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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部一章 王国騎士団編

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第39話 シャドウの店にて

 ゴブリン退治も終わり、俺達は早急にセントラルアーツに戻った。

 流石に出発が夜だったので外で一夜は明かしたが、夜明けと同時にステップキャンセルを駆使した形だけどな。

 

 おかげで翌日の早い内に街には着いたんだが、ダイモンに出迎えられ、話によるとシャドウはアンジェと一緒にあの豚蛙と協議中のようだ。

 あの顔を思い浮かべるだけでむかむかして仕方ないな。


 カラーナも、乗り込んだろか! とか息巻いていたけど流石にそれはまずいしな。

 仕方ないので暫く待つことにした。


 それからダイモンが確認しにいき、シャドウと会える手筈が整ったのはお昼を回ってからだ。

 ただ、屋敷ではなく元のシャドウの店で待っていて欲しいとのことらしい。


 尤もこっちもその方が好都合だ。色々と手に入れてきた情報は当然あの豚蛙やその腰巾着な騎士たちに聞かれていい話ではないしな。


 そして店で待っていると、お待たせいたしました、とシャドウとアンジェが入ってきた。

 

「あれ? コアンは一緒じゃないのか?」


 思わず俺はそう尋ねる。いつもシャドウの横に一緒についてきてるからちょっと違和感があったんだけどな。


「ええ、コアンにはあのヘンベルや他の騎士に目を光らせておいて貰ってます。それに私やアンジェが屋敷から抜けても不審がられないよう、うまく立ちまわる役目も与えてますからね」

「ふ~ん、でもそんなんでごまかしきれるんかいな?」

「一応、私や彼女の影人形も置いてきてますからね。コアンなら上手いことやってくれるでしょう」


 なるほど、確かに屋敷から急にふたりが消えたらあいつらなら怪しみだすかもしれないしな。流石シャドウは抜け目ないな。

 

 それにしても――


「アンジェ、なんか元気ないように見えるけど何かあったのか?」

「え!? 私か? そんな、何も無いぞ! 全く何もにゃい!」


 ……いや、絶対何かあっただろ。


「もしかしてアンジェ、彼らに何か酷いことを言われたのですが?」

「あ、それなら確かにありえるで! なんや言うてみい! うちが乗り込んで――」

「ち、違う違う! それにあまり物騒なことを言うな全く。話し合い自体は……まあ腹のたつ言動も多かったがシャドウの手腕で胸がスッとする部分もあったしな。主導権はむしろ此方側が握っているようですらあったぞ」


 アンジェの顔に少し明るさが戻ったな。それにしても本来アンジェは向こう側の人間なのに、シャドウの肩を持つとは、ちょっとおかしくなるな。


 まあでも、相手が連中ならそれも当然だけどな……。


「私はそれほど大したことはしてないつもりですけどね。こちらの提示した条件を飲んで頂ければ領主の座だって明け渡すと言っているのですから」

「ふぁ!? お、おいシャドウ何言ってるんだよ!」

「そやで! あんな連中に領主の座を明け渡すなんて冗談も顔だけにしときや!」

「全くです! 絶対にそんなことをしてはいけません!」

「……承認しかねる」

「アン! アン! アン!」


 全員で総バッシングだな。まあ当然だ。カラーナの掴んできた情報を考えればそれだけは避けないといけない。


「全く、私は出来れば少しでも楽をして生きたいのですけどね。ですが――その様子だとイーストアーツで何かありましたか?」


 流石シャドウだな。なので俺はシャドウと情報交換を行う。エキから預かっていた手紙も渡した。

 しかし――そういうことか。領主の座を明け渡すなんていうから何事かと思ったが、その条件じゃ連中が首を縦にふることはないだろうな。


「……なるほど話はよく判りました」


 そしてシャドウも納得を示し頷く。だが、話を聞いてもシャドウは随分と落ち着いているな。

 だけどアンジェはそうもいかない。拳をプルプルと震わせ歯を食いしばり怒りを露わにしている。


「……私は、私は騎士としてこれほど情けないと思ったことはない! 誉高し騎士団が、そんな、そんなことに手を染め、更に民を奴隷にだと?」


 アンジェはキッ! と強い視線をシャドウに向けた。


「シャドウ! 私は決めたぞ! この件であのヘンベルや騎士の風上にもおけない連中を糾弾し! 奴らの罪を白日の下に晒す!」

「……それを貴方がですか? 一体どうやって?」

「決まっている! カラーナが命がけで掴んでくれた情報を証拠とし連中に突き付け――」

「そんなことをしても無駄ですよ」


 熱く語るアンジェであったが、それをシャドウは一蹴する。それにしても無駄とは、ずいぶんとはっきり言ってくれるな。


「無駄、だと?」

「そうです、無駄です。そんなものを今連中に言ったところで白を切られるのがおちでしょう」

「し、しかしこちらにはこれだけ多くの証人が――」

「残念ながらそれでは全く足りません。そもそも道理を引っ込め無理を通すようなことを平気でやってのける連中ですよ。これだけのことを平気でやるということはそれだけ大きな後ろ盾がいるということでもあります。アンジェ、その真っ直ぐなところは貴方のいいところかもしれませんが、あまりに愚直過ぎる。故に卑劣な手段に出られた時に脆さが出てしまうのです」


