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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部二章 王国西部の旅編

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第28話 お前も少しは役に立て

 アウナスの本体を倒すには先ずどうにか射線をこじ開ける必要がある。

 

 あいつも流石に警戒してか、胴体と大量のアンデッドを壁にして完全に射線を切ってしまったからな。


 だが、そうやって守りに徹してくれてるならそれはそれでこっちには方法がある。


「キャンセル!」


 アンデッドの身体は比較的柔らかい。ファルコンから発射されるボルトで十分に貫通出来るほどにな。


 そして貫通させてしまえば爆発は連鎖する。あとはタイミングを見計らえば、弾を失うことなく再装填出来る。


 これの利点はボルトがなくならないということだけではなく、手動で弾込めするよりも早く済むことだ。


「ウォォオォオォオオォオン!」


 更にフェンリィの活躍も目覚ましい。成長したおかげで風をまとまったまま突撃できるようになったし、動きの素早さもあってヒット&ウェイの攻撃にも長ける。


 そこへセイラのファイヤーボールも地味に効いている。アンデッドは炎に弱いからな。


「胴体の方は拙者におまかせを」

「私もいくぞ!」


 アンジェとマサムネが前に出ようとする。すると胴体の方も数歩前に出てふたりに向かえ出てきた。


 後方では瞬時にアンデッドが壁を作る。相変わらず本体は顔を見せようとしないな。


 だが、胴体からそこまで離れているとも思えない。間合いをちゃんと保っていないと胴体はダメージを受けてしまうからな。


 だが、そんなことを考えているとふいに上空にあの黒い球がふたつと、クラッカー型の物体がぎゅんぎゅんと飛び回って強襲しようとしてくる。


 この状態であれは厄介以外の何物でもないな。だから俺は魔法ふたつがある程度固まってる場所を目指して範囲キャンセルをかける。


 最初につかった分のリロードはもう終わった。だけどこれでまたリスクとして一〇分が課せられる。


 だが、逆に言えば最初にキャンセルを掛けた アビスハンドルーズ(深淵に引き込む闇の手)の方がヤバい代物だってことか?


 そんな風に考えていると――


「アン! アンアン! ウ~アンアン!」


 突如フェンリィが狂ったように吠え始めた。なんだ何があったんだ?


「……ご主人様、フェンリィが危険を訴えている。いますぐあのふたりにも退くように言う」


 え? フェンリィが何かを感じ取ったのか? とにかく――


「アンジェ! マサムネ! 一旦下がれ! 何かが来るぞ!」


 今はフェンリィを信じてそう訴える。アンジェとマサムネはコクリと頷き、胴体の振るう一閃を避けつつこちらまで戻ってきた。


 その瞬間――固まっていたアンデッド達が次々と何かに引きずり込まれていく。

 その身に絡まっているのは腕、あの黒い腕だ。


「にゃにゃ! なんにゃ? 何が起きてるにゃ!?」

「あれは、前に俺が止めた魔法だ! 気をつけろ、あの腕につかまって引き込まれたら多分戻ってこれない!」


 あの野郎、アンデッドを壁にしてたのは自分の身を守るためだけじゃなく、あの魔法を完成させる為でもあったんだな。

 

