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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部一章 王国騎士団編

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第2話 討伐隊

「ご主人様!」


 俺とカラーナが広場までたどり着くと、喜色を浮かべたメリッサが近づいてくる。

 そしてちらりとおれの腕に組み付いているカラーナの姿をじっと見た。


「あぁいや、これはだその……」

「あ、はい、だ、大丈夫です。いつもの事ですし」


「奴隷とご主人様が仲良うするのは当然やしな。メリッサも空いてる方の腕をとってアピールしてもえぇんやで」


 カラーナがにひひ、と笑いながらメリッサに言う。

 すると、いえ、私は、と頬を朱色に染めながら俯いた。

 メリッサはカラーナに比べると控えめな方だからな。


 そんなメリッサは俺がこの異世界に来た時に初めて出会った女の子で、知り合ったきっかけは盗賊に襲われていたのを助けた事にある。

 その時彼女の元のご主人様は既に殺されていて、色々あって俺の奴隷として契約を結んだ形だ。

 尤も奴隷契約をしたのは成り行き上そうなったみたいなものでそれはカラーナも一緒だ。


 逃亡奴隷として処刑されそうになっていたのを止めるため、俺の奴隷として一旦契約させてもらった形だしな。

 俺としては、いずれはみんなを奴隷から解放させてあげれたらとは思っている。

 ただ……この世界では奴隷の解放の為には元の価値の一千倍の金額を支払う必要があるらしくて、中々前途は多難だ。

 

 それにしても――あいかわらずメリッサは凄いな……青地のドレスは丈が短く、白く細い美脚を余すところ無く披露している。

 それに加え、胸元のV字ラインによって深い谷間も強調されなんとも扇情的だ。

 カラーナも十分大きいがメリッサのそれは更に凄いからな。

 ヘタしたら出会った時より大きくなってるのではないか? とさえ思えてしまう。


 まぁ……このドレスは俺がメリッサに上げたものなんだけどな――建前では貸した事になってるけど、実際は既に彼女のドレスだ。


 勿論このドレスを上げたのにだって理由がある。

 これはミラージュドレスといって、敵意を向けられるとブレたような残像効果を発し相手を惑わすからな。決して助平な気持ちで着せているわけではない絶対。


 そしてメリッサは随分と気に入ってくれてるようで大切にしてくれているようだ。

 

 だけどな……流石にそろそろ別の衣装も用意して上げたほうがいい気がしてきた。

 この世界だと、平民は着替え用の服をもっていない場合の方が多いらしいけどやっぱ女性だしな。 

 それに関してはカラーナも一緒で、動きやすいという理由からかいつも袖の短いシャツとショートパンツといった出で立ち。

 明るく活発な彼女にはよく似あってるともいえるけどな、でもやっぱりな……流石に今はそんな贅沢いってられないだろうけど、機会があれば何か買ってあげたいところだ。


「ご、ご主人様……」

「いやボス……流石にガン見しすぎやない?」


「へ? あ、いや! 違う違う! ちょ、ちょっと考え事してただけだ! 別にメリッサの胸に気を取られていたわけじゃないぞ!」


 くっ! どうやら谷間に視線をロックオンした状態で思考してしまってたらしい。

 なんてこった!


「おお来てたかヒット。て、カラーナは相変わらずだな。全くいつもいつもしょ、少々くっつきすぎではないのか?」


 俺が言い訳してるいると、アンジェが冒険者や盗賊たちの波を掻き分け近づいてきた。

 そのすぐ横にセイラの姿も確認できた。

 彼女の腕の中ではフェンリィが舌を出し、尻尾を振っている。


「なんやアンジェも羨ましいんやったら真似したらえぇやん」

「べ、別に羨ましいとかそういうことを言っているのではない! ただ、と、年頃の娘としてそのような真似を軽々しくするものではないと!」


「はいはい。全く騎士様は相変わらずかったいねん。そんなんやと婚期逃すでほんま」

「余計なお世話だ!」


「ははっ……カラーナもアンジェも相変わらずですね」


 俺の空いてる方の隣に並びメリッサがくすりと笑う。

 確かにな。でもこのふたりはそのやりとりを楽しんでいる気もする。

 最初はお互い喧嘩腰だった気もするけど行動を共にするうちに大分砕けてきた感じだな。

 

