第46話 魔王様、知られちゃいましたよ!
リカルダはあくびをしながら、部屋をへの廊下を歩く。
今日は疲れたな…早く寝よ
リカルダが部屋のドアノブを掴み、部屋に入ろうとすると…
「おう、お主!もう寝るんかい?」
優雅な赤い着物をきたタマが、リカルダを発見し声をかける。
「今日は疲れたしな」
リカルダは今度こそ部屋に入る。
「ちょい待ち!」
タマはリカルダの服を引っ張り、部屋から引きずりだす。
なんだよ…こっちは眠いのに…
「ちょいとお主に話があるんじゃ」
タマにそう言われ、リカルダはある大広間に連れて行かれた。
大広間には誰もおらず、シンと静まり返っている。
「わざわざ誰もいない場所に連れてきて…公では話せない話なのか?」
「まあ…のう」
タマは顎をさする動作をし終わると、真剣な表情をする。
「お主、近頃悪魔達の活動が活発になっておることは知っとるか?」
悪魔…その言葉を聞いてリカルダはビクッとなった。
「…知ってるけど」
「その悪魔達がお主達、勇者を滅ぼそうとしているんじゃ」
滅ぼそうとしている…?何だそれ初耳。
だが思い当たる点がある。
ダンジョンで2度に渡る悪魔との鉢合わせ。
ダンジョンで悪魔と鉢合わせし、沢山の冒険者、勇者が死亡という記事を見たことがある。
他にも悪魔の噂が絶えない。
「この前の戦争もな。悪魔が仕向けたことなんじゃ」
!?戦争が悪魔によって仕向けた…?
予想もない言葉に、リカルダは驚きを隠せないでいた。
あれは闇ギルドの所為じゃなかったのか?
「古い蛇の命令によってな」
古い蛇…?
「聞いたことないのか。古い蛇は悪魔の王、魔王シルエラの通称じゃ」
リカルダの表情からタマは感情を読み取り、付け足した。
「シルエラ…」
その言葉を聞いたリカルダの脳裏に、ある記憶が蘇る。
“また同じ誤ちを繰り返す”
対峙する人物を見つめ、その言葉を口にするシルエラらしき人物。
確かリヒト大神官がシルエラって…
「魔王シルエラこと古い蛇は、勇者だけでもなく人間を滅ぼそうとしておる。確かお主、勇者ハイルの息子…だったよな?」
タマは手すりにもたれかかるのをやめると、
「お主に、その古い蛇を倒して欲しいのじゃよ」
魔王を倒せってっか…?
これ以上悪魔による被害を増やしたくないが…
俺は冒険者ランクEの冒険者。この俺が魔王なんて倒せるわけない。
「俺は…無r「任せたぞ。勇者リカルダよ」
リカルダの肩にタマは、手を乗せる。
きょ、強制的か…
リカルダはまたかよという顔をする。
「人間を救える希望はお主しかないんじゃ。勇者ハイルの息子よ」
タマはリカルダを真剣な目で見つめる。
「いくらかかってもいい。わらわもお主をサポートする。憎悪に囚われた古い蛇を救ってやってくれ」
そう言ってリカルダの手を握ると、タマは廊下を歩き出すが、すぐに足を止める。
「そうじゃ、忘れておった。ついでにシルエラの過去、堕天する前の生前の記憶も思い出させてやってくれ。よろしく頼むぞ」
タマはそう言って廊下を歩いて行った。
随分と厄介な頼みを受けてしまったな…
魔王の討伐…俺にできるのか?それに、堕天前の記憶を取り戻させる…?
そんなことできるのか?
と考えていると、後ろに何かの視線を感じた。
「誰だ」
リカルダは後ろを振り向き、視線の方を見る。
そこには、食堂にいた筈のサヨが居た。
「…なんだ。お前か…」
「なんかごめん、ちょっといい?」
サヨの言葉に、リカルダはどんよりとした顔をする。
「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」
サヨに言われ、仕方なくリカルダはサヨについていくことにした。
辿り着いたのは、館の横の海岸近くだった。桜が咲く海岸の上の丘に、サヨは腰掛けた。
「すげぇ…」
リカルダは満月に照らされ、水面がキラキラと美しく光っている。
水色の海、大きな満月に舞い散る桜。
見たことがない風景にリカルダは、圧倒されていた。
「何してんだ?早く座れよ」
「あ、ああ」
サヨにそう言われ、リカルダはサヨの横に座る。
「どうだ?綺麗だろう?この出雲でも1、2を争う風景なんだぜ」
「綺麗だな…初めて見たこんな景色」
「だろだろ?」
はははっとサヨは笑って見せた。
「悪いがリカルダ。今さっきの話、全部聞かせてもらったぜ。魔王を倒すんだってな」
「まあ…」
「それで、俺からも頼みがあんだけどよ。いいか?」
「いいよ。好きなだけ言えよ」
ちょっとやけくそ気味に、リカルダは言った。
「暗い話になるんだが、俺の2人の親友のことなんだけどよ」
「親友?」
「おう、俺の親友はテロリアに住んでいた時に、死んじまったんだよ。2人共立て続けにな」
サヨの目に悲しみが篭る。
「1人はクレバーっていう魔道士の奴で、男の癖に女みたいなあざとい性格しててさ、あいつに魔道書をプレゼントしたりとか、いつも一緒に遊んでたんだ。だけど…」
サヨはふぅと息を漏らす。
「仲間の冒険者に裏切られて、罠に嵌められて寄ってたかって…殺された。最後まで魔道書を手放さなかったって聞いただけで涙が出たよ」
涙ぐむサヨ。リカルダはサヨに何にも言えなかった。
「もう1人はイグノラントって言う男の獣使いでな、ドSで毒舌だったがいい奴だったんだ」
ザザーッという波の音が、サヨの悲しみを倍増させた。
「近くの海に遊びに行った時だ。突然出てきた、4匹の蛟とその子供に噛み殺されたんだ。その時俺は何も出来なかった…」
“逃げて…知らない俺が悪かったんだ…”
脳裏に、あの時のイグノラントの言葉が浮かぶ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
サヨは顔を腕で覆い隠し、ついには泣いてしまった。
「辛い経験したんだな…」
暫らくしてサヨは泣き止み袖で涙を吹く。
「…ごめん。それで、もしもクレバー達が堕天して悪魔になったんなら、俺に伝えてくれないか?」
サヨは無理矢理ニコッと微笑む。
「謝りたいんだ。2人に…」
「ああ、わかった」
「ありがとう…リカルダ…」
その後、リカルダとサヨは別れた。
リカルダは直様寝室へ。まだウェルミナ達が騒いでいたが、リカルダは気にせず寝室へと直行したのだった。
ーキャラクター紹介ー
タマ…金色の髪に、優雅な赤い着物をきた九尾。宿屋を経営しており、繁盛している。シルエラの友人だった人物で、今は敵対する者となった。サヨとは家族のように接している。
“人間を救える希望はお主しかないんじゃ。勇者ハイルの息子よ”
クレバー…サヨの親友だった男魔道士。サヨにプレゼントしてもらった魔道書を気に入り、大切していたという。あざとい…魔道士どこの誰かに当てはまらないだろうか?
イグノラント…サヨの親友だった男獣使い。ハイリッヒ海に遊びに行ったところ、4匹の蛟と子供達に獲物として襲われ食い殺されてしまった。
ドS…毒舌…4匹の魔物…もうわかりますよね?