 俺が確認できる状態だとキャンセルされると踏んだんだろう。更に先に範囲キャンセルを掛けさせて途中で止められるのを防いだのか。


 範囲キャンセルは通常のキャンセルと違って

スキルや魔法の種類にかかわらず使用できない時間が出来てしまう。


 更に通常の魔法キャンセルをかけようにも、あの魔法は腕の一本一本が魔法として判定されているから範囲キャンセルでないといっぺんには消せない。


「あははっ、さあ、もうお前でもこれを全て消すことは不可能だろう? これまでの行動でそれは理解した! 逃げられるものなら逃げてみろ!」

「ボス! 腕がこっちに向かってくるで!」

「見境のない魔法だな! アンデッドにも容赦がない」

「むぅ、だがあの胴体には反応を示さないでござるな」


 確かに、どうやら術者には流石に襲いかかろうとしないようだ。だから胴体も術者の一部と捉えられているのだろう。


 だけどアンデッドには容赦ない。どんどん掴まえてそのまま奥に見える大きな黒い魔法陣の中に引きずり込んでいく。


「キャン!?」

「……フェンリィ!」

「待てセイラ、大丈夫だ! キャンセル!」


 俺たちに危険を知らせたフェンリィは前衛で様子を見ていてくれていた。

 アンジェやマサムネが下がれるように囮役をかってくれていたんだ。

 

 そしてマサムネとアンジェが後ろに下がったのを認めフェンリィも回避行動に移ったが、腕の一本が伸長しフェンリィを捕まえてしまった。


 だけど、一本ならまだキャンセルが効く! 俺のキャンセルで一本が消失、フェンリィはダッシュでこっちに戻ってくる。


 だけど、参ったな。動線上のアンデッドはあらかた引きずり込まれ、完全に俺たちがターゲットにされている。


 腕の本数も多い、避けきれるかこれ?


「う、うぅ、痛い、いだいよぉぉおぉぉおお! アウナス様~~、どうか、どうかお助けを、この痛みを、とってくださぁああぁああい!」


 すると、すっかり失念していたが、あのビュートがいつの間にか移動していたみたいで俺達の近くまでやってきていた。


 マサムネが何をしたかわからないが、相当の苦痛をともなってるらしいな。口から泡を出して目も虚ろだ。あの迫ってきている腕も見えてないのだろう。


 だが――


「ビュートーーーー! お前も人様の役に立つときだぞ!」

「ひっ、な、なんだ? いだい、ふれるな! 僕に触れるな! いだいいだいいだい! ひぃいぃやめ――」


 こいつが何を言おうが知った事か。俺はステップキャンセルでビュートの横に移動し、そしてそのまま再度ステップキャンセルで迫る大量の腕の前に移動。


 そこからこいつを置き去りにしてキャンセルで皆の前に戻った。


「え? なにこ、ひっ、ひぃぃぃいぃぃぃいい! アウナス様ーーーーーー!」


 絶叫を残し、大量の腕がビュートを掴み、そのままズルズルと奴を引き込んでいく。


 一応ビュートも抵抗を試みて地面を必死に引っ掻くが無駄な足掻きだ。


「ど、どうして僕がこんな目に! 嫌だ、こんな死にかたーーーー! もっと女を抱きたかったのに! もっと底辺の蟻のもがき苦しむ姿が見たかったのに! なんで、なんで僕がぁああぁああぁああ!」


 ……なんか、最後の最後まで安定のクズだったな。今わの際に残す言葉がそれかよ。これほど同情に値しないやつも珍しい、放り込んだの俺だけど。


「あ! 魔法陣が消えていきます!」

「ほんまや、流石ボスやな、これで一安心やで!」

「うむ、あの魔法は連続使用は無理なようだしな」

「にゃん! ニャーコを辱めた報いにゃん!」

「うむ、クズに相応しい最後でござったな」

「……地獄で一生苦しめ」

「アンッ! アンッ!」


 全員容赦ないな。まあ、それも当然か、あんな男だしな。

 でもこれで、少しは死んでいった冒険者達の無念も晴らせればいいけどな。


 まあ最も、その張本人がまだ残っているが。


「あの馬鹿! 最後の最後で邪魔を! 予備(・・)のために残しておいたのが失敗だったか!」


 少し気になるワードが耳に入ったがあいつはここで完全に蹴りがつくと思っていたのだろう。おかげでアンデッドも消えて本体が顕になった。


「今だメリッサ!」

「はいご主人様! ターゲットロック!」


 俺がメリッサに向けて声を上げると、事前に予定していた通り、彼女のスペシャルスキルが発動。

 

 これにより、効果時間内は全ての遠距離攻撃がターゲットされた相手を追尾するのさ――

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