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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第23話 ブローカーのシャドウ

「凄かったぞ兄ちゃ~~ん!」

「久しぶりにいいもんみせてもらったぜ!」

「あぁ損はしたがこれなら悔いはねぇぜ」

「あの美人でおっぱいのデケェ奴隷姉ちゃんも頑張ってたしな~ファンになっちまいそうだ~~」


 メリッサも傍まで戻ってきてとりあえず怪我がないことを確認し安堵もした俺だが、しかし周囲の盛り上がりにちょっと引いている。


 てか俺の殺した死体三体がその辺に転がってるんだけどな。

 全然動じてないあたり死体をみるのなんてなんて日常茶飯事なんだろうなここでは。

 

 とは言え正直目立ち過ぎだな。俺もメリッサも別にスラムの人間じゃないし、あんまりここで顔を知られたくもないんだが……まぁ今更って気もするけど。でもまぁ――


「メリッサ、馬車も取り返したしさっさと出よう。こんなところあんまり長居するところじゃない」


「は、はいご主人様! ではすぐにでも――」


「いや~素晴らしいブラボーブラボー」


 とりあえず戻ろうとメリッサの手を引き始めたその時、やけに耳に響く拍手の音と、俺達を引き止めるような感嘆の声が背中に届いた。


 正直それは無視してもよかったのだが、その拍手と声で周囲の喧騒が一気に収まっていくのがわかり、少し気になってしまった。


 俺はメリッサの手を握りしめたまま、声の主を振り返る。

 そこにいたのは黒いコートを身に付け、コートと同色のつば付きハットを頭に乗せた一人の男。

 チラリと覗く髪は墨汁を被せたような黒で肌の色以外は全体的に黒に染まる出で立ち。

 中肉中背といった言葉がぴったり嵌るタイプで力で黙らせるようなタイプには見えない。

 

 顔は細めで色白、縁無しの丸眼鏡を鼻で掛け、瞳は閉じてるのか開いているのかが解らないぐらい細い。糸目という奴か。


 しかし……無視してさっさといけばいいんだろうがどうも気になるな。


「別に褒められるような事は何もしていないさ」


「いやいやそんな事はない。君たちのおかげで私も随分と稼がせてもらった」


 稼ぐ? ……あぁそっか。


「賭けの事か? だけどそんなのはそっちで勝手に始めたことだ。俺には関係がない」


「関係がない、か。ここの人間なら、だったら分け前よこせぐらいは言ってきそうだけどね。何せ本当に大勝ちだ、私以外に君たちに賭けるのがいなかったのだから」


 一人だけ? いやそりゃそうか。相手は三人、こっちは一人と女のメリッサだ。

 だけど一人勝ちとはな。この男がいなきゃ誰も俺たちには賭けなかったんだろうから賭けも成立しなかっただろうが、負けたらどうする気だったんだ?


「ところでいいのかな? ハイエナ共が早速屍肉に群がっているが?」


 ハイエナ? と俺は頭で反芻しつつ、さっきの三人の死体の方へ目を向ける。

 するとなるほど、確かにハイエナの如くスラムの連中が死体から身包みを剥がしだしている。


 ……まぁだからって、ふざけるな! とか思うわけでもないけどな。


「別に構わないさ。こんな連中の持ってるものなんて高が知れてる。ただ――」


 そう、どっちにしろ俺もこいつらの持ち物なんか気にせず、メリッサとすぐにでも出るつもりだった。

 けれどなぁだからこそそれは別だ!


 俺は馬車に近づく連中めがけてナイフを投げつける。

 すると足下に突き刺さる刃に、ヒィッ! と情けない声をあげて馬車の傍まで来ていた一人が尻もちをついた。


「その馬車は俺達のだ。手を、出すな!」


 ありったけの殺気を込めて睨みつける。すると流石にやばいと思ったのか、馬車に近づこうとしたハイエナは一目散に逃げていった。


「なるほどなるほど。つまりこの連中は貴方達から馬車を奪いここまでやってきたわけか」


 顔を糸目の男に向けなおし、改めて様子を見る。

 顎に指を添え推理するかのようなセリフ。

 だが別に凄いとは思わない。この状況をみれば想像するに容易いだろうしな。


「す、凄いですご主人様。どうして判ったのでしょう?」

「……」


 耳元で囁いてくるメリッサ。その天然ぶりもまた可愛いと俺は思うぞ。

 

「まぁあの馬車が俺たちのものなのは事実だがな。だから用が済んだらもうさっさと出たいんだ。他に何もないなら俺達はいくぞ」


 とにかく気になる奴ではあるが、こんなところで時間も取っていられない。

 今度こそ出ようと踵を返そうとするが。


「まぁまぁそう邪険にしないで下さいよ。本来買う予定だった馬車の持ち主に折角私も興味をもったところなのだし」


 背中に投げられた思いがけない言葉に俺は脚を止める。

 本来買う予定だった?


