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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第161話 エピローグ

本日で第一部完結となります

「メ、メリッサは私の部屋で寝かせた方がいいんじゃないかな~大分酔っ払ってるみたいだし~」


「……はい?」


 宿の部屋の前までたどり着くと、途端にアンジェの挙動がおかしくなり、目を逸らしながらそんな事を言ってきた。


「一体突然どうしたんだアンジェ?」


「よ、良いではないか! 私はメリッサには色々と世話にもなってるしな。こういう時ぐらい面倒をみたいのだ!」

 

 アンジェは眉を落としつつ、語気を荒らげると、俺の肩に担がれていたメリッサを手繰り寄せる。

 なんか今日のアンジェは強引にも感じられるが。


「そしてセイラ! セイラとフェンリィもどうだ一緒に? 特にフェンリィはガルとも仲が良いしな! うんそうだ、そうしよう!」


「……奴隷はご主人様の」

「そうかそうか! いやぁガルも喜んでるなぁ」


 今度はメリッサを担いでる方と別の手でセイラを引張り、そのまま胸部に押し付けた。

 男だったら嬉しいシチュエーションだろうな……しかしセイラはなんかむごむご言ってるが。


「なんだ? みんなアンジェの部屋でという事か? それならカラーナも……」


「いやぁ私の部屋は、もうこれで一杯だな~これではカラーナはヒットと一緒の部屋に行くほかないな~で、でもヒット! だからってあ、あまり変な事は、へ、部屋も近いんだし。それじゃあ! お休みなさーーーーい!」


「へ? お、おい!」


 ……行ってしまった。メリッサとセイラを連れてまるで逃げるように自分の部屋に帰ってしまった。


 ……なんなんだ? 一体どういう状況なんだこれは?


「……全くアンジェも無理するんやからな――」

「え? 無理?」


「……まぁ無理っちゅうか気を遣ってくれたんやな」


 俺が問い返すように言うと、俺の隣に立ったカラーナが微笑を浮かべながら答える。


「だってアンジェ……あん時うちと一緒やったから――」


 あ、と思わず声が漏れた。それで俺も理解が出来た。

 そうか、カラーナは今回の戦いで自ら仲間を――


「で、ボスどないすん?」


 カラーナは、俺の手を取りながら尋ねてくる。

 ……当然俺もそれを聞いたらな。

 だから、入るか、と言ってカラーナと部屋に戻った。





「はぁ~やっぱり家に戻ると落ち着くなぁ~ボス~」

「いや、家ってここ宿だしな」

「う~ん、でもここ長いこと世話になってるしもう家みたいなもんやねん」


 ベッドの上に寝っ転がって気持ちよさそうにそんな事を言う。

 それに俺が返すと、上半身を起こし、猫のような愛らしい笑顔を向けてきた。

 改めて可愛いなとも思うが……や、やはり緊張はする。

 

 いや、カラーナとふたりというのは前にもあったけどな――


「ボスも立ってないで座ったらどや?」


 ベッドの上を叩きカラーナが促してくる。

 俺はというと装備品は脱いでバッグにしまい、シャツとズボンといったまぁまぁ楽な格好に。


 カラーナも袖の短い薄手のシャツと、太腿が顕になるぐらいの丈のパンツといったラフな出で立ち。


 部屋にある魔灯は周囲を僅かに照らし、カラーナの褐色の肌が妙に悩ましくも感じられる。

 メリッサとアンジェに比べると、カラーナの胸は一回りほど小さくも感じられるが、普通に考えればそれでも十分な大きさであり、シャツから垣間見せる谷間に情欲を覚えてしまうのは男としては仕方のないことなのだろう。


 とはいえ――俺はカラーナの隣に腰掛けながらも、平常心を保つよう努める。

 確かにそういった事情から俺もカラーナの傍にいてあげたいと思えるし、アンジェだってその意味で気を使ったのだろう。

 だが、それは別にそういうことをしろという意味ではないし、第一からして逆にそんな時にそんな事など出来るはずもないだろう。


 俺の役目は消沈のカラーナを慰める事――カラーナは普段は苦しいとか辛いとかそんな事をお首にも出さず、常に明るく接してくれる。

 それは俺たちに心配かけまいと思ってのことかもしれないけど、でもこういう時ぐらいはな――


 俺がそんな事を考えていると、カラーナはふと顔をあげ、そしてその柔らかそうな唇を動かし、

「……皆の事聞いてもらってもえぇ?」

 

