第42話 魔王様!ブラック勇者参上ですね!
「気分転換…?」
バニラの言葉にメンバー達は正直戸惑っていた。
物静かなバニラがメンバー達に提案することなど、滅多にないからだ。
「そう…いつまでこう悲しんでいても、仕方ない…」
東方の国…愉快な国という噂を聞く。
少しでも悲しみを忘れられるんじゃないか?
「いいと思う、俺は賛成だ。ウェルミナも行くよな?」
「ええ…サリーとルアも連れて行っていいかしら?」
ウェルミナはサリーとルアを見る。
サリーは椅子に座り、顔を覆い尽くして泣いていた。
ルアは涙目になり、サリーに話しかけ慰めている。
「いいよ。皆もいく?」
バニラの誘いにメンバー達は顔を合わせると、
「行くぜ!」
「ちょっとは、外に出ないとな」
「それじゃあ行こうか、東方の国へ…」
こうして、ライムを失った悲しみを和らげるため、東方の国に向かったのだった。
《その頃、魔王の城付近・上空では…》
空を飛ぶ大きなグリフォンに乗った勇者達が、魔王の城に向かっていた。
「空を飛べばダンジョンを抜けずに、簡単に魔王の城に辿り着ける…考えたわね」
背中に大きな魔法銃を背負った女銃士が、下のヒスイの森を眺めながら勇者に話しかけた。
「だろう?あんな鬼畜なダンジョンを越えるなんて、たまったもんじゃねぇよ」
「獣使いのグリフォンを奪っておいて良かったですねぇ…勇者様」
腰に短剣をぶら下げた男盗賊の言葉に、勇者はニタリと笑う。
「ああ…あの獣使いも今ごろ困ってる頃だろうな」
美しい魔王の城が勇者の瞳に映る。
(何千年も勇者を送り続け、誰1人も魔王を倒せないでいるとか…まぁ、この俺なら楽勝もんだろう)
クックックと笑いをこぼす勇者。
(手早く魔王を倒して、城にある金目のものを全部いただくことするか…)
と勇者達を乗せたグリフォンがヒスイの森を越そうとすると、
フィユユッュュューン!
沢山の矢がグリフォンに突き刺さる!
ブズッ!ブシュッッ!
「な、なんなんだ!」
もがき苦しみ落下していくグリフォンに、勇者は魔王の城を見据える。
そこには緑の洋服をきたレラジェがいた。
手には弓矢。矢はレラジェが放ったのだろう。
「…俺にしては良く当たったもんだ」
「お前ら、行くぞ!」
勇者達はグリフォンを乗り捨て、魔王の城への道を突き進む!
「あら、勇者達が来てますわよ?」
リリスとアガリアレプトが壁の上からひょこっと頭を出す。
「城に軍が少ないってのに、良く襲ってくるよね」
アガリアレプトはなんでくんだろと言うような顔をした。
「魔物はシルエラ様の元…仕方ないですわ、ここは私がやりますわ!」
リリスは城壁に乗り出す。
そっと片手を差し出すと、リリスの手のひらに紫の魔法陣が現れる。
「闇弾拡散…!」
ブッブブッ!
魔法陣から紫の弾が一気に放たれて行く!
「…!何か飛んでくるぞ!避けろ!」
勇者達は紫の弾にいち早く気づき、紫の弾をよける!
「あいつが放ってる訳ね!」
女銃士は弾を放ってくるリリスに銃口を向ける。
「消えなさい!」
女銃士が引き金を引こうとしようとする!と…
ザシューッ!
「!?」
女銃士の体が横に斬られ、上半身と下半身が真っ二つに離れる!
「そうはさせませんよ」
女銃士を斬ったのは、ベリトだった。
切断された女銃士の体がボトボトと、地面に落ちた。
「片手だけだと不便ですね」
リカルダと戦った際に、斬られたベリトの左腕。
「あの時、さっさと殺しておけば良かったんですが…なんて今言っても仕方ないですね」
「勇者様!女銃士が…」
「構わん!進むぞ!」
一旦紫の弾がやみ進むのも今の内だと、勇者は女銃士に構わず、突き進もうとする。
「いやしかし!」
「そんなもんいらねぇよ!使い物に何ねぇものなんてほうっておけ!」
「随分と酷い勇者ですね。こんな勇者初めて見ましたよ」
気がつくと勇者達のすぐ近くに、ベリトとアガリアレプトが近づいてきていた。
「…!?」
怯えた表情で男盗賊は逃げようとするが、
「待ってよ」
アガリアレプトは男盗賊の頭に合わせるように、手をかざし…
パァァン!
途端に男盗賊の頭が弾け飛び、水と共に肉片などが石橋に飛び散る。
「ひ…ひぃぃっ!」
勇者の顔が恐怖に歪んだ。
「次は貴方です」
「や、やめろ!」
男は走って逃げようとするが、つまづき転んでしまう。
その時に、懐から何かが落ちた。
(殺される…殺される…殺される!)
「なんで逃げるんですか?」
ベリトが赤く光る目を輝かせながら、勇者に近づく。
怪しく光る目が勇者の恐怖を倍増させた。
(やめろ!…やめろ!)
勇者は恐怖で体を動かせず、亀が裏返され手足を動かすような動作をしだした。
(死にたくない…死にたくない、死にたくない!)
「お願いだ…許してくれ!お願いします!何でもしますから!命だけは…!」
「何でもしてくれるんですか?」
「あ、ああ!何でもするぞ!」
「それじゃあ…」
ベリトはニッコリと笑い、
「死んでください」
スパーン!
ベリトは剣を勢い良く横に振り、勇者の首をはねた。
首は血が飛び散り、宙を舞った。
「うわー、残酷なことするね」
「貴女も人のこと、言えないんじゃないですか?」
ベリトは血を払い、鞘に剣を収めた。
「お2人共凄いですわね。S、SSランクの勇者を簡単に倒すなんて…」
「SランクやSSランクでも、大体は弱い奴ばかりです」
リリスとベリトが話している途中、アガリアレプトは勇者がさっき落としたものに目がつく。
「…これは何かな?」
アガリアレプトはメモ帳?らしきものを拾い上げる。
「メモ帳…?みたいですわね」
アガリアレプトは中を覗いてみる。
そこには冒険者の顔写真に、特徴、ランクなどが記入されていた。
「何ですかこれ…」
報酬金額や何に弱いか…が書かれており、ただのメモ帳ではなかった。
「これはブラックリストですわね。暗殺する人物が書かれているメモ帳のようですわ」
暗殺する人物を書いてあるリストらしい。
「表では勇者、裏では暗殺者か…」
いくら勇者でも裏表がある勇者が居る。
表では人間の味方勇者。裏では闇魔道士と絡んでいるというブラックな面があることが多いのだ。
「色々な冒険者が書いてありますね」
どれだけ書いてあるんだよ。と呆れるほどに暗殺のリストが乗っている。
「ん?」
アガリアレプトはページをめくるのをやめ、あるページを見つめる。
「リカルダ、勇者ハイルの息子…」
そこにはリカルダの顔写真が貼ってあった…。
次回も…見てくれるよね?




