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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部二章 王国西部の旅編

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第29話 反撃開始

「な、なんだこれは?」

「これでお前も終わりだ! 行くぞみんな!」


 全員が声を合わせ、そしてそれぞれがもつ遠距離攻撃用のスキルや魔法を発動させた。


 カラーナの投げナイフ、セイラのファイヤーボール、ニャーコの忍術、マサムネの斬撃、アンジェの風の刃、そして俺のファルコンでのボルト。


 それらが一斉にほぼ同時にアウナス本体を強襲、勿論かなり減ったとは言えアウナスの周りにはまだたくさんのアンデッドがいる。


 黙っていればそれを身代わりに無傷で済むのだろうけどな。


「キャンセル!」

「ぐがぁああぁああぁ!」


 だが、そうは問屋がおろさない。着弾した瞬間にキャンセルを掛けたことで、奴のスキルは発動せず、もろにダメージを受けることに、そして無様な悲鳴をあげながら後方へと吹っ飛んでいった。


 すると、それを追いかけようと胴体が動きを見せるが、そのすぐ後ろに密かに回り込んでいたフェンリィが縦横無尽に飛び回り、風を纏った体当たりで胴体にもダメージを与えていく。


 本体と距離が離れれば、胴体の方にもダメージは通る。案の定、フェンリィの連続攻撃に胴体側の動きが鈍くなる。


 しかし、胴体もそのまま黙ってやられ続けようとはおもわなかったのか、手に持った剣を振り上げた。


 だが、モーションが大きすぎる。あのまま振り下ろせば全方位に衝撃波が飛ぶが、キャンセルでそれを妨げる。


 アンジェとマサムネも動き、その身に剣戟を叩き込んでいった。


 すると、あれだけの巨体を誇る胴体が、ついに前のめりに倒れ動かなくなった。

 完全に力尽きたか――周囲のアンデッドもニャーコやセイラの攻撃で数を減らしていく。


 これでアウナスにも後がなくなったな。


「いよいよお前にも最後の時が来たな」


 全員で吹っ飛んだアウナスを追いかけるように移動。アウナスは空中に浮かんだまま悔しそうにこちらを俯瞰していた。


 すでに顔は所々が焼け焦げ、口も耳も切り裂かれ酷い有様だ。よく生きてるなこいつ。


「これで、これで勝ったと思うなよ……」

「いや、俺達の勝ちだ。悪いが逃がす気も許す気もないからな」


 色々思うところもあるが、こいつはさっさと片付けた方がいいだろう。今はメリッサのスペシャルスキルの効果が残っているからいいが、それも切れたら暫くは使えない。


 だから俺達は構えを取り、これで終わらせるべくそれぞれ攻撃態勢を取るが――


ダークバインド(闇の拘束)!」


 やつが叫んだ瞬間、俺達の足元から黒色の鎖が伸びてきた。そして俺達を絡め取ろうとする。

 なるほどこれが奴の奥の手か、だが、甘い!


「キャンセル!」


 あの胴体を倒している間に、すでに範囲キャンセルの待ち時間は解消されていた。

 だから、キャンセルで奴の放った魔法は全て強制中断されることになる、わけだが、その瞬間奴の口端が吊り上がる。

 

 何事かと思ったがその瞬間、俺の首に刃が迫る。


「な! こいつまだ動けたのか!」

「ヒット殿!」


 アンジェとマサムネの声が俺に届く、その様子から、あの胴体がまだ完全に力尽きてはいなかったであろうことを察した。


 そう、この魔法はあくまで囮、実際の目的はこれにあったのだろう。俺の首をはねる――そして奴は次の宿主を俺にしようと考えた。


 だが、あまい!


