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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部二章 王国西部の旅編

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幕間 副作用

「おいエキ! 貴様どういうつもりだ!」

 

 薬が出来たという話を聞いて私は早速エキを部屋に呼んだ。

 といっても、理由は別にエキを労う為ではない。城の兵士が伝えに来たのだが、どうやら薬を街の連中から与えているらしいのだ!


 ふざけるな! なぜ先に街の連中なのか。普通に考えれば私や、王国軍の兵士や騎士にこそ最優先にすべきだろ!


 何せ最近になって私も喉が痛くなり、非常に気怠い。つまり症状が出始めているのだ! それなのに先に街の下民共に薬を与えるなどあってはならんことだろう!


「はて? どういうつもりとは?」


 くっ! とぼけおって! 貴様は少しは出来ると思ったのだが、飛んだ馬脚をあらわしたものだな。


「薬に決まっておるだろう! なせ! 先に! 街の下民などに与える! それこそ最初に私を優先すべきだろう!」

「ああ、なるほどそういう事でしたか。いやそれにしても、ははっ、ご冗談が上手いですね閣下は」


 は? ご冗談だと?


「何を言っているのだ貴様は?」

「いやいや、皆まで言わずとも聡明な閣下であればお判り頂けるかとは思いますが、何せ今回あのエノキに作らせた薬は今巷で蔓延している病魔への特効薬――」

「判っておる! だからこそ私に!」

「ええ、だからこそ、初めて試す薬をおいそれと閣下に与えるわけにはいきません」

「……なん、だと?」


 私に与えるわけにはいかないだと? どういうことだ?


「閣下、ご聡明な貴方様であればご理解頂けるかと思われますが、今街の人間に与えてる薬はつまるところ、真に効果があるかどうかを試すための試作品です。当然ですがそのような代物をいきなり閣下や城の兵や騎士に与えるわけにはいきません、というのは私がわざわざ申し上げなくても判って頂けていたかと考えておりますが」


 むっ、なるほど。確かにそう言われてみれば、安全かどうかも判らぬ代物を与えられてもな。

 なるほど、つまり街の連中は良い実験体というわけか。


「ははっ、当然だ。勿論判っている。今のは少し貴様を試したのよ。そうかそうか。だが、結果が出たら直ぐにでも私のもとへ持ってこいよ? そしてその後は騎士と兵士だ」

「勿論承知しております。それでは、まだまだ検証の方が残っておりますので――」


 そしてエキは去っていったわけだがな――


 だが、結局その後、薬が完成したという知らせが届くまで二日も掛かっておるではないか!


「え~い! 何をぼやぼやしていたのだ! 私がこれほどまでゴホッ、苦しんでいるというのに!」


 咳が止まらぬし、身体もダルい。食欲も完全に落ちているし、水を飲んでも直ぐに便所に駆け込む羽目になってしまう。


 これほどまでに苦しい経験は生まれて初めてであるぞ!


「申し訳ありません閣下。何せ閣下に嚥下頂くお薬故、万が一があってはなりません。何せ閣下はこれよりこの国を背負って立つ御方。慎重に慎重を重ねて検証させて頂きました」


 むぅ、確かに私程の、才知ある男はそうは現れまいと自負しておるがな。

 

「それで、ゴホッ、薬の方は間違いないのだな?」

「はい、こちらにございます」


 跪き、台の上に乗せてソレを差し出してきた。見たところ親指の先程の大きさの丸薬のようだな。周りを何かで覆っているようでキラキラと見た目には悪くない。輝石のようですらある。


「これでこの病が治るのか?」

「はい、間違いなく」

「ふむ、全部で三つあるようだが?」

「はい、こちらを朝、昼、晩と一つずつ嚥下していただきます」

「……確か以前の話ではドワーフの作った何かが必要ということだったが、それはもういいのか?」

「あのドワーフに関しては作成までに必要な道具と馬車の提供がメインでしたので。万が一の為に、街の人間には馬車に乗せ、その上で薬を試させましたが、これは完成品。もうそこまでする必要はありません」

