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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部第三章 西部レフター領編

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第29話 ダンデへの罰

「ば、馬鹿な! なぜ俺のスキルが発動しない!」

「さて、なんでだろうな」


 ダンデは合点がいかない様子だが、その理由をいちいち教えるほど俺はお人好しじゃない。


 さて、一撃叩き込んだことでこいつとの距離が縮まった。皆もそれぞれの相手と戦ってくれている。


「グウゥウゥオオオオ!」

「親父、こんなに弱くなっちまってよ! こんな姿見てられないぜ! あたいが、しっかりこの矢で弔ってやる!」

「アイリーンの為にも、しっかり往生させなあかんな!」


 アイリーンとカラーナのコンビはアンデッドと化した元頭と上手く立ち回っている。アイリーンの父親でもあるが……だからこそあんな姿みたくはなかったのだろう。


「ヒット、露払いは我らに任せておけ!」

「にゃんにゃん、ものまねしか芸がない馬鹿はさっさと片付けるにゃん」

「……アンデッドは私たちが駆逐」

「うぉん! うぉん!」


 全くうちの女性陣は本当に頼りがいがある。アンデッドに怯みもせず立ち向かってくれるんだからな。


「馬鹿な、俺のアンデッドが……」

「残念だったな。所詮借り物しか頼れるものがない時点で底が見えたってところだ」

「な、なんだと? だったら! その借り物の力をたっぷり味あわせてやるよ! 【マウンテンプロテクション】!」


 ダンデの体が光りに包まれ、奴は得意満面で語りだす。


「これで山の加護は俺のものだ! 山の守りで俺に攻撃は通用しない!」

「そうかよ」


 俺は試しに双剣のスキルも交えてダンデに攻撃を仕掛ける。だが、幾ら切りつけようとダンデは涼しい顔だ。


「無駄だと言ってるんだよ! オラ!」

 

 大剣を掴み切りかかってきた。この部屋には色んな武器が置かれている。恐らくこいつがジョブにあった武器を選ぶためだろう。


 大剣を受け止めると、今度は上から落石。ステップキャンセルで即座に避けた。


「チッ、すばしっこいやつだ」

「今のもスキルか。本当、色々あるな」

「ふん、余裕ぶってられる状況か? 見ての通り俺にはお前の攻撃が通用しない。つまりテメェに勝ち目はないってことだ」

「そうだな。じゃあその効果をとりあえず消すか」

「は?」


 ダンデが呆けてるその隙にスキルキャンセルを掛けた。するとダンテがまとっていた光が消える。これで効果は切れたな。


 しかし、クールタイムはかなり取られた。これはもしかしてスペシャルスキルだったか? とにかく、これで少しの間相手を指定してのスキルキャンセルは使えない。


 でも、これだけのスキルならダンデだって再使用には時間が掛かるはずだ。


「お前、また俺のスキルを、まさか……」

「悪いが考えさせてる時間はないぜ」


 ダンデと剣を交える俺だが、全体的には俺のスキルの方が勝ってる。キャンセルスキルに武器スキル、それにセイバー系のスキルも組み合わせて、ダンデを追い詰めていったわけだが。


「なら、お前のジョブを借りるぜ! 【レンタルジョブ】!」

「なに?」

 

 ダンデが俺に触れ、叫んですぐに離れた。何かされたようだが、借りる?


「ふはは! これで、お前のジョブは一時的に俺のものだ! この意味がわかるか?」

「さぁな。それがどうかしたのか?」

「ははっ、つまりだ。俺はバンディットキングのジョブを保持したまま、お前のジョブも使えるようになったってわけだ! さて、ハイキャンセラー? はは! これはいい! これがあればお前のスキルを無効化出来る!」


 そういうことか。つまりこいつはアイリーンの親父さんのジョブを持ったまま、元からある自分のジョブのスキルで俺のキャンセラーを借りたってことか。


「さぁこれで形勢逆転だ!」

「そうか。ならやってみたらどうだ?」

「何?」

「だから、出来るもんならやってみろよ。俺のスキルの無効化」


 ダンデを煽る。今こいつはきっと浮かれているのだろう。何せ見たこともない(・・・・・・・)ジョブだ。しかしどんなスキルかは俺を見てなんとなく理解している、そんなとこだろう。


「だったらやってやる! 喰らえ! キャンセルだ!」

「ま、そんなとこだよな、【ジャイロスライサー】!」

「な、ガハァアァアア!?」

 

 双剣を正面に構え錐揉み回転しながらダンデに突っ込んだ。俺の双剣に切り刻まれたダンデが見事に宙に舞う。そこで更に俺は腕に装着しているファルコンとキャンセルを組み合わせ追い打ちをかけた。

 

