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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第127話 対決! ゴールド

 作戦が決まるなり俺達は再び三手に分かれて展開。

 配置はさっきと同じ俺達は西から広場を抜け、カラーナ達は路地を抜け南から、アンジェとセイラの部隊は東側へ回りこむように抜け、三方同時に攻め込む形。


 ちなみに俺の方はシャドウとコアンも同行している。

 まぁシャドウは本人曰く、戦闘は得意ではない、そうなので、完全に補助とか援護に回る形のようで、かわりにシャドウナイトが前衛に出てきている。


 コアンも一応前に出てはいるが、ジョブはアサシンのようだ。

 アサシンは高位職のジョブでシーフ系にあたる。

 

 まぁといっても、その名の示す通り戦闘の方が得意――ただ直接戦闘というよりは、気配を絶ち、気づかれないうちに殺すような戦闘スタイル。


 シーフも忍び足だったり忍び走りなどで、相手に気づかれないように移動が可能だが、アサシンは固有スキルのハイドで、まるでその場から消え失せたような状態で移動が可能だ。


 ただ、今はそのスキルは発動していないようだ。

 まぁスキルの使用は体力使うしな――で、一五メートル程先に敵を視認。


 当然相手も気がついているが動こうとはしない。

 魔物のメンツは代わり映えしないな。

 壁が厚いのでゴールドがいるかどうかは判別がつかないが、とにかく先ずは予定通りこの連中を殲滅した方がいいだろう。


 なので俺が予定通り、右手を上げ腕を回転させる事でメリッサに合図を送った。

 天眼持ちのメリッサならこれで気がついた筈――そして程なくして茜色の空を覆うほどの魔法と矢の雨あられ。


 銀行周辺を目標地点に、絨毯爆撃の如き勢いで着弾し、容赦なく魔物たちを蹂躙する。

 いや、改めて凄いなこれは――シャドウと一緒に後衛の援護部隊として横陣を組む、高位職のウィザードとハンターも一緒になって魔法と矢で攻撃。


 南側からも弓矢や投げナイフが飛び交い、東側からも同じく離れた位置からの攻撃が命中している様子。

 ファイヤーボールなんかの魔法や、ウィザードの使用するファイヤーボールより更に強力な中級魔法のファイヤーバウルなんかも直撃していた。


 確かヒュドラムも使用されていたはずだから、炎魔法を得意としている魔法師がいるのかもしれない。

 ウィザードは魔法の心得~最上級~のスキルで最上級魔法までなら使用が可能……ちなみに基本職のメイジで中級まで、マジシャンでも上級までは使用が可能。


 ただ、少なくともこの世界では使用できることと、実際に使えるかは別問題だしな。

 メリッサと今一緒にいるメイジ達なんかは初級魔法しか使えなかったみたいだし。

 詠唱時間や使用できる魔力などを考えて強力な魔法は控えているかもしれないが……そもそもあんまり強力な魔法を使うと街にも被害が及ぶかもしれないしな。


 まぁどちらにせよ、見ている限り中級魔法でも十分そうではある。

 炎魔法のおかげか爆轟が鳴り響き、魔物の身体も木っ端微塵って感じだ。


 さて、そろそろメリッサのスペシャルスキルの効果も切れる頃だな――掃射も収まり、銀行の前の一画ではもうもうと土煙が立ち昇る。


 その煙も段々と霧散し、すっかり粉砕され砂礫と化した元甃の道の上に――身覚えのある人物が一人、てかマジかよ……


「随分と派手にやってくれたものですね。全くせっかく揃えた魔物たちが台無しですよ」


 ゴールド――片眼鏡を掛けた貴族然といった風貌のその男が佇んでいた。


「強がりはやめておくんだな」


 ふと、そこへゴールドを挟んで反対側からアンジェの声。

 メイド姿のセイラが横に並び肩の上にフェンリィ。

 そして重装騎士と蒼鎧の女性――確かダイアとマリーンといったかな? そのふたりも並ぶ。

 ダイアの方は顔もフルフェイスで覆われているので表情は掴めないが、マリーンの方はアンジェに負けないぐらい凛とした雰囲気を醸し出している。

 


「せやで。魔物も全滅、後はあんた一人や。うちらに囲まれて、たった一人で何ができるねん」


 次いでカラーナも声を上げた。キルビルとその護衛をやっている二人、そしてドワンも横に並び、その周りでも盗賊ギルドの面々が、そうだそうだと追従するが――


「皆さん! 一人だからと気を抜かないで下さい!」


 シャドウが俺の背後から叫びあげる。

 彼は判ってるようだな。


「シャドウの言うとおりだ。ゴールドは全くダメージを受けていない。油断は禁物だ」

 