 そう、俺に訪ねてきた。

 ……そうだな。そうなんだよ。カラーナは好きだった仲間の事を、誰かに知ってもらいたかったのだろう。


 だから俺はカラーナの話してる間、聞き役に徹した。

 もちろんすべての話にしっかり耳を傾けた。

 カラーナがどれだけシャドウキャットのメンバーに可愛がってもらっていたか、どれだけ慕っていたか。

 皆がどんな人物だったか――そしてどんな気持ちで片を付けたか。

 最後にかつてのボスをその手にかける直前、カラーナは、俺のことを告げたようだ。

 そして俺のために――だからこそ。

 その気持は切なくもあり、嬉しくもあった。


 最後まで話しを聞き終え、俺は思わずカラーナの頭に手をおき、くしゃくしゃに撫で回していた。


「いや、ボス、もうそれ――」


 カラーナがこうやって撫でられるのを嫌がってそうで本当は好きなのはそういう事なのだろう。

 きっと前のボスが、彼女によくやっていた事なのだろう。

 俺に撫でられているカラーナは、声を途中で落とし、そしてじっと俺の顔を見つめてくる、


 ちょっとだけ瞳に涙が溜まっていた。


「泣きたいときは泣いたっていいんだぞ?」


 俺が告げる。カラーナは俺の胸に顔をうずめ、しばらく泣いた。

 俺はそんなカラーナの頭を撫で続けていたが。


「うん、もう大丈夫。なんかすっきりしたわ」


 そういって顔を上げたカラーナの表情にはいつもの笑顔。

 俺は微笑みかけ、そろそろ寝ようか、と告げた。

 勿論これは嫌らしい意味ではないんだが――


「……なぁボス。一つお願いがあるんやけど……」


「うん? 何だ? 遠慮せずにいってみなよ」


 目線をベッドに落とし、カラーナが躊躇いがちに訊いてくる。

 その仕草はなんとも愛らしいが――とにかく聞く態勢で待っていると。


「今夜うちのこと――抱いてくれへん?」

「ん? なんだそんなこ、はぁ~~!?」


 俺は思わずゴムにでも引っ張られたかのごとく勢いで上半身を後ろに下げ、素っ頓狂な声を上げてしまった。

 いや、抱いてくれってそれは――


「ま、まっままっ、ちょいまっ、いやカラーナ! 俺も出来る限りの事はしたいと思ってるが、それでもやはりそういうことは、その、なんだ。いやだって――」


「……ぷっ、くくっ、あかん、あははっ。もうボス慌てすぎやん。そんなん笑ってまうで」


 俺があたふたしていると、カラーナが吹き出しそのままおかしそうに笑い出す。

 な、なんだよ一体。

 とりあえず俺は目を細めてカラーナをじっとみやるが、すると、堪忍堪忍、と右手を振り。


「ボスの思ってるのとはちゃうんやで。うちな、今夜はボスに抱きしめられたまま寝たいんや……駄目?」


 顔を寄せてきて上目遣いで媚びるように訊いてくる。

 ブラウンの大きな瞳に捕らえられ、俺は思わずドギマギしてしまうが……それぐらいなら、な。


「そ、それぐらいでいいなら」


 まぁ、というかこれまでも寄り添うようにして寝ていたりはしたわけだし、抱きしめるぐらいなら断る理由がない。どころか男としてはこんな嬉しい話はないわけで。


「ボス、うち、嬉しい」

「そ、そんな改めて言われると照れるな」


 俺は頬を掻き気恥ずかしさで目を逸らす。

 すると、じゃあ、とカラーナが口にし、そして俺が視線をカラーナに戻すと、シャツを脱ぎ、ブラをはず、ほわっ!


「な、なな、なんで! どうして!」


 俺は顔を背け目を瞑り、思わず叫んだ。

 心臓がバクバクいってるし、いや違うよな? そういう意味じゃないんだよな?


