第10話 魔王様、これはどういうことでしょうか?
「いいところだったのに…!」
バフォメットはバニラを光り輝く赤い目で睨みつける。
「そうだったね…いいとこだったね」
キギッ…フィユユユッ!
バニラは次々にバフォメットに矢を放って行く!
バフォメットは次々に飛んでくる矢を、身軽にかわす。
「魔物さん達!行って!」
バフォメットはバニラを指差し命令するが、
魔物はバフォメットの命令を聞かず、怯えている。
「…?そう…だからか」
バフォメットはバニラの腕にSランクと書かれているのを見て、納得する。
「Sランクの冒険者か…私は運が悪いね」
冒険者ランク“Sランク”。SSランクの手間に位置するランク。
「まぁ、いいよ。やっと支援部隊が来たし」
「何か飛んで来てるわ!」
ウェルミナ達はバフォメットが見る方向に、視線を送る。
そこには耳の生えた球状の赤い魔物達が、空を飛びこちらに近づいていた。
赤い魔物は口を開け、バニラに赤い弾を放ってくる。
ドォォオッ!ボオオオッッン!
バニラ灰色の髪をなびかせ、爆発を素早くよける!
「ねぇ!アンタ、ホントにこの結界解けないの?」
バニラを見てウェルミナは、男に声をかける。
「無理だ。解こうとしたが…」
「もっと工夫するとかあるじゃない!例えば、式を変えるとかそんなの」
「ああ、やってみる」
男が結界を解こうとする。何回も術式を組み直す。
「無理…」
バニラがこっちに近づき、結界に手をおく。
バリッ…バリバリバリッ!
手をおいた所から結界にヒビが入り、結界がいとも簡単に崩れて行く!
「凄えぇ…結界が崩れて!」
「分子の結合が甘い…もっと結合力を強くしないと…ワイバーンより強い魔物に簡単に崩されてしまう…」
ガアッッッ!!ガアアアッッ!
赤い魔物がバニラの方へと飛んで来る!
「貴女達は逃げて…ここは私がやる…」
「アンタ1人だけで戦うっての!?」
「そう。貴女達は危険、逃げ…!?」
ボオオオッッン!バアッッァァッ!
赤い弾がバニラ周辺に落ち爆発する!
「バニラっ!」
暫らくするとバニラが爆煙から出てくる。
服は多少焦げているが、バニラにダメージは無いようだった。
「大丈夫だから…早く!」
ウェルミナの横にいる、酷い怪我を負ったリカルダを見てバニラは言った。
「逃げるの?ふふっ、逃がさないよっ?後ろ見て見なよ!」
「後ろ?」
ガシャッ!
「リビングメイル?こんなに!?」
後ろには数体のリビングメイルの騎士が居た。手には鋭い剣を持ち、今にも斬りかかって来そうだった。
ガアアアアアッッ!
何匹もの赤い魔物がウェルミナ達に向かってくる!
バニラは矢を引き、赤い魔物に放つ!
ヒュュッ!ヒュュッッン!
バニラの矢は赤い魔物の目を射る!
ガッッ!ガアアア!
赤い魔物は悶え苦しみ、地面に墜落する。
「次はお前達だ!炎嵐!」
男は炎の渦を作り出し、騎士にぶつける!
ボオオオオオオッッ!
リビングメイルの鉄の装備が溶けていく!が、
騎士は炎の中から出てき何もなかったように、攻撃して来た。
「リビングメイルは魔力で動いてるの…中にある魔力限とされる石を破壊しなければ…倒せない」
「そうか…なら!」
リカルダは素早く動き、鎧の中心部の隙間に剣を突っ込む!
パッリーン!ガラガラガラッ…
と音がなり鎧が崩れ落ちる!
「手際がいいね。流石、ハイルさんの息子」
(父さんの事を知ってる?この子は…?)
「それなら私も!」
ウェルミナはリビングメイルの鎧の隙間を狙う!
「いっけぇー!っなっ!?」
キィッツン!
攻撃を受けられ、吹き飛ばされるウェルミナ。
「痛っ…!?」
騎士がウェルミナに急接近し、剣を振り下ろそうとする!
「嫌っ…」
「やめろや、ゴルアァッッ!」
とその瞬間、誰かが騎士を持ち上げ吹き飛ばす!
ガッシャアァン!
「殺させてたまるか!ですっ!聖なる槍!」
地面に叩きつけられる騎士は、地面から生えてきた光の槍で突き上げられ、動かなくなった。
「アンタは…!」
「はあっ…大丈夫ですか!?」
そこには杖を手にしたサリーがいた。
「良かったです…ウェルミナさん。大した怪我がなさそうで」
「アンタ、もしかして僧侶?なら私なんかより、リカルダを!」
サリーはそう言われ、リカルダに視線を移す。
「リカルダさん!その怪我は!」
サリーはリカルダに近づき、怪我の所に手を添える。
「治癒!」
フュイッッッッ!
リカルダの腕が眩い光に包まれ、傷が癒えていく。
「凄い…これが治癒魔法!」
「次はあいつ!」
バニラは弓をバフォメットに向け、引っ張る。
「魔物さん達〜!」
バフォメットは魔物を呼ぶが、魔物は一匹もいない。
「魔物さん切れ!?そんな!」
間も無くして、バフォメットに光の矢が降り注ぐ!
