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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第79話 一億ゴルド返済

 さて、ボンゴル商会を潰したまではいいが、後始末をどうするのかって話が残った。

 とりあえず俺達は今回変装をして挑んでるため、ばれる事はないだろうとキルビルもいっているが、それ自体はキャンセルの強制力で特に問題はない。


 だがボンゴルが死んだのは少し厄介だ。このまま放置しておくわけにもいかないしな。

 

 そんなわけでどうしようかと頭を悩ませたが、死体の処分に関してはキルビルの方で何とかしてくれるという話で落ち着いた。


 今回の件で、盗賊ギルドもかなりの稼ぎが期待できるらしくその礼の意味もあるそうだ。

 数千万ゴルド分ぐらいの利益が見込めるらしい。


 なので俺達は素直にその申し出を受け、死体の処理を任せた。

 ついでに元執事長も盗賊ギルドが引き受けることになった。


 まぁそのままというわけにもいかないしな。恐らく一生タダ働きでこき使われる事だろう。

  

 ドワン達にもしっかりお礼を述べ、更に俺の稼ぎの中から報酬を支払う。

 自分のために動いてくれたのにうけとれねぇ! とドワンが突っぱねていたが、マジックボムなども提供して貰っておいてそういうわけにも行かないし、助けてくれたドワンの仲間の事もある。


 なので今回ばかりはしっかり払わせて欲しいと伝え、それを了承してもらった。

 ドワンやエリンギ、そしてその仲間にもかなり感謝されたけどな。


 でもまぁ、経費として使った分とドワン達に支払った金額を差し引いても、借りていた一億ゴルドとは別に手元に二〇〇〇万ゴルド残ることになる。


 もう流石にここまで来ると揺るぎないな。今日はこれからシャドウのところに返しに行く必要もある為無理だが、メリッサに明日契約に行こうと伝えた。


 すると彼女は瞳に涙を溜め喜んでくれた。 

 

「おめでとうやメリッサ! これで正式なボスの奴隷になれるんや!」


「あ、ありがとうカラーナ。ご主人様も本当に――」


 うん、俺も嬉しい。これでやっと……やっとだ。

 さぁ、とにかくシャドウに借りてたものを返し安心してしまわないとな。





 シャドウは店にいるだろうとダイモンから教わり、スラムに向かう。

 しかし途中、

「でもほんま大丈夫? ボスしっかり中身は確認せぇよ。なんか心配やねん。また妙なことで折角のお金使ったり盗られたりせぇへんようにな」

とカラーナに心配された。


 メリッサも苦笑気味だが……流石に今回は稼いだ金額がデカい。

 何せ二〇〇〇万ゴルドだ。どう考えてもなくなる理由がないだろ。


「流石にもうそんな馬鹿はしないさ。今日はもう街から離れないしな。このままお金を返して予定通り明日契約に向かう」


「勿論私はご主人様を信じておりますので」


「……でも、これまでもそないな事いうて直前で何かあったやろ? やっぱごっつぅ心配やねん」


 どんだけ心配なんだよ。全く子供じゃないんだから――


 まぁとにかく、そんな事を道すがら話しながらもシャドウの店に辿り着いたわけだけどな。






◇◆◇


「どうぞ――」


 コアンという犬耳少女が紅茶を用意してくれる。

 前と同じで相変わらず立ち振舞が美しいな。

 

 まぁそれはそうと、シャドウの店に着くなり今回は直ぐに奥に通された。

 テーブルを挟んで向かい側では、シャドウがニコニコとした笑みを浮かべ用意された紅茶を啜っている。


「どうやら作戦はうまく言ったようですね」

 

 カップを一度皿に置きシャドウが口にする。


「当然や、ボスが失敗するわけないやろ」


 ふふん、と何故かカラーナが得意げに話す。

 まぁ、彼女の機転のおかげで今回は助かった部分も大きいけどな。


「まぁ俺だけの力じゃないけどな。ドワンとその仲間や、キルビルと盗賊ギルドのメンバーにも救われた」


「ほぅ、そうでしたか。それはそれは。それにしてもキルビルまでもが貴方に協力するとは、やはり不思議な人ですね」


 そういってシャドウが、ふふっ、と微笑をみせる。

 う~んそんなに意外な事だったのか? 


