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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第131話 金庫の中身は?

銀行から奪った金額を五〇〇億から五〇億に変更しました

流石に五〇〇億は無理があったなと……

 戦闘の要とも言えたゴールドとゴーレムを失った事で、この戦いの幕引きは拍子抜けするほどあっさりしたものとなった。


 もともと俺の仲間たちには、風を操る者も多かったし、それ以外でも、矢から身を守れたり無効化出来たりするスキルや魔法持ちは結構いた。


 それに援軍で来ていたガーゴイルの多くは、ノーマルなタイプでジョブを持っていなかった。

 通常のガーゴイルは弓などは扱えないため、相手にダメージを与える方法は、結局空中から滑降しての爪での攻撃となる。


 つまり攻撃の際には地上まで降りてくるわけである。そこを狙えばあっさり撃沈できたわけだ。

 まぁそんなわけで、戦いも終わり、見事に自らの創りだした沼にはまり、窒息状態で気絶したゴールドを引き上げた後は、そのまま銀行に連れて行き――


「うぷっ! ガハッ! ゲホッ! ゲホッ! な、何をする!」


 マリーンの水魔法を受け、ゴールドが咳き込み文句をいう。


「何をするやないわぼけぇ! いつまで寝てんねん!」


「……出来ればこのまま水の底に沈めてやりたいぐらいだが」

「落ち着けマリーン。気持ちは判るが、まだ訊かねばいけないことがあるようだしな」


 カラーナが怒鳴り、マリーンは忌々しげにそれでいて汚らわしい物を見るような視線をゴールドにぶつけている。


 ちなみに装備は戻っていた。ゴールドが気絶している間に、メリッサがあのポーチを鑑定したところ、中身をすべて取り出す方法が浮かんだので、それを使用し取り戻したのだ。


 どうやらスキルで変化したとはいえ、中身はマジックバッグのようなものらしい。

 これで恐らくゴロンの身体も治っていることだろう。


 まぁそんなわけで、今は銀行の中にわざわざこのゴールドをを連れてきているわけだがね。

 ちなみに手枷足枷はしっかりしている。これまでと違って、こいつ自身が自由が効かない状態になっていて、ざまぁみろって感情もわくけどな。


「ふ、ふん。なるほど、ここは銀行か。それでこんなところに私を連れてきてどうするつもりだ? お金ならとっくに持って行っているだろう」


 逆に蔑むような目で俺達を見てきてやがるな。

 まぁ確かに、あのポーチには結構な額が入っていたけどな。

 そして当然それは頂く。俺がというか解放軍の今後の資金としてな。

 キレイ事言ってる場合じゃないし、そもそもが、こいつがこれまで奪ってきたお金の一部だろう。


「あぁそれは有意義に使わせてもらうよ。だが聞きたいのはそんな事じゃない。お前の能力で出したというもう一つの金庫についてだ」


 俺が奴を見下ろしながらそうつげると、ふん! と鼻で笑いやがった。 

 全く状況を理解しているのかね?


「一応念のためいっておくが、詠唱とか妙な真似したら、すぐにでも阻止できる態勢はできてる。下手なことは考えないことだな」


 て、この台詞なんか悪役とかっぽいけど……まぁでも実際主要なメンバーは集まってるしな。

 

「……それで勝ったつもりか? 言っておくが金庫の場所など教える気はないぞ」


「アホかい! 金庫の場所ぐらいもうとっくに掴んだっちゅうねん!」


 カラーナが声を上げると、なんだと! とゴールドが驚嘆する。

 