 ぐっ! とアンジェが悔しそうに唇を噛み締めた。だが、言い返す言葉が出てこないようだな。

 きっとアンジェにも思い当たる節があるのだろう。


「や、やけどシャドウ! だったどないすんねん! まさかこのまま手を拱いて待ってるつもりやないやろな!」


 カラーナが若干むきになった様子で声を上げた。メリッサも真剣な表情だ。

 流石にこのままというわけにも行かないのは俺も同じ気持だが――


「……今も言ったように今回の件、正攻法でいったところで彼らは決して認めることはしないでしょう。ならば蛇の道は蛇――私の方で色々と準備を進めていくとしましょうか」


 ふふっ、と薄い笑みを浮かべてシャドウが言った。そうだ、やっぱシャドウに頼って正解だったな。


「なんややっぱり何か手を考えとるんやな」

「良かったです。やはりシャドウ様にお話をしてよかったですね」

「たしかにな。まあシャドウならなんとなくそう言うと思ったよ。だからこそイーストアーツのエキもシャドウに伝えて欲しいと言ったんだろうしな。ただ、あまり時間もないのは確かだぞ。特にイーストアーツに関しては……」

「ええ、手紙を見るに多少は時間稼ぎは出来そうですがこちらは早めに手をうった方がよさそうですね」


 シャドウに渡した手紙に何を書いていたか俺には判らないが、ここはやはりシャドウ頼みではあるな。

 とは言え当然俺もなにもしないというわけにはいかない。


「シャドウ、俺に出来る事があれば何でも言って欲しい」

「ええ、勿論そのつもりですよ」

「ならば私もだ! この件に関しては当然全面的に――」

「この件に関わるというのであればアンジェにはそれは無理ですね。そもそも貴方はすぐにでも王都に向けて立たなければいけない身です」

「そ、そのようなことを言っている場合ではないであろう! この状況で――」


 アンジェが声を荒げた。確かに彼女の気持ちも判る。この状況で王都になんて、て、ん? 今なんて言った?


「て! 王都? アンジェは王都に帰るのか!?」

「な、なんやそれ! うち知らへんで!」

「ですから今言いました」

「そ、そんな急すぎます!」

「……驚き」

「アンッ! アンッ! クゥ~ン……」


 俺も含めて全員が驚愕している。フェンリィだって寂しそうだ。いや、勿論相手はお姫様だ。いつまでもここに留まっているわけにもいかないだろうけど……それにしたって――


「……シャドウ、正直やはり私はここで離れるのは納得がいかない」


 そしてアンジェもそれは同じ気持なのだろう。伏し目がちにそう口にした。再会したときに気落ちしてるように感じられたのは恐らくこれが原因なのだろう。


「シャドウ、やはり俺も納得がいかない。第一この状況でアンジェが街を離れるのはどうなんだ?」

「気持ちはよくわかります。ですが、寧ろ今だからこそ皆さんには一旦ここを離れていただきたいのです。そのための話も既に進めてますからね」


 いや、しかしそうは言ってもアンジェと……ん? 皆さん?


「……シャドウ、聞き間違いなのかもしれないが、今確か皆さんって……」

「ちょっと邪魔するよ」


 俺が湧き上がった疑問をシャドウにぶつけようとすると、よく知る人物が店に乱入してきて思わず声を上げてしまう。

 

「も、モブさん!」

「おうヒット、それに全員揃ってるみたいだな」

「いや、揃っとるけど、なんやねん。今大事な話をしてるんやけど」

「何言ってんだ。だから来たんだぜ俺は」

「え? だからと言うと?」

「モブさんもこの件に何か関係しているのかい?」


 俺が尋ねるとモブは、おうさ、と腕を組んで一つ頷き。


「ヒット、お前にある人から依頼が来ていてな」


 ……は? 依頼?


「い、いやモブさん、俺は今依頼なんて」

 

 俺がそう口にするが、モブは構わず俺に向けて言葉を重ねてきた。


「依頼主はシャトー・ライド、そして依頼内容はアンジェ殿下を護衛しながら王都に向かうこと。悪いが拒否権はないぜ。ギルドマスターの権限で指名依頼とさせてもらう。まあ尤も俺はヒットが断るなんて思っちゃいないけどな」


――え? 護衛――俺がアンジェの護衛だって!?

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