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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第21話 取引現場の三人

 本当はメリッサをスラム地区には連れてきたくなかったんだけどな。

 しかし宿もとってないし、だからって街なかに一人にさせておくわけにもいかない。

 また変な連中に絡まれても大変だしな。何より忘れてはいけないのはメリッサは実際はまだ俺の正式な奴隷ではないということだ。


 だからやはりここは俺が守るしかないわけだ。

 正直今のメリッサの格好でスラムに入るなんて、肉食動物の群れに生肉ドレスで突っ込むみたいなもんだけど、まぁしょうがない。

 それに――


「よぉ兄ちゃん。いい奴隷」

「キャンセル」


「おいお前、ちょっとその奴隷おいて」

「キャンセル」


「俺らこの辺りじゃ切れたナイフと有名よ」

「てめぇもこのナイフの錆になりたくなかったら大人しく金目のもんと奴隷置いてけぇんな」

「やばいよやばいよ~逆らうとやばいよ~」


「キャンセル! キャンセル! キャンセル!」


 ふぅ。まぁこんな感じにテンプレイベントはもう全てキャンセルして進んでる。

 急いでる時は本当便利だなキャンセル。


「あのご主人様本当にすみません……」


「だからいちいちそんな事で謝るなメリッサ。それにお前にそんなエロエロな格好させてるのは俺だ」

「え、エロエロ……」


 メリッサがまた採れたての苺みたいに顔を紅色に染めていった。

 改めてエロいんだという事を認識したのだろう。

 いやマジでエロいからなメリッサの肢体。

 しかもエロいのに顔はちょっとロリ入ってるから、もうなんか改めて考えると犯罪級にやばい。


 正直顔もによによと崩れてしまいそうだが、とにかくそれは堪えて、ダイモンの情報の浮浪者を探すが――それは割りとあっさり見つかった。


 茣蓙、いや藁か、とにかくそれほど質は良くなさそうな藁を引いて座っているのが、あの男のいっていた赤ひげの浮浪者か。

 確かに髭が赤くてその背中側にある建物の脇が路地になっていた。


 その路地に向かうが、ジロジロと向けられる視線がウザい。

 路地にいるのは、やたらギラギラした目の奴か死んだ魚のような目をした奴かのどちらかだ。

 尤もこれは男に限った事で、女に関しては昼間から嬌声を上げ男を誘っているのもいる。

 奴隷の隷属器として首輪が嵌められているのもいる。

 きっとここで客を取るようにでも命じられているのだろう。


 こんな危険なところでよく客引きなんて出来るなとも思うが、まぁきっと何かしら後ろ盾があるに違いない。

 

 まぁ俺には流石に声をかけてこないけどな。

 何せメリッサはそんじゃそこらの売女とは格が違いすぎる。


 ただ、まぁそれだけの逸材だけに絡んでくるのも多く、この路地でもキャンセルを多用しつつ、漸く謎多き酔いどれ亭に辿り着くことが出来た。


 看板だけでなく、木造で掘っ立て小屋のようなボロい建物だが、とにかく中に入る事にする。

 扉の立て付けが悪く、開けるのに苦労しながら、店の中に脚を踏み入れるが、ろくに明かり取りの窓もないような店なので、とにかく薄暗い。


 まぁ裏の仕事の多いスラムだ。わざとあまり顔がよく見えないように、陽が入らないようにしてる可能性が高いけどな。


 店内は向かって左奥のカウンターには三席、それとは別に四人がけの木製テーブルが五卓、左右互い違いになるように設置されている。

 その右側の最奥。壁際の席に一人キセルを吹かしている客がいた。

 皿頭の名前の通り、頭の真ん中が皿のようにハゲ散らかされている。


 俺はその男に近づくが、特には何も語らず酒を飲み続けている。

 かなり匂いがキツイ酒だ。俺のいた世界じゃ嗅いだことない酒の匂いで、例えるならチーズの腐ったみたいな感じだ。

 

 よくこんなの飲めるなと思いつつも、

「今日はいい天気だな」

と例の合言葉を伝える。

 

