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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部一章 王国騎士団編

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第16話 対決ドライゴーン

 とりあえず弱点がないという事が気になりはしたが、だからって攻撃が効かないってわけでもないだろう。


 とにかく落ち着いて考えながら、油断せず行動だ。

 この広間とあの魔物の大きさの対比で考えると、ドライゴーンがクローラーみたいな無茶でもしてこないかぎりは移動範囲はある程度限られてくる。


 こういう場合はとりあえずキャンセルトラップの設置だな。

 移動しながら視える範囲で設置だ。特にメリッサ達のいる方に多めに、後は外側の壁沿いに設置、と。


セイバーマリオネット(双剣操術)


 ここで俺は溜めてた力を開放しダブルセイバーのスペシャルスキルを使用する。 

 何せ相手は空中にいる。こんな時はスパイラルヘヴィクロスボウをドワンに預けているのが悔やまれるが、ないものは仕方ない。


 取り敢えずモードをオートに変え、スキルで生まれた闘気の剣で今も空中を飛行しているドライゴーンを狙わせる。

 細かい指示は無理だが対象はそれなりの巨体だ、獅子の胴体や竜の翼をズバズバと斬りつけていく。

 

 しかし――全くダメージがないというわけではなさそうだが、相手からしたらうざったいぐらいの感覚のようだ。


「エアショットスラッシュ!」


 ウィンガルグを纏ったアンジェが精霊剣技を繰り出す。

 エアロカットは斬撃に合わせて風の刃を一つ飛ばすが、この技は一つの風の刃が途中で分裂し無数の刃となって相手に襲いかかる。


 アンジェの放った風刃は見事に全てドライゴーンへと命中する、が、やはり大したダメージには繋がっていないか。


「……フェンリィ」

「ワオーーン!」


 別方向、俺達が入ってきた入り口をはいったところで、セイラがアグレッシブウィップとワイルドウィップをフェンリィに重ねがけする。

 更にスペシャルスキルも使用し同期も取ったようだ。

 

 成長した狼の姿に変化したフェンリィは、風を纏い上空に浮かぶドライゴーンに特攻する。

 床から天井へ、天井から床へと飛び回り、ドライゴーンを攻め立てる。


「……蓄積せよ雷、我が身に宿れ――ストレージ」

 

 更にセイラが初級の雷魔法を使用。あれは体内に雷の力を蓄積できる効果がある。

 セイラは何度か重ねがけしてるようだな。溜めておいた分、雷の魔法を無詠唱で発動する事ができるのが特徴だ。


「――サンダーストライク」


 そして溜めきったところで、初級では最も威力の高い魔法が行使される。

 敵の頭上に稲妻が迸りドライゴーンの身を貫き落雷が床を焦がす。


「――サンダーストライク、サンダーストライク」


 更にセイラは魔法を重ね、合計五発をドライゴーンへと叩き込んだ。

 ぷすぷすと煙が上がり、ドライゴーンの動きも鈍る。


 どうやら雷の五連発はそれなりに効果があったようだな。

 勿論その間も俺やアンジェ、フェンリィの攻撃はヒットし続けているわけだが。


「グォオオオオォオ!」


 と、ここで流石にドライゴーンも耐えかねたのか、興奮気味に鳴き声を上げる。

 最初の咆哮とは違うが、これもかなり頭蓋に響く叫声。


 かと思えば今度は翼ごと己の身を回転させ、攻めを続けるフェンリィがカウンターの翼撃を喰らい、地面に叩き落とされてしまう。


「フェンリィ!」

  

 アンジェが心配そうに声を上げるが、すぐさま立ち上がり、大丈夫、と言わんばかりに鳴いてみせた。

 セイラもその様子を見ていたが、問題無いと判断したのかすぐに視線をドライゴーンに戻す。


 セイラのスキルで変身してたのが幸いしたか。

 多少はダメージはあるだろうが、深刻なものではなさそうでよかったが――


「あんまり調子に乗ってるんやないで!」

「風印の術・輪にゃん!」

 

 ここでカラーナとニャーコも参戦。

 メリッサは一度部屋の外へ退避させたようだ。

 実際それが正解か、この相手の前に出るのは危険すぎるしな。


 しかし――


「なんや急にちょこまかと!」

「躱されたにゃん!」


 そう、ドライゴーンはここにきて急に飛行速度を上げ広間内を飛び回り始める。

 今までのはこいつにとっては様子見だったという事か……完全に舐められてるな。


 それにしても、ここにきて知ることが出来たが、どうやらキャンセルトラップはあまり高い位置にいる相手だと効果が発揮されないようだな。

 

