第28話 またもやアンデッド
お待たせいたしました連載再開です。
俺達の足元には多くの盗賊どもが転がっていた。村に来ていた連中も含めて正直手応えがなかったな。
盗賊は数こそ多いが実力は今の俺達に比べたら相当劣る。おまけに投石機による奇襲もあって恐慌状態にもあった。おかげで戦いの主導権は完全にこちらが握っている。
砦の中に侵入し、向かってくる盗賊どもを俺とアンジェで切り伏せ、セイラとフェンリィのコンビネーションで次々と打倒していった。
「えぇぇい! ここから先はいかせんぞ! 我ら黒獅子団が三連――」
「どけ!」
「邪魔だ!」
「ガウガウ!」
『ギャアァアアアアアア!』
「……障害にもならない」
なにげにセイラが辛辣だ。とは言え偉そうにいいながら弱かったのは確かだけど。
その後も砦内にいる盗賊どもを次々片付けていく。そして俺たちは遂に目的の相手を見つけた。
「お前がダンテか」
「……チッ」
今現在この砦を任されているという男、そしてアイリーンの仇のひとりでもある奴が通路上に立っていた。
馬面で茶髪の男だ。ガタイが良く褐色の肌もあってまさに二本立ちになった馬のようでもある。
「お前の手下はほぼ全員片付けたぞ、いい加減諦めるんだな」
愛剣のエッジタンゲを向けつつ威風堂々といった雰囲気を漂わせアンジェが言った。いやしかし、流石こういう時のアンジェは決まってるな。
「……見つけた、ダンテ――」
「あ、ぼ、ボスや! ボス堪忍や、預かっていた貨幣ほぼ全部溶かしてもうた」
「――は?」
「にゃんにゃん、それをこのタイミングで言えるのが凄いにゃん」
「あ、後にするといいにくくなるやろ!」
いや、すみません全く状況が掴めません。なんで砦攻めの最中で貨幣を使うんだよ。
そしてアイリーンはダンデに憎悪混じりの視線をぶつけている。温度差違いすぎだろ。
「カラーナ、お前と言うやつは……全く、折角取り返したというのに意味がないではないか!」
「こっちにも、い、いろいろあったんやって!」
「くっ、貴様ら俺を間に挟んで雑談とはなめてるのか!」
「うるさい! お前はもう終わりだよ。あいつがいないのは残念だけど、先ずお前からだダンテ!」
睥睨しながら怒りの声を上げたダンテだったが、それ以上に怒り心頭といった様子のアイリーンが奴に宣告した。
「馬鹿が――俺はまだ終わってない!」
するとダンテが背中側のドアを後ろ手で開き飛び込んでいった。往生際の悪いやつだな。俺たちは追いかけるがどうやら地下に向かったらしい。
「何か罠があるかも知れないから気をつけろよ」
「罠なんかあってもうちがすぐ見つけたる!」
「ガウガウ!」
カラーナとフェンリィが張り切っていた。確かに罠を見つけるのはどちらも得意だ。そして罠があったとしてもカラーナなら簡単に解除出来るだろう。
だが、これといった罠もなく、俺たちは地下の広間に辿り着いた。殺風景な空間だが、壁に的などが掛けられているあたり盗賊が訓練する為に使われていたのかもしれない。
だが、それより驚きだったのは地下にまだ兵力が隠されていたことであり。
「グゥウゥウ……」
「ア、ア、アァア、アアアァアア」
「ちょ、ボスこいつら……」
「あぁ、アンデッドだな」
全く、マントス領のダンジョンでも散々相手したが、またかよ。
「ようこそ餌ども! お前らはここでこの土竜山賊団の成れの果ての餌になるのさ。そしてアイリーン、お前、いい顔してるなぁおい」
ダンテの言葉に、アイリーンに目を向けるが。確かに目を見開き肩がわなわなと震えている。
もし、俺の聞き間違いじゃなければ、こいつは土竜盗賊団とそう言ってたな……。
「アイリーン、まさかあれは……」
