第47話 石を投げる
「何だこれは――」
広場についた俺達の目に飛び込んできた光景と、耳を打つ醜悪な響きに俺は愕然となった。
それはメリッサも同じようで、口元を両手で覆い、海のような碧眼を見開き、波を湛えている。
「ご主人様、なんでどうしてカラーナがこんな目に――」
震える声で問う。その答えは俺には判っている。それはメリッサも同じだろう。
ただ、だからってここまでするのか? という思いのほうが強い。
俺とメリッサは、人の波を掻き分けるようにして前に進む。
しかし壁が厚く中々前に進めない。そして徐々に口汚く罵る言葉と、耳を疑うような醜悪な響きが波紋のように広がっていく。
その周りの声に苛立ちを覚えながら進んでいると、途中邪魔だとメリッサを突き飛ばしてきた奴がいた。だから手首から先を切り落としておいた。
泣きわめいていたが、この喧騒の中じゃ誰も気づきはしないだろう。
切り落とした事実はキャンセルしておく。
今の俺はメリッサの事も含めて気が立っている。
だが、それでも俺の気持ちは収まらない。
脚を踏まれた、手首を切り落とした。
進行を阻まれた、手首を切り落とした。
汚らしい暴言を吐くものがいた、手首を切り落とした。
「奴隷風情が私の横を通るんじゃ、ヒギィいいぃ! わだぢのてぃええぇえぇえ!」
煩い女だと思った。派手な格好をしたケバい女だった。きっとどこぞの貴族婦人だろ。
女の手首を切り落とすのは初めてだったが、特に何も思うことはなかった。
顔をズタズタに切り裂けなどの口汚い言葉を吐き出す女だ。そんな奴に何も思うところはない。
俺からしてみれば、ここにいる連中は、彼女に暴言を吐く連中は、手首の一本や二本須らく切り落とされるべきだ。
そうして次々に手首を切り落とし、キャンセルを掛けながら進むと、どこかの童話の兄妹が落としていったパン屑のように、点々と手首が後方に続いていく。
だが騒ぎの大きさで誰もそれに気がつかない。
そして集団の一番前に出ると、やはりその異常な光景が顕になる。
広場の中心近く。噴水の横に突貫で建てられたのであろう赤い舞台の上では、手枷足枷を嵌められ立たされているカラーナの姿。
隷属の首輪からは鉄の鎖が伸び、それを隣で嫌らしい笑みを浮かべたハゲ散らかした男が掴んでいる。
赤いローブに身を包まれた、そのイカれたハゲは。時折大げさな身振りで醜悪な言葉を聴衆に投げかけ、更に騒ぎが大きくなるよう煽っているようでもあった。
その場の全員の怒りの矛先が、カラーナ一人に向けられている。貴族然な連中だけでなく、平民と呼ばれる類の民衆達も、一斉に口汚い言葉をぶつけ、終いには石まで投げつけ始めた。
そのあまりの異常さに、一瞬だけ俺の思考が停止しかける。
これが本当に知性あるものたちのすることだろうかとも思えた。
そしてその間にも、あのハゲ散らかした男はわけの分からない演説を続け、事もあろうに聴衆に彼女の運命を決めさせようとしている。
奴隷として買うか、処刑かだと?
