表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部第三章 西部レフター領編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

277/322

第27話 ベット

 ジェントルシーフ? それは何にゃん? 確かカラーナのジョブは高位のバークラ-(闇盗賊)だったはずにゃん。


 もしかしていつの間にか上位になってたにゃん?


「最高位にランクアップしてたにゃん?」

「ちゃうちゃう。これはうちのセカンドジョブや。だから同じ高位やけど――」


 なんにゃん? カラーナが突然キラキラ光るコインを出したにゃん。あれは、金貨にゃん!


「ベット、コインショット!」


 カラーナがコインを指で弾いたにゃん。それが凄い勢いであのエビーラの頭に当たったにゃん。

 

 なるほどにゃん。どうやら指で弾いたコインを強化するスキルみたいにゃん。エビーラの頭から煙が出てるにゃん。流石カラーナ! やるにゃんね!


「ククッ、かか、カカカカッ! バーカ! そんなもの効くかよ! セディメントブレス!」


 にゃっ! また土砂を吐き出してきたにゃん! おかげでどんどん地面に堆積していくにゃん。


「カラーナ! 偉そうな事いって全然効いてないにゃん!」

「あれ? おっかしいわ~一番高い金貨をベットしたんやけど」

「こら! この野良猫! 姐御に文句を言うなんて百万年早いんだよ!」


 アイリーンがうざいにゃん。カラーナを慕ってるのはいいにゃん。でもカラーナのことになるとすぐ熱くなるにゃん。面倒にゃん。


「ふん、どうやら猫耳以外のおつむは相当弱そうだな。言っただろ? 俺へのダメージは全て肩代わりでこのヤマクイ達にいっている。その上ヤマクイは俺のスキルの効果で強化されている上、スペシャルスキルで俺はヤマクイ二体分のステータスが上乗せされている。どうやったってお前らに勝ち目はないぜ」

「それは甘いんちゃうか? 肩代わりしてるっちゅうことはお前一人に大量のダメージを与えれば、全部まとめて倒せるっちゅうことやろ?」

「大量のダメージで全部まとめて? はっはっは! これは更に笑わせてくれる! 確かにここにいるヤマクイで肩代わりしきれなかった場合は俺にもダメージは来るが、そんなものは絶対不可能だ! ただでさえ耐久力高いヤマクイが二体もいるのだからな!」


 にゃ? 今の話を聞いて、カラーナがしてやったりみたいな顔をしたような気がしたにゃん? どういうことにゃん?


「だったらこれを食らってみるんやな! コインベット十枚! コインショットバーストや!」


 今度はカラーナが指でコイン十枚を連射したにゃん。それは見事エビーラに命中したにゃん。確かに命中したけど――


「だから、無駄だと言ってるだろうが! いくぞお前ら! ストーンタワー!」


 にゃん! エビーラが地面を叩きつけた途端、ニャーコの下の地面が塔のように突き出てきたにゃん。


 さっきもやってたにゃんが、下からくるのはやっかいにゃん。


 その上、ヤマクイはブレスで土砂攻撃にゃん。


「ニャーコ! アイリーン、ちょい!」


 カラーナに呼ばれたにゃん。アイリーンと一緒に近づくにゃん。

 

 そして耳打ちされたけど、なるほどにゃん――






◇◆◇


 くそ、このエビーラが、妙に手こずってしまってるぜ。といっても戦力では圧倒的にこちらが有利。パワーも圧倒的で、攻撃が当たりさえすれば確実にチェックメイトといった状況だ。


 だけどこの連中、そろってすばしっこく、チョロチョロと動き回るから中々目標が定まらない。


 そんな奴らもさっき一度集まって何かを話していたようだ。そうは問屋がおろさねぇと、ヤマクイに攻撃させたら、すぐに離れやがった。めんどうくせぇ!