「どうしていうても……うち前いわんかった? いつもうち寝る時は何も着ないねん」


 ……た、確かにそんな事も言っていたような――


「それに――」

「ふぁ!?」


 カラーナに背中を向けていた俺に、恐らく完全に上を脱いだであろう、カラーナのそれが重なった。

 背中に感じる柔らかい感触……こ、これは流石に。


「……今晩は、うちボスの温もり直に感じたいねん。だ、め?」


 最後は消え入るような声で――俺に訴えかけてきた。

 今のカラーナにそこまで言われて……断ることが出来るだろうか? いや、出来るわけがない。


「わ、判った。でも、ベッドには先に、そしたら俺もいくから」


 これが今の精一杯だ。

 ……てか、これだと本当にそういう事をするのではと思えそうな程だが。


「うん、判った。でなボス。ボスも出来れば……これ、脱いでくれると、うち嬉しい」


 俺の着ているシャツを引っ張りながらどこか甘えるような声。

 ふ、服……いや、だが、しかしカラーナの頼みだ。

 そうだ精々シャツ一枚だ。こんなのあったって無かったって大して変わらないはず!

 だから俺はそれも承諾し――カラーナがベッドに潜り込む音を認めた後、シャツを脱いだ。

 ただ腰から下だけは勘弁してもらったけどな!

 流石にこの状況で平常心を保てる自信はないし、そっちのガードがなければ俺のいきりたったそれがモロにカラーナに触れる可能性もあるしな……


 上半身を晒し、深呼吸を数回する。そして意を決して――俺はカラーナを振り返った。

 カラーナの身体の殆どはベッドのシーツに覆われていたが、褐色の艶やかな肩と、形の良い谷間に思わず目が釘付けになりそうだ。

 ベッドに横になっていたその顔は傾き、俺の身体をまじまじと眺めてきていて、それはそれで恥ずかしくもあり、身体の奥がカーッ、と熱くなるのを感じてくる。


「ボス改めて見るとえぇ体――」


 改めてそんな事を言われると、俺も反応に困る。

 というか、何度も心のなかで言い聞かせるが、別に彼女とそういう事になるつもりではない。

 

「お、お邪魔します……」


 にも関わらず、俺はどうにも畏まった感じに頭を下げ、シーツを持ち上げ手早く中に潜り込んだ。

 俺のそんな様子がおかしかったのか、カラーナがクスクスと笑い……そして俺の身体にその褐色の肌をあわせてくる。


 こ、これは――たかが一枚と思っていたが、まさかシャツ一枚着ていないだけでここまで感触が変わってくるなんて……この世界での俺の身体はかなり引き締まった感じの筋肉を纏い、明らかなマッチョという体型ではないが、それでもカラーナに比べれば当然ガタイはいい。

 だからか、カラーナは腕を回すのではなく、俺の胸板に両の掌を合わせ、そのまま、なんというか上質のクッションのようなふたつのそれを密着させてきている体勢だ。


「ボス暖かい……熱いぐらいかも――」


 言って頭を擡げたカラーナの瞳に俺の顔が映り込む。

 どこか濡れたような瞳――熱いのは、当然だろう。

 正直下に関しては脱いでなくてよかったと本気で思う。

 俺も男だからな……この状況で反応しないほど枯れてはいない。

 

 だけど、当然ここはグッど我慢の子だ。ただ約束ではあるし、俺は美しくも脆いガラス細工を手に取るように、腕を回し優しくカラーナの身体を抱きしめた。

 その背中は今の俺には少女のように小さくも感じる。だがその手触りは上質なシルクのようでもあり、ここまでくるといつまでも触れていたい気持ちが溢れ出してくる。


「う、ん――」

「あ、ごめっ!」


 カラーナの漏らした吐息でつい謝ってしまった。

 つ、強く抱きしめすぎたかなと……


「謝らんというて。ボス、優しいし、触れられてるだけで――」


 カラーナの頬が朱色に染まる。そして俺の顔もきっと真っ赤だろう。

 というか、今ので思わず手がずれてしまい、左手が彼女の、お、お尻にいってしまった――ぷにぷにと柔らかくて、て違う! 

