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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部二章 王国西部の旅編

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第12話 マサムネの欠点

「凄いなマサムネ。まさかあの魔獣相手に瞬殺出来るほどの腕前とは俺も思ってなかったぞ」

「うむ、正直私も恐れいった。まさかここまでとはな」


 魔獣を倒したマサムネに近寄り、俺とアンジェで素直に彼を賞賛した。マサムネの戦い方は十分誇るに足りるものだったしな。


「……お役に立てて何よりでござる。しかし拙者一つお願いが……」


 うん? お願い?


「何だよ一体改まって、て! お、おいマサムネ!」


 な、なんだこいつ! 急に大の字に倒れたぞ、まさかどこかやられていたのか?


「……腹が減ったでござる」

「――は?」

「拙者、少々いいところを見せようと張り切りすぎたでござる。この技は使うと異常にお腹が減るでござるよ――」


 ……おいおいマジかよ。





「ぷはぁ~食った食ったでござる」

「酷いデジャブだな」

「うん? なんでござるか? でぶではないでござるよ?」


 俺達の食料を再度食べまくり、マサムネは腹を押さえながらそんなボケを言った。

 

「何、呑気なこと言うとんのじゃこんボケェ!」

「な、なんでござるかなんでござるか! 何故にカラーナ殿はそんなに怒ってるでござるか?」


 カラーナの盛大なツッコミに慌てるマサムネ。いや、気がつけよ。正直このマサムネの分だけで想定してた糧食の内、既に三分の一を消費したぞ。


「はあ、戦力的には申し分ないのだが、流石に戦闘の度にこれだけ食べられるとかわなないぞ」

「あはは、確かにすごい食欲……」

「ニャーコでもここまで図々しくはないにゃ」

「……食い過ぎ」

「アウン――」


 フェンリィでさえ呆れる食欲だ。剣、というか刀の腕は相当なのは認めるがな。


「正直アンジェの言ったとおり、戦っては食べ戦っては食べを繰り返されると厳しいな」

「いやいや! その辺りは心配ご無用でござる。今使用した百蓮は少々気を大きく使用する技故、正確に言うならば通常の居合百発分の気を消費してしまう故、急激にお腹が減ってしまうのでござるよ。あのような大技、そうそう使うことはないでござる故、今後はその心配は無用でござる」

 

 なるほどね、気、というと俺の中では闘気といった感覚だが、まあマサムネのも一緒なのだろう。それは俺も闘双剣のスキルなんかでも利用するから、まぁその辺のことは判らなくもないけど、にしてもここまで食うほど一気にエネルギーを消費することはないけどな。


「ふむ、それにしてもアスラ王国の剣技というのは初めて見たが、かなり変わった戦い方をするのだな。鞘に剣、そちらでは刀と言うのだったか? それを収めたまま戦うとはな」

