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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部二章 王国西部の旅編

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幕間 待ちわびた薬師

お待たせしてしまいましたが更新再開です。

 エキという男に街のことを任せてから三日が過ぎた。一応あの男は私の言いつけを守り、ちょくちょくと報告にはくるがあまり良い知らせは聞くことが出来ない。

 

 何よりやつが危惧していたように、兵士たちの中にも妙な症状を訴え始めている者が増えてきている。喉が痛いや頭が痛いはまだ良いが、やたらと嘔吐し、排泄物で尻を汚すものも現れる始末。


 どうやら、病が蔓延している事に関しては最早疑う余地がないようだ。

 正直、可能なら病気に罹った連中を一箇所に集めてそのまま焼き払いたいぐらいだが、秘密裏に事を進めている以上それも出来ない。


 精々、部屋を分けて鍵をしっかりと閉め出れないように隔離させておくぐらいだ。


 全くもって忌々しい。エキは一体いつになったらエルフの薬師を連れてくるのか。いくらなんでもそろそろセントラルアーツから到着してもおかしくないだろう。


「ザクス卿、エキが到着しましたが、如何いたしましょうか?」

「すぐに通せ! 全く、一言文句を言ってやらんと気が済まんわ!」

「は、はい。あ、それとですが、エキの他にふたりほどお目通りを願いたいと言ってきているのですがどういたしましょうか?」

「何? 他にもだと?」


 そこまで聞いて私はピンっと来た。遂にセントラルのエルフが到着したのかと。


「もしや、その相手はエルフではなかったか?」

「はあ、それがふたり共目深にフードを被っていたので顔までは……」


 ふむ、言われてみれば、あくまで秘密裏にここまで運ばせているからな。用心して直前まで顔は隠しているのかもしれんな。


 それにしてもふたりとはな。エルフというのはふたり来ているのだろうか?


「とにかく、そのふたりも構わぬから連れてこい」

「はっ! 承知いたしました」


 そして部下が部屋を出ていって間もなくして、エキがふたりを引き連れて部屋にやってきた。

 

 エキに関してはいつも通りの風貌だな。全く代わり映えのしないやつだ。下民はまともな着替えすらもっていないから困る。


 これでよく執事になりたいなどと言えたものだ。まあ、あの場ではああ言ったが、用がなくなれば秘密を知ってるこいつはお払い箱だがな。


 そして後ろのふたり――こっちもなんとも見窄らしい茶色いローブに身を包み、確かに目深までフードを被せている。


 全くこれでは顔も見えんな。両方共小柄なのは判るが、ただ、一人は妙に膨らみが、これは横へのって意味だがな、ある気がするぞ。


「ザクス閣下、お約束どおりエルフの娘をお連れいたしました」

「うむ、ご苦労」


 エルフの娘、か。そう聞くと唐突に興味がわいてきたな。何せエルフの女とくれば、種族の中では一際美しいと聞き及ぶ。奴隷としてもエルフの牝は人気が高いようだしな。


「それでどっちがエルフなのだ? そのフードをとって顔を見せてみよ」

「…………」


 なんだ? 沈黙か? 恥ずがしがってるのだとしたら中々ういやつよ。

 まぁ私のようなダンディーな男を目の前にしてはそういう気持ちになるのもわからんでもないがな。


 とは言え、私も顔ぐらい確認せねばな。


「おいエキ、そのエルフとやらは耳が聴こえないのか?」


 だから敢えてエキに不機嫌そうにいってやった。貴様が連れてきたものの無礼は貴様のせいだからな。


「これは失礼致しました。フードを取ってくれ、ザクス閣下は今この街を統治されている偉大な御方だ失礼があってはならない」


 ふむ、エキの奴判っておるではないか。なるほど、それなりに私を敬う気持ちがあるのなら、今後の態度次第では執事は無理だが、掃除夫として雇ってやるぐらいは考えてもいいかもな。