 これはやはり一度放した方が……


「ボス……」

「え? んぐぅ!?」


 カラーナの声に俺が顎を引くと――その瞬間カラーナの唇が重なった。

 俺の頭が一瞬真っ白になる。

 それから数秒、俺にとってはかなり長く感じたりもしたが――彼女の柔らかさを自らの唇で感じ取り、呆けてしまいそうになったとこで、ん、と漏らし、カラーナの顔が離れた。

 勢いをつけて飛び込むような形でのキスだったようで――それが終わると顔と一緒に身体も軽く持ち上がり、カラーナの全てが俺の目の前で顕になり、俺の心はもうはち切れんばかりだ。


「あ、え、え~と」


 俺が言葉を詰まらせていると、カラーナは軽く目を斜めに背け、そして照れくさそうにしながらも言葉を紡げた。


「……だって、メリッサばかりずるいやん――」


「あ、いやそれは、き、きいてたんだ?」


 別に隠してるつもりもなかったんだが、いや結果的に話してない以上隠してたようなものなのか……


「勘違いせんでや。メリッサから直接訊いたわけやないけど――うち、なんとなく判るねん。でもそれで責める気なんてないし、ただ、やっぱり負けたくないし……」


 そういった後、カラーナが俺の胸に顔を埋め、そして――


「うちもボスの事――大好きやもん……」


 その言葉に俺は堪らない何かを感じ、髪を撫でぎゅっとその身を強く掻き抱いた。

 カラーナの気持ちは素直に嬉しい。

 ……そして俺も、ここまで来てただ慕われてるだけなんて思うほど鈍感でもない。

 カラーナの気持ちも……メリッサの気持ちも判ってるつもりだ。

 でもだからこそ――ふたりとも大事にしたい。

 

 そんな気持ちを抱きながら、約束通りカラーナを抱きしめ続け――そして夜は更けていった……






◇◆◇


 次の日の朝は、アンジェの声で目覚めることになってしまった。

 どうやら俺は緊張しすぎて鍵を掛け忘れていたようで、つまりだ、裸のカラーナを抱きしめ続ける俺の姿を直に見られたわけだ。

 しかもメリッサとセイラもいた。

 おかげで俺はベッドから転げ落ちるし、アンジェは顔を真っ赤にさせて部屋を飛び出すし、メリッサも何か湯気みたいのを出したまま思考停止するしと色々大変だった。


 とりあえずその後はカラーナも一緒になって説明はしてくれたけどな……

 まぁ裸で(俺は上半身だけだけど)抱き合ってたのは事実なんだけど、それを促したのはアンジェだし、事情が事情だけにその事で責められる事はなかったけどな。

 まぁカラーナがいつもの感じであっけらかんと言ってくれたのが大きいんだと思うけど。


 しかしその話を聞きつけたアニーには、男だね~流石だね~種馬だね~、などとおもちゃにもされたけどな、全く。


 まぁ何はともあれ、誤解も解け俺達はシャドウの下へ向かい今後の事を話し合った。

 で、結果的に言えばもうしばらくは俺達もこの街に残り復興を手伝うという話に。

 アンジェに関しては、一度は王都に戻るのかなと思ったんだが、どうやら彼女も残るようだ。

 ニャーコが能力で王都に手紙を送ることは知っていたようで、それに便乗してアンジェも王都に手紙を送ってもらい、反応を待つことにするらしい。

 騎士として現状をこのまま見過ごすわけにもいかないという事だ。


 まぁというわけで、正式ではないにしても、新領主であるシャドウ、正式にはシャトー・ライドの下、俺達は暫く忙しい日々が続きそうではある。

 

 まぁでも悪い気はしない。

 何せ今の俺には仲間も慕ってくれる皆も、メリッサやカラーナ、セイラにフェンリィ、それにアンジェだってまだ暫くは一緒なのだからな――


第一部完

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

俺達の戦いはこれからだ!

どうぞ次回作にご期待を――すみません冗談です。

ただ第二部はある程度書き溜めてから公開する事になると思いますので少々お待ち頂けると嬉しく思います。


何はともあれセントラルアーツの物語を完結できたのは応援して頂いた皆様のおかげです!本当にありがとうございますm(__)m

そして久しぶりにこれ

ここまで読んで頂き、もし気に入って頂けたならこのすぐ下の評価や感想を頂けると作者のEXPが上昇しレベルアップ!新たな舞台に新キャンセル!

+.(・∀・)゜+.゜LVUP♪

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