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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部二章 王国西部の旅編

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第3話 夜の見張り

「話は纏まったにゃん?」


 エリンを同行させると決まったところでニャーコが荷台に戻ってきた。

 どうやら御者台側で話は聞いていたようだな。


「あぁ、今更戻るわけにもいかないしな。一緒に来ることになった」

「宜しくなの!」

「にゃんにゃん、宜しくにゃん。それにしてもヒットにゃんはこんな小さな女の子にまで手を出すなんて幅が広いにゃんね」

 

 おい、唐突に何を言い出すんだこいつは!


「ヒット、ま、まさかお前そういうことだったのか?」

「ぼ、ボス、それは流石のうちでもひくで」

「ご、ご主人様、エリンはエルフといっても正真正銘の幼子なのですが……」

「……(けだもの)

「アンッ! アンッ!」


 え? 何この状況? カラーナも何がエリンを守るように抱き寄せてるし、アンジェの目がなんかすごく胸に突き刺さるし、セイラとフェンリィにすら蔑まされてる気がするぞ。

 メリッサは声しかわからないけどちょっと引いてるっぽいし……。


「いやいやいやいや! ちょっと待て! そんなはずがないだろ! エリンは可愛いとは思うがそんな目で見たことは一度もないからな!」

「ほんまかボス~?」


 くっ! カラーナ今日はちょっと意地が悪いぞ! 俺が困ってるのをみて楽しんでるようにも見えるし。


「エリン、ヒットお兄ちゃん大好きなの!」


 て、え?


「ちょ、ちょっと待てエリンそれは――」

「アンジェお姉ちゃんも大好きなの!」

「て、へ?」


 エリンの発言に俺が戸惑ってるとアンジェが身を乗り出して慌て出すが、そこへ可愛らしいぷにぷにした指を向けられアンジェも俺と同じ反応を見せた。


「カラーナお姉ちゃんも、セイラお姉ちゃんも、メリッサお姉ちゃんも、フェンリィちゃんもみんなみんな大好きなの!」


 そしてエリンが次々と皆を指差してなんともほっこりしそうな言葉を投げかけてくる。

 くっ、やばい、これは破壊力がでかすぎる! 俺も思わず身悶えそうだ!

 他のメンバーもきゅんきゅんきてるみたいだしな


「はぁ~ほんまエリンはかわええな~」

「きゃはは、くすぐったいなの~」

「ま、全くだな。なんとも癒されたぞ」


 カラーナが思わずエリンを抱き寄せて思いっきり頬ずりしてるな。

 アンジェも頭を撫でてるし、セイラもフェンリィをぎゅっとしてその様子を見ている。


 ま、気持ちもわからないでもないが――て、うん? なんかニャーコの耳が萎れてるな?