 勿論それで文句があるなら消すがな。


「……これは失礼いたしました」


 そして、ふたりのうち予想通り細い方がフードを取った。

 私の視界に飛び込んできたのは先ず肩まで伸びた美しい金髪。


 そして瞳もやはり宝飾品のような金色。どうやら眼鏡を掛けているようだが、それがまたそそる。


 正直言えば、美人と称すには少々幼さの残る顔立ちだがな。しかしそこがまたいいとも言える。これはこれで楽しみ方があるからな。


 うむ、そう考えるとなんだか股間の方がウズウズしてきたぞ。全く、これで邪魔者ふたりがいなければすぐにでも押し倒して一発味見するところだと言うのに。

 

 何せ突然蔓延し始めた病魔の事もあって、こっちはすっかりご無沙汰だからな。ましてやこの男を知らなそうなあどけなさがいい。


 こういう女を最初に無理やりというのがまた楽しいのだ。嫌がってる女が泣いて懇願するのを問答無用でな、あれは何度かやると女のほうが自暴自棄になってしまうことが多いから最初が肝心なのだ。


「おい、さっきからジロジロ見過ぎじゃねぇか?」


 私が上から下までじっくりと女を観察していると、突然そんな声が耳に届いた。


 なんだ? 今のはこの私に言ったのか? このイーストアーツを任されし私にか?


「おい、今のはそこのフードの男か? 答えろ!」


 思わず語気を強めてしまったが、いくら温厚な私でも今のは聞き捨てならないからな。


 正直声が男の時点で興味はないが、場合によっては牢屋にいれて斬首も考えねばならんだろう。


「これは申し訳ありません閣下。その、彼はなんというか種族柄、あまりこういった場での口の利き方を心得ておりませんで」


 エキが頭を下げてきたが、そんな事知った事か。だが、種族だと?


「おい! いい加減貴様もフードを取れ! 言葉遣いといい失礼だろ!」

「……フンッ!」


 な、なんなのだこいつは。とにかく、鼻を鳴らしながらフードを外したが、その姿に少々私は驚いた。


「……まさか、ドワーフとはな」


 そう、姿を晒したのはまさにあのドワーフだ。三度の飯より鉄を叩くのが好きという変態集団だ。


 ただ、ドワーフそのものが特別珍しいということはない。本来はここから随分と西にあるドワーフ鉄山脈を根城にしてるような野蛮な一族だが、たまに山を下りて人間社会に溶け込む連中もいたりする。


 ただ、エルフと一緒というのが信じられんのだ。ドワーフとエルフは昔から仲が悪くとても相容れない存在だというのは我々でさえよく知るところだ。


「なるほどな、ドワーフは人付き合いの苦手な失礼な野蛮人が多いと聞いたがまさに噂通りだな。しかし、なぜそのドワーフがエルフと一緒に行動している? エルフとドワーフの不仲ぶりは有名な話のはずだがな」

「確かにそうですが、今回はふたりとも私の知り合いの知り合いということで特別に協力していただく形となりました」


 知り合いの知り合いとはまた偉くまどろっこしいがな。しかし――


「協力というのがよく判らんな。病気をどうにかするだけならエルフの娘だけで十分であろう」

「残念ながらそう簡単な話でもございません。今蔓延している病魔はかなり厄介な性質らしく、ただ薬だけ投与していいという簡単なものでもないのです。その為、このドワーフの彼特製の密閉性の高い馬車でやってきてます。これはエルフの彼女がセントラルから出る時に見つからないようにと言う狙いもありましたが、同時に病魔に蝕まれた患者を一旦隔離して治療を施す為にも有効なのです」

「ならば馬車だけでいいだろう。そのドワーフはいらん。さっさと牢屋にいれておけ」

「……なんだと?」


 この私を睨んできおったぞこのドワーフ。全く野蛮な連中だ。これだけでも不敬罪で首を刎ねても許されるぐらいだろう。


「落ち着いてください閣下。彼には私の方から良く言い聞かせますのでどうか御慈悲を。それに、彼が作成した馬車はとても作りが複雑で彼でなければ維持と管理が出来ません。馬車と彼はセットでなければ意味が無いのです」

「私からもお願い申し上げます。確かにエルフとドワーフは決して仲は良くありませんが、私も薬師の端くれとして、病気で苦しむ人々を放ってはおけないのです。そして皆を助けるためにはドワーフの彼の協力は不可欠です」