 するとぎろりと三白眼を俺に向け。


「馬鹿いえ今日はこれから雨が振る」

とダイモンの言った通りのセリフを返してきた。


「そうか。ところでダイモンを知っているか?」


 俺の言葉に首肯する。それを認めた上でいよいよ最後の質問。


「そうか、ところで今日の飯はどこでありつける?」


 俺はそういってそっと一万ゴルド金貨を差し出す。

 男はそれを受け取ると、取引のある場所を口にしてくれた。


 どうやらこの路地を逆側に抜け盗賊ギルドとは正反対の方向に歩いていき、星のマークが吊るされた建物が今日の取引場所になるらしい。


 始まるまで後一五分ぐらいとのことだった。急がないといけないな。




「ご主人様……」

「あぁ――」


 まぁ結論で言うと俺の幌馬車はすぐに見つかった。

 カッパルから教えてもらった取引場所の近くで馬車を引く三人がいたからだ。

 てか、あれ前にメリッサに絡んでた三人じゃねぇかよ。本当にろくでもない奴らだったんだなあの三人。

 ……それにしてもまぁ目立つなあれ。馬車持参じゃ建物には入れないから、自然と外で待機する事になるしな。


 ちなみにあそこまで堂々と取引場所の前で待ってる奴は他にはいない。

 当たり前か。裏取引で目立ってどうする。


「……おいなんだあの馬車の連中、素人か?」

「この取引の意味判っているのか?」

「おい、誰かちょっといってこいよ」

「いや、でもあれ馬鹿だろ? 馬鹿の相手は疲れるんだよな……」


 うん俺はわりと耳はいい方だからな。なんかそんなヒソヒソ話が聞こえてきた。

 まぁでもあいつらの頭が悪そうなのは最初にあったときに判断はしてるけどな。

 まぁいいか、逆にこの感じなら寧ろさっさと別の場所に連れて行って片をつけたほうが早いだろ。


「いくぞメリッサ」

「は、はい!」


 メリッサを背中で庇うようにしながら俺は盗られた馬車と、取引を待っている馬鹿三人組の傍までよる。


「おい、お前ら」


「あん? なんだてめぇ……て、どっかでみた面だな?」

「あ!? こいつら昨日ギルドにいた!」

「生意気な新人冒険者じゃねぇか!」


 一応俺のことは覚えているみたいだな。キャンセルしたからメリッサの件は言ってこないが、ギルドにいた時から俺を気に入らないみたいな雰囲気は前みたときもあったしな。

 キャンセルは別に全ての記憶を消すというものでもない。


「しかしてめぇ新人のくせにこんなとこまで来るとはな。お前ここがどこか判っているのか?」


「一応な。というかここまで来たのはお前らを追ってだ」


 三人の眉根がぴくりと跳ね上がる。どうやら察してくれたようだな。


「俺達を追ってだと? 何でだ?」


「その馬車が俺のだからだ」


 すると三人が顔を見合わせ。


「こ、これがお前のだと? しょ、証拠があんのかよ!」


「所有者の届けはされている。照会すればすぐに判ることだぞ。このまま商人ギルドにいくか?」


 連中がクッ! と短い呻き声を上げた。さて素直に諦めるかどうか。


「う、うるせぇ! この馬車は俺たちが拾ったんだ! だからもう俺らのもんだ!」

「どうしても寄越せというなら金を払え!」

「ついでにそこの奴隷もな!」


 ……やはり話にならなかったな。てかなんで盗まれた俺が金まで払わにゃならんのだ。


「金は払う気はない。そしてどうしても馬車を返さないというなら……こっちも力ずくになるがいいのか?」


 俺がそう告げると連中の顔が歪む。


「いい度胸してるじゃねぇか。俺らとやりあおうなんてな。なぁファースト?」

「全くだぜセカンド。命知らずもいいとこだ」

「サードよぉ、よく見てみろよこいつきっとハッタリのつもりでいったんだぜ? 脚が震えてやがる」


 さっぱり震えてないがな。てかこいつら名前がファーストにセカンドにサードかよ。

 どこでポジション守ってんだよ。

 ……まぁいいか。


「だったら場所を変えるぞ」


 俺がそういって顎をしゃくる。しかしこいつら不満顔をみせて。


「あん? ここでいいだろうがそんなもん」

「さてはテメェ! 他に仲間がいやがるな!

「第一おれらがなんでテメェのいうことを聞かないといけねぇんだよ!」


 ……こいつら本気でいってるのか?