「居合でござるな。鬼斬流抜刀術は相手に認識する間も与えぬほどの神速の太刀が基本でござる。これには鞘走りも利用してる故、常に刀は鞘に収めているでござる」


 あ~、やっぱり居合だったか。見た目そんな感じだったからな。まあ、それにしたって居合で魔獣をみじん切りにしてしまうなんて人間離れもいいところだけどな。


 この世界で今更だけど。


「しかし、居合も凄かったがあの一瞬感じた殺気も物凄かったな。あれで魔獣も錯乱してマサムネに向けて攻撃を集中させてたようだったし」

「そうでござるな、鬼斬流抜刀術は殺気を操るのも一つの戦法でござる故。殺気と抜刀を組み合わせるのが先祖代々伝わる我が流派の戦い方でござる」


 なるほどな。それにしても殺気を操る上に居合か、本当味方でよかったなと思うよ。


「それは判ったけどなぁ、せやけど今後は食う量には気をつけてもらわんといかへんで」

「にゃん、ダンジョン攻略もどのぐらい掛かるか判らないにゃん」

「それなら拙者に任せるでござる! こう見えて拙者迷路は得意でござ――」

「却下だ、お前は自分の方向音痴を少しは自覚しろ」

「……マサムネに任せたら、むしろ一年掛けても攻略は無理」

「アン! アン!」

「うぅ、酷いでござるよ……」


 近くの木に手を付けていじけるマサムネだ。そんなポーズ見せられても可愛くないぞ。


「で、でもマサムネさんのおかげで私は色々な薬草が手に入って助かってますよ」

「なんと! メリッサ殿は優しいでござるな」

「え? あ、あの――」

「おいちょっと待てマサムネ」


 マサムネがメリッサに詰め寄りそうになったので思わず俺が間に入る。ついキャンセルステップを使ってしまったぜ。


「な、なんと驚いたでござる! 拙者の目にも動いたのが判らなかったでござるよ」

「……ま、まあこれぐらいはな。それよりそんな鼻息荒くして近づくな。メリッサが驚くだろ」

「拙者、そこまで鼻息あらかったでござるか?」

「ボスにはそうみえてんねん。なんや、ボスはやっぱメリッサのことになると必死やな。うちの事も少しは気にかけてほしいんやけど」

「いや! 何言ってんだ、俺はちゃんとお前の事も」

「うちのことも?」


 すっと俺の目の前まで寄ってきて、メリッサが下から覗き込むような仕草を見せてきた。

 くっ、その顔はずるいぞ!


「こほん、そのなんだ、その辺りにしておけ。ヒットもヒットだ、も、目的を忘れるなよ!」


 ……何故かアンジェに俺が怒られた。いや確かに先を急がないといけないのは確かだけどさ。


「アンジェ、やきもちかいな」

「ち、違う! そんなんじゃない!」


 そしてカラーナがからかうように言うとアンジェが言下に怒り出す。当然だな、そんな筈あるわけないし……。


「ふむ、一行はなんとも不思議な関係でござるな。いや、しかし仲がいいのはいいことでござる」

「にゃん、ニャーコはマサムネの性格のほうがにゃんとも不思議だと思うにゃん」

 

 ニャーコにジト目で突っ込まれるマサムネでもあるが――とりあえずこれ以上ここでそんな話を続けていても仕方がない。


 なので俺達は目的の湖に向かって先を急いだ。





「……ここがその湖なんだろうな」

「そうなんだろうが、これは随分な有様だな」

「――酷い」


 どうやら途中残っていた脅威は魔獣だけだったようであり、それからこれといった魔物にも遭遇することもなく、ダンジョンを見つけるための目印でもある湖に辿りついたわけだが――思わず言葉をなくしてしまいそうになる光景が目の前には広がっていた。


「元々は精霊が暮らす綺麗な湖だったと聞いていたでござるか、なんともこれは酷い有様でござるな」


 マサムネも表情を引き締め憐れむように述べる。

 皆が言うように、湖は元が澄んだ湖であることが信じられないほどに濁り、汚泥の如くすっかり変わり果ててしまっていた。


 水もまるでスライムのようにどろどろに変化しており、これではとても用水として使用することが出来ないだろう。


 領主のエドが途中で水門を閉じたというのも頷ける。こんなものが流れ込んでしまっては街にいる精霊達だって堪ったものではないだろうしな。

 

「綺麗な湖やったら、ボスと水浴びしてスキンシップを楽しみたかったんやけど、これじゃあとても無理そうやね」

「ニャーコもこの水は勘弁して欲しいにゃん」


 なにげにカラーナが魅惑的な、い、いや、とんでもないことを言っているが、確かにこんなところで水浴びなんてしたら綺麗になるどころか何か悪いものが寄ってきそうだ。


「ウィンガルグも怯えている……どうやらこの現象は自然なものではなさそうだ。領主様の申されたように、この地に生まれたダンジョンに秘密があるのかもしれぬ」

「確かにいきなりここまで汚れるのはおかしいしな」

「うむ、ならば早くそのダンジョンを見つけねばいかぬでござる。ならばここは拙者に任せるでござる! 拙者の勘によるとダンジョンは――こっちでござるよ!」

「……フェンリィがこっちって」

「アン! アン!」


 自信満々に指をさすマサムネだが、フェンリィによると全く逆方向なようだ。


「流石フェンリィ、鼻が利くな」

「にゃん、マサムネとは全く反対方向にゃん」

「ま、マサムネさん、て、適材適所というものがありますし――」

「メリッサ、優しいのはええけど、あんまり甘い顔しちゃあかんで。ほれマサムネ固まってないで早くついてき~や~」

「…………」

 

 俺たちはマサムネではなくフェンリィの後に素直に従った。そして案の定フェンリィの案内の方が正しく、あっさりとダンジョンの入口を見つける事ができたわけだが――いやマサムネ、お前はそこまでしょげる程のことか。むしろなんでそこまで自分の勘に自信が持てるのやら……。

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