「おいお前! お前もこれを投げろ! あの糞みたいな女に石を投げてやれ!」
一瞬呆然と立ち尽くしてしまった俺に、横からそんな声がかかった。
首を巡らすと、顔を醜く歪ませた男が俺に石を差し出していた。
人の拳より一回りほど大きな石だ。こんなものを投げつけたら確実に大怪我を負わすことになるだろう。
俺に石を投げろなどと馬鹿なことを口にする男は、薄汚いチリチリの赤髪がウザったい小太りな男だった。
背中にマントを身につけ、腹のあたりをベルトで締め付け、裾が広がっている銀色のチュニックに、白色のズボンという出で立ちの男だ。
服には意匠がそれなりに施されており、きっと地位もそれなりなのだろうと予想できる。
「ほら思い切って投げてみろよ。すっきりするぜ? あの小生意気そうな顔をこれで潰してやれよ? な?」
「……なんで俺が、貴様の命令など聞かねばならないのだ?」
瞳にありったけの力を込め、その男を見下すように言う。
すると男は、ぐぎぎ、と悔しそうに歯噛みし、その太くて汚らしい指をぶんぶんと上下に振り始めた。
「貴様! この私をなんと心得る! ここセントラルアーツの街で、領主に認められし貴族の中の貴族! ウザイル・ゲイル男爵と知っての事か!」
そんなもの知るか。本当に腹ただしい。こいつも腕を斬るか……いや――
「ふん! ま、まぁいい! 貴様の無礼な態度もだ、この石を投げつけるなら許してやる! さぁ早く私の手から石をとるがいい!」
「石を投げればいいのか?」
「そうだ! さっさとしろ!」
「判った」
言って俺は石を受け取る。メリッサの、ご、ご主人様、という細い声が背中を撫でるが――俺はそのまま更に数歩前に出て、そして大きく振りかぶった。
「いいぞ! やれー! その石で殺ってしまえーーーー!」
気持ちの悪い男爵の声が耳に届く。
あぁ判ったよ。お望み通り投げてやる。
そうその、醜悪な、ハゲ頭目掛けて!
俺は力強く右足を踏み込み、思いっきり腕を振りぬく。
放たれた投石は、空気を切り裂き見事なストレートの軌道で、カラーナの横に立つ男の頭を狙う。
その直後に届く鈍い響き――チッ、やはりそうは問屋が卸さないか。
俺の投げた石は、台の上で醜悪な笑みを浮かべる演説者には届かず、その周りに控えている護衛らしき男たちの手で遮られた。
かと思えば、別の場所で控えていた護衛達が一瞬にして俺の周りを取り囲み、後方を振り返った俺に槍の穂先を首目掛け突きつけてきた。
どうやら有象無象の寄せ集めというわけではなく、しっかり訓練された戦士たちのようだな。
冒険者か? それとも専属か? もしくは元冒険者って可能性もあるか。
しかし数が多いな。あのハゲの周りには特に強そうなのが二〇~三〇人。
広場に集まった聴衆の周囲には、監視の為なのか一〇〇人以上はいる。
まぁでも、とりあえず今日ギルドに集まってた連中の姿はない。
ダンなんかがいたら、どうしようかってところだったからそれは有難いな。
「貴様! どういうつもりだ!」
「かの御方をメフィスト・シャルダーク公爵と知っての狼藉か!」
俺に槍を突きつけている男たちが詰問してくる。
なので俺は、一度大きく息を吐き出し、そしてこう言ってやった。
「勘弁して下さい。俺はあそこに立っているウザイル・ゲイル男爵に、今の、この騒ぎの中なら絶対にばれないから、この石をあいつに向かって投げつけろ! と言われたので、その命令に従ったまでです。なにせ貴族の中の貴族であるウザイル・ゲイル男爵のご命令ですからね。逆らうわけにはいきません」
両手を降参と言わんばかりに翳し、顎であの小太り糞男爵を指し示しながら、囲んでいる連中にそう告げる。
すると連中の何人かの目が、男爵へと向けられるが。
「き、貴様! ふざけたことを! 大体俺が投げつけろといった――」
キャンセル。
「投げつけろといった、いった、うん? はて?」
そこで見事に言葉を切って、首を傾げる屑男爵。
すると更に、別の護衛の連中が男爵の周りを取り囲み槍を突きつけた。
「ひ、ひぃ! ち、違う! そうじゃないんだ! 今はちょっと口が滑って! 俺はあいつに石を」
「うるさい黙れ!」
「ひっ!」
「メフィスト・シャルダーク公! この者達どう致しましょうか?」
護衛に囲まれた状態でガクガクと震える男爵。
するとあの公爵とかいう男の声が俺の背中を打つ。
「……そこのウザイルとかいう屑は、とっとと詰め所へ連れていき処理してもらえ」
「はっ! 承知致しました!」
「え? しょ、処理って何? ちょ! ちょっと待て! 私はこの街に貢献し領主様にも認められた男――」
