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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第87話 ザックとの再戦

 俺は砦から飛び出し眼下に並ぶ二人を視界に収めながら、岩のように固い地面へ着地した。

 位置的には境界線の逆側、後ろの方には奇妙な形の木々が連なっているのが見える。

 岩山と言っても所々にはあぁいった木々の密集した地帯が存在する。


 ザックとガイドは、俺とその林のような場所を結んだ中間位置で肩を並べていた。

 距離は二〇メートル前後といったところか。


 遠目からでも判るザックのにやけた面に苛々が募る。

 

「ようやくこれでてめぇをぶっ殺せるぜ」


 肩に大剣を乗せるようにして、ザックが俺に言い放つ。

 待ちわびたと言わんばかりの様相。


 俺はすぐにでも斬りかかりたい気持ちではあるが――落ち着け……この状況で気になるのはあのガイドという男だ。

 奴の能力は俺は何も知らない。どうやらザックと同じで敢えて残ったようだな。


 戦いに自信がなければすすんで残ることはないだろ。

 そして、カラーナ……つい飛び出しはしたが、彼女は砦に残されたままだ。

 相手は、あのザックの奴隷というメイドか……一度メリッサを人質に取られた時にも思ったが、あれは只の奴隷というわけでもなさそうだ。


 身体能力的にもかなり優れてそうだしな――もしジョブがメイドなら少し厄介かもしれない。

 メイドというジョブは、料理をしたり掃除をしたりといった生活面でのスキルが得意で、一見すると戦闘には向かなそうだが、メイド特有の固有スキルであるメイドの嗜みは、全ての武器や魔法などの基本的な技術はそつなくこなす事が出来るという代物で、器用貧乏とも言えなくもないが、攻めにバリエーションが持てるという厄介なスキルでもある。


――だが、そっちはカラーナを信じるしか無いか……とにかくこいつらを何とかしないとな、それにしても……


「あの時、やはりお前は殺しておくべきだった――」


 俺は自分の気持ちを吐露する。あの時殺しておけば、か、たらればを今更いったところで仕方ないが、メリッサの事を考えると、だから今度こそきっちり殺る必要がある。


「かかっ! 全くだ! てめぇの甘さが招いた結果だ。もう俺には絶対に勝てないからな! てめぇはこの場所で惨めに死ね!」


 叫びあげザックが構えを取る。俺もそれに合わせて双剣を左右に広げる形を取った。

 前回ザックのレアな鎧は俺が破壊してるから今の装備は、青紫色の革の鎧。

 見たところ魔獣ガルムの革を素材にしたレザーガルムアーマーってところか。


 ブラックタートルの鎧ほど頑強ではないがその分動きやすい。

 だが、俺からしたらそっちの方が戦いやすい。流石に一発では無理だが、キャンセルを利用し連続攻撃やスキルを駆使すれば鎧ごと断ちきる頃は可能だろう。


「いくぜ!」

 

 とりあえず相手の出方を待っていると、先手は例のごとくブレイクショットを撃ってきた。

 それを横にステップし躱す。

 

 ブレイカーとしては基本通り……そしてザックは更に前に距離を詰め、俺との距離は一〇メートル程度か? その場所から更にブレイクショットを狙ってきたのでそれをキャンセル。


「ん?」

 

 前回と同じく不可解といった具合に眉を顰める。

 リスクはニ秒、だが次の手は打たせない。

 俺はステップキャンセルでザックとの距離を詰め、双剣での攻撃を試みるが――防がれた!

 

 今回はむきになって、更に攻撃のようなワンパターンな攻めには転じてこないか――寧ろ良く俺を見ていてなんだか気持ちが悪い。


 防いだ大剣へのキャンセルは時間が間に合わない。俺はもう片方の手で横薙ぎに刃を振るうが、それは大きく飛び跳ねられて回避された。


 また距離が離れる。それにしても、あのガイドに今のところ動きはないが――


「ふむふむ、なるほどな。確かにてめぇの言ってるとおりかもな」


 ……言ってるとおり? 誰と話してる? いや、後ろに立ってるガイドしかいないか。

 だが、何を話していたというのか――


「さて、それじゃあ本番といくかな――と!」


 ザックはまた大剣を振り上げ、ブレイクショットの構え。

 ……本番の意味が判らないな。さっきと何も変わっていない。

 

 ワンパターンのブレイクショット。

 だったらもう一度キャンセル!