「お前たちはどうやら身軽さに自信があるようだが、周りを見て見るんだな。もうすぐそれも終わりだ」


 だが、俺だって何も考えなしに土砂を吐かせたり吐いたりしてんじゃない。そうやっていい感じに足場が悪くなってきた。


 土砂が積もったことで地面が瘤のように凸凹してきたからな。こうなってくればあいつらの足もいかせなく――


「マナバーストアロー!」


 うん? なんだ、アイリーンのやつが妙なスキル使ってきたな。


「土印の術・土竜にゃん! にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ----!」


 今度はあの俺好みの猫耳が地面を掘って潜りやがった。土竜かよ! いや、だから土竜なのか……。


「は、まさか! 逃げたのか!」

「勝手に決めつけるなにゃん! 火印の術・息吹にゃん」


 この猫耳、土の中から飛び出して背後から炎を吹き付けてきやがった。ちょこざいなやつだ。


「だが、きかーーん!」

「土竜にゃん!」


 振り向いて捕まえようとしたらまた土の中に逃げていった。生意気な猫耳だ。だが、そこがまたいい!


「あぁいう小生意気な女をしつけるのもいいなぁ」

「気持ち悪いこと言うなにゃん!」


 猫耳の残した穴から声が届いた。照れ屋さんめ。


「アースアロー!」

「な!」


 今度は、あのアイリーンが射った矢が地面を潜って下から俺を狙ってきやがった。


「だけどな、いちいちやることがセコいんだよストーンタワー!」

「当たらないわよ!」


 チッ、まだまだ元気か。


「ヤマクイ! 休まずにどんどん攻撃しろ!」


 俺の命令に合わせて、ヤマクイもブレスやストーンタワーで攻撃していく。だが、中々決定打につながらない。


「アースアロー! アースアロー! アースアロー! アースアロー! アースアロー! アースアロー!」


 しかもアイリーンはさっきから同じ魔法の矢ばっかり使ってきている。しかも狙いがメチャクチャだ。俺やヤマクイを狙ってきてる時もあれば見当違いの穴だけあけてる場合もある。あの猫耳も基本地面に潜りっぱなしだ。


 唯一残ってるのはカラーナという女だが――


「ベット! コインショット!」

「チッ!」


 まただ。こいつはさっきから俺に金貨ばかり当ててくる。大してダメージもないがうざったいことこの上ない。それにしても勿体なくないのか? 見たところ二万ゴルド金貨ばっかじゃねぇか。

 こいつら倒して猫耳確保してからでもそっちも回収しておくか。


 ふむ、しかしいい感じで足場が悪くなってきたな。これなら――


「ストーンタワー!」

「あ!?」


 よっし、カラーナに当たった! 動きにも陰りが見えてきたし、こっから一気に決めるぜ。


「ヤマクイ! セディメントブレスだ。一気に埋めてしまうぞ!」


 俺とヤマクイ二体による同時の土砂のブレス。これにカラーナもアイリーンも呑み込まれた。


 これでふたりはもう助かるまいよ。


「にゃにゃにゃん、乱れ投げの術にゃん!」


 やはり地面に潜られる猫耳は無事だったか。手裏剣の連打が俺を襲うが、これも痛くも痒くもない。


「本当、しぶといにゃんね」

「もう諦めろ。大体お前以外全員生き埋めになったんだぞ? 逆らうだけ無駄ってもんだ。大人しく俺のものになっておいたほうが少しはマシな人生が送れるってもんだぜ?」

「馬鹿はそっちにゃん。生き埋めとか寝言は寝てから言えにゃん。土印の術・土竜!」


 は? 何を言っている? わけのわからないのはそっちだろ。

 だが、また潜ったか。


「ヤマクイ、後方に待機してあの猫耳が逃げないか監視しろ!」


 俺が命じると素直にヤマクイの一体が後方に下がっていった。ヤマクイは耳がいい。離れた位置で待機しておけば地面を掘る振動であの猫耳が逃げないようにするなどたやすい。


「さぁ子猫ちゃん。土竜探しだ。いや土猫探しか。今俺が見つけ出して捕まえてあげるからね」


 こっからはずっと俺のターンだ。もう負けはないわけだし、後は猫耳を、と、横の土が盛り上がった。


「そこから出てくるか子猫ちゃん」

「ハズレや! ちゅうかお前さっきからキモいねん!」

「な!?」


 こいつ、カラーナ、馬鹿なあの土砂の中生きてたのか!?


