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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第57話 カラーナとの宿での一時

 カラーナと、メリッサがドラッカーになれればいいな、なんて事を話しながら宿に戻る。

 カウンターでアニーにメリッサの事を訊かれたので答えたら、悪戯っ子のような笑みで、

「じゃあ今日はふたりでお楽しみだね」

と、誂われる。


 カラーナはいつも通り軽く返していたな。実際緊張してるのは俺だけかもしれない。 

 落ち着け俺。


 風呂に入り、食堂で飯を食ってふたりで部屋に戻った。

 そして――並んでベッドに腰を掛ける。

 ……くっ意識するな俺!


「……このベッド、ふたりやと結構広いんやな~」


「え? そ、そうか? そうでもないだろ!」


「……いや、ボスなに緊張してん? あ! さては変な事を考えとるのやろ! い~やらし~」


「な!? 違! そんなんじゃない! 全然違う!」


 俺は慌て口調で言い返す。嫌らしい事なんて考えてるわけない! 俺は至って冷静だ!


「ほんまに考えてへんの?」


「くどい! 本当だ!」


「……だとしたらそれはそれで悲しいわ――」


 へ? 俺は思わずカラーナに首を巡らすが、なんかそっぽを向いてご機嫌斜めな気も――くっ! 何だってんだ! さっぱり判らん!


「……うちそんなに魅力あらへんのかな?」


 俺に顔を向けず独り事のように言ってるな。

 たくっ!


「ば~か。魅力ないなんてあるわけないだろ」


 カラーナの頭をくしゃくしゃ撫でながらいう。

 全く魅力ありすぎて困ってるぐらいだってのに!


「ちょ! もうやめてよこれほんま!」


「ん? 嫌か。じゃあもうやんない」


「え?」


 俺が手を止めると、なんか寂しそうに呟いてきたな。


「ほんまにやめる事ないやん……女心わからんボスやな~ほんまに!」


 で、怒りだした。全く嬉しいなら嬉しいといえばいいのに。

 まぁでも――


「カラーナはその、なんだ。魅力に溢れてるよ。それにメリッサと一緒で色々と助けになってもらって感謝してる」


 なんか照れくさくなって、俺もそっぽを向くようにして気持ちを伝える。

 そしたら、ほんま? て聞き返してくるから、本当さ、と言い。

 するとカラーナが近くまでにじり寄ってくるが。


「……それやったら、今晩ぐらいボスを独り占めしてもえぇかな?」


 へ? て! 俺に腕を絡めて、す、すげぇ密着度――くっ! Tシャツの中に溢れる健康的なわがままおっぱいが俺の腕を捉えて、ぐにゃりと形が変化してる。なんとも嫌らしい感じに――


 こ、このままじゃ理性が――やばい! と思い始めた時、入り口のドアがノックされる。

 

