幕間②
メリッサ視点の第一部ダイジェストです。
幕間①からの続きです。
本編のネタバレを激しく含む内容となっております。
無事セントラルアーツから逃げ出したヒット達であったが、問題はこれからどこへ行くかであった。
ヒットは一旦セントラルアーツの北に位置するノースアーツに向かい、そこからアーツ地方を抜けだそうと試みる。
ちなみにノースアーツはヒットがこの世界に来る以前に大量の魔物の襲撃にあい、壊滅した地でもあった。
アーツ地方を抜けるための境界の近くには砦が立っている。
ヒットはそこでなんとかアーツ地方を抜けようと試行錯誤を繰り返すが――結局は徒労に終わる。
そしてそれはメリッサも判っていた。ヒットはこれまでもなんどか一行に人前に姿を見せない新領主の正体を探ろうとセントラルアーツの領主様の城にも乗り込もうとしたようだが、メリッサにはそれも理解が出来なかった。
何故なら領主様に逆らうことなど誰にも出来るはずがないからだ。
そしてこのアーツ地方から出ることも――
ヒットは結局何らかの障害によって抜けることが叶わないと知り、砦の中に何かヒントがあるかもとメリッサとカラーナを連れ砦の探索を行う。
だがその途中チェイサーの能力によってヒット達の居場所を突き止めたチェリオがやってきて砦内にて見つかってしまう。
そしてメリッサはチェリオの口より衝撃の事実を聞かされる。
チェリオは――メリッサとの愛を成就する為に自らの手で両親を殺し、メリッサを貶め正妻の座についた女も殺し、更に――メリッサの父と母、そして妹までもその手に掛けたのである。
目の前に家族や妹の首から上、変わり果てたその姿を並べられ慟哭し崩れ落ちるメリッサ。
メリッサは家族には無事生き残って幸せな暮らしを続けて欲しかったのである。
だが――その願いはもう叶わない。
その様子に遂に切れたヒットはチェリオに刃を突きつけるが――チェリオの能力により跪かされてしまい一切の動きを封じられてしまった。
身動き取れないヒットの首にチェリオの抜いた剣が迫る――
だがメリッサは意を決したように叫んだ。
チェリオにおとなしく付いて行くと、だからヒットとカラーナは助けて欲しいと。
その言葉を聞き機嫌を良くしたチェリオは、帰還の玉を使用し、メリッサを連れイーストアーツの街に一瞬で帰還した。
そしてどこか誇らしげに自らが治める街を見せて回るが――そのあまりの酷さにメリッサは声を失った。
街なかではなぜか魔物の姿も見られ、人よりも魔物の方が扱いが良いぐらいであり、道端で倒れピクリとも動かない人々も散見された。
メリッサは苦しそうに水を求める一人の男を発見し、駆け寄りチェリオに彼を助けるよう求めたりもしたが――彼はその男をゴミ扱いし首を切り、殺した。
メリッサはチェリオを平手で殴り、自分も殺せ! と涙ながらに叫んだ。
だがチェリオにその想いは届かず――無理やり屋敷に連れて行かれ部屋へと案内される。
メリッサはチェリオのあまりの変わり様に言葉を失っていた。
昔はとても大人しく虫も殺せないようなほどであったのに、今はまるで息をするように人を殺す。
部屋でやはり得意そうに話を進めるチェリオを他所に、メリッサはどうにか抜け出せる手段がないか思案するが、入り口は一つで奥にはベランダもあるが、その下は断崖絶壁でありとても逃げ出せそうにない。
メリッサには不安があった。彼女は気がついていた。
このイーストアーツに戻ってから、あのザックという男とセイラという奴隷の姿がなかったことに。
もしかしたらザックだけはあの場所に残ってご主人様を――そんな嫌な考えが脳裏をよぎる。
そんな一抹の不安を覚えていると、部屋に若いメイド姿の女性と腹の膨らんだ商人が顔を見せた。
彼女はメリッサの世話係を任された侍女のレイリア。
そして商人はメリッサの隷属の魔導具の書き換えの為にやってきたのだ。