「いいからさっさと来い!」
あ~あ、引き摺られるようにしていっちゃった。ご愁傷様。
まぁ自業自得だけどな。で、う~んメリッサが相当心配そうにしてるな。
まぁそれもそうか、さてと。
「なぁ? もうこの槍どけてくれよ。主犯は捕らわれたわけだしな」
「ふざけたことを! 例え命令されていたとはいえ、シャルダーク様にあのような無礼を働いて許されるわけがないだろう!」
「まぁ待て。確かにその男は命令されたから石を投げてきただけなのだろう。しかし、面白い男だ。どんな理由であれ、この私に石を投げるなどとはな」
演説が一旦中止され、メフィストとかいうむさいおっさんの意識が俺に向けられたことで、今までの喧騒が嘘のように静まり返る。
そんな中、チラリとカラーナの姿を目端におさめるが、どうやら声こそ出てないが俺の乱入に心底驚いているようだな。
「お前たち。その男をこっちへ」
はっ! と護衛の連中が声を上げ、俺の腕をとろうとしたが、俺はそれを振りほどき、自らあのハゲの下へと赴いた。
「……お前、名はなんという?」
「ヒットだ」
「そうかヒット。さて確かにお前は面白い男だ。だが、だからといってやはり今の所為を簡単に許すわけにもいかんな。それでだ、どうせならお前に一つやってもらいたいことがある」
「……なんだ?」
「何難しいことではない。お前がさっき私に向かってやったことを、これにもやって見せて欲しい」
ニコニコと薄気味悪い作り笑いを浮かべながら、なんてことがないように男爵と同じことをいってきやがる。
「ご、ご主人様!」
メリッサが思わずといった感じで俺に向かって叫びあげた。
それに気がついたメフィストは、彼女に目を向け疑問の声を上げる。
「うん? ご主人様? なんだあれはお前の奴隷か……ふむ、面白い、おいお前たちその娘も連れて来い」
「はっ! おい貴様――」
「メリッサに汚い手で触るなァアァアアァア!」
俺が叫びあげると連中の動きが止まった。
俺は、メリッサ! と呼びかける。すると、はい! と返事し奴らに連れてこられるまでもなく俺の傍にやってきた。
「き、貴様! 汚いなどと!」
「まぁよい。引っ込んでおれ」
護衛の一人が喰い掛かってきそうになったのを、メフィストというハゲが止め控えさせた。
そして俺とメリッサを濁った瞳で交互にみやる。
「さてヒットとそこの奴隷、ふたりでこの石をあれに投げつけるがよい。それで非礼については許してやろう」
「…………」
目に力が篭もるのが自分でも判るな。
「ほれ、どうした? 石を取らぬか」
そしてこの男は俺とメリッサの分として石を二つ突き出してくる。さっきの男爵のとそう変わらない大きさの石だ。
なので俺がまずその一つを掴み、この歪んだ精神の持ち主に口を開く。
「……判った先ずは俺がやる。それでいいな?」
「ふむ、まぁいいだろう」
睨めつけるようにして言った後、俺は自らカラーナの正面まで移動した。
彼女の目は充血して真っ赤だった。頬には涙の跡も見える。
きっとよっぽど悔しかったのだろう。
「……かかっ、まさかそんな近くから投げる気だとはな」
「…………」
愉快そうに笑うメフィストに対し、一瞬どす黒い感情が湧き上がる。
そして――カラーナが俺に向けてニコリと微笑んだ。
何故話そうとしないのか……いや、話せないのだろう。
隷属器の影響で喋るのを禁止されている可能性がある。
だが、それでも判る。メリッサも瞳を伏せる。彼女は俺達にこういっている。いいからその石を私に投げろと。
……少しだけ頭に上った血が、ひいていくのを感じていく。
ここで熱くなっては駄目だ。確かにこのメフィストという男には当然腹も立つ、だがここはカラーナを助けるという事を優先せねば……
だから俺は――
「うん? おいお前、どこを向いているのだ? そっちは違うであろう」
俺がカラーナに背を向けると、怪訝そうにハゲ散らかした男が言う。
だが、これであっている。確かにこの男にもムカついている。だがそれ以上に腹ただしい連中もいる。
「せーーーーーーの!」
俺はそう言って大きく振りかぶり――思いっきり石を投げつけた。
聴衆共に向かって――
そして直ぐ様キャンセルで手の中に戻す。
「き、きゃ~~~~!」
「お、おい! あいつこっちに石を投げつけてきやがったぞ!」
「ふざけんなてめぇ!」
ふざけんなだと? 何を言っている俺から言わせれば――
「てめぇらの方がよっぽどふざけてんだよ!」
俺は更に石を投げつけキャンセルし、手の中に石を戻すを繰り返し、眼下の連中に向かって何度も何度も石をぶつけていく!