「え? だ、誰だろな?」

「あ、もう! ほんまこんな時間にだっれやねん!」


 俺がベッドから腰を上げると、不機嫌そうにカラーナが叫んだ。

 俺は正直ちょっと助かったなと思ってしまったが――ドアを開けると、そこに立っていた人物に思わず声が出る。


「ドワン!」




「うちの店に寄ってくれたんだってな。それでさっきあいつに聞いたから、直接来たほうが早いと思ってな」


 ドワンを部屋に招き入れると、ここまで来た理由を話しだした。

 あいつというのは当然エリンギの事だろ。

 ちなみに、普段ドワンは仕事が終わればあの魔導店へ帰ってるらしい。

 ただ、その日に仕事が片付かなそうなときは、あの店の工房で一夜を明かすときもあるそうだ。


 そして話を聞く限り、ドワンは今日の仕事を終えた後は、奥さんの下へ戻ったようだ。

 折角だからメリッサの様子を尋ねる。


「お前さんの連れは随分と熱心にやってるよ。あいつも楽しそうに教えてる。物覚えのいい子みたいだな。それに集中力もたけぇ。いいドラッカーになれるんじゃないか?」


「そうか。そういってくれると嬉しい。俺もそんな気がしたからメリッサにドラッカーを勧めたからな。まぁその後チェッカーにもなってもらいたいんだが」


「いけるんじゃねぇか? 薬草関係だけじゃなく、魔導器も含めて色んなもんに興味を持ってるようで、書物なんかも真剣に目を通してるしな」


「なんや、流石勉強熱心やなメリッサ」


 カラーナが関心したように言う。ちなみにドワンとは初対面らしいが、口調は対して変わらない砕けたものだ。


「それで例のショックボルトの件だが――」


 ドワンが俺の顔を窺うようにしながら、髭を揺らし本題に入り始める。

 今日俺が注文していた件だな。


「とりあえず一本だけ作ってみた。試作品だがこれで問題はないか?」


 ドワンが俺に例のショックボルトを手渡してくる。

 それを手にとって確認するが、大きさといい問題はない。

 

 既存のボルトとの違いは、魔法式が刻まれているか否かだ。


「問題なさそうだ。これで、じゃあ残りもお願いしていいかな?」


「判った。これは見本で貰ったボルトから作成したが、十二本だと、一からの加工と魔法式ってのか? それの調整で、出来上がりは明後日になると思うがどうする?」


「あぁそれで問題ない。これは返した方がいいのか? 値段はいくらだろうか?」


「……いや、その一本は持っててくれて構わねぇし今回代金はいらねぇ。うちのが随分と迷惑を掛けたんだって? 話を聞いて怒っといた。全く、あいつは世間知らずというか、なんというかな、少しでも稼ごうと一生懸命らしいんだが、そのせいで突っ走っちまうところがあるんだ。本当もうしわけねぇ」


「いや! そんなやめてくれ! もう気にしちゃいないから!」


 どうやらドワンはあのマジックボムの事を言っているようだ。

 まぁ確かにあの場ではどうかとも思ったが……本人としては家計を支えようと一生懸命だったらしい。


「本当悪いな。これも一個持ってきたから受け取ってくれ」


「て! マジックボム!? いやいやマズイだろう? 流石に結構するみたいだし、ボルトまでタダにされて悪いよ」


「いいんだ。あんたには鉱山の件でも世話になってるしな」


 ……そこまで言われるとな。全くボルトまでタダになってこんな有難いことはないな。

 それにドワンはこうと決めたら曲げないし、ありがたく受け取っておくとするか。


「判った。済まないな」


「いいってことだ。まぁ伝えたかったのはそれだけだ。邪魔したな」


 用件を告げると、ドワンはすぐに立ち去ろうとする。

 俺達に気を使ってるのか? まぁそれはそうと俺は一つ思い出しドワンを引き止める。


「ちょっと待ってくれドワン。実は見てもらいたいものだあるんだ」


 するとドワンが振り返り。


「見てもらいたいもの?」


 そういって興味深そうに俺を見る。

 そして俺は、マジックバッグから例の化け物が持っていた槌を取り出して床に置いた。


「これを買い取ってもらう事は可能だろうか? 俺には使い道がなくてな」


 するとドワンはその場で腰を折り、手にとってマジマジと観察し始める。

 かなり真剣な表情だ。やはり装備店だけにこういうのには目がないのか。


「……こりゃうちでは無理だな」


 そして暫く眺めた後、ドワンが結果を述べる。

 うちでは無理か……


「そんなに価値がないって事か?」


「逆だ。価値がありすぎて買い取れねぇ。どうしてもっていうなら、本来オークションにでも出したほうがいいんだろうが――最低でも五〇〇万ゴルドは値が付くはずだしな」


「そんなに!?」

「ほんまかいな!」

 

 俺とカラーナは思わず驚きの声を上げる。

 

「良かったやないかボス! これで目標達成や!」

「あ、あぁ! ドワン。それでオークションにはすぐにでも出すことが可能なのか?」


「……いや、わりぃがちょっと難しいかもしれねぇ」


「はぁ! な、何でだドワン?」


「今の領主は、他の領地へも情報を開示するオークションの出品を認めてなくてな。だから出すにしても。どうしても領内限定になっちまう。そうなると馬鹿みたいに金額は落ちるしな。お勧めしねぇ」