その奴隷商人の手によってメリッサはチェリオの奴隷として登録されてしまうが――しかしチェリオはそれ以外の制限は全て取り去ってしまう。
この事はメリッサにも意外であったが、チェリオはメリッサを愛してるからこそ奴隷扱いはしないと言いのけた。
その考えはヒットにも似たものであったが、根幹にあるものが全く違う事はメリッサにも理解できていた。
チェリオの考えはとかく歪んでいる。
だが、この事はメリッサにある決意を呼び起こさせる。
何故なら、奴隷としての制約がなくなった瞬間メリッサの中にふたつのジョブが降りてきたからだ。
それはドラッカーとチェッカーのジョブ。
そしてこれによってメリッサは鑑定のスキルも手にすることが出来た。
メリッサはその後引っ込んだチェリオの様子からヒットが恐らくザックを打ち倒しこの街に向かっている事を察する。
だからこそ、チェリオの能力を看破することが自分のやるべき事だと考えた。
だが鑑定は必ずしも万能な能力ではない。何故なら鑑定は相手との実力差で鑑定するまでの時間が異なるからだ。
そして鑑定している間は相手から決して目を離してはいけない。
メリッサは一度は食事の席でチェリオに話を振りながら鑑定を試みるが、彼の配下のガイドという男に阻まれ失敗してしまう。
おまけに侍女として付いていたレイリアのミスでチェリオが憤慨し、あわよくばレイリアの首すらも刎ねられるところに――だがそれはメリッサの毅然とした物言いにより回避され、部屋に戻り紅茶を飲ませ、ベランダにて夜風にあい震えるレイリアを何とか落ち着かせる。
するとベランダに降り立つ何者かの影、その正体はあの王国の正騎士である女騎士アンジェであった。
どうやら彼女は領主の事を調べるに当たり、このイーストアーツを治めるチェリオも何かしら領主と関係していると考え話を聞きにやってきたようだ。
だがその途中、チェリオを討つべく行動しているレジスタンスのメンバーと知り合い、そのリーダーの協力もあって屋敷に潜入することが出来たらしい。
アンジェからある程度話を聞いた後は、今度はメリッサから知ってる限りの情報を伝えた。
それを聞き、メリッサが軟禁状態にある事を知ったアンジェは、ここは一旦一緒に逃げようと提案するがメリッサはそれを拒み、自分ではなくレイリアを連れてこの場を離れてほしいと頼み込む。
メリッサの回答に戸惑いを見せるアンジェ。
しかしメリッサはいまここを離れるわけにはいかない。
レイリアはメリッサを残してはいけないと言ってはいるが、チェリオがまたいつ逆上してレイリアを手に掛けようとするか判らない。
それに話によるとレジスタンスのリーダーであるゲイルはレイリアもよく知っていて想い人でもあるようだ。
ならばここは離れてもらったほうが安心できる。
部屋にガイドがやってきたこともあり、メリッサの気持ちを汲み取ったアンジェは、レイリアを連れベランダから飛び降りた。
エレメンタルナイトのアンジェであれば、風の精霊獣の力でこの断崖絶壁でも無事降りる事が可能だろう。
ガイドに責められるメリッサだが、チェリオが自分に好意を寄せてる事を免罪符に強気な態度で接した。
文句をいいながらもガイドは部屋を後にし――それから暫くしてチェリオが部屋にやってきた。
夜も更けてきたこの時間の来訪――メリッサから見てもチェリオの目的は明らかであった。
だが同時にチャンスでもある。
そしてメリッサは――チェリオにベッドに押し倒され危うくその操を奪わえるところではあったが、ぎりぎりの所で鑑定が発動。
チェリオのステータスを知ったところで上手く誤魔化し、貞操の危機を免れた。
そしてその後もチェリオの配下のガイドやジュウザの鑑定を成し遂げ、メリッサは瓶に相手のステータスを認めた手紙を入れベランダから放り投げた。
きっとアンジェであれば気づいてくれると信じてのことである。
そしてそれから程なくして屋敷に配置されていた魔物が慌ただしく動き出し、その様子からヒット達がレジスタンスと共に行動に出ている事をしる。