投石【キャンセル】投石【キャンセル】投石【キャンセル】投石【キャンセル】投石【キャンセル】投石【キャンセル】投石【キャンセル】
「い、いてぇ!」
「な、なんだこいつ! てかなんでこんなに何個も石を!」
「どういうつもりだごらぁ!」
「ふん! ピーピーピーピー煩い奴らだ。俺はテメェらに教えてやったんだよ! 少しは石を当てられたらどうなるか判ったか屑野郎共!」
「……な!?」
「てめぇ罪人の方を持つ気か~~~~!」
「ふざけんなよこの糞野郎!」
俺の言葉に対し、絶句するもの、非難するもの、罵声を浴びせかけてくるもの、様々な感情が入り混じり声として迫ってくる。だが、俺は大きく息を吸い込み、眼下で佇む性根の腐った連中に、言葉の石を叩きつける。
「ふん! どうやら貴様らは気がついていないようだからな、俺が貴様らにしっかり教えてやる。いいか? この女に石を投げやがった連中は、俺からすれば! 貴族だろうが平民だろうが、全て! 屑で! ゴミで! 畜生だ! 貴様らは、その足りない頭振り絞って、それをしっかり認識しろ!」
そんな俺の言葉に――再び多く聴衆が声を上げ、野次を飛ばし、そして一斉に俺に向かって石を投げつけてきた。
「ふざけるな! 誰が屑だ!」
「てめぇがゴミだろうが! 死ね!」
「殺せー! 先ずはその男をぶっ殺せ~~~~!」
敵意の対象が完全に俺にかわる。俺は連中の投げた投石を一身に受ける。
まぁキャンセルはしているが――て、メリッサ?
「おいメリッサ離れていろ。怪我をするぞ!」
「い~え離れません。全くご主人様は一人で無茶をしすぎです。それに――どうせ私にはこんなのあたりません」
「あの女も仲間よ! あの小生意気な顔を台無しに、ってなんで身体がブレて!?」
「ち、畜生! 狙いが定まらねぇ!」
……あ、ミラージュドレスの効果か。
とはいえメリッサに石が当たらないよう気をつけつつ、俺は更に罵詈罵倒を続けていく。
連中の怒りが高まる。だが、これでいい。もっと怒れ俺に敵意を向けろ。
「ふん! 全くもって情けない連中だ! そうやって下から石を投げて、暴言を吐くぐらいしか出来ないのか? 頭が悪いな! お前ら怖いんだろ? だから何も出来ない! 全くとんだお笑い草だ! さぁどうだ? 悔しいか? だったら俺はここだ! そんなところでボーっと見てないで、直接俺をやってみろ!」
眼下の群衆に挑発の言葉をぶつける。それに目を血走らせた先頭の集団が反応する。
「てめぇ! だったらやってやるよ!」
「俺達がてめぇをぶっ殺しにいってやる!」
……よし、これで更に投石を続け刺激し――
「静まらんか! この愚か者どもがぁああぁあ! 貴様等揃って奴隷に堕ちたいのかぁあぁあぁ!」
俺は思わず耳をふさぎそうになる。
このメフィスト、突然叫び上げやがった……それで一瞬にして騒ぎが収まり水を打ったかのような静寂が訪れる。
俺も思わず手を止めてしまった――
そして、参ったな……上手く暴動を引き起こせればと思ったんだが――今ので完全に沈静化してしまった。
おまけに、何かに狙われている気がする。
弓か? ふぅ、あわよくばと思ったが……そううまく行かないか。
「さてと――」
メフィストは俺を振り返る。その顔は実に穏やかで逆に不気味だが。
「なぜ貴様はこんな事をした? やはりこの女を助ける為か?」