 ……なんてこった。折角光明が見えたと思えばこれだ。


「まぁでも、どっちにしろオークションなら即金は無理だぞ。出品するまでに三日、落札までに七日で早くても一〇日掛かるのが普通だ」


 ドワンの説明に俺は思わずがっくりと肩を落とす。

 確かにそんなに待っていられないしな……ほんとままならないなマジで。


「ただ、これをいずれオークションに出す気なら、加工はしといたほうがいいな。このままじゃ誰も使えねぇし、これに美術品としての価値はねぇしな」


 ドワンが柄の部分を触りながら、俺に教えてくれる。 

 確かにこれは柄が長く、ヘッドもデカい。このままだと普通はまともに振れないだろうな……


「なんなら俺がやっといてやろうか?」


 俺の表情から考えてることを読んだのか、ドワンがそんな事を言ってくるが。


「うん? でもいいのか? ボルトのことだってあるのに――」


「構わねぇよ。俺はこういうことが好きだしな」


「そうか、それじゃあお願いするよ」


 俺がそう告げると、まかせとけ、といって妙に張り切った顔でドワンはその槌を両手で抱えながら部屋を後にした。

 ドワーフは膂力に長けるらしいがさすがだな。

 そして、本当にこういう作業が大好きなんだな――




 ドワンが帰った後は、カラーナが、どうすんの? という視線で俺を見つめてきてる。

 だが時計を見て俺は少しほっとし、そしてカラーナに身体を向け口を開く。


「悪い、ちょっと俺出てくるわ」


「は? はぁ!?」


 カラーナが目をまん丸くさせ驚きの声を上げる。

 

「何やそれ! 大体ボス、こんな時間にどこいく気やねん!」


 ふむ。確かに時刻は既に夜の7時30分。酒場にでも行く用事でもあるならともかく、この世界の住人はもう殆ど家に引っ込む時間でもあるが――


 訝しむような目を俺に向けてきてるな……話す必要はあるか――


「外にでるんだ」


 なので俺はそうカラーナに告げた。






◇◆◇


「ヒットの旦那。こんな時間に街からでるのかい?」


 西門の前でダイモンに問われる。俺の後ろにはカラーナも一緒だ……一応理由は話したのだが、そしたら結局一緒についてくるといってきかなかったんだよな。はぁ、まぁ昨日の事も見られてるし仕方ないかといった感じではあるが。


 ちなみに、流石にこの時間になると守衛も暇そうだ。入る人間も出る人間も殆どいないからな。


「あぁちょっと野暮用でな。問題ないだろ?」


「まぁそれは構わねぇが、8時過ぎたら門は閉めちまうぜ?」


「それなんだが、戻ってきたらどっかから入れてもらうわけにはいかないか?」


 正直言うと、野宿はちょっとな、という思いが今は強い。カラーナが一緒でなければ気にもしなかったんだがな。


「……いや、無いこともないが――」

 

 そう囁くようにいいつつ、ダイモンは俺に指を五本向けてきた。

 一々城壁の影に行くのも面倒になったか。それともこの時間はあんま離れられないのか。

 とにかくもう一人の守衛にばれない程度の動きで、俺に金額を提示する。


 しかし五万は高いだろ。俺はダイモンの指を四本折る。するとぎょっとした顔をして頭をぶんぶん振った。

 仕方ない一本戻す。だが難色を示しているな。

 で、四本に変えてきた。四万かよ……と、こそこそやっていると、カラーナがダイモンの腕を自分の胸に持っていき、媚びるような目で訴える。


 ダイモンの視線が、カラーナの谷間にロックオン。

 顔を紅く染めて――結局二万ゴルドで手を打ってくれた。

 カラーナ逞しい子――

カラーナは結構積極的な子なのです

そしてヒットは街から外に。その目的は?

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