外を守っていたジュウザも倒され、ガイドに関してはチェリオを置いて逃げてしまったようだ。
そしてメリッサは自分にもなにかできる事はないかと模索するも――鬼の形相のチェリオがやってきてメリッサの口に猿轡を噛ませ、更に手枷を嵌めてきた。
これではもうメリッサの力ではどうしようもない。
チェリオの突然の凶行に為す術もなかった。メリッサはそんな自分が情けなく思ったが、チェリオは構うことなくメリッサを連れ無理やり大広間へと連れて行く。
「あのヒットとかいう馬鹿が君を助けに来たらしい。愚かな事だ! いい機会だメリッサ。この部屋であの男に惨めな死を与え、君の未練を断ち切ってみせよう!」
メリッサは猿轡をされた状態で必死に藻掻くが声にならない。
するとチェリオの息遣いが荒くなっているのを感じた。
「そうだメリッサ。折角だからもうここで君と契を結ぼう。あの男がやってきた時、メリッサと私の愛が成就されていた事を知ったらどんな顔をするか……そう考えるとたまらないな!」
言ってチェリオがメリッサの来ていたドレスに刃を近づけた。
無理やり切り裂いて、そのままあの時の夜の続きをしてしまおうという考えなのだろう。
メリッサが暴れても今のチェリオの力は見た目に反して強い。
このままでは――そうメリッサが思った時、チェリオが、チッ、と舌打ちし、刃を戻し腕に腕を絡めた。
と、ほぼ同時に扉が開き――そこにヒットの姿。
思わず涙が出そうになるが、チェリオの考えを知っているメリッサは、なんとか危険を知らせようと声にならない声を発し続ける。
だが――それは杞憂であった。ヒットはチェリオが用意していた弓兵達も難なく駆除し、更に一瞬でメリッサのもとに駆け寄りチェリオの腕から引き剥がし、そして縛めを解いたのである。
ヒットを目の前にしてメリッサは、自分の感情が抑えきれず思わずその胸に飛び込んだ。
するとヒットはメリッサの髪を優しく撫で謝りの言葉を述べてきた。
ヒットの優しさが、そして助けに来てくれた事がただただ嬉しかった。
チェリオが何かを喚き散らしているが全く耳に入ってこない。
するとヒットは何と――メリッサに愛してると告げ、メリッサにその唇を重ねてきた。
突然の事に頭がぽーっとなる。身体が熱くなる。一秒が一時間にも感じられる至福のとき。
そしてヒットの唇が離れた後も暫く余韻に浸るが、それを邪魔するようにチェリオのスキルが発動。
今度はメリッサも含めて凄まじい圧力によって強制的にその場で跪かされてしまう。
このままではヒットも危ない。
おまけにチェリオは自身の誇る最大の技を繰りだそうとしている。
が、しかしチェリオが放ったスラストラピディティはヒットに届くことなくキャンセルされる。
そして更にヒットはスペシャルスキルであるキャンセルアーマーを発動。
これは数秒間己の身に迫った攻撃を全てキャンセルしてしまう能力である。
ヒットはこの時点でジョブがキャンセラーからハイキャンセラーに進化しており、新たなスキルも数多く覚えていた。
そしてヒットのこの力でメリッサの状態も回復し、チェリオも進化したヒットの前に破れ哀れな骸と化した――
◇◆◇
チェリオを倒した後、ヒットはメリッサに気を使ってか早々に部屋を出た。
こんなことになってしまったとは言えチェリオはメリッサの幼なじみでもある。
その事に気を遣ってくれたのであろう。
その気持が嬉しいメリッサであったが――ただ、事が終わるとどうしてもあの燃えるような口吻の事が気になってしまう。
そこで意を決してご主人様であるヒットにその事を切り出すメリッサであったが――
「メリッサ! 済まなかったーーーー!」
ヒットが突然ジャンプしそのまま床に正座状態になり平伏してきたのである。
これには思わずメリッサも驚嘆してしまった。
だがその後紡がれたヒットの言葉にメリッサは少なからずショックをうける。