「お前ら自分が何をしにきてるのか忘れたのか? こんな取引が行われる所で揉め事犯してみろ。お前ら馬車を売るどころか、一生命を狙われる羽目になるぞ。それでもいいのか?」


 俺がそこまで言って漸く理解したのか、三人は顔を見合わせ少し焦った感じで。


「ふ、ふん! まぁいい乗ってやる。だが! 場所は俺ファーストが指定する!」


 チッ、面倒な奴らだ。まぁいい。


 俺とメリッサは馬車を引くこの三人の後をついていく事にした――






◇◆◇


「さぁここなら思う存分やれるぜ」


 連中に連れて来られたのはスラムの中にぽっかりと空いたような空間だった。路地というには幅が広く、視界を邪魔するものも殆ど無い。

 一応外側は建物に囲まれてはいるんだけどな。

 なんというかスラムの広場って感じだ。

 まぁ噴水も何もない味気ない場所だが。

 だからこそ戦いに向いていると思ったのだろうな。


 ちなみに周りには誰もいない、なんてこともあるはずもなく、興味本位で見に来ているのも結構いる。

 まぁ近づく気はないみたいだが、雰囲気で察したのかいつの間にか仕切りやみたいのが現れて、俺達を賭けの対象にもし始めた。


 まぁスラムだからな。正直こんな事はよくあるだろうし、どんな事でも食い物にしようというのはこの辺に住む住人らしい。

 

 で、改めて敵の詳細を知るために観察してみる。

 一人はセカンドという名で腹の出た、昔ガキ大将してましたとかいいそうな男。

 身長は俺と同じぐらいだと思うが幅がある分デカくも感じる。


 身体には板を組み合わせたような鎧を身につけていて、素材はまぁ鉄だろう。そこまで品質は良くはなさそうかな? ラメラーアーマーと呼ばれるタイプのもので、鉄の板を紐などで括りつけて作られたタイプの鎧だ。


 形としてはエプロンに近く胴体部分のみを守っている形。肩から腕にかけての部分は筋肉が自慢なのかはしらないが、肉肌をそのまま曝け出している。


 腰から下は当然ズボンを穿いているが、膝の部分には鉄の膝当てを装着しているな。

 このせいで妙に三下ぽいな。


 手に持ってる武器は斧。両刃のタイプで柄は木製だ。バトルアックスと言われるタイプだろうが、それほど価値のあるものでもないだろう。


 二人目は鱗状の鎧を装備しているサードという名の比較的長身の男で、ロン毛の茶髪。細目で痩せ躯。

 鎧はスケイルアーマーと呼ばれるもので、革の下地に鉄の小片を組み合わせ紐で括ったものだ。


 作りはラメラーアーマーに似ているが、全て鉄板で作られているラメラーアーマーに比べると、革の下地と鱗状の細かい作りの為比較的動きやすいというのがゲームのガイドでみた説明。


 性能としてはゲームではラメラーアーマーの方が高いが、スケイルアーマーは装備できるジョブが多い。

 この男は背中に矢筒を下げ、弓を携えているところからアーチャーのジョブ持ちである可能性が高い。

 

 ゲームでもアーチャーだとラメラーアーマーは無理でもスケイルアーマーは装備出来たしな。

 手持ちの武器はロングボウ……いやハイ・ロングボウか。

 ロングボウより強度を上げ弦も強化されているタイプだな。

 

 個人的には一番この中でウザったい相手だな。

 遠距離でチクチクされるのはキャンセルするにしても面倒だ。


 最後の一人はファーストといって小柄な男で黒髪。後ろで縛ってちょっとした総髪みたいになってるな。

 尖った目をしていてこの中で一番目付きが悪い。底意地の悪そうな顔だ。

 装備としては革の鎧であるレザーアーマーに動きやすそうなレザーブーツ。

 薄手のグローブを手に嵌め、両手でダガー、正確にはラウンデルダガーと呼ばれるもので全長三〇cm程度の握りの両端に円盤状の刀の鍔のようなものが付いているものを一本ずつ構えている。


 ナイフやダガーの二刀流はシーフ系が戦うときに使用するスタイルだ。

 動きやすく音の出にくいレザーアーマーと足下を取られにくそうな革靴、それに細かい作業の邪魔にならないグローブといい、ジョブがシーフであることはほぼ間違いがなさそうだ。

 見た目にもそんな感じだしな、幌馬車だけでなく色々盗んでそうだ。


 ふむ、魔法系がいないまでもバランスは悪くないな。特にアーチャーがいるから中~遠距離からの攻めも期待できるしシーフは奇襲向きだ。

 ある程度アーチャーとシーフで削ってからファイターで決めにいったり、ファイターが壁になってる間に後方からアーチャーが狙ったりシーフが背後に回りこんだりも可能だろう。


 まぁでも能力的にはあきらかに俺の方が上だしな。

 舐めて掛かる気はないが負けるような相手でも――


「ご、ご主人様! ここは是非私にもサポートさせてください!」


 て、え?


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