「姐御、そのとおりです。あれは全員あいつらに殺された仲間。しかも、中にいるんです。あの中に、親父が……」
「なんやて!」
「……そういうことか、この外道が!」
アイリーンが指さした方にいたのは、アンデッドの中でも特に巨漢な男だった。やたらと斧刃の大きい戦斧を所持している。
あれがアイリーンの父親か……クロートという名前らしいが、娘と再会しても、ぐるるぅ、と唸るばかりで口からは涎がポタポタと滴り落ちている。
歯をむき出しにして殺意しか感じられない。尤もそれはここにいるアンデッドの全てがそうだが。
「全く、あの町の冒険者達といい、お前といい、人の神経を逆撫でるような奴らばかりだな」
「ふん、なんとでも言え。そこに立ってるクロートの馬鹿とは違うんだよ。道理もクソもあるかよ!」
「そこまで開き直ってくれるならこっちも遠慮がいらなくて助かるな」
「……全くだな。だが、死体を操るということはこいつはネクロマンサーなのか?」
「違う! こいつは本当のジョブのことは私たちに隠していたけど、妙なスキルを使ってたのは知ってる。それで親父のジョブになったんだ! だから死体を操れるわけがない」
他人のジョブになる? そんなことが出来るのか? もはや俺の知ってるゲームの常識はさっぱり通じないな。
「でも、そうなるとこの死体は?」
「にゃんにゃん、多分他の仲間にネクロマンサーがいたんだにゃん。それなら説明がつくにゃん」
なるほど……言われてみれば単純な話だな。
「……ニャーコの意見に賛成。だからこのアンデッドは術者とのつながりが甘い。これなら多分倒せる」
「グルルウウゥウウウ!」
セイラとフェンリィにはどうやら何か感じ取れるものがあったようだな。
もし、この場にネクロマンサーがいたなら。例え倒しても魔法で再びアンデッドとして蘇生させる可能性があった。
でもそれがないなら倒すことは確かに可能だ。尤もある程度のタフさは覚悟しないといけないけどな。
「は、倒せるか。だけど出来るのかお前らに? ましてやアイリーン、腐っててもそいつはお前の親父だぜ? 娘なら親孝行のつもりで、フレッシュな肉体を差し出してやれよ餌としてな!」
ゲラゲラと笑い出すダンテ。本当に清々しいぐらいの屑だな。
「……アイリーン、君が無理なら無理しなくていい。ただ、俺たちは……」
「判ってる……だけど、ならせめて、親父は、あたいの手でやらせて欲しい」
すっかり変わり果てた父親に目を向けながらアイリーンが言った。
「アイリーン……そか。よういったで! ならうちがあんたを全力でサポートしたる!」
「姐御……」
「ふむ、ならば我らは他のアンデッドを任された。元はアイリーンの仲間たちだ、苦しまずに済むように潔く決して見せよう」
「俺はあのダンテに向かう。アイリーンの言っていた力が気になるからな」
アイリーンは静かに頷いた。尤も、アンデッドの邪魔も入るだろうから簡単には行かないだろうけど。
「くっ、舐めるなよ! 今の俺のジョブはそこの女も言ったようにクロートの持っていた最高位のバンディットキングだ! おらロックレイン!」
ダンテが右手を掲げると、どこからともなく大量の岩石が俺たちに向けて降り注いできた。
チッ、いきなり範囲攻撃か。俺の頭よりも何倍も大きな岩が周囲に降り注ぐ。だけど皆流石だな、鮮やかな動きで全部避けている。
「おらおらもう一発行くぞ! ロックレイン!」
「キャンセル――」
「……は? なんだ? なぜ発動し、げふぉおおぉお!」
ば~か、俺に同じ技を連続で見せるなんてキャンセルさせろって言ってるようなものだろ――
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