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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第51話 領主の謎

 ふぅ――全く。

 俺は今ふたりの美女に身体をがっちり挟まれた状態だ。


 たくっ、ただでさえ俺が寝てると思って繰り広げられたガールズトークにもやもやしっぱなしだってのに……


 俺の右腕にはメリッサの柔らかくきめ細やかな白い果実が。

 そして左腕には弾力が合って健康的な黒い双丘が。


 それぞれしっかり腕を挟み込んでいた。カラーナは結構寝相が悪いのか、眠ったと思ったらゴロゴロ転がってきて俺の左腕にそれを挟めてきたし、メリッサも艶のある声を上げながら、徐ろに俺の腕を取って挟み込んできた。


 まぁ……嬉しくないといえば嘘になるけどな。しかし、メリッサは白……カラーナは黒か――て! 何マジマジと観察してるんだ俺は!


 とにかく――俺はふたりを起こさないように気を使いながら腕を抜き、そしてそっとベッドから起き上がる。


 慎重にいつもの装備品を身につけ、そして準備を整え、カラーナとメリッサの寝顔を覗き見た後、音を立てないように気を使いつつ部屋を出た。

 そして外から鍵を閉め静かに階段を降りる。


 ふたりが起きるまでには終わらせないとな――そう考えを巡らせつつ一階へ。

 で、カウンターではアニーが突っ伏して寝ている……いつもここで寝ているのか?


 不思議に思いながらも念の為ステップキャンセルで移動し、そして階段を下り外にでる。

 鍵が掛かってたらどうしようかと思ったが、入り口の扉は開いていた。


 だからアニーはあそこで寝ているのか? まぁそれは俺が気にすることでもない。

 宿を出た俺は空を見上げる。暗い中に煌々と輝く満月。

 そのおかげで多少は視界もマシだ。

 更に闇に目を慣らし、ある程度道が見えるようになってから、ステップキャンセルで路地を抜けメイン通りに出た。


 流石にもう魔導器の灯りも落ち、暗くなった街路では、当然歩いている人間も殆どいない。

 ただ時折ランタンの光は視認できた。

 衛兵が見回りでもしてるのだろう。

 勿論それに見つかったら厄介なので、闇に紛れつつ、ステップキャンセルも上手く利用し、見つからないように移動を続けた。

 

 シーフほど気配を絶つ事は出来ないが、それでも衛兵ぐらいはやり過ごせる。

 そして俺は慎重に足を進め、遂に目的である北門まで辿り着いた。

 他とは違い北門の横に備え付けられた魔導器の灯りは今もしっかり周囲を照らしている。


 俺がここに来た理由は一つ。領主とやらの顔を一度ぐらい見ておきたかったからだ。

 何せこの街は、ゲームにはなかった不可解な点が多すぎる。

 そしてその原因が領主にありそうなのは流石に予想が付く。


 アンジェも気にしていたし、メリッサも心配していたが、やはり気になるものは気になるし、ここをはっきりしておかないと正直色々気持ち悪い。


 まぁそんなわけで北門近く、物陰に隠れて様子を見る。

 門の前には衛兵――しかもフルプレートメイル。

 アンジェ程、位が高いわけではないだろうが、奴らも恐らく騎士だ。ここの領主に囲われてるな。


 流石は領主の城に続く門というだけあるか。騎士二人も気を緩めず、侵入者がやってこないよう目を光らせている。

 一人は両手でハルバート、長柄で先端に槍、その手前に斧の刃と逆側に鈎が付いているタイプ。


 もう一人は腰に長剣を吊るしているな。

 ふむ、これだと中々門を抜けるのは難しいか、と言いたいとこだが。


 ふたりの騎士に守られる北門は、なんと開きっぱなしであった。

 本来ならここは基本閉まってる筈なんだけどな。

 俺もそれは想定してるつもりで、ある程度強引にいくつもりもあったんだが――


 ふむ、騎士が守っているから問題無いと思っているのか? だが、だとしたら甘いな。

 ここからなら、距離は三〇〇~四〇〇メートルぐらいだ。

 それならば、灯りで門が視認できる状況ならば、ステップキャンセルで抜けることは可能。

 しかも門の前は大きく空いてるしな。これならタイミングを見計らって飛び出してからのステップキャンセルでいける。


 そう思い、俺は騎士の顔の動きに注視しつつ、パッと飛び出てステップキャンセル!


「……ん?」

「なっ!?」

「へ?」


 俺は思わず間の抜けた声を発してしまった。そんな俺の視界には正面に夜の街並み、そして背中側に恐らく北門。

 そして左右には……驚きに目を見開く騎士の姿――


「だ、誰だ貴様!」

「く! くせ――」


 キャンセル! キャンセル!


 俺は即効で騎士ふたりにキャンセルを掛け、更にステップキャンセルで瞬時に移動! 慌てて建物の影に逃げ込んだ。


 てか、どうなってる!? なんでステップキャンセルで門を抜けたはずが、逆側から出てきたみたいになってんだ!