「いや、ここにいるのには盗賊ギルドに所属してるのも多いし、カラーナだってシーフ系のジョブ持ちだぞ? それぐらいわからないわけがないだろ」


 前もって、元銀行員から聞いて、地下のあの金庫が怪しいってのは判ってたからな。

 こいつを起こす前にカラーナと向かったら、あっさり壁の一部がスイッチであることを看破したし。


「私達が知りたいのは、金庫の暗証番号です」


 メリッサが一歩前に出てゴールドに言う。

 彼女の鑑定で暗証番号さえあれば俺達でも開けられるのは判っている。

 そして、あの中には相当に大事なものが入っているに違いない。

 ただ、あれは三回間違うと間違ったものの命を奪う。

 そして金庫は一度設置すると固定され移動も不可ときてる。


 まぁどこに持って行こうと何が変わるわけでもないと思うがな。


「……なるほど、それで私を今も生かしているということか。だが、馬鹿か! 私がそう簡単に吐くわけがないだろ!」


「そうかい。だったら、俺ら流のやり方で無理やり吐かせてもいいんだぞ?」


 ここでキルビルが割って入り、ゴールドを睨めつけドスの聞いた声で言い放つ。

 周囲の仲間たちも眉間に深い皺を刻みながら、恫喝するように睨み続けている。

 流石猛者ぞろいの盗賊ギルドだ。全員これでもかってぐらい顔が怖い。


「……やってみるんだな。だが下手なことをして私が能力を解除したら全てが水の泡だぞ?」


「あははは、面白いことをおっしゃる。もしそれが出来たならとっくにしているのではないですか?」


 次に言を発したのはシャドウだ。

 ゴールドの正面に立ち、口元に指を添え不敵に笑う。

 どっちが悪役かわからないぐらいだな……


「それとも解除をすることが出来ないぐらい大事なものが入っているのでしょうか? まぁどっちにしろ、中身はそうとう重要なものらしいですね」


 確かに大したものでなければここまで厳重にして隠す必要ないしな……


「……これは私の予想ですが、中に入っているのは契約書なのではないですか?」


 シャドウの言葉にゴールドの眉が僅かに揺れ動く。

 図星なのか? だが――


「契約書って前にボンゴルが持ってきたあの無茶苦茶な内容のものみたいなやつか?」


 ドワンが前のことを思い出したように口にする。

 まぁあれは借用書ではあるが――


「いいところをついていると思いますよ。恐らく中に入っているのはボンゴルの作った契約書でしょうからね。尤も内容は、ドワンのとはまた違うものでしょうが」


「け、契約書だと? そんなものを後生大事に金庫の中にしまっているというのか?」


 アンジェが怪訝な顔をしてシャドウに告げる。

 これは正直俺も同意見だな、何より――


「シャドウそれは無茶あるんやない? 大体ボンゴルはもう死んどるんやで?」

「だからですよカラーナ」


 そう、俺もそれを思った。

 だが、シャドウがそれに応え、カラーナが目を丸くさせた。


「私はずっとおかしいと思っていたのですよ。ボンゴルがなぜあそこまで優遇されていたか。商会にこのゴールドが協力していたのはなぜか?」


「それは――やはり金が大きいのではないのか? 相当強引ではあったが、ボンゴルは随分派手に動いていたみたいだしな」


「確かにヒット様がそう思うのもわからないでもない。ただ、それにしてもゴールドの能力があればわざわざボンゴルを頼る必要はないですし、寧ろ色々要求されて面倒な事のほうが大きかったはずです」


 ……そう言われてみると確かにな。こいつのリカバリーがあれば強引に金は回収できるわけだしな。


「つまり、私の考えではボンゴルとゴールドの間でも何かしらの利害関係があった。いや、この場合ボンゴルとゴールドと領主様の間という可能性もありますが」


「…………」


 ゴールドは何も語らない。しかし表情は険しさを増してるようだ。


「重要なのは、メリッサさんが視たという鑑定です」


 ちなみにこのへんの情報交換は既に済ましている。


「イーストアーツのチェリオ伯爵が持っていたというロードオブテリトリー(君主の領域)のスキル。これには売却済みという表示があった。ではこれはどういう意味か――」


「売却済み……そうか!」


「ヒット様も気が付かれたようですね。そう、どうやらボンゴルと対決した時にはまだ鑑定をお持ちでなかったようですが……しかし、戦闘で使用していたという能力から、ある程度察することは出来ます。私は見たこともないスキルですので予想でしかないですが、恐らくボンゴルはスキルを契約で移動できる能力の持ち主」


「な!? スキルを契約で移動できるだと? 馬鹿な、そんなもの私だって聞いたことがないぞ!」


 アンジェが吠えるように言った。

 実はそれに関しては俺にも全く記憶が無い。

 だが――


「アンジェ様。聞いたことがないという意味では、このゴールドのジョブもスキルもそうではないですか? 私はゴールドスミスなんてジョブは初めて聞きました。もっといえばヘルシャーだってそうです」


「うぐ! た、確かに言われてみれば……」


 アンジェが喉をつまらせ考え込んだ。

 どうやら俺だけではなく、この世界の者からしても、ゴールドやあのチェリオのジョブは知られていないものだったようだな……


 シャドウはその後、それに――と続け、俺と、そしてメリッサを見た。

 俺のキャンセルはともかくメリッサは何が……て、あぁスポッターか!

 確かにあれは俺もわからなくてつい聞いてしまった程だしな――


「つまりや、ボンゴルの奴はスキルを契約で移動できるスキルを持っていたいうわけやな。それで、チェリオの持っていたスキルを誰かに移動させたちゅうわけや」


「誰かというか、それは、ほぼ間違いなく領主だろうがな」


「おおボス! 流石や! なんでわかるん?」


「……いやカラーナ、そこはなんとなくわかりそうなものではないか?」


 アンジェが呆れたようにいった。

 

「まぁカラーナは、考えるより感じるタイプですからね」


「何やねんシャドウ、その言い草! うちが馬鹿みたいやん!」


「いいではないですか。カラーナはその分とても可愛らしいですし、良いご主人様にも恵まれてますし、ちょっとぐらいお馬鹿でも、あなたの能力には皆さん救われてますし」


「え? ほんま? そやろか~ボ、ボスもそう思うん?」


「え? あ、あぁそうだな。そのままのカラーナでいいんじゃないか?」


 俺が応えると、やた! とピョンピョン跳ねて嬉しそうだが……まぁでも、本人が嬉しそうなら細かいことはいいだろう。


「しかしよぉシャドウ。俺でもそこまでは理解できたが、それとこいつの金庫になんの関係があるんだ?」


「……セイフロック(頑強なる金庫)は――状態を保ち続ける……」


 思い出したようにセイラが呟いた。

 それにシャドウが頷き。


「そうです。そしてもう一つ、彼の金庫はどんなものでも保管ができる。つまりスキルの効果だって保管が可能ということです。そして、だからこそボンゴルが死んでもスキルの効果が残り続けているのでしょう」


「!? そうか! つまり――」


 ゴールドの創りだした金庫を開けることが出来れば――街の皆の領主への呪縛が解ける!

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