 病気で苦しむ人々と来たか。随分とご立派な考えだが、私からしたらあんなゴミどもどうでもいいのだがな。


 正直可能なら全員一箇所に纏めて油でも掛けて焼き殺してやりたいぐらいなのだ。全く何の役にも立たない奴隷以下の蛆虫の分際で病にかかるなど軟弱もいいところだ。


 そのおかげで病は騎士や兵士にまで広がっているのだぞ。腹が立って仕方ない。


 とは言え、ここは話を合わせておいたほうがいいだろうな。


「うむ、素晴らしい考えであるな。私も現状の病に苦しむ民達を見て心苦しいと思っていたのだ。お主のような志ある聖母のごとくエルフが来てくれた事はきっと神のお導きなのだろう」

「そんな、もったいないお言葉です」


 恭しく頭を下げてみせる。それにしてもやはりドワーフとは違うな。この娘のほうが礼節を弁えておる。


「ふむ、ところでまだ名前を聞いていなかったな?」

「はい、私はエノキといいます」

「ほう、美しい名前ではないか」


 キノコみたいな名前だな。まあ、これから私に食べられるという意味ではぴったりとも言えるか。


「……俺はドンガだ」


 お前には聞いてないだろうが! なんだこいつは。そもそもなんでこいつ、さっきから私を睨んでるんだ? ドワーフというのは常にこうなのか?


「ふん、もういい判った。そっちのドワーフの非礼は特別に許してやろう」


 騒動が収まるまでの間だけだけどな。片がついたら難癖つけてギロチンに掛けてくれよう。


「さて、それじゃあエキとそこのドワーフはもういいぞ。エノキだけは、今後の事もあるしな。薬の事も知りたいからな、このまま残ってくれ」

「え? ですが?」

「何だ? 私の命令が聞けないのか?」

「そ、それは……」


 そう言ってエルフの女はエキに目配せした。くそ、面倒な女だ。とにかくこのふたりにはさっさと――


「閣下、少しよろしいですか?」


 うん? 何だエキの奴は改まって。

 

「私は忙しいのだがな」

「大切な事ですので、少しお耳を拝借」


 チッ、こっちは先程から股間が疼いて仕方がないというのに。


 とは言え、仕方ないから、早くしろよ、と伝えて近づいてきたエキに耳を添える。


『――閣下のお考えはよくわかっております。しかし今は状況が状況だけにどうか我慢の程を。ここで万が一彼女の機嫌を損ねてはこの問題は解決出来ません。それがどのような結果を生むか、聡明な閣下であればご理解頂けるかと……』


 む、むぅ、この男痛いところをついてくる。確かに言われてみればこの件でもっとも重要なのはこのエルフだ。機嫌を悪くしたところで無理やりやらせればいい気もするが、その結果適当な薬が出来たのでは本末転倒だ。何よりやりすぎてあのレイリアのように直ぐに壊れても困るしな。


『閣下、勿論それも薬が完成し病気の進行が収まるまでです。それが終わったら私の方で上手くやりますので――』


 ほう、なるほど。こいつ、判っておるではないか。また一つ私の評価を上げたぞ。そうだな、これが上手くいった暁には庭師の仕事ぐらい与えてやってもいいかもしれんな。


「……判った。確かに今は民の病気を治すことの方が先決であるな。私と話をしている場合でもないだろ。早速取り掛かってくれ」

「はい、ではすぐにでも――」


 そして結局エキに連れられてふたりも部屋を出ていった。

 それにしても、おかげでまた女を抱きそこねてしまったではないか。


 これでは蛇の生殺しだ! さっさと解決しろよエキよ!

いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。

さて、実は密かにこちらの作品がネット小説大賞(旧なろコン)の一次審査を通過しておりました。

そしてどうやら二次の発表は来週28日にされるようです。65作品程度が通過予定だそうですがどうなるかは――神のみぞ知るですね。

しかし一次を通過できたのもこの作品を読んで頂いている皆様のおかげです!改めて本当にありがとうございますm(_ _)m

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