第56話 魔王様、こういう敵って倒しづらいですよね
《少し時は遡り、テロリア郊外では…》
テロリア郊外にある小さな墓地に、花を持ったサリーが訪れていた。
“Lime”と彫刻された墓の前にしゃがみ、サリーは花を添える。
「ライムさん、調子はどうでしょうか?」
ライムがいる筈もないのに、サリーは墓に話しかけた。
「ははっ、私は大丈夫ですよ。この通り元気ですよ!」
と、サリーはクスクスと楽しそうに1人で笑っている。
まるで、ライムと実際に会話をしているようだった。
「まあ…前まではライムさんが亡くなって気持ちが沈んでいましたが…もう大丈夫ですよ。ライムさんは心配性なんですから…あっ、それと…」
サリーはゴソゴソと鞄から、出雲の土産店で買った青い簪を取り出す。
「この間、東方の国に行って来たんですよ。その際に買ったお土産です。私とお揃いですよ」
サリーは青い簪を、供えた花の横にそっと置く。
「ありがとう?いや、お礼なんていいんですよ…ライムさんもそう言ってくれたじゃないですか」
サリーはそう言うと、ゆっくりと立ち上がる。
「ライムさん、また来ますね」
墓に別れを告げサリーは墓地を出て、テロリアの町に踏み入れると、香ばしい匂いが漂ってくる。
「よし、おやつにでもパンや買って行こ」
サリーは、香ばしい匂いが漂ってきていたパン屋に寄った。
「あの、コッペパンを4つ下さい」
サリーは店員らしきおばさんに、コッペパンを注文する。と、
「どこだ!?何処に行きやがった!あの子娘は!」
男の荒々しい声が聞こえ、サリーは思わず何事かと後ろを向いた。
「落ち着け!のろま豚!」
「のろま豚じゃねーよ!」
そこには、黒いローブを被った闇魔道士の集団が居た。何か人を追っているようだ。
「あれは…闇魔道士?」
「闇魔道士?あいつらまた騒ぎを起こしているのかい?」
コッペパンが入った紙袋を持ったおばさんが、サリーに紙袋を渡しながら言う。
「え?何か闇魔道士が起こしたんですか?」
前まで東方の国に行っていたサリー。その為、テロリアで起こった最近の出来事など知らないでいた。
「知らないのかい?魔道士ギルドを乗っとったり散々やらかしてたんだよ。何を考えているのか、さっぱりわからないよ。400Gだよ」
サリーはそう言われ、おばさんに銀貨を渡す。
「おおきに!」
というおばさんの言葉を背中に、サリーはギルドへの道を歩いていく。
「闇魔道士ね…」
(また騒ぎ起こしんたんだ…最近、闇魔道士達の行動が活発になってるな)
悪魔と同様、闇魔道士達の行動が活発化している。
何かを企んでいるかわからないが、きっと良くないことを企んでいる…。
テロリアの町人の間でそう囁かれているのだ。
(闇魔道士達の悪い噂も聞くし、関わらない方がいいよね)
サリーがそう考え、ある民家を通り過ぎようとしたその時!
バァゴオオオォーッン!
と、何かが崩れる大きな音が響き渡る!
「何!?」
音がした方を見ると、すぐ横の民家の一部が崩れたようだ。
民家から砂煙が舞っていたので、それで分かった。
(…この家が壊れたのか。何かあったのかな…?)
サリーが心配に思い、入り口に近づこうとする。すると…
バァン!
勢いよく入り口の扉が開いた。そこには、息を切らしたウェルミナの姿。
「!サリー!?なんでここに!」
いかにもまずそうな顔をして、ウェルミナがサリーに近づいてきた。
「ウェルミナさんこそ、なんでここ…」
バゴオオォォーッ!
サリーがそう言いかけた時、入り口の壁が崩れ、怪物化したネビロスがウェルミナに襲いかかって来た。
「ライムさん!?」
サリーはネビロスの顔を見て、驚いていた。
それもそのはず…目の前にライムが堕天しな悪魔が居るのだから。
ウェルミナはサリーを後ろに、ネビロスに立ちはだかる。
「…ライムさ…ん…?」
ネビロスをライムと呼ぶ、サリーにウェルミナはギョッとする。
「サリー!こいつは元のライムじゃないの!」
「えっ…だってこの人は…」
髪形に髪色はともかく、他の特徴はライムと一緒。輪郭、顔つきなどが激似している。誰もがライムと思うだろう様相…。
「ライムが堕天したの。私達の敵悪魔なのよ」
ウェルミナの言葉にも構わず、サリーはネビロスにライムと聞き続けた。
「ライムさん…ライムさんなんですよ…ね…?」
ライムと聞いて、ネビロスの瞳は再び赤く光ると、ネビロスはサリーらに怒鳴った。
「ライムじゃないわよ!何度言ったらわかるのよ?私は薄汚い人間じゃないの!!」
あまりの気迫に、サリーは一歩後ろに下がる。
「何度言っても無駄よ。こいつはライムだった頃の記憶、前世を忘れてるの」
「そ、それじゃあ…どうすれ…ば…!」
「どうすればって…」
どうすればと聞かれたウェルミナ。
ライム…いや“ネビロスを倒す”と言いたかったが、生憎目の前にサリーが居る。
この状態のサリーに、ライムだった“ネビロスを倒す”と言ったら…
(ライムだったこいつを倒すなんて…流石に抵抗感があるし、サリーがかわいそうだわ。だけど、このままじゃ…)
ウェルミナがそう考えていると…
「居たぞ!捕まえたまえ!」
ウィストリアを筆頭にする闇魔道士達が、ウェルミナを見つけ、ウェルミナ達に迫って来ていた。
「あいつ…サリー。アンタはギルドに戻ってて。後は私が何とかするから…」
サリーにそう言うと、ウェルミナはこの場を立ち去ろうとする。
「えっ…でも…そんな!私もウェルミナさんと…!」
サリーの言葉も耳にせず、ウェルミナはこの場を去って行った。
「また逃げた〜。逃げるなんて、いけない子ねぇ〜!」
ネビロスは何もできずに唖然としている、サリーの横を通り過ぎ、ウェルミナを追おうとする。
「悪魔を捕らえろ、殺せ!」
ウィストリアの命令で、闇魔道士達がネビロスに向けて、魔法を放ってくる。
「しつこいわね!」
ネビロスは赤い霧を発生させようとするが、何かを思い出したようにすぐにやめた。
ネビロスは巨大な手を振り回し、魔法をかき消していく!
パリーッ!パァーッン!
すると、闇魔道士達が放ったとされる氷の針が、サリーに飛んでくる!
サリーはボーッとしていたので、突然の出来事に目を瞑り身を守るしかなかった。
もう近くに氷の針が、サリーの体に当たる…その時だった。
次回…見てね