何せヒットは、あの口吻を演技のつもりで行ったというのだ。
これには流石に怒りさえ覚えたメリッサであったが、俺を殴れと言ってくるヒットは本当に申し訳なさそうであり、どうにもその怒りも霧散してしまう。
「……ご主人様は私とはしたくなかったのですか?」
しかしメリッサもこれだけは聞いておきたかった。
全くその気がヒットにはないのかそれとも――だがその後返されたヒットの言葉にメリッサの鼓動が高鳴る。
どうやらヒットはメリッサの気持ちに未だ気がついていないようで、したいけどお互いの気持が大事などとずれたことを言ってはいたが――しかしこの鈍さもご主人様のいいところ、とメリッサはデコピン一発でヒットを許した。
そうこうしてるうちにアンジェやカラーナが駆けつけ、そしてイーストアーツの解放も終え全員で屋敷を出た。
街に戻ってからレジスタンスに歓迎される一行。
そして外にはセイラの姿。メリッサはヒットからザックを倒した事でセイラも奴隷に加わったのだと説明を受ける。
セイラがここに残っていたのは逃げたガイドにトドメを刺すためだったようだ。
そしてメリッサに付けられた隷属の魔導具の内容を書き換えた奴隷商人が連れて来られ、メリッサとセイラの内容を書き換え、これで正式にヒットの奴隷になることができた。
思わず涙を流すメリッサをヒットが優しく抱きしめ包み込んでくれた。
この幸せな時間をいつまでも感じていたい。
そう考えもしたメリッサだが、しかしまだ全てが終わったわけではない。
イーストアーツ解放の祝賀会も終わり、次の日の朝ヒットがセントラルアーツに戻る決意を示した。
そしてメリッサも含めそれに異を唱えるものもいない。
更にそのタイミングでシャドウが影を操る能力で作り出したシャドウナイトが手紙を持って街にやってきた。
ヒットがセントラルアーツに残してきた馬車も一緒にである。
そして手紙には、今セントラルアーツでは結成された解放軍が貴族や銀行を相手に反旗を翻した旨が記載されていた。
こうしてはいられないと一行はシャドウナイトを御者にセントラルアーツへ向けて出発する。
途中セントラルアーツから逃げ出してきた冒険者崩れが襲ってきたりもしたが返り討ちにし、橋が壊れていたため迂回した先の洞窟では行く手を阻む魔獣フェンリルを相手にもした。
この時フェンリルは子供を身篭っておりそれに気がついたセイラの言葉で戦闘を中断させ、出産を手伝い子フェンリルを取り出したりもした。
だが無理が祟り母フェンリルは最期を迎え、セイラがその子フェンリルの雌を引き取ることとなった。
この事があってセイラは高位職であるビーストテイマーのジョブを手に入れる事になる。
新たな仲間となったフェンリルの名前もフェンリィに決まり、一行はセントラルアーツへの道を急ぐがそこで魔物に追われているダイモンの馬車を発見。救出する。
助けたダイモンの話では、シャドウの提案で魔物に襲撃されている各地の村に向かい、少しでも多くの人々を救出しようとしていたらしい。
そしてダイモンと一緒に逃げていた馬車の中には、以前ゴールドに歯向かい、左腕、右足、左目を奪われたゴロンの姿もあった。
どうやら父親であった村長は魔物にやられ死んでしまったようだが、彼と村の娘や子どもたちは無事だったらしい。
ヒットはゴロンがこんな事になったのは自分にも責任があると負い目を感じていたようだが、それはゴロンの言葉で払拭された。
彼は寧ろヒットには感謝しているという。
そんなゴロンにメリッサは鑑定を試みる。するとかれの失われた部位はゴールドの能力で担保として取られているだけであり、倒しさえすれば元に戻る可能性があることをヒットに伝える。
これによりヒットはゴロンの為にもゴールドを討ち倒す事を誓う。
そんなご主人様をとても誇らしく思うメリッサであった。
そして一行はセントラルアーツに向かい、そこで門を守る魔物たちを襲撃する。