「そうか、ならば折角だ。お前が一つ飲んでみろ」

「え? 私がですか?」


 エキの奴目を丸めて聞いてきたが当然だ。いくら私でも毒味もせず試すほど愚かではない。


「どうした? 何か問題があるのか?」

「いえ、何も問題はありません。では、こちらに用意してあるお水の方を頂いても?」

「ああ、だがお前は目を瞑れ。そして口だけ開いておけ。どの薬を飲ませるかは私が決める」


 もし、毒が入っているとしたら、どれがそれか当然判っている可能性がある。


 ならばこれぐらいしないとな。


「構いませんよどうぞ」


 そして――エキは素直に従った。だから私は丸薬の内ふたつを口の中に放り込んでやった。三つの内二つだ。これを吐き出すようであれば、すぐにでも――


「おや? ふたつも、宜しいのですか?」

「……構わん。ふたつとも飲め」


 エキは、判りました、と返し、水を口に含んで飲み込んだ。念のため口の中も確認してみたが――確かに飲んだようだな。


「信用して頂けましたか?」

「……まあ、そうだな」


 ここまでして大丈夫なら問題ないだろ。まあ、ここまでやっておいて毒殺を考えるほど愚かではなかったというわけか。


 それであれば、執事は無理でもそうだな。片付け長ぐらいには任命していいかもしれんな。


 まあ、とにかくエキを信じて私もそれを一粒飲んだが、特に苦しくなるような事はなかった。


 いや、それどころか、明らかに体調が良くなった。気だるさもなくなり、食欲も徐々に回復していった。食べたり飲んだりしてすぐに便所に駆け込む事もなくなった。


 これは効果はばつぐんだな! 流石エルフだ。当然、騎士や兵士にも薬を回し、明らかに症状は回復に向かっていった。


 そう、問題ない、と、私もそう思っていたのだが――





「エキ! これはどういうことだ! 私の、私のコレがすっかり元気をなくしてしまったではない!」


 エキを呼び、私は怒鳴り散らした。そう! そうなのだ! 以前はあれほど元気でいくらでも抱けると思っていた私のこれがさっぱり元気が無いのだ!


「――閣下、私は四日程度は安静にして置くように伝えた筈ですが、昨晩街から一人娘を連れ出しましたね?」

「当然だ! こっちは暫く病のせいでろくにしてないのだ! 呼ぶに決まっているだろう! だが、いざ脱がそうとしても全く反応がないのだ!」

「……それで、すぐに追い返したというわけですか」

「ああ、すっかり興ざめでな。他の兵士や騎士に回しても良かったが、きくところによると城中の人間が同じ症状に陥っているというではないか!」

 

 私は激昂してエキに当たり散らした。全く、本来ならあの程度の女、私がやった後他の騎士や兵士におこぼれとしてくれてやるところだが、誰もする気がないというのではしかたないしな。


 腹いせにバラバラに切り刻んでも良い気がしたが、どうにもそんな気にもなれず、結局解放したのだ。


「ふぅ、閣下のお気持ちも判らなくもありませんが、私の指示も少しは聞いていただかないと困ります」

「えーーい! そんな事は聞いておらんわ! なぜ私のグングニルが全く輝かないのかそう聞いているのだぞ!」


 グングニルといえば神槍とも称される伝説の槍だが、私のコレは当然それほどまでに神々しいのだ。


「それは薬の副作用でございます。強力な薬でしたからね」

「何? き、貴様! 散々検証して薬を完成させたと言っていたではないか! それなのに副作用だと!」


 この男! この偉大なる私に嘘をついたのか! 謀ったのか! 許せぬ! ギロチンだ! 水攻めだ! 股裂きだ!


「落ち着いてください閣下。勿論検証はいたしましたが、流石に全く副作用の発生しない薬は無理でした。ですが、副作用といっても精々四日の間精力が減退する程度の話です。何より副作用がある内はまだ病魔が完全には駆逐されていない証明でもあります。薬は徐々に身体に馴染み、内側の病魔も完全に消え去れば、副作用も収まります。それが大体、最初に服用してから四日程度なのです。ですから、せめてその間は我慢の程を」

「……むぅ――」


 四日か、正直今の私にはそれでも長く思えるが、だが、仕方ない。しかしだ!


「判った、その四日、つまり明日一日程度までは待ってやる。しかしだ、その代わり明後日の夜には、あのエルフの娘を寝室に寄越すのだ! 判ったな!」

「残念ながら、それは承諾致しかねます」


 は? なんだ、と? 何を言っているのだこいつは! この私に向かって!


「貴様! あれも駄目、これも駄目とは! この私を誰と心得る!」

「ですが、これは閣下のためでもあります」


 何? 私の為だと?


「一体、どういうことだ?」

「はい。確かに副作用そのものは四日程度で落ち着くでしょう。ですが、問題なのはその直後にエルフを相手するという事です」

「それの何が問題だというのだ!」

「はい。閣下はご存知かもしれませんが、エルフの女というのは至極具合がいい。それは人の女など比べ物にならないほどにです」


 なんだそれは? 最高ではないか! ますますあのエルフの娘を抱きたくなったぞ!


「いま、閣下は益々エルフを抱きたくなったと思っているかもしれませんが」

「むぐぅ!」


 な、なぜわかったのだ?