「おらおらおらおらおらおら!」


 な!? そんな……俺は確かにこいつの一撃目にあわせてキャンセルをしたが、だが、ザックの放った衝撃波が俺に迫る――しかも二発。


 俺は咄嗟にそれを横への移動で回避したが、ザックの動きは止まらない。

 おらおら! と剣を振り回しブレイクショットを連発してくる。


 これはキャンセルが効かなかったわけではない。実際リスクとして一秒与えられた。

 だがこの男、俺のキャンセルに構うことなくブレイクショットを連射してきた。


 通常キャンセルを受けた相手は、その違和感に何らかの反応を見せるものだが――こいつはそうではなく、キャンセルされても無視して剣を振りまくるという選択を選んできやがった。

 

 しかし、だとしても大剣を使ったブレイクショットでこんなに連発できるわけ――いや!


 俺はその衝撃波を躱しながらも、ザックの手元に注目する。

 この男――柄の持つ位置を変えている! そう前回と違い、柄の握りを変え、大剣を短く持つことでコンパクトかつスムーズに剣を振れるようになっているってことか――

 

 だが、当然威力はその分落ちるからキャンセルのリスクは二秒から一秒に変わっている――しかしその一秒の間にこいつは衝撃波を三発は撃ってくる。


 だから最初の一発をキャンセルできたとしても、俺が奴を再度キャンセルするまでに残り二発が飛んでくることになるわけか……これだと意味が無いし続けてもジリ貧だ――


「おらおら! どうした? 妙な技は使わねぇのかおい!」


 ……こいつにはキャンセルを見られてはいる。だが、それだけで看破出来るようなスキルではないと思うが……だが、なんだ? 嫌な予感がするが――


 とにかく攻め方を変えよう。確かにキャンセルは出来ないが躱せない攻撃じゃない。

 こいつだってこんなに闇雲に撃っていたら体力も尽きる。そこを狙う!


 俺はブレイクショットの連射を避けながら、ザックの隙を窺う。

 するとザックの攻撃の手が一旦止まった。


 疲れたか!? だったらここで一気に攻める! 

 ステップキャンセルで先ず距離を詰めて一気に攻める!


 俺はザックに向けてキャンセルで攻め込むが――ゾクリと悪寒を感じ、その瞬間、顔に痛烈な衝撃が。


「ぐはっ!」


 思わず呻き声を上げ感じる浮遊感。視界がグルグルと縦に回転し、空と地面を交互に見ながら背中に鈍い衝撃を受け地面を舐めた――


「くっ! 一体……何が?」


 身体をしこたま地面に打ち付け、痛みは残るが、でも立ち上がれない程ではない。

 俺は蹶然し、ザックを睨めつける。


 俺の姿を、ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべながら見てくるその様子が、今度は酷く不気味だった――


「なるほど。これは確かにお前と組んで正解だったかもなぁ――」


 肩を大剣でトントンと叩きながらザックが言う。

 その言葉の意味を考えるなら――


「お前、ガイドとか言ったか? お前が何かをしているのか?」


 ローブを纏ったその男に一瞥をくれ、そして問うように言う。

 勿論こんな事を聞いて教えてくれるとは思わないが、何か反応で掴めないが、ガイドの動きにも目端で注目するが。

 

「……あぁそうさ。私のジョブはアドバイザー(助言師)。この私に掛かれば、貴様の力など丸裸同然――」


 こいつ、あっさりと――だが、アドバイザーだと? 何だそれは……全く記憶に無い。

 いや違う、そんなジョブは俺が知るかぎり存在しない。

 ゲームに登場するジョブなら俺は全て覚えている。


 だがこいつのいうアドバイザーなんでものは存在しなかった。

 嘘を言っている? いや、だとしても嘘をつく意味がわからない――


 とにかく、こいつが何らかの形でザックの補助を行っているのは確かだ。

 だったら――


「さぁそろそろ雑談はしめぇだ! 覚悟しな!」


 ザックが吠え、再びブレイクショット連射。

 こいつ、さっきのは俺を誘うための罠か――脳筋のこいつがそんな手を考えるのはやはりおかしい……

 

 あのガイドが何らかの手助けをしてるのは間違いない。

 だったら、俺は奴のブレイクショットを躱しながらも投げナイフでガイドを狙う!

 ザックの装備にはとても通じそうにないが、ローブだけのこいつなら……勿論一発ぐらいで仕留められるとは思って、いないといいたいところだったのだが、サクッとあっさり眉間に命中した。


 何だ? こんなにも簡単に、て! ガイドは俺のナイフが命中したかと思えばボロボロとその身体が地面に崩れ落ちていく。


 これは――

 

「そいつは人形だ馬鹿が!」


 ギョッとした俺にザックからの回答。

 そこに衝撃波が重なる。

 俺は必死にそれを避けるが――まさか人形だとは、ということはダミー人形か? 


 つまりガイドはここには居なかったという事か? いや! ザックのあの話し方は間違いなく相手が居てのことだ!


 て、事はどこかに潜んでいるのか? そもそもアドバイザーとは一体……駄目だ! 余計な事は考えるな。

 とにかく今はこのザックを倒す手だけを考えないと――

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