この時メリッサにも新たなジョブとして高位職スポッターの力が降りてきていた。
これで鑑定も強化され更に覚えたスペシャルスキルの力で魔物たちを倒すのにも一役買い――そしてセントラルアーツに侵入を果たしたヒット達は約束通りゴールドを打ち破り、そして更にゴールドが金庫に残していた秘密も手に入れた。
更に金庫の中身を解放した事により元はチェリオの持っていたスペシャルスキルである、ロードオブテリトリーの効果も切れた。
このスキルは領主に対して逆らう気持ちを一切なくさせるものであったが、これにより人々は奮起し打倒領主を掲げるようにもなる。
そして金庫を開けるため、そして情報を手に入れようと、とりあえず捕縛しておいたゴールド。 だが、途中乱入した魔族のベルモットの手によって死んでしまう。
ゴールドはどうやら自らも魔族になることを望んていたようだが、結局それは失敗し魔族になりきれず弾け飛んだのだ。
そしてどこかつかみ所のないベルモットはカオスドラゴンに乗って飛び去ってしまう。
しかしベルモットこそ取り逃がしたものの、金庫から手に入れた情報や北門に張られた結界をメリッサが鑑定したことで、今セントラルアーツを治めているのは本来の領主を殺し、成り代わっている魔族である事を知る。
更に領地から出れないのはその魔族が領地を覆うように張ったこの結界によるものだ。
だがしかし、その結界もエルフのエリンギが作成した魔導具によって一部が消え、ヒット、メリッサ、カラーナ、セイラ、アンジェの五人が魔族が鎮座する城に向かう。
途中、城の門を守る魔獣ガルムはセイラとフェンリィが引き受け、更に魔族が待ち構えている塔の一階では、カラーナを処刑しようとしていたメフィストとベルモットが創りだしたという魔物と人間の合成体をアンジェとカラーナが引き受けることとなり、ヒットとメリッサはふたり塔の最上階を目指した。
そして辿り着いた最上階の部屋では魔族のアルキフォンスが二人を出迎えた。
塔の屋根を開き、更に結界を塔の周りだけに展開した為、北門前で待っていた冒険者や盗賊ギルドの面々が城の近くに集まりだす。
どうやらアルキフォンスは人々の見ている前でヒットを殺し絶望を与えようと思っているらしい。
しかしメリッサはご主人様であるヒットを見下すアルキフォンスに向かって、ご主人様は絶対に貴方なんかに負けない、と強い口調で言い放った。
その態度が気に入ったのかアルキフォンスはヒットを殺しメリッサを奪い子を孕ませるとまで言ってきた。
その事に悪寒さえ覚えるメリッサであったが、それが結果的にヒットの逆鱗に触れる事となり、戦闘は開始される。
途中メリッサの鑑定がヒットのスキルで瞬時に発動され、メリッサは敵の能力を伝える。
その事が功を奏しアルキフォンスは段々と追い込まれていき、更に下からアンジェやカラーナも駆けつけ、ふたりの助けとメリッサのスペシャルスキルを組み合わせる事で、城の前で見ていた冒険者や盗賊ギルドの面々の一斉攻撃がアルキフォンスへと注がれる。
満身創痍のアルキフォンス。そしてアンジェの最大の一撃とヒットのトドメの一撃により遂に領主に成り代わっていた魔族を討ち取った――
◇◆◇
全てが片付いた事で街中に歓喜があふれた。そして英気を養うため勝利の宴が開かれ、ゴロンの身体も元に戻ったことも知った。
だがこれで全てが終わったわけではない。この戦いで周辺の村も街もかなりの損害を受けた。
この地を建てなおすためには新たな指導者が必要であろう。
だがそれは実はノースアーツの領主の次男でもあったシャドウが一旦担ってくれる事となった。
そしてヒット達はとりあえずは街の復興を手伝う事とした。
勿論メリッサも一緒だ。
メリッサにとってご主人様であるヒットは誇りでもある。
彼と一緒ならどんな苦難でも乗り越えられる――
(本当に私はご主人様の奴隷になれて幸せものです)
ヒットの横顔を眺めながら改めてそう思うメリッサであった――




