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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第20話 情報を買う

 俺はステップキャンセルを多用しメリッサと一緒に街の西門近くまで戻ってきた。

 時間にしたら五分もかかっていないだろう。


「こんなに魔法を多用して魔力が尽きないなんてご主人様は凄すぎます――」


 心底驚かれたが、このスキルは魔力は使わないしな。

 まぁそれはそうと西門を選んだのはスラムがここから一番近いからだ。

 ゲームでも買収されている守衛は西門の奴だったしな。

 

 というわけでメリッサと一緒に西門に近づいていく。折角なので手は握りしめたままだ。役得役得。


「おう、身分証明書みせろ」


 ……うん、如何にも悪徳守衛ですって面のやつが目の前にいる。

 腹が出ていて顔が岩石みたいで瞼がはれぼったくおかげで目つきが馬鹿みたいにわるい男だ。

 こんなの守衛として立たせておくなよ。


「冒険者証だ。こっちは奴隷のメリッサで俺の連れだ問題ないな?」

 

 メリッサは完全に俺の影に隠れてビクビクしている。手もギュッと握ってきてるし相当怖いのだろうな。


「ふん! 冒険者か。チッ、金になんねぇな。まぁいいやとおりな」


 金にならないか……冒険者の場合は証明証さえあれば荷物のチェックもないしな、守衛からすれば課税という名の着服が出来なくて残念ってところか。

 全くいかにも金に汚そうって感じだが……でもそれなら。


「なぁ、その前にちょっとあんたに聞きたいことがあるんだがいいかな?」


「あん? 俺は別にねぇよめんどうくせい。さっさといけ次が支えてんだ」


 嘘をつくなって。大体この男の容姿にビビりまくって誰も俺の後ろには並んでないしな。


「まぁそう邪険にする事はないだろ、お礼は弾むつもりだがどうだ?」


 俺がそういうと、男はニヤリと歪んだ笑みを覗かせる。

 全く判りやすいやつだ。


「おい、俺はちょっとこいつのチェックに入る。お前暫く一人で対応しておけ!」


 そして俺は門を離れ、城壁の影になるところまで連れて行かれた。


「で? 何が知りたいんだ」


 中々の太さを誇る腕を組み、指でトントンと鳴らしながら、随分と横柄な態度で接してくる。

 だが、まぁ想定内だ。盗賊ギルドの連中に裏で手を回すような男なら、むしろ舐められないように偉そうに振る舞うのが至極当然だろう。


「あぁ実は――」

「おっとその前にだ」


 俺の会話を低い声音で阻害する。威嚇するような目つきで俺を睨み。


「情報量にいくら出す? まずはそこからだ」


 ……しっかりしてるな。

 さて、これはゲームにはない話だ。流石にメリッサでも情報量の相場まで知らないだろうし、何より俺の背中で震えている。


 まぁぴったりとくっつかれてるおかげで、彼女の柔らかい果実の感触が楽しめるのは嬉しいが――まぁとりあえず。


「五〇〇〇ゴルドでどうだ?」


「話にならねぇな」


 言って踵を返そうとする。ちっ安いってことか。


「だったら一〇〇〇〇だそれでどうだ?」


 守衛の動きがピタリと止まった。そしてそのまま後ろ歩きでさっきの位置まで戻ってくる。


「ま、話ぐらいは聞いてやる」


 ふぅ、とりあえずは何とかなりそうだな。

 そこで俺は一〇〇〇〇ゴルドを渡し、この男に掻い摘んで事情を話して聞かせた。

 すると、ふむ、と顎を擦りながら俺を眺めそして大きな口を開く。


「その幌馬車なら見たぜ」


「本当か!? それでどれぐらい前だ? スラムに向かったのか?」


「……一〇〇〇〇ゴルドじゃあこれ以上は話せねぇなぁ」


 チッ! 欲深いやつめ。仕方がないから俺はもう一〇〇〇〇ゴルドを渡す。

 本当は情報を聞いてから支払いたいところだが、それはこの男が納得しないようだ。

 後払いであればキャンセルでどうにでもなるっちゃあなるけどな。

 ただ情報を小刻みに出されるならどっちにしろキツイか。


 まぁとはいえ、こういう場合は実際立場的に弱いのはこっちだ。先払いを求められるのは仕方ないか……


「へへっまいど。そうだな奴らがこの門をくぐったのは三〇分ぐらいまえだ。三人組の奴らでまぁほぼ間違いなくスラムに向かっただろうな」


「そうか。やはりそのまま盗賊ギルドに向かったのか?」


「…………」


「――もう一〇〇〇〇払おう」

「残念だがこっからはかなり値の張る情報だ」

「判った、もう化かし合いはやめだ。いくら欲しいんだ?」