「ば、馬鹿な! ヘッドチョッパー(首刈り)は首にさえあたれば! 確実に刈れる筈だ! なのに――」


 驚愕の表情を見せるアウナス。なるほどな、真の奥の手はそれか。俺の首さえ刎ねれば後はどうとでもなると思ったのだろう。


 もしかしたら奴のスペシャルスキルは首から上のなくなった胴体を奪うとかそういったものかもしれない。


 だが、この可能性は奴の発言からある程度想像していた。俺を気に入ったと言っていたり、ビュートを予備と呼んでいたあたりからな。


 だけど――


「わるいが、それも俺の力で中断させてもらったよ。だから無駄だ」


 背後で胴体の倒れる音がした。恐らくマサムネかアンジェが今度こそトドメをさしてくれたのだろうな。


「ありえん! お前は私の魔法に対してその力を使った! スキルは同時に二つは発動できない! なのになんで!」


 そう、確かにあの胴体側のタイミングは完璧だった。俺はアウナスの魔法に対して範囲キャンセルを掛けたのと剣が首に触れたのはほぼ同時だったからな。


 確かに通常スキルならこのタイミングでは割り込みは出来ない。そう通常スキルならな。


「ああ、だから使ったのさ、今度は俺のスペシャルスキルをな」


 キャンセルアーマー、それを使用した。これなら例え通常スキルを発動した直後でも発動が可能。それがスペシャルスキルのルールだ。


「な!? スペシャルスキルだと、そ、そんな! そんな!」

「さて、これで今度こそお前も終わりだな。悪いがもう容赦はしないぜ」

「ま、待て! そうだ、私と組もう! 私の力とお前たちの力が――」


 だが、その言葉が最後まで紡がれることはなかった。俺のファルコンから放たれた爆破付与されたボルトが命中し、更にクイックキャンセルで何度も爆破を連鎖させた。


 そう、奴の本体が木っ端微塵に砕け散るほどに念入りに何度もな。


「終わってみれば無様な最後やったな」

「全くだ、命乞いとは見苦しい」

「……所詮三下魔族」

「あん! あん!」

「これで少しでも無念が晴れると良いのでござるが……」

「にゃん、あの屑ビュートがその分きっと地獄で償うにゃん」

「せめて、ここで亡くなられた皆様が苦しまずあの世に旅立てますように……」


 それぞれが思い思いの言葉を述べたことで、このダンジョンの攻略も終わりを告げた――と思っていたが。


「さて、とりあえず出るか」

「……なあボス、何か大事なこと忘れてへん?」

「大事な事? 何かあったか?」

「うむ、悪辣な馬鹿どもは全て倒したわけだしな」

「そうでござるな。あ、さてはカラーナ殿! まだお宝が残ってると思ってるでござるな!」

「流石抜け目ないにゃん」

「はは……でも、確かに私も何か引っかかるのですが――」


 全員がなんだろう? と首をひねる。うむ、確かにわからないな。


「……湖の問題残ってる」


『――あ!?』


 全員が声を揃えた。そうだ、元々は穢れた湖をなんとかするのが目的だったんだ! 


「……しっかりする」

「クゥ~ン……」


 セイラの声がなんか冷たい。フェンリィにまで呆れたような目を向けられてしまった。


 くっ! とは言え――その原因はわりとあっさり見つかった。


 案の定この空洞ないには隠された通路があり、それをカラーナが見つけてくれたからだ。


 そしてその先には魔法陣があり、乗るとどこかへと瞬時に移動した。


 転移魔法らしいな。本来かなり難しい魔法らしいのだけど、魔族にとっては造作もない仕掛けってことか。

 

 で、転移した先には――


「ゲボォオオオォォオ――」


 うん、なんだこれ? 

 いや、そこにいたのはなんとも形容し難い化物だ。魔物かこれ? 異様に中心が膨らんだ節の多い形状はアコーディオンを思わせる。蛇腹式って奴かな。


 で、その先には口だけの頭がつき、耳障りな鳴き声を上げながら穢れた水を吐き続けていた。


 見る限り溝に沿ってこのいかにも身体に悪そうな水が外に流出しているようだ。それが湖と合流してあんな惨状を生み出しているのだろう。


「きも! なんやこれ! きも!」

「う、うむ流石にこれはあまりに汚らわしいというかなんというか……」

「にゃん! それに臭いにゃん! 鼻が曲がりそうにゃん!」

「うむ、なんとも面妖な造形でござるな」

「……汚らしい」

「キャン! キャン!」


 た、確かにみんなの気持ちもわかるな。実際これ相当に臭い。俺のいた世界でいえば下水の匂いを更に数十倍濃くしたようなそんな匂いだ。


 これは特に鼻のよさそうなニャーコやフェンリィにはキツイみたいだな。フェンリィ鳴きながら鼻を地面でこすりまくってるし。


「ご、ご主人様、あれはエクスクレモンという名前の魔物ですね。え~と、とにかく穢れた水を吐き出して綺麗な水を汚染するためだけに存在する魔物なようで、それ以外に特にこれといったスキルはありません」

「そうなのか? だったらさっさと片付けると――」

「ただ、倒すと弾け飛んで汚水を周囲にばらまくそうです。それ自体に強力な毒性があるわけではないですが、衣服や身体につくと数日は強烈な悪臭が残るそうで……」

「……ボルトで片付けるか」

「しかも、遠距離からの攻撃が何故か全く身体に通りません。弓とか後魔法も遠くからの攻撃は駄目みたいです。その代わり接近しての攻撃に対してはかなり脆いようですが……」


 ……メリッサの解説がそこで終わった。

 うん、なにその汚れるの前提みたいな魔物? 


「……ふぅ、しゃあないな。ボス、ここはうちがやらせてもらうわ。汚れ仕事は得意やし」


 いや、確かに汚れ仕事だけど、本当そのまんまの意味で。


「ま、待てカラーナ、だったら私がいこう」

「何いうてんねん。こんなこと仮にもお姫様という立場のあんたにやらせるわけにはいかんやろ」

「いえ! ここは私は! 戦闘面ではあまりお役に立てない以上、ここはやはり」

「にゃん、ニャーコは絶対嫌にゃん! あんな匂いが染み付くなんて耐えられないにゃん!」

「……フェンリィがいやいやしてる」

「クゥ~ン……」


 ニャーコはいっそ清々しいな。セイラは行こうと思ったらしいがフェンリィが裾を噛んでやめてーと懇願している様子。


 世話しているセイラに匂いが染み付いたら結果的にフェンリィも困った事になるしな。


 他の三人も、とにかく女の子にこんな目にあわせるわけにはいかないよなぁ……


「おなごにこのような真似はさせられないでござる、ここは拙者が」

「いや、俺が行くよ」

「……いや、しかしヒット殿」

「大丈夫だって、皆もわかるだろ? そう、俺の能力があればそれぐらいなんとかなる!」

 

 全員が、おぉ~という顔を見せた。そう、キャンセルだ! こういうときこそまさにこれ。


 キャンセルさえあれば例え自爆したところで――

二人目の魔族との対決も遂に決着!


新連載はじめました!タイトルは『最弱ギルドの最強改革』です。最弱最底辺の冒険者ギルドに所属してしまった最強系主人公が最強のギルドへと建て直すため奔走するそんな物語です。下記のリンクから飛べます!どうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m

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