……まぁ俺としては腹たたしい聴衆どもに石を投げつけて、ある程度鬱憤は晴らせたが――どっちにしろ、ここでカラーナを救うには、この状況じゃ後は一つしか手はないか……
「おいおい冗談だろ? あんたが自分で石を投げろといったんじゃないか?」
「…………本気で言ってるのか?」
「本気だな」
「私はあれといった筈だが?」
メフィストはカラーナに指を突きつけながらそんな事を言うが。
「俺はあれとしか聞いてないぜ? だから邪魔な連中に石を投げたんだ」
メフィストの顔が歪む。
まぁ一見すると只の屁理屈だが。
「それにあんた自分で言ったことを忘れたのかい?」
「自分で言ったことだと?」
メフィストは怪訝に眉を顰める。
「奴隷を売るといった事さ。その話があったからこそ、俺はここまでわざわざやってきたんだ。それなのに石を投げられたら溜まったもんじゃない。折角の奴隷が傷つくなんて、俺はまっぴらゴメンだからな。あんたもそうだろ? 奴隷を扱うあんたら、折角の商品に傷がついたら溜まったもんじゃないもんな? だから俺はあんたの代弁をしてやったのさ。あいつらにムカついていただろうしな。それに俺に意識が行けばあんたの商品も傷がつかない」
「……つまりお前はこう言いたいのか? 私の商品を守るために、あえて下の連中に石を投げたと?」
「そうだ。俺の本来の目的は彼女を一〇〇万で買うことだからな」
俺は両手を広げ飄々とした物言いでそう告げる。
正直少々強引な気もしないでもないが、もうこうなったらこれで押し切るしか無い!
「お前、本気か? だったらなぜ最初に私に石を投げた?」
「それは最初に言った通り、あの男爵に言われたからさ。だけど俺はチャンスと思ったね。おかげであんたの目に止まった。あの状況じゃ俺が声を上げても聞こえなかっただろうしな。勿論石を投げたのも護衛が防ぐと計算してのことだ。むしろその御蔭で不逞な輩を一人捕まえられたんだから、ありがたく思って欲しいぐらいだ」
「……つまりお前は、ただこの女が奴隷として欲しかったと?」
「勿論だ。こんないい女、処刑にするなんて勿体無いだろ?」
メフィストという男に身体を向けたまま、親指で後方のカラーナを指し示し、俺はそう告げた。
護衛達の目が丸くなる。だが後ろで佇むメフィストは、くくっ、と含み笑いをしてみせ。
「この状況で本当にそんな事を言える奴がいたとはな。お前、頭が悪いにも程があるぞ……だが確かに一〇〇万ゴルドで譲ってやってもいいといったのは私か。奴隷ギルドの管理者として一度言ったことを取り消すわけにはいかんな」
メフィストは薄ら寒くなりそうな笑みを浮かべながらそう口にし、だが再度訊くが本気か? と俺に確認をとってくる。
それに対し俺は、勿論本気だ、とカラーナを振り返る。
彼女は声にならない声で、パクパクと唇を動かし、そして首をブンブンと横に振る。
どうやら止めろといいたいらしい。
だけどな――ここははっきりと断言する。もう俺が、決めたことだ!
「黙れ女! お前が何を思おうがもう俺は決めた! お前は今日から俺のものだ! だからその耳でよく聞け! 俺が今日からお前の主人だ!」
ヒットは貴族も平民にも石を投げました
ですが彼には――
さ、作者に!作者に石を投げないでください!(;´Д`)アセアセ




