第14話 合流
変態ギンギンミミックを倒した後は、途中魔物を退治したりニャーコの見つけた宝部屋でお宝を回収したりしながらも地下へ地下へと下りていった。
他の皆とも合流する必要があるので、わりと余裕を持って探索した形だけどな。
シャドウの鴉を通して使用した階段の位置を教えつつ通り道には目印を残したりもしてるから気がついてくれるとは思うけど――
「あ~ボスや! やっと合流出来たで! ボス~~!」
あれから更に三階層ほど下りた所で他の皆と合流する事が出来た。
それはいいんだが――カラーナが勢い良く俺に飛びついてきた。
「あ~ボスや~ボスの匂いや~」
胸当ての上から顔をすりすりさせてくんくんと匂いを嗅いでくる――動物みたいだぞ。
まぁでもそこまで喜ばれると悪い気はしない。
とりあえず頭を撫でておく。
「コホンッ!」
て、アンジェが咳きしてジト目でこっちを見ている。
ついカラーナの方に気を取られてしまったけど……メリッサは、にこにこしてはいるけどなんかちょっと怖い気も――
「主様、私としたことが主様をお守りすることも出来ずしかも護衛という立場でありながらお傍を離れてしまい――」
「いいのですよ。それに私がやった事ですし、コアンが無事でよかった」
「ふぁ……あ、主様――」
シャドウも再会したコアンの頭を撫でてあげてるな。
コアンの耳が嬉しそうにピコピコ揺れている。
「みんなラブラブにゃんね」
「な!? 何を馬鹿な! これはそういうのではなくごにょごにょ……」
「まぁコアンは私にとっては大事なパートナーでもありますからね」
「大事な――はぅん……」
頭から煙が出てそうな……そんな雰囲気さえ感じるなコアン。
「てかカラーナ。いい加減にしておいたらどうだ? まだまだ先はあるのだぞ。もう少し緊張感というものをだな」
「そんな事言うてほんまはアンジェかてボスに抱きしめて欲しいんちゃうの?」
「な!? なななっ! 何を言っているのだ貴様は! わ、私はそんな、このような場で不謹慎な、そんな!」
「アンジェの顔が真っ赤にゃんね」
ニャーコがみたまんまの感想を述べる。
まぁ彼女はそういった話に弱いからな……
「でもみんな特に怪我もない様子で良かったです」
メリッサがどこかほっとしたような調子で述べる。
確かにそれが一番心配だったからな。
「それはうちも同じや。メリッサもボスも怪我がなさそうで何よりや」
俺から離れ笑顔で口にするカラーナ。
すると後ろで控えていたセイラが床のそれを指さしながら口を開く。
「……カラーナ荷物……置きっぱなし――」
「アンッ! アンッ!」
セイラとフェンリィも特に怪我もないようで何よりだな。
で、彼女の言ってる通り、俺と再会した途端肩に担いでた袋を放り投げて抱きついてきたからな。
「あぁそやそや。ボス! しっかり戦利品も回収してきたで! 宝部屋みつけて持ってきたんや」
「にゃん! カラーナもにゃんか。こっちもニャーコが色々見つけて回収したにゃん」
「そうなん? へぇそれは楽しみやな! でもこっちは大変やったで。ミミックが現れたりしてな」
「あ、カラーナのところにも現れたのですね」
「ちゅうことはボスの方も?」
「あぁ、なんか凄いのが現れたよ。できればもう見たくもないけどな。メリッサにも目の毒だし」
「は、はうぅう、私はそんな――」
そう言いつつも思い出したのか頬が紅い。
まぁあんなの一度見たら忘れられないしな……
「こっちもアンジェが最初オロオロして大変やったで。全くボスの見てるんやし慣れてるやろうにな」
「だ、誰が見てるんだ誰が!」
「お風呂でみたやろ?」
「あれは見たくて見たわけじゃない! それにそこは、み、みてないぞ!」
「まぁあれもそれなりのもんやったけど、ボスに比べたら大したことあらへんかったしな」
「いやいや! ちょっと待て! 俺はそんな――」
「メリッサもそう思うやろ?」
「えぇぇえ! いやそんな私は、え、え~とその――」
ボッ! と火でも吹いたかのように真っ赤に染まるメリッサ。
てかそんな事いちいち覚えてるわけがないだろう。
大体俺のは……否定はしないが。
「……ヒットにゃん凄いにゃんね――」
「あ、あれよりも……あんな、そこまで、なのか――」
やばい、このままこの話を続けるとアンジェがショートしそうだ。
「と、とにかくその荷物は一旦俺のマジックバッグに入れておこう。荷物になるだろうしな」
「おお~ありがとな~ボス~」
そんなわけでカラーナの回収した荷物を全て俺のマジックバッグに入れなおす。
「う~んそれにしてもやはりマジックバッグがあると便利ですね」
「まぁなっと、よし、これで全部だ」
全ての荷物を移し替えた所でシャドウに目で合図し、それでは探索を再開致しますか、という発言を合図に、俺達は再びダンジョン内を進み始める。