「ダメージ……でもボス、確かにそやけど、そんなん他の魔物を盾にでもしたんやないか?」


「いや、カラーナ。あれだけの攻撃の中でそれは難しいだろう――だがヒット、勿論私は油断する気など毛頭ない。しかしたった一人でどうにかできるほど、私達は脆弱では――」


「くくっ……」


 カラーナの言葉にアンジェが落ち着いた口調で返す。

 だが、ゴールドは片眼鏡の奥の瞳を線にし、不気味な含み笑いをしてみせた。


「皆様は色々と勘違いされているようですね。確かにこの場にいた魔物は全てあなた方の手によって殲滅されたようですが……私が外での戦いの様子から、それぐらい想定していないと思いましたか?」


「何? 一体どういう――」


 俺が、妙に不気味な空気を纏ったまま立ち続けるゴールドに、そう言いかけたその時――ヒュン、と何かが俺の足元に突き刺さる。


 これは――矢か? 軌道から考えて……俺は首を擡げ茜色の空を見上げるが――その中に浮かび上がる黒い影。


 数は優に一〇〇は超えるか――空に集まりしはボンゴルが殺られた時にもいたガーゴイル。

 その集団――


「地上戦は随分とお得意なようですが、空からの攻撃はいかがですか? ふふっ、連中の多くはアーチャーかシューターのジョブ持ちですよ」


 言ってゴールドが腕を振り上げ、その瞬間、今度は敵側から俺達に向けて一斉射撃。


 レインアローなどのスキルの効果も相まって、紅く染まっていた空が黒く塗りつぶされたかのような矢の豪雨が俺達に向けて降り注いだ。


 しかし――


「守りの風、弾く風、威風堂々たる気高き風よ、我は願う、全てを退けん事を――エアガスト」


 セイラが初級風魔法を唱える。あれは初級とはいえ自由に風を起こす魔法で、矢による攻撃に対する防御性能が高い。

 

 セイラの魔法によって生み出された突風は迫る矢弾の軌道を一斉に逸らす。

 ただ範囲が広く対応出来ていない分も当然あるが――


「俺に任せろ!」

 

 威勢よくアーマーナイトが矢面に立ち、鎧とスキルの性能を活かし次々と矢を受け止めていく。

 鎧の性能が高いのかガーゴイルのスキル程度ではビクともしない。

 そしてアンジェもウィンガルグの力をフル活用し、セイラと同じように矢の軌道を逸し、逸らしきれない分に関しては叩き落としていく。


 カラーナの部隊も精霊魔法を使うソーサラとソーサレスがいたため、風の精霊の力で矢の直撃を避け、ドワンに関してはマジックボムを空中で爆発させて矢を砕くといった中々強引な対策をとっていた。


 俺の方はここぞとばかりにシールダーが活躍。盾を掲げ次々と矢を受け止めていく。

 シャドウは影を盾にしてガードしているし、コアンはこれだけの量の矢を、素早い身のこなしで全て躱してしまっている。


 そして俺は――スキルキャンセルを上手く利用して、敵のスキルをキャンセルしていく。

 

 ジョブ持ちのガーゴイルの集団に矢を持たせて一斉射撃は、普通に考えれば全滅してもおかしくない戦法なのだろうが、こちら側に対策可能なジョブ持ちが多かったのが幸いしたな。


 それにこちらもやられてばかりではない。ハンターやウィザードなど遠距離攻撃が可能なジョブ持ちの面々は、ガーゴイルを撃墜しようと対空攻撃に切り替えている。


 アンジェ側のマリーンも水魔法のアクアボールを投げつけ、カラーナ部隊からはレンジャーやソルジャーによる弓と、シーフやローグによるナイフ投擲。

 カラーナもムーランダガーを活用しガーゴイルを撃ち落とそうと必死だ。


 かなり高い位置にいる為、攻撃を当てるのは中々大変そうでもあるが、それでも徐々にガーゴイルの数は減りつつあるが――


「母なる大地よ生まれし子よ、岩鉄たる我が子よ、我は父なり我は父なり、育てよ育てすくすくと、食べよ食べよ我がマナ(魔力)を。親は誰ぞ? それは我、主は子であり下僕、我を守りし岩鉄の下僕なり――クリエイトゴーレム」


