第55話 戻る三人と森の話し合い
私の目の前に三人の子が立っている。小柄で茶色い髪を立ち上げた少年はラズ。自分の背より長い槍を軽々と扱うのよね。
奇妙な形で金髪を左右に纏めた少女はロリエ。見た目はとても幼い上人形を沢山持ちあるいているから特にそう見える。
盗賊について伝えてきた黒髪の彼はサツイ。サングラスをしていて口元もマフラーで覆っている。必要最低限のことしか喋らない寡黙な男よ。
この三人はうちでも特に腕利きの三人。別件で動いていたからノマデス襲撃には参加していなかったけど、今回は動いてもらおうかしら。
「バイオレンス。今度はこの三人にも働いてもらいましょう。きっとその方が面白いことになるし」
「え? なになに何か面白い依頼?」
「私、ビューティーお姉様の為なら張り切っちゃう!」
「――任務なら遂行あるのみ」
三者三様の反応を見せたわね。だから私はこの子達にノマデスの森でうちの連中が任務失敗したことを伝えた。
「あはは。なにそれ? ノマデスっていつまで経っても森に引きこもって逃げ回っている臆病者の集まりでしょう? それにやられるなんてね」
「お姉様の顔を潰すなんて死刑よ! 全員死刑!」
「……落ち着け。先の連中はもう死んでるのだろう。どちらにせよその連中は生かしておくと厄介だ」
ラズはおどけてるけど目が笑ってないわね。ロリエは楽しそうに笑いながら死刑と連呼しているわ。この子が実は三人の中では一番危ないのよね。
そしてサツイ――ジョブがアサシンの漢だけど、彼はちょっと特別。正直私でも油断できないわね。でも任務には忠実だしこのサツイが一人いるだけで先に向かわせた連中の数倍の働きはしてくれる筈。
「今回は俺も動くぞ。これ以上失敗は重ねられないからな」
「待って。行くのはいいけどちょっとは準備しないと」
「ふん。そんなもの必要ないと思うがな」
やれやれ。バイオレンスは考え方が荒っぽいのよね――
◇◆◇
「今度はこっちから打って出るべきよ」
エアとの交信が終わり俺たちはノマデスの暮らす集落に案内された。冒険者の襲撃で被害は大きいが族長の家はまだマシな方だったのでそこで今後について話し合ったわけだが――そこでマイリスが真剣な顔でグリーンに訴えた。
「――マイリス。前も言ったが我々は争いを好まない」
「何を言ってるのよ! 森をここまで焼かれて黙ってるなんてありえない! それに今は頼りになる仲間もいる。被害は大きかったけどやってきた冒険者は皆のおかげで倒せたしこれはチャンスよ!」
立ち上がり腕を強く振り上げながらマイリスが声を荒げる。しかしグリーンは戦うこと自体を忌避しているようだ。
「はは。嬢ちゃんはわかってるじゃねぇか。俺は嬢ちゃんの言ってるほうが正論だと思うぜ? こんなところに引きこもって争うのは良くない平和が一番だとぬるいこと言っててどうすんだ? 敵は待ってはくれないぜ?」
意外にもガンダルがマイリスを擁護した。攫った盗賊本人なのになんとも妙な話だが。
「黙れ! 元はと言えばお前らがマイリスを攫ったからこんなことになってるんだろうが!」
そんなガンダルにクローバが噛み付く。しかしガンダルはへっ、と吐き捨てるように口にし反論する。
「馬鹿いえ。今回のこととは関係ねぇだろうが。なんなら俺らが攫ったからこそ、この嬢ちゃんも死なずに済んだまでありえるぜ? お前らみたいな頭がお花畑の連中と一緒にいて無事に済むとおもわねぇしな」
「な、何だと貴様!」
「おっと。頭に手を出そうって言うなら俺がだまってないぜ」
クローバが立ち上がるのに合わせてバードも立ち上がりバチバチとにらみ合う。
「もう二人共そんなに熱くならないの。それにそっちの子は私のタイプ。その強気な言動もたまらないわ」
「な、な、なな、なんだお前は!」
「私はゲイズよ宜しくね」
ゲイズがパチンッとウィンクするとクローバが引きつった顔で座り込んだ。
なんだかんだで頭を冷やすことにはなったか。ゲイズはガンダルの仲間でいわゆるオネェ系の男だな。見た目は屈強な漢だが。
「……族長。今回に関しては私もマイリスと同じ意見です。ここまでされて黙っている必要はないのでは? それに目的がはっきりしている以上奴らはまたここにやってきます」
スピニッチが意見を言った。エアの話では奴らの狙いは封印を解く為にエアの宿る神木を燃やすことだ。
ならば当然また奴らはやってくるだろう。




