタリオンを見る。口から泡を吹いているが、んまぁ大丈夫だろう。
「えっ?何が?」
「やだこの悪魔怖い」
それでもキョトンとしているガープに、更に引いた様子だった。
「そういう悪魔ですわ、ガープさんは。仕方ありませんわ」
「ところで、今さっきの話のことなんだけど、ネビロスがハイルの子にやられたって本当なの?」
「うん、カイムが前シルエラ様に報告してた所を見たからね」
アガリアレプトの言葉に、ガープはニタァと笑った。
「へぇ〜。凄いね、そのハイルのお子さん…1度戦ってみたいよ」
「ガープ、やめておいた方がいいと思うよ。あのベリトが手こずった相手なんだよ?行くだけボコボコにされると思うけど…」
「けど1回は戦ってみたいんだよね〜」
「クックック!その気持ち分かるぜ!」
ガープとは別の声が聞こえてき、ガープの横から黒い公爵服を来たベリアルが出てきた。
「相手が強けりゃ強いほど燃える!俺も戦ってみてぇよ!」
「そうなの?ま、貴方なら戦うどころか、ボロボロにされて帰ってきそうね」
更にその横から、籠を抱えたフルーレティが出てきた。
「あぁ!そんなことねぇよ!俺は必ずハイルの子に勝って見せる!いや、勝つぜ!」
ボオオオーッ!
ベリアルの瞳に炎が宿り、身が百熱の炎に包まれ熱く燃え上がる。
「打倒リカルダ!待ってろ!いつかお前を倒してみせるぜェーー!」
「はい、消化〜!」
「ねえ、2人共。クッキー焼いたのだけど、いるかしら?」
アガリアレプトがベリアルの炎を消化している傍ら、フルーレティがクッキーを勧めてくる。
「クッキー!?いるいる!」
目を覚ましたダンタリオンが、クッキーという言葉に飛びついた。
「クッキー?何それ?」
「クッキーというのは、タベモノというもののお菓子に分類する、小麦粉をペースト状にしたものですわ」
何やそれと怪訝な表情をするガープに、リリスが説明した。
「ふーん、タベモノね。別に悪魔は食べる必要ないし、俺はパスするよ」
悪魔は基本、食することや睡眠は必要とせず、何も食べずに何千年もの年月を生きることが出来る。悪魔には食べる、寝るという概念がないのだ。まさに怪物である。
「そう?ダンタリオンはいるわよね?」
「うん、いるいる!僕お菓子大好きなんだよ!」
まるで子供のように、フルーレティに駆け寄る。
「ウフフ、子供みたいね」
はしゃぐダンタリオンを見て、微笑むフルーレティ。
「フルーレティ、前より明るくなったね」
それを見てアガリアレプトは、ベリアルの顔に水をかけながら言う。
「そう?私は元からこうよ?」
この間まで嫌悪に満ちていたフルーレティだったが、今では別人のように明るい。
(何かあったのかな?ま、いいか。フルーレティが元気になってくれたんだしね)
アガリアレプトは頭には、少し疑問が残っていた。
ー固有名詞、マップ紹介ー
誘草…魔物を誘う匂いを分泌させるという薬草のことを指す。罠用に雑貨屋で簡単に入手できる。
また見ちゃって!