 そんなアンジェは、やはり目的が目的だけに今日はばっちりと正騎士御用達の白銀の鎧姿だ。

 鋼とミスリルを組み合わせた特殊な作りらしく、頑強でありながら通常の鋼で作られた鎧より軽く魔法耐性にも優れているらしい。


 足にはグリーヴ、腕にはガントレットと隙のない装備に思えるが、嬉し、いやなんというか胸の部分に関しては谷間が見える仕様だったりもする。

 アンジェもメリッサに負けず劣らない良い物をもっているせいか、おかげでついついそっちに目がいってしまいそうになるが気をつけないとな。


 何せアンジェは今の発言からも分かる通りそういった事には厳しい。

 あまり経験もない(いやこれは男性と接触する機会がという意味だが)らしくかなり初な一面もあったりする。

 何せ男性と手を繋いだのも俺とが初めてだったぐらいだ。

 

 整った顔立ちで確実に美人といえる容姿だけにちょっと勿体無い気もするけどな。

 スラリと背が高くモデルのようでもある。

 海のように蒼い髪は動きやすいよう後ろで纏め下に垂らしている。騎士でありながらも痛みを感じさせない美しい髪だ。


 そんなアンジェは着ている鎧からも判るように、ここガロウ王国の王国軍騎士団に所属する正騎士だ。

 元々はここセントラルアーツの異変を知り調査にやってきていて、その途中で俺たちと知り合い、そして俺も彼女に協力してるうちに信頼関係を築いていった形だ。


 そんな彼女も領主の件が片付いた後は、王国に手紙を送り、その返事が来るまでの間は一緒にここに残って復興を手伝ってくれている。


「……喧嘩するほど仲がいい」

「アンッ!」


 と、ここでフェンリィを抱きしめたままセイラが近づき、相変わらずの無表情と抑揚のない声で言う。

 ただ最近俺はセイラの雰囲気が掴めるようになってきた。

 今はちょっと微笑ましい物を見ているような、そんな感じだな。

 そしてこのセイラも今は俺の奴隷として共に過ごしている。

 元々はザックという糞野郎の奴隷として仕えていて、ご主人様の命令に忠実って感じだったんだけどな。

 神獣フェンリルの子であるフェンリィを引き取り、育て始めてからちょっとずつだけど感情に変化が生じてきている気もする。


 それにしてもセイラはいつもメイド服だな。艶やかなロングの黒髪に白いブリムはよく似あってるけどな。

 更に美少女ということもあって街の男性陣にはかなり人気のようだが……でもやはり彼女にもいずれは新しい服でも買ってあげたいところだ。


「やぁ皆様揃いましたか」


「シャドウ、あぁこっちは予定通りだ。そっちはどうなんだ?」


 シャドウの登場でカラーナとアンジェも一旦おとなしくなり、やってきたシャドウの方へと顔を向けた。


 まぁ結局慣れ親しんだシャドウという名で呼んでいるけど、この全身黒い衣装に包まれた彼の本当の名はシャトー・ライド。

 元々はノースアーツで領主を務めていたライド家の次男だ。

 そして今は領主を失ってしまったここセントラルアーツで仮の領主として皆を先導している。

 

 とはいえ……シャドウも本当変わらないな。この男ときたら貴族が嫌いという理由で家を飛び出し、ここセントラルアーツのスラムで幼なじみで親友のキルビルに協力し、盗品なんかを買い取るブローカーとして名を馳せていたからな。

 

 そのせいか一応領主として動いている今でもどこか怪しいという食えないというか、そういう雰囲気が漂っている。


「こちらも冒険者に盗賊含めて三〇名揃ってますね。後は馬車に乗って出発するだけです」


「三〇! シャドウそんなに集めたん?」


「えぇ。何せ今やノースアーツは魔物の巣窟と化してるような状態ですからね。寧ろこれでも本来は少ないほうかもしれませんが、今後の指針を決める意味ではこれぐらいで様子見が丁度いいといったところでしょうか」


