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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第55話 魔導店のエルフ店主エリンギ

 失礼しました、と立ち上がりエルフの女店主が微笑みを浮かべる。

 そんなわけで、魔導店の店主なわけだが。なんとエルフでメガネっ子だった。

 しかもなんとなくドジっ子ぽくもある。


 ……どんだけ属性持ちだよ!


 そんなツッコミを思わず入れたくもなったが、改めてみると、エルフというだけあってか割りと小柄な女性であった。

 

 エルフという種族は全体的に小柄なタイプが多いらしいからな。



 ローブはスカートと一体化してるような作りで、サイズ的には少し裾が長い。

 転んだのはもしかしたらこれのせいかもしれないが、だったらなんで裾合わせしないのかという気もする。


 まぁ別にいいけど。そして顔立ちは結構幼い。目が大きく虹彩はゴールド。ロリとまではいわないが洗練された女性というよりはあどけない少女といった雰囲気だ。


「あ、あのようこそおいでくださいました! な、何かお探しでしたでしょうか?」


 にっこりといい営業スマイルで俺に尋ねてくる。

 う~ん愛らしい。


「知り合いにこの店の事を聞いてな。ちょっと見に来てみようかなと」


 まぁ! と彼女は更に花が開いたような笑顔を魅せ、

「それはそれはわざわざありがとうございます。私はここで店主を務めているエリンギと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

と頭を下げた。


 接客の姿勢は悪くはないな。それにしても名前は店名と同じなわけか。

 ……なんかきのこみたいだな。


「ふ~ん結構変わったもんがあるんやね~」


 すると早速カラーナが店内を物色し始める。

 来たことはないといっていたが、いざ入ると好奇心旺盛なのか色々興味をもったらしい。

 メリッサもメリッサでどことなくそわそわしている感じだ。


「メリッサも好きに見てみるといい。よさそうなのがあったら値段によるけどまぁ買えなくもないし」


「いえ! そんな! あまり無駄遣いなどは」

「まぁ! お買い上げいただけるのですね! ありがとうございます!」


「……」


 なんかニコニコ笑顔でエルフ店主にそんな事を言われたが、まだ買うと決めたわけではないぞ?


「まぁいいか。とりあえず俺も見てるからメリッサも自由にするといいぞ」


「は、はい! それでは!」


 なんか嬉しそうにして棚の上に乗ってる物とか見に行ったな。

 メリッサはこういう系統の物が好きなのか。

 そういった事も知識を蓄える上で役立ってるのかもしれないな。


「おお、こんなんも扱ってるんやな~」


 カラーナがそう呟き、網目の籠に入っていた青紫色の球を手にとった。

 確かこれは――


「マジックボムか」

「そやな。集団の敵を相手にするのに役に立つんやなこれが」


 まぁようは爆弾みたいなものだしな。真ん中にラインが入っていてそこに魔法式が刻まれている。


「あ! それはマジックボムですね!」


 なんか後ろからエリンギが説明に入ってきたが、それは今俺がいったな。


「実はこれは結構自信作でして……」


「うん? 自信作ってこれは貴方が?」


 俺が思わず気になって彼女を振り返り訪ねた。

 するとエリンギは一個マジックボムを掴みあげエルフ耳をピコピコ揺らしながら、はい! と元気よく応え眼鏡を直す。


「これはこれまでのマジックボムと違って、魔法式に言語解読による反応式を加えておりまして、それによって三〇秒までの時間を自由に決めて、発動できるようになっているんです」

 

 どことなくエリンギは得意気に教えてくれた。

 残念な感じのする胸を張り、眼鏡を指で押し上げる。


 ふむ、つまり自分で爆発するまでの時間を決められるって事か。

 まぁそれは便利そうではあるか。


「ちなみにやり方は口頭で『一〇秒後に爆発』とこの魔導器に向かって口にし、それからこうやって魔力を込めれば準備完了です。後は時間がきたら爆発します」


「へぇ~…………」


「なぁ? ところでそれやと、そのマジックボム発動するんちゃうの?」


「…………」

「…………」

「…………」


「きゃ! きゃ~~~~! どうしましょうどうしましょうどうしましょ~~~~~~!」


「え、ご主人様、ど、どうかされたのですか?」


「どうかされたじゃない! 爆発する!」

「えええぇえぇええぇえ!?」

「えぇからあんた! はよ解除しいや!」


「そ、それが解除式、く、組み込んでなくて!」


「アホか! 何しとんねん!」


「くそっ! かせ!」


 俺は急いでエリンギの手から爆弾を引ったくる!


「メリッサ! ドアを開けろ!」

「は、はい!」


「うぉおおおぉおおおぉおおおっりゃぁあぁああぁ!」


 俺はメリッサの開けたドアから飛び出し、気勢を上げながら、上空目掛けてそれを思いっきり投げつけた!