「ボス一体なにしてんねん」

「ふぁ!?」


 俺は思わず変な声を上げ後ろを振り向く。

 するとそこには褐色が上手く闇に溶け込んだカラーナの姿。

 どことなく呆れた顔ですぐ後ろに。

 腕を組み中々のボリュームを誇る胸を強調するようにして立っていた。


「お! お前なんでここに!?」


 当然俺は疑問の声を投げつける。

 すると溜め息一つ。俺を見上げるブラウンの瞳でジィ~と見つめてきて。


「うちバークラーやいうたやろ? 元盗賊やで。こそこそしとってもバレバレや」


 うぐぅ……どうやら俺の行動は普通にバレていたようだ。

 目は覚めてたけど寝た振りしていたという事か。まぁ俺も似たような事をしていたから文句はいえないが。


「まぁでも、ちと面食らったけどな~屋根の上からやったから見失わずに済んだけど、急に消えて別の場所に現れるんは驚いたで。ボス瞬間移動の魔法使えるん?」


「え? あ、あぁそうだな。それも見られていたか」


「バッチシな」


 ふむ、しかし屋根の上からとは流石盗賊のジョブ持ちだな。

 まぁ視界が制限された夜だと一回の移動距離も短くなるし、その分見つけやすかったのかもしれないが。


 とはいえ闇はバークラーにとっては格好のフィールド。

 気配を絶って素早く移動が出来る。俺も気が付かないわけか。


「ところでカラーナ。俺の姿を追ってたということは、今俺がどうなったかもしっかり見ていたのか?」


「当然や。だから呆れとんのや。一体何してんボス。あんなところに急に現れて? あんなん捕まえてくれいうとるようなもんやろ。寧ろ何故捕まらずに済んでるのか不思議でならへんわ」


 急に現れてか……


「捕まらなかったのもまぁ魔法とか特技とかそういったものだ。それにしてもカラーナからみてもやはり俺は急にあそこに現れたのか……」


「そうなんや。ボスもなんか凄いジョブ持ってそうやな。でもその感じやと、本当は違う場所に移動したかったん?」


 カラーナが小首を傾げながら尋ねてくる。

 まぁ当然わざわざあんな場所に出るわけ無いしな。


「本当は門を超えたところに出る予定だった。だがそれは今カラーナが見たように失敗したんだが……俺があそこに現れた時何か変わったことはなかったか? 地面や周囲が光ったとか――」


「う~ん別に変化はなかったで? ボスが消えたかと思えば、一瞬にして門の前に移動してたんや」


 ……ふむ。もしかしたら魔法を使ったトラップ関係かとも思ったが違うのか……ゲームでも強制的に別の場所に移動させる床みたいなトラップはあったんだけどな。

 ただその場合、地面に魔法陣が浮かび上がり、移動した先にもそれと対となる魔法陣が浮かぶ。

 だがカラーナに聞く限りその線はなさそうか……


 じゃあ俺の失敗? いや、違う。だとしたらあれはありえない。

 俺のステップキャンセルは、あくまで移動という過程をキャンセルで飛ばしてるだけだ。

 だからもし何かに阻まれることがあったなら、俺は進行方向を向いたままその場で止まるはずである。


 だが実際は、門の向こうへ抜ける予定が門を背にして止まってしまった。

 ……つまりは、あの門を抜けると反対側に出る仕組み?


 ……まぁどっちにしてもこのままだとあそこを越えるのは難しいという事か……俺の知識じゃ理由がさっぱり判らないしな。

 

 ただ、それであれば門が開けっ放しなのもよく判る。


 そもそも抜けることが出来ないと判っているから、閉める必要がないのだろう。

 それだと門番も必要なさそうに思えるが、それはまぁそういうフォームをとって見せて、近づくなと暗に示していると言える。


「それにしてもボスは、なんであんなところに移動しようと思ったんや?」


「うん? 別にただ領主様とやらの顔を拝んでやろうと思っただけさ」


「はぁ!? 本気でいうとるん? 馬鹿は止めとき。領主様を探ろうなんて命知らずもいいとこやで」


「……カラーナお前もか」


「うん? うちも?」


 小首を捻り怪訝そうに眉を顰める。どうやら自分ではその不自然さに気がついていないようだな。

 シャドウキャットに所属し義賊のような行為を繰り返していたのに、領主には逆らえないとか違和感しかないんだけどな。


「まぁいい。とにかくここからは無理そうだ。今日は一旦宿に戻ろう」


「今日はって事はまだ何か企んとるのかいな」


「まぁその辺は色々な」


「はぁ全く敵わんわ。やけどうちは無理やと思うけどな、領主様にお会いするなんてそんな真似」


「……カラーナお前は悔しくないのか? シャドウキャットを結成して義賊として活動したのも、元はといえば領主のせいとも言えるだろ? それに潰されたのだって――」


「……そら悔しいわ。でもうちらが潰された理由は裏切り者がいたのも大きいねん」


 ……ふむ、そういえばそんな話もあったと思うが。


「今その裏切り者やメンバー達はどういう状況なんだ?」


「……裏切ったあいつは自由にしとるわ。ムカつくぐらいな……でも他のメンバーはうち以外全員……処刑されたようや。うちだけ女って事で奴隷落ちにされた感じや」


「――そうか。悪かったな辛いことを思い出させて」


「ふ、ふん! 別にえぇねん! 過ぎた話や!」


 そんな筈はないだろうにな。全く強がりいいやがって――


 それから俺とカラーナはなんとなく微妙な空気のまま宿に戻った。

 アニーに気付かれないように三階へ上がり部屋に戻る。

 メリッサはすやすやと可愛らしい寝顔で眠っていた。


 俺も後少しぐらいは寝ておこうかとベッドに戻ろうとするが――


「……なぁボス、良かったらメリッサに内緒でうちと――する?」


「ふぁ! は、はぁ? お前なにいって!」


 俺は声を抑えながらも狼狽え言葉を返す。マジで何考えてんだ!


「じょ、冗談に決まっとるやろ! ほんまボスからかうとおもろいわ。じゃ、じゃあうちも寝るわお休み~」


 そう言ってカラーナはベッドに潜り込み布団を被った。

 ……冗談だったのか、くっ、やっぱペース握られてるな俺!

というわけでついに領主を探りに入ったヒットです!

……(汗)

そんなわけでカラーナの密かな誘いをなんとか堪えたヒットですが、この先は果たして……





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