「にゃんにゃん……ニャーコは言われなかったにゃん……」


 あぁ、なるほどそれでか。


「仕方ないやろ。ニャーコのことはエリンもよう知らないんやし」

「え、エリン、でも、ニャーコお姉ちゃんも好きになるなの!」

「にゃん! 嬉しいにゃん! 宜しくにゃん!」


 エリンいい子! そしてニャーコがまさに猫のごとくエリンに飛びついて頬をスリスリし始めた。 

 エリンはエリンでニャーコの耳が気になるのか嬉しそうに揺れる耳をさわさわしてるな。


 まあ何はともあれ上手くやれそうで良かったな。


「ところでご主人様。今夜はどうされますか? そろそろ日も暮れますが」

「うん? ああ、そうか。もうそんな時間なんだな」


 今度は俺が御者台の方に移動して魔法の地図を頼りにメリッサと確認する。


「この辺に一泊出来そうな宿場や村はなさそうですね」

「そうだな、そうなると――この辺りで野宿かな」

「判りました、ではそこまで移動します」


 その後はメリッサの隣に座り彼女とも談笑しながら野宿できそうな場所を探した。

 森の中は魔物も多いしな、なので丁度高台になっていて見晴らしがいい場所を見つけてそこで陣を張ることとした。

 まあ、言ってもそんな大したものじゃないけどな。ただ一応テントは街の皆が用意してくれたからな。


 場所を決めた後は皆でテントを組み立てる。中に五人は寝れるから一つあれば十分だ。交代で外に見張りが立つ必要あるしな。


 そうこうしてるうちに薄暗くなってきたから夕食の準備を始める。これも携帯食が多いが、火を点ける魔道具もあるからな。

 干し肉でも少しは焼いたほうが旨いし食べやすい。だから魔道具の力で焚き火して食事を摂る。


「美味しいなの!」


 もぐもぐと肉やパンを頬張るエリンがマスコットみたいで可愛らしいな……。


「でもボス、どうせならボスの力で移動できれば早いのにな~なんかまどろっこしいわ」

「それは仕方ないさ。シャドウからも言われているからな。俺の能力は目立つようだから普段は使わない方がいいってね」

「そうだな。一応目立たないように馬車で移動しているわけだしな」


 アンジェが頷く。確かにな。馬車も一般的な幌馬車だしまさかこれにお姫様が乗ってるなんて誰も思わないだろうしな。

 それにわざわざ王国騎士の連中を避けるようにして街を出たからな。シャドウの話を聞く分にはもしかしたら連中が追ってくるか、その手のものが派遣されるかもしれないようだし、そうなるとあまり目立っても良いことがない。

 

 だから王都まではできるだけ目立たず向かう必要がある。

 キャンセルで移動すればその分速いんだが、知らない人間から見ると瞬間移動してるようでどうしても目につくからな。


「のんびりしているわけにもいかないが、そこまでせかせかと急ぐこともない。下手に目立って何かが起きてはそちらのほうが厄介だからな」

「確かにそうですね……アンジェの身の安全も確保しないといけませんし」

「にゃん、にゃん、ニャーコも急ぐことないと思うにゃん。むしろほとぼりが冷めた頃につくのが一番にゃん」


 いや、それ完全にお前の都合だろ……。


「……予定通り進めば問題ない」

「アンッ! アンッ!」


 まあそういうことだな。それに俺はちょっとキャンセルに頼り過ぎなところもあったし、今後はそれも考えて動かないとな。


 そんなわけで夕食を摂って暫く談笑した後は、見張りの順番を決めて寝ることにする。

 俺は当然――馬車で一人寝るという選択をしようとする。

 

 ……いや、だって俺以外全員女だしさ、それに全員が全員見た目にはかなりのものというか、本当ニャーコでさえ黙っていれば美人というか可愛いというか、そんな感じだからな。


「と、言うわけで俺は馬車に……」

「何でやねん! テントでええやろ、何今更照れてんのや!」

「いや、今更って! 今までに何かあったみたいに言うなよ!」

「裸で抱き合ったやん」

「な!?」


 アンジェが目を見開いて驚いてるぞ! いや、間違ってると言えないけどそれは成り行きというかな……。


「と、とにかく! 何かあったら俺はすぐに動けるようにしておかないといけないだろ? この中では唯一の男なんだからな!」


 とにかく色々理由をつけて今夜のところは馬車の方で眠らせてもらうこととした。

 それにしても――この状況で男一人はやっぱ問題があるだろ……。





「ふぅ……」


 やっと俺の番がきて夜の星空を眺めながら一息つく。

 えぇ、正直色々ありました。というかカラーナが何故か荷台で俺の隣で寝てたりとかな。

 しかも裸で。思わず目玉飛び出しそうになったよ。そもそもなんで御者台で寝てた俺がいつの間にか荷台に寝かせられてんだ。

 

 そして交代でやってきたアンジェに見つかって大目玉だよ。俺のせいじゃないのに……しかもそこでカラーナとアンジェで一悶着あったり、ニャーコが面白がったり、カラーナが夜伽言い出してエリンが、夜伽って何なの! とか興味津々で言い出してメリッサが対応に困ったり、セイラが無表情ながらジトーっとした視線を向けてきたり、フェンリィが妙に甘えてきたり――


 うん、正直全く落ち着かない。なんだこれ。


 そんなわけで何故か見張りが一番落ち着くといった状況の最中なわけだけどな。


 まあ、取り敢えず今夜はそれだけ平和ということか――と思ってたんだけどな……。


「グルルルゥウ」

「ガルゥウゥウゥウ」

「アオーーーーーーーーン!」


「そうは問屋がおろしませんっていうことなのかね――」


 中々楽な旅ってわけにはいかなそうなわけだよこれがまたね――

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