第7話 冒険者ギルドの仕事?
更新再開です。
タイトルを少し代えました。
俺達はギルドの中に案内されたが、外観も立派だったが中もやはり立派だった。
セントラルアーツの冒険者ギルドなんかは、別にみすぼらしくもなかったけど、これに比べると随分落ちるようにも思える。
床なんて前面大理石だ。逆に落ち着かないぐらいだな。
中も広くて正面には余裕のあるカウンター。
それに冒険者たちが休んだり話し合ったり出来そうな空間は、ラウンジといった方がしっくり来るか。
並べられているテーブルや椅子も、雰囲気を損なわない洒落た物が配置されている。
今はその中で何人かの冒険者がまったりしているところなようだ。
「ようこそいらっしゃいました。当ギルドへは初めてですか?」
とにかく先ずはロビーのカウンターに向かう。ニコリと微笑んだ受付嬢もかなり美人だ。俺の時はニャーコだったが、これも正直レベルが違う。
いや、ニャーコが悪いわけじゃないんだが上品度が全く違う。
こっちは何か品が感じられるしな。制服は襟付きの白シャツ。その上から黒いベスト。襟付きといっても開襟タイプだから、ネクタイはなし。
だからか、きっちりしてるなかでもしっかりとというかなんというか、谷間はアピール出来ている。
うむ、目のやり場に困るな。おかげでメリッサとアンジェの視線が心なしか痛い。
し、しかたないよね。初対面の女性、しかもこんな格好されていたら男としてはどうしても気になるものだ。
「あ、あぁ。この町のギルドは初めてだな。だけど、冒険者としての登録は他の町で済んでいる。こっちのメリッサもそうだ。ただ、こっちのアンとエリンという少女は冒険者ではないけどな」
とりあえず問いかけには答えておく。アンジェは流石にそのままの名前を言うわけにもいかないからアンという事にしておいた。
アンジェもそれで問題ないといった顔を見せてるしな。
「承知いたしました。それでは冒険者証を拝見させて頂いても宜しいですか?」
俺とメリッサは言われたとおり冒険者証を提示。
「確認させて頂きます。現在のヒット様のランクはエキスパート、メリッサ様のランクはアマチュアでございますね」
うん? あれ? 俺は確かマネジャーだし、メリッサもランクは上がってなかったと思ったんだけどな。
「ご主人様、アクアマントスでの――」
あ! そうだった。思い出した、確かアクアマントスの問題を解決したってことで冒険者証を見せたっけな。
あの時、ランクが上がる事になるような事を言われていたか。うっかりしてたな。
「うん? なんだヒット、お前もエキスパートだったのかよ」
「あぁ、といっても俺も今知ったんだ。暫くランクの確認してなかったから自分でも気づいていなかった」
「なんだそりゃ、天然かよ。面白いやつだなお前は、まぁでもエキスパートなりたてってわけか。だけど安心しな、この町なら上手くやればスペシャリストぐらいまではすぐに上がれるぜ。なぁ? 俺ももうすぐだったよな?」
「はい、ベア様もお仕事を頑張って頂ければ、もうすぐですよ」
そういうことだ、と俺の肩をバンバンと叩いてくる。どうにも馴れ馴れしいが、ギルドまで案内してくれたしな。
メリッサやアンジェを見るときの視線がちょっと気になるが、俺だって受付嬢に目がいったしな。その辺りはやっぱ同じ男ってことか。
「ところで、そちらのお嬢様はエルフですか? エルフの子供を連れて旅しているというのも珍しいですね」
「あ、あぁ、知り合いの子供でね。暫く任されているんだ」
「……そうでしたか」
うん? 何か今エリンをジッと見ているとき、若干の間があったような……。
「ランクが上がっていたのは判ったけど、ここは仕事はどう受注すればいいんだ? みたところ依頼書が貼られている様子がないんだけど」
エリンへの視線は少し気になったが、ランクも判明したことだし、ぐるりと施設内を見回してみたんだが、どうにもそれっぽいものがない。
個別に受付嬢が仕事を与えてくれるのだろうか?
「当ギルドは、少々他とは異なりまして、依頼に関しては冒険者自ら営業に出向いていただいております」
俺が疑問に思っていると、カウンターの中から受付嬢が答えてくれた。
営業……そういえばセントラルアーツでもニャーコが、登録冒険者の営業も大歓迎と言っていたな。
「つまり、自分の仕事は自分で取って来いって事か……」
「随分と珍しいな。私は冒険者ではないが、そのような方法をとっているという話を聞いたのはここが初めてだぞ」
横に立ったアンジェが腕を組み、怪訝そうに述べた。
確かに、正直ゲーム内でもそんなギルドはなかった。とはいっても、既に大部分が俺のやっていたゲームと異なっているが。
「何か大変そうですね……」
「でも、楽しそうなの!」
エリンは好奇心旺盛だから、どんなものにも興味を持つな。
でも、俺としてもやはりわざわざ仕事を取ってくるというのも面倒だ。
でも、今はマジックバッグもないし路銀も必要だ……。
「おいおい、そんな不安そうな顔をするなって。いっただろ? ここは冒険者には優しい町だ。町の人間も協力的だから、営業といってもそうツラくないんだぜ? まぁ最初だから、とりあえずどんなものか知ってもらう為に、ヒットには俺がつくさ。問題ないよな?」
「はい、そうですね。それに――」
受付嬢はラウンジで歓談していた冒険者の二人を呼び、俺に紹介する。
「こちらはクンファーのヨン、もう一人はランナーのカールです。ヒットさんはこの三人についていって当ギルドのやり方を教えてもらって下さい」
三人もか。別にベアだけいればいい気もするんだけど。それに、ランナーって走るのが得意というジョブだけど、う~ん、別にジョブがなんであれおかしいってことはないんだろうけど、妙な違和感がある。
「ならば私達も一緒についていくとするか」
「いくなのいくなの!」
「そうですね、ご主人様と一緒に行けば私達も……」
「いえ、それはご遠慮ください」
うん? 受付嬢が横から口を挟んできたけど。
「ご遠慮って、三人とも俺の仲間なんだけど……」
「ですが、メリッサ様はランクがアマチュアでヒット様と異なります。それに、アン様とエリン様に関しては冒険者ではありません」
「ちょっとまってくれ、私は冒険者ではないから仕事を手伝ってはいけないというのか?」
受付嬢の物言いに、アンジェがムッとした様子で噛み付いた。
正直これまで仕事を手伝って貰うことに異を唱えられたことないわけだし、不機嫌になるのもわからないでもない。
「お仕事が決まってからであればそれは勿論構いません。ですが、今はまだ仕事を取りに、つまり営業に向かうわけです。直接依頼を取りに行く場に部外者を連れていって貰うわけにはいきません。メリッサ様に関してはランクが異なるので、営業方法もまた違ってきます。なので、別の方についてもらいます」
「む、むぅ、そういうことか……」
しかし、受付嬢の説明でアンジェも納得せざるを得なかったようだ。
確かにそう言われてみればという気はしないでもないが、メリッサも別とはな……。
エリンも残念そうにしていたが、とりあえず一旦諦めてはくれた。
「別にこれで今生の別れってわけでもなし。営業が無事終わればまたすぐにここで顔合わせ出来るさ。さ、そうと決まれたヒット、早速営業に向かうとしようぜ」
「え? あ、あぁ、そうだな」
ベアに言われるがまま、他のふたりも連れ立って俺達はギルドを後にした。
それにしても営業ね、このベアという男が営業するところなんてイマイチ想像出来ないが、一体どんなやり方なのやら……。




