第53話 魔王様!やっぱ大変ですね…
「あなたは…図書館で会った…!」
イグナは男の顔を見て少し驚いていた。
「覚えてくださっていたのですね。名を名乗るのを忘れていましたね、私の名前はタダールです。イグナさん」
黒髪に険しい目つきをしたタダールは舐めるように、イグナ達の様子を伺う。
「あたし達に何の用?もしかして戦ってくれるの?」
そう言ってニタニタするイグナをよそに、リカルダはタダールを警戒していた。
タダール…確かあいつが…!
東方の国に訪れていた際のこと。
夜中に闇魔道士と暗殺者達に襲われ、命を奪われそうになったリカルダ。
その時に言っていた男魔道士の言葉に、“タダール”というワードが入っていたのだ。
「いや、貴女とは戦うために来たのではありません」
横で睨むリカルダに、タダールは横目で冷たい視線を送る。
この視線は“言うな。言ったらただではおかない”という意味が含まれていた。
「大丈夫ですよ。貴方には危害を加えませんよ。我々の邪魔をしない限りね」
「えっ、それはどういうこと?」
「いや、何でもないですよ。ところで、イグナさん」
退屈そうに言うイグナに、タダールは誤魔化すと、ある話を持ちかける。
「貴女は“悪魔の災”というのは、ご存知でしょうか?」
悪魔の災…堕天の森の事件が発生してから、数年後。ある村が魔物によって破滅させられるという悲劇のこと。
“悪魔の災”が“イービルトリガー”と呼ばれるのは、この悲劇を根源に悪魔が出現したことから由来する。
タダールの質問に、イグナは考える仕草をする。
「あー、“悪魔の災?”知ってるよ。堕天の森の次に起きた、村が魔物によって破滅させられるっていう出来事のことでしょ?」
「ええ、そうです。その“悪魔の災”を引き起こした人物という者は…ご存知でしょうか?」
「う〜ん。わかんないや。あたしはその専門じゃないし」
「引き起こした人物…?魔物がただ単に村を襲って破滅させた訳じゃないの?」
と嫌味を交えた言葉をつけたし、タダールの質問に答えた。
「はい。悪魔の災は、誰かの意図によって行われたものなのですよ。と言ってもわかりませんよね…堕天の森について調べているイグナさんなら、知っていると思ったのですが…」
イグナの言葉にタダールは、残念そうに言った。
「あたしは堕天の森での事件のことだけを調べているの。全く関係の性ない“悪魔の災”のこと聞かれたってわかんないよ」
「そうですか…失礼しました」
とタダールは何故か笑みを浮かべながら、レストランから去って行った。
「お前、あいつと何か関係があるのか?」
「いや別に。ちょっと前に図書館で出会った顔見知りって程度かな」
イグナはカルボナーラを食べながら言う。
「あいつは前、あたしと一緒の堕天の森の事件について調べてた筈なんだけど…気が変わったのかな?」
どうだか…俺は何か企んでると思うんだが…
リカルダがそう考えていると、
「思うけどさ、食べないの?早く食べないと冷めるけど、これ2回目だよ」
「あ、ああ今食べる」
とリカルダとイグナが食事をとっているその頃、ウェルミナは…
「ふん、ふんふふ〜ん♪」
何かいいことがあったのか、鼻歌混じりに街道を歩いていた。
「あのスイーツ美味しかったなぁ〜。料理も美味しかったし、行ってよかったわ」
どうやら、ウェルミナも同様料理店に訪れていたようだ。
「本の続きも大分読み進められたし、今日は気分がいいわ!そうだ、リカルダはまだギルドにいるわよね?リカルダを誘って買い物に行きましょう!」
本が入っているだろう鞄を大切そうに抱え、ウェルミナは駆け足で路地裏を抜ける。
(こっちの道を通った方が、ギルドに近いのよね!)
路地裏という路地裏を抜け、飛び出てきたのはテロリアのある街道。何故かここだけ人気がない。
「こんなところあったかしら…?」
(この前通った時はこんな道なかったんだけど…)
ここは都会で都市でもある街。迷うのも当然だ。とウェルミナは気にせずギルドに帰ろうとする。
「待ちたまえ、そこの君!」
突然声をかけられ、ウェルミナは後ろを振り返る。
声のした方を見ると、そこには赤髪ツインテールの少女、ウィストリアが居た。
「何なのよ?アンタ達は…!」
ウィストリアの背後には、黒いローブで顔を隠した魔道士達の姿…。
ウェルミナはそれを見て、闇魔道士だと確信した。その少女も闇魔道士の一味なのだと…。
「まあ落ち着きたまえよ」
警戒するウェルミナを見て、ウィストリアは落ち着くよう優しい口調で言った。
「率直に言おう。君の所持している“スリーヴァの日記”を僕達に寄越してくれないか?」
「え?そんな…アンタ達、この日記を何に使うのよ?」
まずは理由を聞いてからだ。ウェルミナは、ウィストリアに聞き返した。
「それは企業秘密だ、教えられんな」
ウィストリアはそう言い、ゆっくりとウェルミナに歩み寄る。
「さっさと寄越せ、我々は時間がないんだ。渡さないと…」
ウィストリアの周りに、ぼんやり光る赤い針が数本現れる。
「痛い目に合うぞ?」
そこでウェルミナの視線は、自然に太ももに行った。
そこには、冒険者ランクSランクの文字が…。このままウィストリアと戦うとなると、たまったもんじゃない。
ウェルミナは一瞬だが素直に渡そうと思った。が…
「嫌よ。アンタ達に渡すもんですか!」
こいつらに渡したくない。手放したくない!という気持ちがウェルミナの中にあった。
ーキャラクター紹介ー
タダール…黒い髪にいかつい顔した五十代辺りの男性。黒いローブに身をつつんでいて、背中には大きな魔道書を背負っている。堕天の森の事件、悪魔の災のことについて調べているらしいが…まだこの人物には何かがありそうだ。
“大丈夫ですよ。貴方には危害を加えませんよ。我々の邪魔をしない限りね”
ー固有名詞、マップ紹介ー
悪魔の災…堕天の森の出来事から数年後に起きた、魔物に攻め込まれある村が破滅するという悲劇のこと。
悪魔の災と呼ばれるのは、その悲劇から悪魔が出現し始めたということから来ている。
次回も見てくれるとな…嬉しいんだけど…