「ベット二十枚分、コインショットバーストや!」

 

 こいつ、またコインで! なんなんだ! 大体なぜ生きてる!


「あたいのことも忘れてもらっては困るね! アクアアロー!」

「ブハッ!」

 

 くそ! アイリーンまで生きてやがった! しかも何かと思えば、矢が当たった途端大量の水飛沫が掛かった。だが、それだけだ! 


「くそ、なんなんだ、大体どうしてあいつら生きて、あ……」


 カラーナもアイリーンも俺に攻撃を加えたと思ったらすぐ消えてしまった。

 一体なにかと思って出てきた場所を見ると、深い穴が出来上がっていた。


 それで判った。なぜあの猫耳がずっと地面を掘っていたかアイリーンの矢が地面ばかり掘ってたか。


「あいつら、トンネルを掘ってやがったのかよ!」


 あのまま土砂が溜まれば、足場は悪くなる一方で機動力が削がれる。それを察し、地面を掘ることで、場所を地上から地下に変えやがったんだ。


 くそ、なんてやつらだ!


「アクアアロー! アクアアロー! アクアアロー! アクアアロー!アクアアロー! アクアアロー!アクアアロー! アクアアロー!アクアアロー! アクアアロー!」

「水印の術・指弾! 水印の術・指弾! 水印の術・指弾! 指弾! 指弾! 指弾! 指弾!」


 しかも今度はこいつら、水系の攻撃ばかりしてきやがる。こんなものダメージなんて全く無いってのに、何を考えてやがるんだ!


「ベット百枚、コインショットバーストや」

「ななな! て、てめぇ、また、何考えてやがる! 金貨ばかり弾いてきやがっ――」

「サンダーアロー!」

「ぬぉおおおお!」


 大量の電撃が俺全身に襲いかかる。そうか、こいつら、それでさっきから水を……そして雷の威力をあげようとしたのか。


「電撃の効果を水で上げたか」

「そのとおりさ。しかもマナバーストアローは魔法の矢の効果を増大するあたいのスペシャル。これでダメージが」

「甘いんだよ! ストーンタワー!」

「な!」

 

 石の塔がアイリーンに迫る。だが、また穴に逃げ込みやがった。だけどな。


「無駄だといってるだろうが! 例え水で電撃の威力をあげようが、肩代わりの効果でダメージなんてほとんどないんだよ!」


 そうだ。例えスペシャルスキルで威力をあげようとそんなもの痛くも痒くもない。


 だが、それでもあのバカがべらべら喋ってくれたおかげで狙いは読めた。後は水の範囲に足を踏み入れなきゃいいだけだ。


 しかも予想通り、猫耳もアイリーンも水を利用した攻撃ばかり狙ってきやがる。だが、無駄だ! もう俺はその手には乗らねぇ!


「ベット三百枚、コインショットバースト――」


 くそ、また!


「お前はいい加減にしやがれ! さっきから意味のないコイン投げばかりしやがって!」

「イラッとくるやろ?」

「くっ、そうかよ。だったらもう決めてやる! ヤマクイ戻ってこい!」

「なんや、下げたヤマクイを戻すんか? でもほんまえぇんか?」

「いいに決まってるだろ! はん、まさかこのまま逃げるつもりか? だけど手はもう読めた、逃がしやしねぇよ!」


 こうなったらヤマクイと俺で周囲を掘りまくってやるさ。それであいつらを引きずり出してやら。


「出来るもんならやってみるんやな」

  

 あのアマ! また穴に逃げ込みやがって! だったら先ずその辺りから掘りまくって、ずたずたに引き裂いてやるよ!


「ヤマクイ! その辺りを集中して掘るぞ!」


 俺が支持し、ヤマクイと俺とでカラーナが潜った辺りに集まる。絶対に見つけ出して、え?


「「グウウゥウウウウォオオオォオオオオオ」」

「な、なんだこれ! どうしてヤマクイと、俺の体が沈み込んでいく!」

「どうやら上手くいったようやな」

「流石姐御です! 惚れ惚れします!」

「にゃん、見事なものにゃん」


 三人の女が、地面から飛び出してきやがった。そして近くの木の枝に足場を移して沈んでいく俺たちを見下ろしている。


「な、何をしやがった!」

「――地盤沈下、知らへんのか?」


 地盤沈下、だと?