「キャァッ!」
ピユイィッッン!ボォォッッ!
バフォメットの足元に突き刺さった光の矢が、光の爆発を引き起こす!
「痛い!痛いっ!切らないで!…やめてぇぇえぇ!!」
ピキッ…パキッ…
バフォメットの体に奇妙な赤いヒビが入る!
「あれは…赤いヒビ…?」
リカルダは赤いヒビを興味津々に見る。
「悪魔は攻撃を受けると…体に赤いヒビをが入るの。人間と見分けがつきやすい…」
「…っ!」
ウェルミナは苦しむバフォメットから、目を逸らす。
「また殺される!いゃっ!いゃぁぁぁっ!」
声をあげながら、崩れていくバフォメット。
ギギギッ…!
バニラは再び矢を放とうとする。
「やめて!」
ウェルミナはバニラの手を止める。
「相手は“貴女達”の敵…悪魔だよ。悪魔をこのまま放っておく訳にはいかない…」
“悪魔”それは、古代からの人間の敵とされていた存在。人間に危害を加え、惑わし悪事をなすとされていたが。それはもう昔の事、悪魔という存在は誰もが忘れていた。が、
“悪魔がいつか人間を滅ぼしてしまうだろう”
と、ある有名な聖職者が発言し悪魔への敵対の意識が高くなった。
“悪魔を滅ぼすには悪魔の長、魔王を倒さなければならない”
その聖職者がこう言った所為で、魔王シルエラを倒すため、魔王の城に勇者が訪れるようになったのだ。
ホント、シルエラにとってくそ迷惑である。
「でも…!」
「悪魔は人間を滅ぼす…必ずね。だから今そうなる前に、多くの悪魔を始末しておいた方がいいんだよ…」
とバニラの威圧の篭った声で、ウェルミナは黙り込む。
(“貴女達”…?普通は“私達”じゃ…)
リカルダはずっとこの事について考えていた。
ギギッ…フィユッッン!
バニラがバフォメットに光の矢を放つ。
「はっ…ここで…終わるの?…」
バフォメットの脳裏に浮かぶ、悪魔達の顔。
顔を上げるバフォメット、光の矢が飛んできていた。
バアアァッッッン!
光の爆発がおこり、バフォメットを包む。
赤いヒビが広がっていく。全身が痛むように、痛い。
「はあああっ!はああああぁぁぁっ!」
奇声を発しながら苦しむバフォメット。バフォメットの体力はもう限界だった。
「皆、ごめんね。私、先逝くね…」
意識を失いかけた時だった。
バフォメットの脳裏にある記憶が移る!
それは女性と男性がこちらを見て微笑む姿。
自分の事を“リリー”と呼び、笑っている。
(誰…?誰なの…?)
そして場面が移り変わり、それは怒りの篭った目で自分に包丁を向ける女性。
(何なんなの?…やめて!…)
目の前が真っ赤に染まっていく。
(切らないで…痛いっ…傷つけないで…)
バフォメットは何かを思い出したのか、はっとなる。
「私ってば…」
バフォメットはそう呟いて、崩れていった…
バフォメットは一体、何を思い出したのだろうか?
これで、リカルダ達の初めての依頼は無事に終わったのだった。
バニラへの疑問を残して…
《場所が変わって、マフィスの村では…》
マフィスの村…風車が多く立てられた海岸沿いの村。村というか町。年中心地よい風が吹く事で有名。
だが、マフィスの村では心地よい風ではなく、爆煙がふいていた。
ゴォォォォッ!ドカァァァン!
村に爆音が響き渡る!
ほとんど村の民家は炎で焼かれ、作物は強奪。民は殺され死体が村中に氾濫している。
「はぁっ!はあっ、母さん!!」
紺色の髪の青年が息切れしながら、ボロボロになった家に飛び込む。
「母さん!」
家に倒れる母らしき人物に駆け寄る。
「母さん?…母さん!」
青年は母に声をかけるも、反応しない。
「そ、んな…まさか…こんな事が…」
青年は母の死に泣き崩れる。
「おい!ルア!何してるんだ!」
泣き崩れるルアと呼ばれた青年は、涙で濡れた顔を男に向ける。
「ガルムさん…」
「早くしろ!なんだが知らんが、冒険者達がこちらに攻めて来ているんだ!」
「冒険者…?冒険者達が…?」
「ああ、そんなことより早くしろ!」
「…」
ルアは無言で再び母に顔を向ける。
「ちっ…しょうがねぇな!」
ガルムはルアを持ち上げ急いで家を出る。
「っ…母さん…」
ルアの視界が涙で霞む。
復讐してやる…!復讐してやる!
母さんを死なせた冒険者を…冒険者を…必ず必ず…!
“殺してやる!”
ルアの意識はここで途絶えたのだった。
このルアという青年は一体…?
やった!記念すべき10話目ですね!
ワーイヾ(´ρ`)ノ゛ワーイ
なんか凄いシリアスで後味が悪いですね。うん…記念すべき10話目なのにごめんね。
次は番外編みたいなのを、考えてますんで。そちらでぼのぼのしていただいてね!はい…
また見て…ノシ