 グレネードボルトの効果で派手に爆発。とはいえ、バンディットキングのスキルの効果なのか大分タフになってるようで死ぬまでには至ってない。


「そ、そんな、なぜ、スキルを封じられない……」

「それはお前なんかじゃ絶対に無理だ。判ったら寝とけ」


 死なない程度に切りつけ気絶させた。こいつにトドメをさすとしたら俺じゃないしな。


 それにしてもやはりこいつは俺のジョブを理解できなかったか。当然だ、この世界の人間ではそもそもキャンセルが何なのか理解出来ない。俺がスキルを使ったのを見て漠然とスキルを封じる力と判断したようだけど、それだと不十分だ。


 俺のスキルは相手がスキルを使用した後だからこそ意味があるものだし、基本的なキャンセルはキャンセルポイントが短い。


 それをちょっとスキルを借りただけのやつが使いこなせるわけがないのさ絶対にね。


「――親父、これで、終わりだ!」

「グォ、ウォオオ、ア、ア、アリガ、トウ……」

「え? 親父、親父ぃいいぃい!」


 アイリーンも終わったみたいだけど……最後の最後で自我が戻ったのだろうか……どちらにしても、切ない終わり方だ。


「親父はん、最後に礼を言っとったやないか……やっぱり、これで良かったんよ」

「……はい」


 カラーナがアイリーンの頭を撫でる。涙ぐむ彼女だけど、その目はしっかりと前を見据えていた。


 そして、アンジェやニャーコ、セイラとフェンリィもアンデッドになってしまっていた元土竜山賊団との決着が付いた。


 アンデッド化していたとはいえ、死に顔は安らかなものであった。


 遺体は、あとでちゃんと供養してやらないとな。






「くそ、こんな奴らにやられるなんてよぉ」


 砦を落とし、しばらくしてからダンデが目を覚ました。当然、ロープで身動き取れないようにしているわけで。


 それにしてもこの状況でも口の減らない奴だな。


「こんな奴らで悪かったな。それで、お前らの頭のブルートはどこにいるんだ?」

「はん、頭ならもうここにはいねぇ、ぐふぉ!」


 とぼけたことを言い出すから一発殴っておいた。


「ここにいないのはもう判ってるんだよ。どこにいるかって聞いてるんだ」

「は、そんなこと簡単に話すと思ったか?」

「うん、まぁそうだろうさ。判ったもういいや。あとはアイリーンに任せるよ」

「ならすぐにぶっ殺してやるよ!」

「ま、待て待て待て待て待て! お前らあっさり引きすぎだろ! もう少し聞きようがあるだろうが!」


 アイリーンが弓で狙いをつけ始めたら、急にわめき始めたな。根性の足りない男だ。


「それじゃあ話すのか?」

「……はなしたら見逃してくれるのか?」


 条件提示かよ。そんなに命が惜しいのかね。散々奪ってきたくせに。


「いいではありませんか。命ぐらい保証しても」

 

 すると、耳障りの良い声が俺の背中をなでた。振り返ると、そこにはブルーが立っていた。メリッサの姿もある。


「本当に命は保証するんだな?」

「ええ、正しい情報を教えてくれるなら」

「ちょ! ブルー! そんな約束勝手にしないでよ!」


 アイリーンが眉を怒らせて抗議する。やはり納得できないか。


「まあまあアイリーン。ここは情報を集めるためです。ところで、貴方が嘘を言わないように、一つだけ処置を施しますね」

「処置?」


 すると、ブルーが急に歌いだした。こんな時に歌? だけどそれはただの歌ではなく、突如ダンデがもがき苦しみ始める。


「い、いてぇよおぉおぉおおぉお! 体中が、体中がいてぇえええぇえ! てめぇ、な、なにしやがった!」

「はい。一時的に貴方の痛覚を引き上げました。痛いでしょ? それを解くには貴方は真実を話さなければいけません。それで、貴方の頭は今どこに?」

「す、スチールストーンだ! スチールストーンの町で今、鉱山長を任されている! そのかわりで俺はここの頭を任されたんだ! 本当だ嘘じゃねぇええ!」

「ふむ、確かにこの様子だと嘘ではなさそうですね」


 スチールストーンの町か……しかし、まさか盗賊から鉱山長とはな。


「も、もういいだろ? いてぇええんだよ! 正直に言ったんだ! 約束を守れよぉお!」

「はい。勿論です。ですから命はとりません」

「な、ならこの痛みをおぉおおお、はやくぅううぅう!」

「え? はは、ご冗談を。私はあくまで命は取らないといったまでで、痛みを取り除くとはいってませんよ?」

「は? な、い、いてええぇえ! ち、畜生てめぇ! 俺をハメやがったな畜生ぉおおぉおお!」

「……甘いのですよ。散々命を奪っておいて、この程度の情報で助かるなどと思うことがね」

「ブルー……」

 

 そういうことか。確かに直接命は奪ってないな。その分、苦しみは半端ないだろうが。


「さ、一旦この部屋は離れましょう。そして、これからのことを考えないと」

「あぁ、そうだな」


 こうして俺たちは、泣き叫び続けるダンデを放置したまま、その部屋を後にするのだった。

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