「何のためにあたいやこの猫耳が穴を掘りまくって水で攻め続けたと思ってた?」

「にゃん、そういうことにゃん」


 な、なんだと? だからあれは、穴は地下を移動するため、水は雷の威力を上げる為に、いや、そうじゃない! あれはブラフ。一見意味のなさそうな水の攻撃を繰り返してきたことを俺が怪しまないように、雷の威力を上げてると、思わせたのか!


「どうやら気がついたようやな。あんたが思い込んでくれたおかげでふたりの仕事はスムーズに済んだ。そして、最後に自ら最後の仕掛けを発動してくれたんやからうちとしては万々歳や」

「最後の仕掛けだと?」

「せや、何せこれを起こすのに一番重要なのは、地盤をゆるぅさせた上で一点に重みを集中させることやったからな」


 地盤を、そうか穴を掘りまくったのはそれも考えての事。さらに水分を含ませて地盤を緩めた。そのうえで重みを集中――ハッ! そうか、それで、巨体を誇るヤマクイが一箇所に集中するように敢えて俺を挑発して、それに俺はまんまと、くそ!


「だが、これがどうした! せいぜい俺たちの動きを少しの間封じ込めた程度! こんなものすぐに抜け出して!」

「いや、それがむしろ肝や。この時点でお前はもうチェックメイトの宣告をうけとるんやで?」

「なんだ、と? お前何を言ってやがる!」

「うちの新しいスペシャルや。ジャックポット――」


 するとカラーナが、一枚のコインを取り出して、何かスキルを発動させた。スペシャル? スペシャルスキルってことか。


 だが、ジャックポット……待てよ。あいつは確かさっきから俺にコインを当てる時、いちいちベットしていた。


 しかも、そのコイン、つまり金貨はどこにいった? 後から回収しようと思ったが、冷静に見回してみると、どこにも金貨が見当たら――


「はぁあああぁああ! ま、まさか! そうか、あの時、お前が言ってきた肩代わりの件は、まさかぁああああさあ!」

「どうやらやっときがついたようやね。せやけど、あんさんにはギャンブルの才能はなかったようやね。これで終わりや――このコインは絶対に外さない、いや、はずれないんやからな!」






◇◆◇


 ふぅ、それにしてもほんま、上手く言ってよかったで。何せこのジャックポット、チャンスは一回だけで、もし外れたらこれまでベットした分は全て呑まれて終わりや。


 せやけど、あたりさえすれば効果は絶大。それは、今天高く吹っ飛んでいったヤマクイ二体とエビーラを見れば一目瞭然や。


 全く肩代わりのスキルが完全に仇になったな。うちのベットはコインショットやバーストを使う時に、その価値がダメージに乗っかるスキルや。


 そのうえで、ジャックポットは当たりさえすればベットした分のダメージがまとめて相手に降りかかるスペシャルスキルや。


「流石姐御です! 凄い威力でしたね!」

「はは、何せ二万ゴルド金貨が千枚分やからな。ヤマクイ言うてもひとたまりもないってこっちゃ」


 その上肩代わりはその特性上、先にヤマクイが倒される。つまり、エビーラは結果的にヤマクイの加護を受けること無くダメージを受けたっちゅうことやね。


「にゃんにゃん! 流石カラーナにゃん。でも、それだけの大金なら流石に回収しないといけないにゃんね」

「…………」

「あれ? 姐御どうしたんですか? 折角勝利したのに借金取りに追い詰められたみたいな顔して

?」


 こ、こいつ中々鋭いねん。


「え、え~とな、このジェントルシーフのベットには一つ欠点があるねん」

「欠点にゃん?」

「そ、それがなぁ。一度ベットしたコインは完全に世界から消えてしまうんや。あはは、い、一応ボスから好きにしていいよ言われてたけど、許してくれるやろか?」

「「……………」」


 うぅ! 沈黙が痛いねん! ぼ、ボス! 堪忍や!

ただいま連載中。

『最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~』です。

下記のリンクから飛べますので宜しければどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