隠し扉を抜けた先を地下一層とした場合、今いる階層はどうやら地下八層に当たるようだ。
いつの間にか結構下りてきていたんだな……それでもまだ下がありそうってことは、少なくともここはシャドウの記憶にある他のダンジョンよりは規模が大きいという事になる。
そして地下七層から感じていた事だが大分現れる魔物も手強くなってきている。
このタイミングで全員が揃ったことは僥倖だったかもしれない。
罠の数も増えてきており、カラーナとニャーコのふたりがいなければちょっとやばかったかもしれないと思うほどだ。
最初の階の大岩などはもうないが、落とし穴は相変わらずで、しかもこのあたりのは底が槍になっていたりと侵入者に対してやる気溢れるトラップばかりだ。
そして――八階の広めの空間ではあのザックが防具の素材にしていた魔獣ブラックタートルの姿。
見た目はそのまんま黒い亀なんだけどな。
防具の素材になるだけに甲羅が硬くダメージを与えにくい。
おまけに頭と手足を引っ込めて、回転しながら体当りしてくるのが基本戦法。
突撃してくるタイプはキャンセルと相性が悪いのが欠点だな。
甲長だけで二メートルはある大型の亀だけに、まともに喰らうとただでは済まない。
まぁ、とはいえ――
「皆さん! そろそろ亀は一度顔を出します!」
メリッサが声を上げてタイミングを伝えてくれる。
そしてメリッサの言葉通り、ブラックタートルの動きが止まり、顔と手足を出した。
この魔獣、回転したままの状態を維持することは出来ないので、途中必ず息継ぎするように元の状態に戻る。
甲羅はこの上なく硬い魔物だが、本体はそうでもないから――そのタイミングで俺はジャイロスライサーで頭に特攻し、更に他の皆の攻撃も纏まったことで断末魔の悲鳴を上げ、あっさりと地に伏せた。
「いやはや、本当に皆様にお願いして正解でした。ブラックタートルと言えば本来エキスパート級の冒険者の加わっているパーティーでなければ厳しいと言われる類ですからね」
シャドウが若干大げさなぐらいの拍手をして見せながら言う。
確かにいくら甲羅以外が弱いといっても、それは甲羅に比べればという話で、だからといって頭や手足の出たところを狙えばだれでも一撃で仕留められるというものではない。
寧ろそれでも頭はまだ硬い方なので、先に四肢を狙い身動きを取れない状態にしてからトドメを刺すのがセオリーだったりするしな。
「でも、ブラックタートルの甲羅は素材としては美味しいでボス」
「あぁそうだな」
それにしても、ここは流石手付かずだったというだけに、手に入る宝関係も多いな。
カラーナやニャーコのおかげでかなりの数の隠し部屋も見つける事が出来たしな。
おかげであの変態ミミックとも何度か遭遇したが……それは忘れるとしよう。
正直夢に出そうだけどな。
「しかしこの甲羅を持っていくのは流石にマジックバッグとはいえ難しいのではないか?」
ふとアンジェが魔獣の亡骸をマジマジと眺めながら言った。
あぁ~確かにこれは結構でかいしな――
「大丈夫やで。ちょっとみときぃ」
言ってカラーナが普段投擲用に使っているダガーを取り出し、ブラックタートルに近づいていく。
「ほれ、ここに甲羅の細かい繋ぎ目があるやろ? そこに刃を滑らせてっと!」
アンジェに説明しながらもカラーナはブラックタートルの甲羅を回収しやすい大きさにまで解体していく。
あんな小さなダガーで凄いな……
「ブラックタートルの甲羅は本体が活動している間は自然と魔力を帯びてる分頑強です。しかし倒してしまえばそれもなくなりますから、甲羅の繋ぎ目に当たる部分は脆くなり解体が可能らしいですね。それでも中々あそこまで綺麗には出来ないでしょうが」
「ふん……一介の盗賊にしては中々やりますね」
「……カラーナ、肉の部分忘れない」
「あぁ判っとるで~」
「え? 肉ってそれ食べれるのか?」
「はい。鑑定では食事の材料としても重宝されているらしいですね」
そうなのか……まぁ鑑定持ちのメリッサがいうのだから間違いないだろうが、俺は甲羅の価値しか知らなかったな。
「……フェンリィにも食べさせたい」
「アンッ! アンッ!」
「むぅフェンリィも嬉しそうだな」
「にゃん、判るにゃん。あれは結構珍味にゃんよ」
「精力もつくらしいでアンジェ~」
「せいりょ……て、何故それを私に言う!」
アンジェが真っ赤な顔で怒鳴った。
しかし精力か……スッポンみたいなものなのかもしれないな。
と、そんな事を話している間にテキパキとカラーナが解体を終わらせたな。
それをマジックバッグに収めてと……しかしいくら一〇〇〇kgまで入ると言っても流石にやばくなってきたかも知れれないな――
このダンジョン、一体何層まであるのやら――
明日は更新お休みさせていただくかも知れません(汗)




