第22話 魔王様、堕天とはどういうことですか!
「怨念…?」
「無惨に死んだ人間の怨念の魂が、確率で悪魔になるの」
ライムはテーブルを拭きながら話す。
「その死んだ怨念が姿を表すこと、悪魔になることを『堕天』って言うらしいんだけど…よくわからないわね。悪魔は元々人間だったってことよ」
人間という生命はやがて崩れて死ぬ。
射殺、焼死、圧死、他殺死、凍死、溺死…老死や病死。
様々な形で人間は死んでいき、地獄か天国へ行く。
その中でも未練、恨みを残した魂はこの世界に残ることがある。
誰の力でも止められないほどのおぞましい怨念…抑えられない怨念を抱えた魂が、この世に肉体となって現れることを『堕天』というのだ。
どうやって堕天するのかは、証明されておらず今でも不明である。
ライムは全てのテーブルを拭き終わると、
「さてと、朝食の準備するから、リカルダ君も手伝ってくれる?」
リカルダは悪魔達を思い出した。
バフォメットの腕には大量の切り傷の跡。
更にバニラの攻撃を受けた時には、何故か“切らないで”“また殺される”と叫んでいた。
という事はバフォメットは…
ダリオンの時も意味不明に“虐げるな”とか言ってたような…
「ほら、リカルダ君来て!」
「はい!」
ということは…今さっき夢で出てきた悪魔も…
ライムの朝食の準備を手伝っている最中も、リカルダはそんなことを考えていた。
朝食を食べ終わりリカルダはギルドを出ると、冒険者依頼受託所に向かった。
今日は頼りになっているウェルミナがいない。今日は1人で依頼をこなさなければ。
リカルダはEランクの掲示板を見て、自分にあった依頼を探す。
「今日は何にしようか?」
「あの…スミマセン」
依頼を選んでいると声をかけられる。
リカルダは振り向くとそこには、黄土色の髪に猫耳が生えた獣人の商人。ソマリがいた。
「見たことあると思ったら、ハイルさんの息子さんじゃないデスか!」
ソマリはリカルダの顔を見て、やっぱり!という顔をする。
「後ろ姿ですぐにわかりマシタよ。私の名前はソマリと申しマス。ところで、依頼を選んでいるのデスか?」
「まぁ…そうだが」
「実はアナタにピッタリの仕事があるのデスよ。どうデス?」
ソマリにそう言われ、依頼の紙を渡される。
【伝説の銀竜を捕まえてはみませんか?・報酬、銀竜の鱗×10】
「悪いけど、断るよ」
銀竜を捕まえる?Eランクの俺が捕まえられる筈がない。
それに、銀竜は竜の中でも数少ない希少種。
捕まえるなんて、魔物を管理する“テロリア魔物管理隊”に逮捕される。
リカルダはソマリに依頼を返す。
「そ、そうデスか。アナタ様なら受けてくださると思ったのデスが…失礼しました。またご機会があれば…」
ソマリはそう言って、リカルダの前から去って行った。
希少種生物の密猟。あいつならやりそうだな。
ソマリは表向きでは商人。裏では悪党としてテロリアで有名だ。
最近、物騒なソマリの噂も聞くし…あまり関わらないほうがいいだろう。
「もうこれでいいや」
リカルダは選ぶのが面倒になり、適当に掲示板から依頼を千切った。
【目覚めの森でトレント退治・報酬800G】
…まぁ、いいか。これで。
リカルダはこうして『目覚めの森』に向かうため、テロリアを出発したのだった。
《その頃、魔王の城・城前では…》
魔王の城・入り口に続く石橋の先の草原に、旅立とうするベリアルがいた。
「皆の者!行くぞ!」
赤い戦車に乗ったベリアルが、数匹の悪魔と大量の魔物を連れ飛びだつ。
「…凄い邪魔ですわね。あれ」
「そうね。早く壊れればいいのに」
リリスとフルーレティが湖にかかる石橋で、ベリアルの旅立ちようを見ていた。
「ダンジョンにいる勇者を徹底的に潰せ」
シルエラの命令で今日から、水棲魔物を連れたアガリアレプトを隊長にした第1部隊を筆頭に、第2部隊、第3部隊、第4部隊と旅立って行っていた。
「帰ってこなくてもいいですわよー!」
「うっせぇ!」
ベリアルはそれを最後に空の彼方へと消えて行った。
「…嵐が去ったわね。これで、城に平和が訪れるわ」
「そうですわね。一安心ですわ…あら?」
リリスの視界に、枯色の角を生やした女性の姿の悪魔がうつる。
「貴女は、レヴィアタン様!」
紺色の髪に白いグラデーションのかかった悪魔を見て、フルーレティが言う。
レヴィアタンは紙を取り出し、何かを書く。
「………」
レヴィアタンはリリス達に紙を渡す。
【シルエラ様はどこ?】
紙にはこう書かれていた。
「シルエラ様は、多分だけど謁見の間におられると思いますわ」
レヴィアタンはリリスにまた紙を渡す。
【ありがとう。腹黒くそおじさんには気をつけて】
レヴィアタンは石橋を渡ってエントランスへと入って行った。
「腹黒くそおじさん?誰のことかしら?」
「…さあ?わかりませんわ」
(まぁ、大体予想はついてるのですけどね)
リリスは何か考える仕草をする。
(ベルゼブブ様は…何を考えているのでしょうか…)
リリスはベルゼブブが言っていたことを思い出した。
“…いつか必ず。貴女を落として見せるから”
(シルエラ様を落とす…?そんなことありませんわよね…)
「リリス?どうしたの?」
「いえ、なんでもないですわ。私達も城へ戻りましょう」
リリスはベルゼブブに疑問を残し、城に戻って行った。
ーキャラクター紹介ー
レヴィアタン…紺色の髪に白いグラデーションがかかっている、珍しい髪をした悪魔。無口で何かを伝えるときは、紙を使用。シルエラを信用し、こうやってシルエラの元へと帰ってくる。
“ありがとう。腹黒くそおじさんには気をつけて”
ー固有名詞、マップ紹介ー
魔王の城…魔王シルエラと悪魔が家とする湖の上にある城。エントランスに繋がる石橋を通らなければ、城には入れない。勇者の襲撃により、ボロボロになっている。
ヒスイの森…生い茂る木々と芝が美しい翡翠であることから、名付けられた。危険な魔物が多く、ここでリタイアする勇者が多い。
ここを抜けると、魔王の城への道に辿り着ける。
憎悪の洞窟…ヒスイの森と同じく、ここを抜けると魔王の城への道へ辿り着ける。ヒスイの森とは違い、強い魔物が少ないが洞窟内が迷路のようなつくりになっていて、攻略が難しい。
洞窟に入った運命を憎み嫌い、勇者達が餓死に追い込まれ、死んでいく。そのことから名付けられた。
次回も見てくれマスよね?