 そう……シャドウのいうように今回の目的はノースアーツ方面を跋扈している魔物の駆除。 

 本当はもっと早くに乗り出せれば良かったんだろうけどな。

 しかしこの一ヶ月、俺達も含めて戦える連中はセントラルアーツ周辺の魔物狩りだけでも手一杯の状況だった。

 

 このアーツ地方で好き勝手やってくれてた魔族は、捕まえた人間を利用して(一部の魔物は人間に子種を植え付ける事が可能なためだ)魔族の繁殖にも利用したりしていたようでそれで魔物の数がかなり増えてしまっていた。

 更に悪いことに放置されていたダンジョンの影響もでかい。

 

 実際俺がやっていたゲームでもそうだが、この世界にはダンジョンというものが存在する。

 そしてこのダンジョンというのは魔物の住処としては最適らしく、更にダンジョン内では定期的に新しい魔物が生まれ放っておくと繁殖し、ダンジョンの外側にまで出てきて人々を襲ったりしだす。


 その為、本来は冒険者ギルドの依頼で定期的にダンジョン内の魔物の駆除が行われているのだが、領主に成り代わっていたアルキフォンスの指示で、ギルドでは俺達が奴を倒すまでの間、一切ダンジョン系の依頼が流れてこなかった。


 何せ冒険者ギルドのギルドマスターが、甘い汁を吸うために貴族同様領主に協力していたからな。

 まぁそのギルドマスターだったギルマスも、俺の先輩冒険者であるモブに倒され、更に今はそのモブが冒険者ギルドの纏め役を担ってるからギルドもまともな体制に戻ってはいるが。

 

 だが、その影響もあってダンジョンで増えつつけた魔物さえも地上に出てくるようになり、更に拍車を掛けて魔物の数が増えたというわけだ。


 なので村を立てなおしたり畑を作り直すにも先ずはその魔物を駆除し、ダンジョンも攻略していく必要があった。

 結局街の復興のために俺たちがこの一ヶ月でやり続けていたのその仕事――本当に大変だった……ここ最近まではずっと魔物を狩ったりダンジョンに潜ったりの繰り返しだったからな……


 まぁそれでもセントラルアーツはダンジョンの数はそれほど多くない。

 棲みついている魔物もそこまで手強いのがいないから、冒険者や盗賊ギルドの面々と協力して漸く村の復興が出来るぐらいまでになった。


 そこでシャドウの提案でノースアーツに蔓延る魔物の駆除にも乗り出そうという話になった。

 今後の事を考えれば土地の確保は必要案件だしな。

 それに、このまま放っておいて魔物が増え続けたらセントラルアーツにも危害が及ぶだろう。


「しかし三十名でいくとなるとどうやっていくんだ?」

「馬車ですね。ヒット様達はいつも使われているので、私も出しますが、一台に五人で六台それに基本的に野営しながらの仕事となりますから糧食を積んだ馬車も一台、合計七台で向かう形になりますね」


 七台――そう考えると結構多いな。ちょっとした商隊みたいな勢いだ。

 それに……


「今の話でいくともしかしてシャドウも一緒にいくのか?」


「えぇそうですね。何せノースアーツは私と無関係ではありませんし、それに……まぁ色々思うところもあるので」


 なんか最後言葉を飲み込んでたような気もするがな……


「しかしシャドウ。仮にも領主の代わりを務めているそなたが街を離れて良いのか?」


「えぇ、その間はキルビルに任せてますので。魔物の討伐とで一〇日程あけることにはなると思いますが問題ないでしょう」


 ず、随分と軽いな。それにキルビルって一応盗賊ギルドのマスターなんだがそれでいいのか?