「ですが、問題なのは閣下がその時にはまだ病み上がりの身だという事です。そのような状態でエルフの娘と行為に及びでもしたら、あまりに良すぎて昇天しかねません。これは比喩ではなく事実としてです。正直いえばほぼ間違いなく心臓が破裂することでしょう」

「な、なんだと……」


 そんなバカな、病み上がりだからといって、そんな事が、この私がありえるものか!


「貴様! この私を舐めるなよ! 私はそこまで軟弱では!」

「お気持ちはわかりますが、可能性がある以上、すぐにあのエルフを夜伽に添えるわけにはいきません。ですので、初日に関しては私の方で別の女を手配致します」

 

 うん? 何、別の女だと?


「エルフ以外のか?」

「はい。街の女から良さそうなのを選んでおきました。閣下は不満かもしれませんが、あれで若い娘が多い街ですし、格好を整えれば閣下が抱くに耐え得るだけの器量持ちもおります。エルフの前にいわゆる前哨戦として、その娘をどうぞ好きにお使い下さい。勿論、それで問題ないとわかれば、次の日の晩にはあのエルフの娘を――」


 ほぅ、なるほど。くくっ、こいつ判っておるではないか。そうかそうか。確かにいずれはこの国を背負って立つほどのこの私が、病み上がりに無理をして腹上死というのも格好がつかないしな。


 それに、あれほどのエルフであれば、次の日の楽しみとしておくのもいいであろう。


「ふむ、判った! それで手を打ってやろう。これも私の寛大さあっての事だぞ。有難く思え」

「はい、勿論でございます。その代わり、例の件もよろしくお願い致します」


 例の、ああ、執事の事か。全く現金なやつよ。だが、選んだ娘の質次第ではそろそろ本格的に考えてやってもいいかもな。

 別に執事の一人ぐらい、私の力でどうとでもなる。


「判った、勿論明日の女の質次第でもあるがな。それ次第でしっかりと考えてやるから、期待に答えろよ?」

「勿論でございますそれでは」


 そしてエキが退出していった。それにしても、いよいよ明日か! むぅ、楽しみで仕方ないぞ!





「お待たせいたしました。本日閣下のお相手をさせていただきます娘を用意させていただきました」

「ほう、この女かなるほどなるほど」


 約束通り、副作用がなくなるといった晩、エキは寝室に一人の若い娘を連れてきた。

 顔を見たが、はっきりいって――文句なしだ! 胸も大きく、何より若い。流石にあのエルフほど上等ではないが、それでも十分合格点だ。


 だが、私はエキを呼びつける。


「どうかされましたか?」

「どうかではない。実はな、どうもまだグングニルの輝きが戻っていないのだ! 本当に大丈夫なのか?」

「それはもう。副作用はとっくに消えている筈ですよ。ただ、久しぶりなので少々時間が掛かっているのかもしれません。本番になればきっと元気を取り戻す筈です」

「むぅ、それならいいのだが――」

「ご心配のようなのでここで一つ朗報を。実はあの娘、生娘でございます」


 エキの耳打ちに私は目を見張った。


「ほ、本当か?」

「はい、しかも敢えて何をされるか仔細は伝えておりません。それどころか、今日は病み上がりなので精々添い寝程度と言ってあります。勿論それは建前ですがね」


 ニヤリとエキが悪そうな笑みを浮かべおった。

 はは、こいつ判っておるではないか。私の趣味を理解しての趣向というわけか。

 

 だったら――存分に楽しんでみせようぞ。





「いや! お、おやめください!」

「うるさい黙れ! この雌豚が!」


 エキが部屋を退出し、娘がベッドまでやってきて、添い寝ですまそうなどとぬるい真似をしやがるから、ついつい頬を引っ叩いてベッドに押し倒してしまったわ。


 そのまま服を無理やり引き剥がす。ほうほう、やはりいい体をしておるわ。これで生娘だというのだからたまらない。


 私は羽織っていたローブを脱ぎ去り、その下の自慢のボディを見せつけてやった。

 だが、私のグングニルは未だその輝きを取り戻さぬ。困ったものだ。


「おい雌豚! 私のこのグングニルを早く元気にさせろ! 噛みやがったらぶん殴るからな!」


 そして髪を乱暴に掴み、グングニルを突きつけ命じた。

 雌豚が涙をボロボロ流している。むぅ、いつもならここまですれば私のグングニルも全快なのだがな……。


「――これが、グングニル、凄く、美味しそう――」


 ……うん? 美味しそうだと? な、なんだ? この女、急に雰囲気が変わったような。


 それに、なんだこの耳障りな、カチカチという音は――


「いぃいぃいい、いいいぃたあぁああああぁあだあああぁあきいいぃいいいいまあああぁあああすぅうううぅうぅうう――」


 …………は? え?

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