「こうなったら私もエレメンタルリンク(精霊換装)を使用して戦う」

「わかったアンジェ! 俺が補助する!」

「ありがとう助かる!」


 そういってアンジェが動きを止め集中しはじめたので、それをチャージキャンセルし、すぐに発動状態に持っていく。


 アンジェの使役しているウィンガルグが変化し、全身を包む鎧と化した。

 これでアンジェの戦闘力も格段に跳ね上がる。


「ヒット、それに皆も狙うならあの翼だ! 翼を折り地上に落とす!」


 なるほど――確かに地上戦に持ち込めばかなり楽になるかもしれないな。


「それならば私も少しは協力しなければいけませんね」


 俺達の耳に届くはシャドウの声。そして黒い鎖が伸びドライゴーンの片翼に絡まった。


「おお、シャドウ、ナイスや!」


「しかしシャドウ、あんな巨体をその手で支えきれるのか?」

「そんなのは無理に決まってます。ですから――」


 シャドウは創りだした鎖の片方を地面へと突き刺した。

 そうか――片方を楔型にし、鎖と繋げた状態にして逃げられないようにしたわけだな。


「それでは私はこれで」

「て、シャドウも抜けるんかい!」

「当然です。私は本来戦闘は得意でありませんし、あんなのとても手におえませんよ」

「お前達! 主様がここまでやってくれたのだ! その御恩に報いるためにもさっさと終わらせろよ!」


 いや、シャドウはまぁともかく、コアンも出て行くのかよ。


「グウウゥウウウオオォオオオ!」


 そして、片翼を鎖に取られたドライゴーンは振り解こうと藻掻き始める。

 地面に打ち込んだ楔がギシギシいってるな……そう長くは持ちそうもないかもしれない。


「アンジェ! 楔が外れる前に!」

「あぁ判ってる! パワートルネード!」


 ドライゴーンの真下に移動し、地面を蹴ったアンジェが、竜巻を起こしながらドライゴーンを切り上げる。


 エレメンタルリンクの効果で竜巻もかなり巨大化しており、翼を狙うという話ではあったが、竜巻そのものはドライゴーンの全身を飲み込みズタズタに切り裂いていく。

 メインの剣戟はしっかり翼を狙ってはいるようだけどな。


 しかしさっきとは違い確実にダメージに繋がってるようで、ドライゴーンの口からは苦しそうな鳴き声が発せられた。


 ただ翼はまだ繋がっている。流石に丈夫だな。

 すると今度はフェンリィが、さっきのお返しとばかりに翼を重点的に攻め始めた。


「切り裂きの刃、風の刃、我が手より放たん――ウィンドカッター」

 

 そしてセイラも風の魔法に切り替え翼を狙う。


「さっさと落ちぃ!」

「今度こそあてるにゃん! 風印の術・輪にゃ!」


 カラーナのムーランダガー、それにニャーコの忍術が続けて翼に命中。

 

「グゥウアアァアグウウウウオォオオォオオオ!」


 ここで再びドライゴーンが吠える。かなり効いている証拠だ。

 そして俺の見立てではあと一撃であの翼は折れる!

 だから俺はドライゴーンに向かって飛び出し、そしてセイバーマリオネットのモードを追撃に変更させる。

 そこから一気に床を蹴りあげ己の身を螺旋状に回転させ――ジャイロスライサーでドライゴーンの翼を斬り裂きに掛かる。

 生み出した二本の剣による追撃もあってその威力はほぼ倍だ。

 

 その状態での一撃は全員の攻撃で弱まった翼を落とすには十分だったようだ。

 苦悶の声を漏らすドライゴーンを尻目に、ドリルと化した俺の身体は奴の翼を突き破り天井近くまで飛び上がる。


「おお! やったぞヒット!」

「流石ボスや!」

「にゃん! 見るにゃん! 落ちるにゃんよ」

「……無様」

「アオ~~~~ン!」


 翼がもげ、片翼だけになったドライゴーンは、当然その一枚の翼だけで己の体重を支えられるわけもなく、バランスを崩し床へと落下した。

 

 衝撃が部屋全体に広がり、天井から床にかけて振動する。


 そんな中を俺は着地し、その瞬間にセイバーマリオネットの効果も切れてしまった。

 これで暫く俺もセイバーマリオネットの再使用は不可能だが――しかし戦闘はこれで終わりではない。


 何せ墜落し一旦は動きを止めてたドライゴーンだが、再び立ち上がり、グルルゥ、と歯牙をむき出しに俺たちを睨めつけてきたからだ。


 さて、ここからはいよいよ地上戦だな――


 

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