「おいまさか。あんたが例のブローカーという?」


 振り向きざまに問いかける。妙な雰囲気を纏った男だとは思ってたがな。


「はい。このスラムで盗品専門に買い付けを行っているシャドウと申します。以後お見知り置きを」


 そういって右手で弧を描くようにし胸の前に持って行きながら、優雅な感じに頭を下げてきた。

 まぁ敬うというより戯けてるってとこだろうがな。


 顔を上げて今度はやたらニコニコしてるし、流石ブローカーとあって胡散臭いことこの上ないが。


「なるほどね。それで俺達に声を掛けたのは折角の商売を邪魔されて、その報復とかかい?」


「とんでもない」


 シャドウは右手を顔の間でパタパタと左右に振り、否を示してきた。


「相手の力量も図らずに盗みに走り、その結果惨めに死んだ馬鹿の事なんかはどうでもいいのですよ。それにこの連中は、裏取引だというのに忍ぶという事も忘れ、堂々と取引を待つような愚か者でもあります。寧ろ殺してくれて感謝したいぐらいですよ」


 ……まぁ確かに、さっきもこいつら以外の取引待ちの連中は大体影に潜んでたしな。声は聴こえてはいたけど、姿までは俺も確認できなかったぐらいだし。


 てかこいつらも、仲間にシーフがいたくせにその事に気が付かなかったのかね。

 全く改めておマヌケな連中だ。


「しかし、だとしたら俺達に声を掛けたのはなんでだ?」

 

「それは先に行ったように興味を持ったからですよ。それに儲けさせて頂いたお礼もいいたかったですし」


「興味ねぇ……てかあんたこんなところで油売っていていいのかよ? 取引始まる時間だろ?」


「ご心配は無用です。基本的には私の従者を務めてるものに任せてますからね。私は後で様子見に顔を出すぐらいですよ」


 なるほどな。全て一人でやってるというわけでもないんだな。


「そうか。しかし興味を持たれてもな。俺もこのメリッサも別にスラムの人間じゃないし、今回みたいな事がなきゃこんなとこまで脚を運ばないぜ?」


「それはどうでしょう? 見たところ貴方は冒険者だ。でしたら何かしら入用になる事もあるでしょう。そんな時は私どもをご利用いただけると便利ですよ。尤も価値の無いものは買い取りしかねますが、冒険の途中で手に入れたお宝などがあれば是非ご利用頂ければと思います」


 ……つまり宣伝という事か? まぁ確かに冒険者をやっていれば、このシャドウのいうような物を手に入れることもあるかもしれないが、だとしてもわざわざここで売る必要はないだろ。

 盗賊ギルドよりは高いといっても、相場よりは買取金額が安いんだからな。


「それともう一つ。私はこのスラムの影で小さいながらも自分の店を構えてましてね」

 

 店? と俺は問い返す。


「はい。本来買い取った品は即、他に流してしまうのですが、特に気に入ったものは自分の店で展示させて頂いております。宜しければ是非ご活用ください」

 

 そういってシャドウは店の場所を教えてくれた。ただ他言はしないでくれとも言われたな。

 気に入った者のみに教えてるそうだ。

 でないとそこに盗品を売りに来る馬鹿もでる可能性があるから秘密にしておいて貰ってるらしい。


「それではそろそろ私も様子を見に行くとしますか。脚を止めて申し訳ありませんでしたね。では私どものご利用お待ちしております」


 シャドウはそう言い残して俺達の前から離れていった。

 しかし戦いを好むような体つきには見えないが、足捌きはかなりのものだな。

 滑るような移動で去っていってしまった。


「何か変わったお方でしたね――」

 

 メリッサが不思議なものを見たような目でそう呟いたので、俺もそうだなと返し顎に指を添える。


 ふむ、しかし売るというのは別として店というのは少し気になるかな。変わったものがおいてあるかもしれないし、何よりゲームにはなかった物だ。


 まぁでも、とりあえずここはもう離れるとするか。ちょっと時間を食い過ぎてしまったしな。


「それじゃあ行くかメリッサ」


 彼女に顔を向け俺がそういうと、微笑を浮かべメリッサが、

「はいご主人様」

と返事をした。


 そのまま馬車に乗り込みスラムを後にする。途中メリッサの戦いぶりを褒めてやったら瞳をウルウルさせて喜んでいた。

 実際中々のものだったからな。もしかしたら戦闘系のジョブもいける可能性はあるが、でもやはりその選択はないな。 

 寧ろ今回のでより補助的なジョブの方がいいと認識した。

 特に鑑定は熟練すれば相手の弱点を掴めたりも出来るしな。


 とは言え何をするにも、先ずはメリッサを奴隷として迎え入れなければどうしようもないしな。

 とりあえず朝採取したナンコウ草が実際はどのぐらいになるかってとこだが。


 ただその前に昨日から何も食べてないし、メリッサもお腹を減らしている事だろう。


「メリッサ。お腹が空いただろ? ギルドに行く前にちょっと遅くなってしまったが先にお昼を食べてしまうか?」


「いえご主人様。ここは先に冒険者ギルドに向かった方が宜しいかと。先に用事を済ませてからのほうが落ち着いて食事も頂けるかと思います」


 なるほどしっかりしてるなメリッサは。なら――


「じゃあこのまま冒険者ギルドまでいってくれ。悪いな」


「そんな大丈夫でございますご主人様。それではギルドに向かいますね」


 こうして俺とメリッサは色々ありながらも、初めての依頼の精算の為、ギルドへと足を運んだ――

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