第67話 魔王様!新勇者の様子がおかしいです…
ドークと戦うことになったリカルダ。
ドークと少し離れた場に立ち、不敵な笑みを浮かべるドークと対峙する。
「フッ、お前なんで俺の相手じゃねぇーんだよ!」
ドークは挑発するように、右手に持った短剣の先をリカルダに突きつける。
「リカルダ!あいつなんてフルボッコにしてやれ!」
「そうよ!アンタと戦った事を後悔させてやりなさい!」
ジルとウェルミナの声援が飛ぶ中、リカルダは腰にかけてある2つの鞘から、前まで使っていた剣を取り出した。
相手は人間、悪魔斬りの剣は危険過ぎる。
「行くぞ!」
リカルダがドークに襲いかかろうとする!
「ちょっと待ってくれ」
襲いかかってくるリカルダを止め、戦いを中断する。
「相手は勇者ハイルの子供、こっちは素人の冒険者。これは、ハンデがあっていいんじゃねーか?」
「ハンデ?アンタらに、ハンデなんてないわよ?」
ドークの発言にウェルミナは厳しい目で睨みつけた。
「いいだろう」
ドークに対し、オルダスは許可の言葉を出す。
「っておい!お前、正気かよ?」
すんなり許可したオルダスに、ジルは驚いた。
「じゃ、お言葉に甘えて。おい、出てこい!」
ドークは端で見ていた、1人の男を呼び出す。
「俺はこいつと2人で戦う」
「何言ってんですか、2対1なんて卑怯ですよ!」
それを見てルアは、ドークに批判を飛ばす。
「ちょっ、おい!いいのかよ?あいつはドークなんだぞ?あいつの事だ、下手なマネをしでかすかもしんねぇーんだぞ?」
ジルもこのことは黙っていられないと、オルダスに言った。
「それは承知している。お前達は静かにしていろ」
ウェルミナは何か言いたそうだったが、オルダスの威圧に黙ってしまった。
「いいよな?勇者ハイルのお子さん?」
「…わかった、いいだろ」
こいつら今さっき、塊になって何か言い合ってたが…作戦とかを考えているんだろうか?
だとしたら、慎重にいかないとな。
「…いいか?」
ごにょごにょとドークは、もう一人の男に耳打ちし、端の方にいる3人の男に何かの合図を送る。
まず最初に動いたのは、ドークの方だった。
ローブを来た男、男魔道士の両手に白い魔方陣が現れた。
ヒュッン!ヒュン!ヒューッン!
魔方陣の中心部から、白い弾のようなものがリカルダに飛んでくる!
ズズッー!
リカルダはそれを剣で数弾弾くと、横に移動し素早い動きで、ドークに斬りかかろうとする!
「なっ…!?フフッ…!」
ドークはそれに一瞬驚いたが、余裕の顔を浮かべた。
「そう来ると思ったぜ!」
ドークは間一髪に、リカルダの剣を後退してかわした。
何を考えているんだ…そうリカルダが考えていると、
ピッキーン…!
リカルダの足元に水色の魔方陣が現れ、足が氷に侵食されていく!
「氷絨毯。お前はもう逃げられねぇよ!」
男魔道士が勝ち誇った顔で、リカルダに言い放った。
氷絨毯…束縛魔法の一種。仕掛けたい場所に呪文をかくだけで、自分の意思でいつでも発動
できる。
「残念だったな!勇者ハイルのお子さん!」
ドークは短剣を振り上げ、動けないでいるリカルダを斬ろうとする!
「リカルダさん!」
ルアとウェルミナは助けようとするが、オルダスに止められる。
「何すんのよ!離しなさいよ!」
ウェルミナはオルダスの手を振り退けようとするが、中々振り退けない。
「止めろ。これはリカルダの戦いだ」
「でも!リカルダさんが…!」
涙目になったルアを見て、オルダスはフッと笑う。
「リカルダが、勇者ハイルの子が、こんなもんで簡単に敗れると思うのか?落ち着いて見ていろ」
オルダスは自信に満ちた瞳で、リカルダを見据えていた。
ドークの短剣が、もう少しでリカルダに当たるという時…
パリーン!
リカルダの足を凍らせていた氷が、粉々になって割れる!
「はっ…?」
リカルダにかわされ、ドークの短剣は呆気なくに空を斬った。
壊せないと思っていたが、意外と強度が弱かったな。
「お、お前、俺の氷絨毯をどうやって壊した!」
驚いた様子の男魔道士は、リカルダを指差しながら、震えた声で言った。
「強度が弱い、だから簡単に壊れたんだよ」
リカルダは地を蹴り、ドークとの距離をつめる!
「やべっ!おい!」
「あ、ああ!炎嵐!」
ボボボーッ!
激しい炎の嵐が行く手を阻むが、リカルダは簡単に避けドークに向かった。
「いけ!リカルダ!そこだぁ!」
ジルの声援が上がる中、リカルダの剣がドークの首につきそうになる!
「ひっ…!」
ドークは歪んだ顔で、咄嗟に短剣を横に振る!
リカルダはドークの短剣をしゃがんでかわすと、一旦距離をとった。
「は、ははっ、なかなか…やるじゃねーか!」
息を切らし、冷や汗でだらだらになりながら、ドークは口に手をやった。
「だが、まだまだだな!こんな程度の攻撃で…調子に乗るなよ!」
「プブッ…何強がってるのよ?汗がダラダラじゃない!それにもう疲れたの?リカルダは息も切れてないのにね〜」
「うるせえな!黙ってろ!」
ウェルミナの挑発が含まれた言葉を、ドークは聞くと怒った様子で怒鳴った。
「あ〜、クッソ!」
手で拳を握ると、ドークはこう言い出した。
「お前がいなければな、俺はもっと輝けたんだよ!今のお前みてぇーにな!お前なんて、いなければよかったんだよ!勇者ハイルの子のお前なんて消えてしまえばいーんだよ!」
俺が消えてしまえばいい…か…
リカルダの瞳から、一瞬光が消えたような気がした…
また見てくれるかい?