 俺の手を離れたマジックボムは屋根を越えるように遥か上まで到達し、その瞬間――


 ドッカアアァアアァアアン!


「…………」


 結構な勢いで爆発した。てか怖! なにこれ! なんでこんなの普通に売ってんだよ!


「おい! 何か爆発音が聞こえたぞ!」

 

 あ、ヤバい近隣の住民が騒ぎに気が付いて外に出てきた。そりゃそうか!


「なんだ一体何があった!」

「俺見てたぜ。エリンギの店からだ」

「うん? なんだあの店からか」

「じゃあいつものことね」

「驚いて損したわね」


 ……何かこの店がらみと知った瞬間、外に出てきてた人々がやれやれといった感じに引き返していったな。


 てかいつもって何だよ……




「やれやれ流石に焦ったぞ」

「うちもやビビッたでほんま」


「そうですよね。本当に焦りました」


「あんたがいうなよ!」

「誰のせいと思うとるんや!」


 エリンギの声に俺とカラーナがほぼ同時に突っ込んだ。

 メリッサも苦笑している当然だろう。


 そしてエリンギは、

「うぅ、私ってば結構失敗が多くて……」

と肩を落として声も落とす。


 危うく店そのものが木っ端微塵に吹き飛びそうになったことを、失敗の一言で済ましていいのか甚だ疑問だが。


「まぁそれはそうとして、五万ゴルドになります」


「……はい?」

 

 俺は思わず目を丸くして声を出す。

 相手はニコリと微笑んでいるが意味が判らない。


「いや、よく言ってる意味が判らないんだが……」


 なので当然俺は思ったままを口にした。


「え、えぇ、ですので、そ、そのマジックボムなのですが、い、一個五万ゴルドするのです……」


 今度はおずおずと言った感じにとんでも無いことを言ってきたぞこの店主!


「ちょっと待て! まさかその金額を俺が払うのか!?」


「は、はい出来れば……」


 何言っちゃってんのこの人!


「あほかい! おまん何いうてんねん! これ明らかにそっちのミスやろが! なんでボスが金払わないといかんねん! しばくぞアホんだら!」


 カラーナがキレる! いや当然だ! 女にしておくのがもったいないぐらいの啖呵だなしかし!


「う、ううぅう、ふぇええぇえええ~~~~ん」


「「「ええぇええぇええぇええ!?」」」


 俺達は三人ほぼ同時に声を上げる。当然だ! 何泣きだしてるのこの人!


「ぐすん、だって、だって、このままじゃ、お店が、お店が、材料費で赤字に、ふぇぇえぇん、子供も養わないといけないのに、ううぅうう」


 な、なんか目の下に手を当ててわんわん泣いてるし! 超涙目だし、おかげでカラーナもそれ以上何もいえんくなったぞ! てか子供いんのかよ!


「ひっく、そうですよね、もう、私が悪いんで、す、ひっく、こうなったら、店を畳むしか、そして一家揃って、奴隷堕ち……ごめんね! ごめんねママのせいで!」


 終いには……およよと床に崩れ、そして諦めの言葉を吐き、更におんおんと泣きだした。


 ……え? なにこれ? もしかして悪いの俺?


「うぅ、五万ゴルドが足りなくて……奴隷に――」


「だ--ーーー! 判った! 払う! 払うよ五万ゴルド!」


 こんな事で本当に奴隷堕ちされたら夢見が悪すぎる! 俺はバッグから五万ゴルド分の金貨を取り出し差し出した。


「毎度ありがとうございます!」


 ……そしたら表情を一変させて喜び勇んで俺の金貨を受け取った。

 おい! 切り替えはやすぎだろ!


「ちゃっかりしとるでこの店主……てか、ほんまボスはお人好しすぎやな」


 ぐっ! 返す言葉がない!