「まぁそうだな後三〇〇〇〇はもらわねぇと」


 三〇〇〇〇か……仕方ないそこまでは素直に払おう。


「ほら、三〇〇〇〇だ。で、どうなんだ?」


「あぁ連中は間違いなく盗賊ギルドにはいかねぇ」


 いかないだって? 俺は怪訝さに眉を顰めながら質問を続ける。


「ギルドにいかないってどういう事だ? まさか馬車をそのまま使うとでも言うのか?」


「い~や違うな。連中が呟いてるのが聞こえたが、あいつに頼めば割がいいと言っていた。盗賊ギルドは安く買い叩くからな。盗品は大体相場の半値にしかならねぇ。だが盗賊ギルドを介さず盗品を売買するブローカーがいてな。そいつに頼むと相場の七割で買ってくれるってもっぱらの噂だ」


 なるほど。確かに二割の違いは結構なものだしな。それに誰だって高く買い取ってもらえたほうが嬉しいが……


「これは素朴な疑問なんだが、そのブローカーとやらはそんな事をしていて大丈夫なのか? 普通に考えればギルドに知れて制裁をうけそうなもんだが?」


 何せ盗賊ギルドを通さず勝手に取引してるんだ。殺されたって文句は言えないだろう。


「これはあくまでうわさ話だが、そのブローカーはギルドで、ある程度発言権のあるやつと旧知の間柄らしい。それにブローカーは得た利益の一部をそいつに渡してるらしいしな」


 ……なるほど。逆にギルド側で権限のあるやつを丸め込むことで無謀ともいえる商売を裏で行ってるってわけか。

 確かにギルドの人間も、ギルドが利益を手にするよりは個人でなんらかの見返りを貰ったほうが懐は潤うわけだしな。


「それにそのブローカーもあまり安い取引はしねぇ。だがあれだけの馬車なら十分取引になる」


「なるほど……よくわかった。それで盗人野郎がどこでその取引を行うかな判るか?」


「…………」


「はぁ、判ったもう一万」

「へへっ、まいどありぃ!」

 

 うん? 俺から金貨をとって急に今までと違うにこやかな笑顔を見せ始めたな……


「奴は取引場所を変えるから俺じゃあどこで行うかはわからねぇ。だけどな、門を抜け南のスラムに入ったら赤ひげの浮浪者の寝ている場所を見つけろ。そしたらその脇の路地裏を進みボロ看板の【謎多き酔いどれ亭】に入るんだ。盗賊御用達の酒場だが、そこの壁際の席でキセルを咥えてる皿頭のカッパルを尋ねろ。そいつに今日はいい天気だなといえ、そしたら馬鹿いえ今日はこれから雨が振ると返してくる、そこで適当にでも合槌し、ダイモンを知ってるかといえば俺から聞いたって理解するはずだ。因みにダイモンは俺の名だ」


 突然捲し立てるように言ってきて俺は面食らってしまった。

 しかし流石なのはメリッサで、あれだけビビりまくっていたのに、その話を耳にした途端メモ帳を取り出し書き出していった。

 凄いなおい。


「後はその皿頭のカッパルに今日の飯はどこでありつける? と聞けば取引場所を教えてくれる。取引は持ち込み方式だからな、今から急げば午後の取引に間に合うと思うぜ。連中も門を抜けた時間で考えれば、そのタイミングで売りに向かってるはずだ。あぁそれとそこでもカッパルに情報料として一〇〇〇〇渡してやってくれ」


「あ、あぁ判った」


「うむ。いやぁしかしあんた気前がいいな。気に入ったぜ! 今もいったが俺はダイモンだ、あんたは?」


 ……いや冒険者証に記載があるんだが、こいつさてはロクに見てないな……まぁでも。


「俺の名はヒットだ。情報には感謝する」


「な~にいいってことよ。まぁ俺はこうみえて裏情報には精通してる、何か知りたいことがあったらまた利用してくれ」


「あ、あぁ判った……」


 この豹変ぶりが凄いな。あれだけムスッとしていたのに今はニコニコだし。まぁその笑顔も正直悪って空気が滲んでいるがな。

 てか、こう見えてというのはどこをどうさしていっているのか。


「いやぁそれにしてもあんた、いいご主人様を持ったな。あんたほどの美人ならこの男きっと色々願いを聞いてくれると思うぜ。しっかりおねだりして貢いでもらいな」


「え? あ、はぁ……」


 メリッサも戸惑ってる様子だな。そりゃそうだ、突然不気味なニコニコ顔でそんな事を言われるんだ。


 ……でも確かにメリッサにおねだりされたら俺もつい買っちゃいそうかもしれないが。


 まぁとはいえ欲しい情報は手に入れた。俺はダイモンに別れを告げメリッサと門を抜ける。

 しかしあのダイモン、当然いいやつではないが、色々と役に立つこともあるかもしれないな。

 名前と顔は覚えておくとするか――

 

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