 俺達が空中からの攻撃の対処をしている隙に、ゴールドが土の中級魔法を発動させる。

 土の中級魔法のクリエイトゴーレムは、その名の通り土からゴーレム(土人形)を創りだす魔法だ。

 しかも詠唱が速い! 続けてどんどんゴーレムを生み出し全部で三方向に四体ずつ一二体のゴーレムが立ち並んだ。


 ゴーレムは使い手の魔力である程度性能は変わるが、これは大きさが二メートル程度で武骨な全体的に角ばった箇所の多いゴーレムだ。


「まさかこんなものまで創り出せるとはな……」

「――ゴーレム」


「はん。なんやこんなんただの土塊やん。別に怖かないで」


 アンジェは少し困惑気味。セイラも一つ呟き一瞥するも、空中からの対処に集中。

 カラーナは睨み据えながら強気な発言。

 ただ、今の俺達のレベルならゴーレム自体はそれほど怖い代物ではない。


 しかし空中のガーゴイルからの攻めと、地上のゴーレムによる突撃となると少々厄介かもしれないのだが……


「まだまだこれで終わりではありませんよ。パワードリング《強制錬成》――」


 え!? と思わず目を剥きゴールドの所為に目を向ける。

 奴が両手を地面に叩きつけ、その瞬間ゴーレムの見た目に変化が生じた。

 いかにも土で作り上げたといった様子の茶色いボディが一変し、青白く光輝き始め――これは……


「まさか! ミスリルか!」


 いち速くアンジェが声を上げた。

 そうだ、確かにこれはミスリル――しかも錬成といったらアルケミスト(錬金術士)のスキル。


 しかし本来は土からミスリルへの変化は不可能。だがスペシャルスキルであれば効果時間に制限があるかわりに、それが可能となる――


 しかも――ミスリルは頑強な上、魔法に対する耐性も強いので更に面倒な事になった。

 大分減ったとはいえ、上空からの矢の攻撃も絶え間ないしな。


「さてゴーレム、少々遊んであげなさい」


 ゴールドの声に反応し、三方向に分かれて四体ずつのミスリルゴーレムが、地面を揺らしながら前に出る。

 二メートル級のゴーレムは、ゴツゴツした見た目と相まって大型トレーラーが突っ込んできてるような、そんな印象さえ感じさせる。


 動きは鈍重だが歩幅が大きく、四体が横に並んで近づいてくるさまは圧巻でもある。

 これは確かにやばいな……本来なら、だが――


――キャンセル! 


 俺はゴーレムに向けて範囲を広げた魔法キャンセルを掛けた。

 何せミスリルゴーレムといっても結局元は土魔法で作られた物だ。

 つまり魔法キャンセルを掛ければ、ゴーレムそのものが消え失せる。


 但し範囲化で魔法キャンセルにもそれなりのリスクが課せられ、二〇分間使用不可だ。

 アンジェとカラーナ側のゴーレムまではすぐには無理だが……しかしゴーレムは魔法を行使したものが死んだり意識を失うことで消滅する。


 流石にここまで来て様子見を続けるわけにもいかないしな――ゴーレムが再度出されても厄介だ。


「……相変わらず貴方は妙な事をいたしますね」

「そうかい?」


 ゴールドが俺に身体を向け怪訝そうに口にしたが、その瞬間にはステップキャンセルで距離を詰め、ゴールドの横に立ち双剣を振るった。

 ゴールドは防具を一切装備していない。前に見たとおりのYシャツにコートといった出で立ちだ。


 これであれば、本来俺のセイコウキテンに耐えられる筈はないのだが……


――ガツッ!



 刃が奴の体に触れた瞬間、強い衝撃が俺の腕を襲った。

 ビリビリとした痺れが指の先から肩まで駆け抜ける。


「くっ!」


 思わず短い呻き声を上げてしまうが――だがここまで来て退けやしない。

 俺は先ずゴールドに向けてスキルキャンセルを掛けつつ、もう片方の剣で斬りつける。

 詠唱をしている様子もない以上、この硬さはなんらかのスキルの効果であると踏んだからだ。


 だが、結果は一緒だった。やはり攻撃が通じない――リスクもない以上、スキルキャンセルではキャンセルできない何かって事か――だったら、それをこじ開けるだけだ!


 右斬り下ろし【キャンセル】左横薙ぎ【キャンセル】ダブルスライサー【キャンセル】ファングスライサー【キャンセル】卍スライサー!


「気が済みましたか?」


 ゴールドに次々と剣戟を叩きこみ、流石に色々スキルを連発しすぎた為か、俺の体力もかなり減少しているのだが――ゴールドは平然と俺に目を向け、一切のダメージを受けていない様子でそう言った。


 こいつ……あのゴロンの時と一緒だ。攻撃がまるで効いていない。


「さて、それではお返しといきましょうかね」


 その言葉で俺は思わず身構える。あの時、ゴロンの足や腕を奪ったあれを仕掛けてくるつもりか? そう考えキャンセルの準備に入る俺だが。


リペイメント(返済)


 そう奴が呟いた瞬間、今度は俺の身体全体に衝撃が訪れ、俺は派手に空中へと投げ出された――


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