 いや、シャドウもよく考えたら元は似たようなものだからいいのか……


「そ、そうか……まぁ一〇日であれば代理に任せていても大丈夫なのか」

 

 アンジェが少し不安を滲ませた表情で言い、腕を組む。

 感情的には仕方ないかってところなのだろう。


「今やるべき事はだいたい決まってしまってますからね。寧ろ盗賊達に頼っている部分も大きいですから、キルビルにまかせていた方が上手く廻る事もあります」


 なんかそれだけ聞いてると首を傾げたくなる話に思えるが、実際シャドウの言っているとおりだ。

 そもそもキルビルが纏めあげてる盗賊ギルドは彼らなりのルールのもとで動いていて、魔族に支配されている間も貴族上等、だが弱者には手を出さないがモットーだった。

 そのためか生き残った街の住人の信頼も厚かったりする。

 

 何より今の盗賊ギルドの仕事は冒険者と協力しての魔物狩りだったり、各地に出向いて村の復興の手伝いや開墾や耕作の手伝いだったりするしな。


「セントラルアーツ周辺の魔物関係についてはモブさんにお願いしてますしね。冒険者達の信頼も厚い彼なら上手くやってくれるでしょう」


 まぁ確かにモブならな……俺もこの一ヶ月で彼の力は十分見せつけられた。

 特にヘイトウォーリアは敵じゃなくてよかったと心から思ったな……

 本人はその力を使った為、解放軍に加わっての戦いの際は東門を壊すはめになってしまい、後々平謝りだったようだけど。


「それにしても……そもそもシャドウは戦えるのか?」


「はは、まぁ積極的にはいきませんが、サポートぐらいはしっかりこなしてみせますよ」


 薄い笑みを浮かべながらシャドウが応える。

 シャドウクリエイター(影使い)のスキル持ちではあるが、本人曰くあまり戦闘向きではないらしいからな。


「主様の事はご心配に及びません。命に替えても私めがお守りいたしますので」


「て! 君はコアン! いつの間にそこに?」


「失礼な。私はいつだって主様のお傍で控えております」


 おかっぱ頭の犬耳少女が、研ぎ澄まされた瞳を俺に向けてきた。

 コアンはシャドウを主と敬い、従者を務めている女の子なんだけど、声がするまで全く気が付かなかったな。流石はアサシンのジョブ持ちといったところか。


「コアン、そんな威嚇するような目を向けない。今回は一緒に仕事をする仲間なのですから」


「は、はい! 失礼致しました! 主様のお考えを無視してこのような! 誠に! 誠に!」


 コアンが膝をつきシャドウに向けて平伏してみせる。

 俺に対する態度とは段違いだな。

 だが流石にこれにはシャドウも困った様子を見せる。ちょっと面白い。


「コアン、そこまでしなくてもいいですから頭を上げて立ち上がって下さい」


「お、お許し頂けるのですか?」


 ペタンとしおれていた犬耳が立ち上がりぴょこぴょこと跳ねまわる。

 なにこれ可愛い。


「許すも何も別に怒っていませんから。ほら立って」


 シャドウが手を差し出すと、何かキラキラしたエフェクトが舞い上がってるかの如く様子を見せながら、その手を取り立ち上がる。


 本当にシャドウの事が好きなんだなこの子……


「ところでシャドウ。馬車での移動の事で一つ提案があるんだが」


「おや? ヒット様からご提案頂けるとはありがたいことです」

「茶化すなよ」


 大袈裟に両腕を広げて笑顔を見せるシャドウに、呆れながら返す。

 そして俺は自分の考えを口にした。


「ノースアーツの件だが、俺達で先に移動してある程度相手してしまうのはどうだ? 俺の能力ならそれも可能だしな」


 シャドウや仲間には、ある程度俺の力のことを話している。

 だからシャドウもそれで察するとは思うんだが――ただシャドウの笑みが少々固くなり。


「そのご提案はありがたいですが、折角ですが遠慮させて頂きます。それと今回の仕事、少なくとも外での魔物の狩りに関してはヒット様たちには私と同じようにあまり手出しせずサポートに徹してもらいたいと思ってますので」

 

 へ? サポート?


 

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