「……てか、もう帰るか――」


 よくよく考えたらとんでも無い店だ。カラーナもメリッサも同意らしい。

 よっしじゃあ帰るとす――


「ま、まってください! 今のは冗談です! もう失敗しませんから。色々面白いのもありますし! もう少しもう少し見ていってくださ~~い!」


 とりあえず冗談の意味が判らないが、縋るようにして言ってくる。

 てか失敗しないのは当然だ! いちいち失敗するたびに買わされていたんじゃたまったもんじゃない。


「こ、この分はサービスもしますから。だからだからお願いしますーーーー」


「どうするボス?」


「……まぁサービスしてくれるというならな」


 せめて五万ゴルド分ぐらいは、何かしらしてもらわないと納得がいかんし。


 そんなわけで再び店内を物色する。このエリンギには口頭説明だけで、もうふれないでくれといっておいた。

 でないとまた勝手に起動されるかもしれない。


 しかし……確かに物の値段は安いか。例えば帰還の玉は、本来六〇〇〇〇ゴルドの筈だが、ここでは四〇〇〇〇ゴルドだったりする。

 他にもメリッサの知ってる品は、どれも他の店と比べてかなり安いようだ。


「そういえば、そもそもこの帰還の玉の仕組みはどうなってるんだろうな……」


 ふとそんな事を口にするが。


「帰還の玉はアーティファクト(古代の魔導遺産)を元にして造られてますからね。今売られてるのはレプリカみたいなものなんですよ」


 俺は、へぇ~、と声を漏らす。なるほど転移魔法はないのに不思議に思ったが、古代の技術的な何かってことなんだな。納得。

 で、話によると俺のやってたゲームと仕様が少し変わっていた。


 どうやらこれを使うと発動した場所から一番近くの教会に移動するらしい。

 そして教会には、帰還の玉に刻まれているという古代の魔法式と対になる魔法式が取り込まれている事が多いらしい。


 なるほどね。ちなみに魔法学者が転移魔法の研究に取り組みだしたのは、帰還の玉の影響が大きいようだ。

 この力を解明すれば、自由に転移出来る魔法が生み出せるのでは? という話らしい。

 まぁ転移魔法は実際便利そうだし頑張ってもらいたいところだ。


「これはなんだ?」


 片手に収まる程度の、粘土細工のような人形を手に取りながら俺は尋ねる。

 ゲームだと俺は見たことのない物だ。


「ダミードールですね。魔力を込めると込めた者と瓜二つの人形が出来上がります」


「じゃあこれは?」


 ダミードールとやらの横に並べてある針を指さし尋ねる。てかこれにも魔法式が刻まれてるな、すげぇ細かく。


「はい! それはリモートニードルです。ダミードールに刺すことで、使用者のイメージしたとおりに動かせます。効果時間は三〇分程ですね」


 ふむ、なるほど結構面白いのがあるんだな。

 ただセットで買うと五〇〇〇〇ゴルドと結構高めだ。


 で色々見てるうちに一つ面白いものを見つけた。クロスボウ用のボルトである。


「武器もあるんだな」


「はい、これは合作でして、魔法の力も付与してあるボルトです」


 なるほど……てかマジックボムといい結構物騒なの置いてんだな。

 で、話を訊くとボルトは全部で四種類。


 ファイヤボルトは火の魔法が込められていて、対象に当たるとボルトが燃えるタイプ。

 火に弱い相手には有効か。威力が一目でわかるほど上がるというわけでもなく、熱傷を与える程度らしいけどな。

 でも何気に嫌なもんだよな相手からしたら。


 後はアイスボルトで、あたった箇所を急速に冷やし凍傷を起こす。これも地味に効果はありそうではあるが……


 そしてドッカンボルト。急に名称がダサくなったな! まぁ名前の通り爆破魔法の力が込められている。

 こっちは単純に威力が上がりそうだ。


 そして最後はショックボルト。電撃の魔法が込められていて、電撃のショックで相手を痺れさせる効果がある。


 この四種類の説明を受けて俺は、その一つにかなり興味をもった。

 

「なぁエリンギ。このショックボルトはもっとサイズを大きくできるかな?」


「どの位ですか?」


 エリンギに聞き返されたので、俺はマジックバッグからスパイラルヘヴィクロスボウを取り出し、これに収まるサイズのボルトと伝える。


「す、凄いですね」


「まぁ結構貴重な武器だしな」


「いえ、それもですがこんな大きい物が入るマジックバッグを持ってることもです」


 あぁそっちか。確かによく言われるが……そういえば――


「これって買ったらいくらぐらいするもんなんだ?」


「え? こちらですか? う~んこれはどのぐらいの量が入るんでしょうか?」


「一〇〇〇キロだな」


「せ!? そんな大きいの聞いたことありませんよ! う、う~んそうですね。一〇〇kg入るマジックバッグで二〇〇〇万ゴルドはするはずです」


 二〇〇〇万ゴルド! そんなにするのか!? ゲームとは価値が桁違いだな――


「てか、そうなるとこれは売ったらいくらぐらいするんだ……」


「そ、そうですね……ちょっと予想が付きませんが。ただ普通に店で売るのは無理でしょう。間違いなくオークション行きですし……」


 ……オークションか。競売に掛けて一番高値をつけた落札者に売るって形だな。

 まぁでも、それはそうだろうな。

 この場合逆に価値が高すぎて売りにくいって奴だ。

 勿論流石にこれを売る気はないが。手放すと問題が大きすぎる。


「まぁバッグの件はいいや。それでボルトはどうにかなりそうかな?」


「そ、そうですね。主人に相談してみないといけないですが……」


 うん? 主人? てかそういえばこれ合作って言ってたけど――


「みゃみゃ~エリンもなにきゃてちゅだう~~」


 ……はい? 


 店の奥から聞こえてきた幼い声に、思わず目を向けると――そこには見覚えのある幼女の姿があった……

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