「シャドウのいうてるように、普通は盗賊ギルドが冒険者に協力する事なんてあんまないしなぁ」


「それだけご主人様の人徳が厚いということですね」


 そんなものなのか、メリッサのいう人徳は流石に持ち上げ過ぎとも思えるけどな。


「しかしボンゴルが殺されたのはな……おかげで大事なことが聞けなかったしな――」


 俺の言葉に、ほぉ、とシャドウは興味深そうにこちらに目を向け、口封じですか……と呟いた。


 シャドウは、こちらが何も説明しなくてもある程度判ってるようなそんな雰囲気を感じる。

 まぁ色々と情報には詳しそうだしな。


「そういえばシャドウは、領主の事は何も掴んでないのか?」


「えぇ、残念ながら。何せ姿を見せず居城にこもりっきりのようですしね。ただボンゴルは、銀行のゴールドを通じて何度か領主に会っていたようではありますね」


 それはあいつ自身の話しぶりなんかでなんとなく判ってはいたけどな――


「……正直私はご主人様が心配です。領主様の事を調べたりして、何か悪いことが起きるのではないかと」


「まぁ確かにボスは結構むちゃすんねん。うちも心配やわ」


 ふたりの視線が痛い。そこまで無茶してる覚えもないのだが――


「ふふっ。ヒット様はおふたりに相当愛されてるのですね」


「あ、愛……」

「ば! シャドウ! そんなん何か照れるやろ!」


 悪戯っ子のような笑みを浮かべシャドウが言うと、メリッサとカラーナが気恥ずかしそうに頬を染めた。


 なんか俺も照れくさいな……慕われているのは当然嬉しい限りだが。


「ところでシャドウも、今の領主に歯向かおうとかそういう気持ちは湧かないのか?」


 俺の質問に、ふむ、と細めの顎に指を添え一考し。


「そうですね。確かに領主には逆らおうとは思えません。私もそれが疑問なのですがね」


「疑問?」


「えぇそうです。まぁでも、それについては私自身もはっきりした事は判ってないので――」


 俺の聞きたいことを察したように、話をそこで締めてきたな。


 シャドウはシャドウで何か調べていたりするのか? ただ話せるほどのことはまだ何も判っていないということか。


「全く色々不気味な領主様だ」


 俺は頭を掻き毟りながら、愚痴のように零す。


「そうですね」


 クスリと笑いつつシャドウは同意してみせた。


「まぁとにかく、俺からすれは今は、明日メリッサを奴隷として迎え入れることのほうが大事だけどな」


「おや? その様子だと上手いこと資金は手に入ったのですか?」


「あぁばっちりさ」


「私のために――本当に感謝してもしつくせません」


「けどうちは、またボスが変な事に巻き込まれへんか心配やけどな」


 また言われた……よっぽど心配なのか――


「まぁとにかく、そんなわけだから、あんたから借りたものはさっさと返しておきたくてな」


「あぁそうですね。確かに金額が大きいですしね」


「あぁそうだ、だから今一億ゴルドを返すよ」

「では一億二千万ゴルドを返して頂くとしますか」


 ……は? 俺は思わず目を丸くさせる。

 て、一億二千万? え? 何を言ってる?


「ちょ! シャドウ! ボスが借りたんは一億ゴルドやで!」


「えぇ存じております。ですが利息がありますのでね」


「いや! おい! だから今日返すからと!」


「何か勘違いされているようですね。一億ゴルドをお貸しして、一億ゴルドを返してもらうだけでは私に全く利益がありません。ですので本来なら一億ゴルドをお貸しする時点で二千万ゴルドを引いてお渡しするのですが、まぁ今回はヒット様を信用してそのままお貸しした形です。ただそれであっても最初の利息は必ず発生しますので」


 俺は思わずあんぐりと口を広げ。


「ま、またや。またやってもうた……」

「ご、ご主人様――」


 くっ! ふたりの声のトーンが! でもそれでも納得いかん!


「おい! 一〇〇歩譲って利息が発生するとしても五日で一割だろ! なんで二千万ゴルドなんだ!」


「おや契約書をみておりませんでしたか? 今回は金額も大きいので、表記は五日ではなく一〇日で二割にしていた筈です」


 俺は契約書の内容を思い出してみるが……くっ! そういえば!


「シャドウ! いくらなんでもこれはないで! 納得行かへんわ! ボスこうなったらそんなん払うことないで!」


 カラーナがテーブルを叩きつけ叫ぶ。

 だが、確かに今回ばかりは――


「そうだな。こればかりは俺も納得できない。悪いがあんたを敵に回してでも――」

「ですが既に頂いておりますからね」


 何? 一体――て!


「な!? 俺のマジックバッグがない!」


「ふふっ、ようやく気が付かれましたか。ですが大切な物ならしっかり見ておいたほうがいいですよ」


 ニコニコと楽しそうに笑いながらシャドウが言う。

 一体いつの……あ! まさか……


「紅茶を運んできた時か……」


「ご名答です。コアンは優秀ですから」

 

「くっ! お前! 最初から俺から金を取ることが目的だったのか!?」


「……それに関しては私も少々強引すぎたかなとも思いますけどね。ただ、別にお金の為ではないとは言っておきましょう」


 ……何だ? 急に真顔に――


「なんやシャドウ、どういうこっちゃ! お金の為でないのになんでこんな事すんねん!」


「……それはですね、ある仕事に協力して貰いたいからですよ。そして、もしそれを手伝って頂けるなら、仕事を終えた後に全てお返しすることをお約束しますよ。勿論利息の分もチャラということでいいです」


 ……仕事だと?


「……そういうことか――だがなぜ俺だ?」


「それは昨日見せていただいた貴方の力が必要だからですよ。ふふっ、まぁまぁそんな怖い顔しないでください」


「無茶を言うな。こんな騙し打ちみたいな真似をされて、更にわけのわからない仕事の話までされて気分がいいわけないだろ」


 するとシャドウが嘆息をつき、そして一口紅茶を啜りまた皿に戻す。

 俺はその姿をじっと睨み据えるが――


「ヒット様、これは貴方にとっても悪い話ではないのですよ?」


「何? どういう事だ?」


 俺は怪訝に眉を顰めながら問い返すが。


「この仕事で、貴方は銀行に盗られたという一〇〇万ゴルドも取り返す事が可能だからですよ。何せ仕事内容は、銀行からお金を奪う事ですから」


 銀行から――だって?

 

 

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