第54話 グレインベースに戻ってきた二人
会議も終わり私達はスコラルの転移魔法でグレインベースに戻ってきた。
私達には以前から与えられた使命があった。ビッグモー様の策略もあり元々町にいた町長は始末出来た。
しかしその娘は行方知れず。もっともノマデスの連中が匿っていることはわかっているわ。
その娘を捕まえて始末するのも任務の一つだけど、一番重要なのはノマデスの森に生える神木とやらを見つけて燃やすことね。
会議で出ている間、うちに所属している中でも燃やすのに特化した冒険者を中心に森に向かわせておいた。
ノマデスの長であるグリーンはかなりの手練と聞くけど、数で攻めればいくら長が強くてもどうしようもないと思う。
「一応確認の為に戻ったけど、もう冒険者達の手で森ごと燃やされてるかもね」
「つまらんな。会議がなければこの俺自ら神木ごとノマデスをたたっ斬ったというのに」
隣を歩く紅い鎧の男が言った。彼は私と同じセブンスの一人。私の倍はある長身の男だ。全身鎧でガチガチに包まれていて顔も紅いフルフェイスで隠されているわ。私も中身は一度も見たことがない。
そして注目は肩に乗せて持ち歩いている大剣。いや、本人曰く大大剣ね。身の丈の倍はある長大な剣だけどバイオレンスは軽々とそれを扱って見せる。
神木ごと切るというのも本人は本気だろうね。城壁ごと町を切ったなんて噂もあったぐらいだし。
「ま、もしかしたら生き残りもいるかもしれないし、その場合はあんたの出番もあるかもね」
「雑兵如きに俺の大大剣は似合わん」
ムスッとした口調で返事があった。ちょっと面倒なのよねこいつ。
とにかく転移魔法で町に戻ったし私達は冒険者ギルドに戻って報告を聞くことにした。
「チャオ、どう? 上手くいった?」
「あ、びゅ、ビューティー様にバイオレンス様。お揃いでお帰りなさいませ」
ビューティーとは私のことだ。別にバイオレンスと好き好んで並んで戻ってきたわけじゃないんだけど。でも、私達のいない間留守を任せていた男だけどどうも様子がおかしい気がする。
「ただいま。それで例の件はどうなったのかってこっちは聞いてるんだけど?」
「は、はい。それがノマデスの連中意外としぶとくて、途中までは上手くいっていたのですが予期せぬ邪魔も入り、それでその――」
代理を任せていた男がしどろもどろになって話す。
この態度にちょっとイラッとくるわね。
「おい。物事は簡潔に話せ。成功したのか失敗したのか?」
ドスの利いた声でバイオレンスが詰問した。代理の顔が青ざめている。これはもしかして……
「その、失敗――」
ズシャッッ! という轟音が響き渡り代理の男が一刀両断……という範疇も超えるぐらいに切り裂かれ肉片が飛び散った。
こいつ短気すぎない? 大体あんな剣をギルドで振ったらどうなるかわからないのかしら。
「あんたねぇ……天井も壁も一体誰が直すと思ってるのよ。あと関係ない冒険者ごと斬ってるんじゃないわよ」
「イラッと来てついな。だが残っていた連中も同罪だろう。失敗しておいて呑気にギルドで待機していたような連中だ」
「いや、普通に任務外の連中もいたでしょうに」
呆れて思わず肩を竦めたわ。本当乱暴な奴ね。
「はは、まぁ今ので死ぬような連中はそもそも使えないってことでしょうよ」
「そうそう。死んだって無問題だよお姉さま♪」
「……弱者は死んで当然」
「あら? あなた達戻ってたのね」
三人組が声を発した。今回の件とは別件で動いていた連中ね。目障りな盗賊団が私達の許可もなく好き勝手動いているようだから見つけて始末してこいって話しておいたんだけど。
「潜伏している村に向かったけどもういなかった。ごめんな」
ぺろっと下を出してこの中で一番若い彼が言った。バイオレンスから威圧が漏れる。
「貴様それで許されると思っているのか?」
「おっと殺すのは勘弁」
「そうそう。盗賊は見つけられなかったけど見せしめに村の連中は皆殺しにしておいたよ。お姉さま褒めて褒めて~」
奇妙な形で左右に纏められた髪を揺らしながらロリエが私にこびてきたわ。この子私に妙に懐いているのよね。
「……殺す前に情報は聞いておいた。どうやら盗賊はやってきた連中に倒されたようだ。だが頭も含めて生き残った連中はそいつらを案内してノマデスの森に向かったとのことだった」
「へぇ、それはちょっと興味深いわね」
どうやら今回失敗した件とちょっとは関係しているみたいね――




