第29話 魔王様!悲しみはいくらたっても消えないですね
「これは…」
輝く剣を見たベリトの頭に、嫌な予感が横切った。
バシャーッ!
リカルダが力を振り絞り、凄まじい速さでベリトに迫る!
フィィユッ!
(なんだ…この速さは!)
リカルダのスピードに驚くベリトに、剣を振り下ろす!
「猛威牙!」
バシユュューッ!
「…!」
リカルダの剣により、ベリトの左腕が血を吹き出しながら宙を舞う!
「なっ…!」
呆然とするベリトは、腕が切断されたという現状を理解しようとする。
(まだ、こんな気力が残っていたとは…)
リカルダは最後の力をベリトにぶつけ終わると、泉に倒れる。
これで…相手にも重傷を与えられただろう…
リカルダの意識はここで途絶えたのだった。
(左腕を切断されるとは…思ってもいませんでした)
落ち着きを取り戻したベリトがリカルダに近づく。
「なかなかいい戦いでしたよ。貴方との戦いは…」
ベリトは剣をリカルダに突き立てる。
「また…戦えるといいですね」
ベリトがリカルダの首を切断しようとした時…!
フイッユッン!
遠くから光の矢がベリトに向かって飛んでくる!
「!?」
ベリトは光の矢の接近に気づき、光の矢を避けた。
「やれやれ…次は貴女ですか」
遺跡の方から恐ろしい顔をしたバニラがやってきた。
何故か体はボロボロ。いたるところから、血が染み出ており、白いワンピースを色鮮やかに染めている。
「私の…私の大切なメンバーをよくも!」
バニラは再び矢を放とうとする!
「…運悪くも、冒険者達と出会ってしまったようですね。大変だったでしょう?」
バニラの怪我のしようを見て、ベリトは言った。
「やかましい…!」
フィイィュッン!
バニラは怒った様子で、ベリトに光の矢を放っていく!
キィッ!バギーッ!ギーッン!
耳を突くような音を響かせながら、ベリトは光の矢を弾く!
やがて、矢が全部ベリトの剣によって弾かれた。
「…っ!」
ベリトは剣を鞘に納めると、とんでもないことを口にする。
「貴女と戦う気はありません。銀竜に戦いを挑むなんて、死んだも当然ですからね」
銀竜…その言葉を聞いてバニラの顔がつよばる。
「彼、言ってましたよ。貴女を助けたいって…」
ベリトの言葉にバニラははっとなる。
(え?…それじゃあリカルダは、私が銀竜だったってこと…!)
バニラの表情にベリトはフッと笑みを浮かべた。
「良かったですね。心から信頼できる人ができて…」
フフゥ〜ッ!
強い風が吹くと共に、ベリトの姿は何処かへと消えていった。
悪魔の動きが活発になってきている。
バニラの悪魔への意識が更に強くなったのだった。
《そして、魔王の城・中庭では》
「ふぅ〜!一汗かいたぁ!」
仕事を終え、アガリアレプトが廊下を歩いていた。
海に行き海水を浴びたアガリアレプト。海水と汗でベトベトになった体を流そうと、城の周りにある湖に向かおうとしていた。
「ふ〜んふんふ〜んふ〜ん♪」
と鼻歌を歌っていると…
「アガリアレプト姉〜!」
ライオンの頭を持ったブエルがアガリアレプトを見つけ、駆けてくる。
「ぶ、ブエル〜!」
久々にあったように再会を喜び、アガリアレプトはブエルを抱き上げる。
「アガリアレプト姉!?胸!息がっ!離して下さい…!」
アガリアレプトの胸に顔を埋め尽くされるブエル。
「あ…ごめん!」
アガリアレプトはブエルを胸から引き離した。
「無事に帰ってきてくれて嬉しい!おいら、アガリアレプト姉がいないと…」
「んもう、お前はかわええ奴やのう!」
「アガリアレプト!」
気づくと、アガリアレプトの真横にフルーレティが居た。
邪魔そうにフルーレティは、イチャイチャしているブエルとアガリアレプトを見る。
「どいてくれるかしら」
フルーレティの目線が、ブエルに向けられる。
「全く…目障りだわ。アガリアレプト、まだそんな悪魔と絡んでいたの?」
フルーレティはブエルを見下した目で見る。
「そんな役立たず…放っておいた方がいいんじゃないかしら?」
フルーレティの冷たい言葉に、ブエルの瞳に涙が浮かぶ。
「そんな言い方はないんじゃない?」
アガリアレプトはフルーレティを睨みつける。
「あら?私は本当のことを言ったのよ?」
「何を言ってんの?」
アガリアレプトの声が、威圧感を含んだ低い声になる。
「だってこの悪魔…弱いじゃない?何も役にも立たないわ!」
「違う!君にはわからないだろうね?ブエルは裏ですっごい頑張ってるんだよ!傷ついた魔物、悪魔の治療…他にもいっぱいあんだよ!」
「そう?私は信じられないわ。こんな悪魔が役に立つなんて!」
フルーレティのいいように、アガリアレプトは言い返すのをやめた。
「…フルーレティ変わったね。あれ以来からだよね、バフォメットが倒された時から…」
アガリアレプトの言葉にフルーレティは言葉を詰まらせる。
「べ、別に。私は何も変わってないわ」
フルーレティはこの場を立ち去ろうとする。
「いや、変わってるよ…凄くね」
アガリアレプトはエントランスに続く道を歩き出す。
「いつか、元のフルーレティに戻ってくれるってアタイ信じてるから…」
アガリアレプトはそう言い残し、エントランスへと歩いて行った。
「元の…って何を言っているのかしら?」
(私は何も変わってはいないわ。ただ、バフォメットを失っただけよ)
フルーレティの目は輝きを失っていた…
次回も見て欲しい!ね、アガリアレプト姉!




