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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第13話 奴隷の立場

 メリッサが不機嫌だ。

 いや気のせいかもしれないのだが、あれだけご主人様ご主人様いっていたのに、今はすっかりだんまりだ。


 一応俺が声を掛ければ何かしらの返事はしてくるんだけどな。

 なんだかよくわからないけど空気も重いし。


 だから少しは機嫌を取り戻してもらおうと、一緒に風呂を頂くことにした。

 一緒と言っても聞くところ男と女は分かれてるので当然別々だが、湯に浸かってリラックスすれば少し機嫌も良くなるかな? と思ってのことだ。

 

 ちょっと短絡すぎるかなって気もしないでもないけど、思いついたらやるが基本だ。


 まぁそんなわけで風呂に誘ったら、はい判りました、と応えてくれたが、そんなに嬉しそうではない。

 

 だがクローゼットからタオルなんかは用意してくれたな。

 しかしよく考えたら下着の換えがないな。しまったそれも買っておくべきだったか。


 だがそれを今更後悔しても遅いしな。


「悪いな。下着を買っておくのを忘れていた。とりあえず今日だけは我慢してもらってもいいか?」


 俺はメリッサへ謝罪混じりに告げる。

 するとどこか不思議そうに首を傾げて、はぁ……と気のない返事を見せてきた。


 うん? 何か変な事をいったかな。

 まぁいいやとりあえず風呂だな。




 お風呂が一階にあるのは前もって聞いていたので知っていた。

 食堂がある方とは逆側の端に位置している。


 俺はメリッサを連れてその浴場のあるところまでいく。

 入り口はふたつあり、暖簾ではなくカーテンのようなもので入り口が仕切られている。

 どっちが男でどっちが女かは上に掛かってるプレートで判断が出来た。


「じゃあとりあえず風呂でも入ってさっぱりするか」

「はいご主人様……」


 う~んやっぱりメリッサはどこか暗いな。

 まぁ風呂に入って元気を取り戻してくれるといいんだけど。


 そんな事を思いつつ俺とメリッサは一緒に入り口へ――て! おい!


「ちょっ待て! なんで付いてくる!」


 俺は思わずメリッサの手をとって一旦入り口から離れ、語気強めに言ってしまう。

 

 いや、だっておかしいだろ? なんで男湯にメリッサがついてくる。

 え? 痴女属性?


「……? あの何か問題が?」


 メリッサが……小首を傾げてそんな事を訊いてくるんだが――え? マジでそういうの? いや、違うかこの顔は本当に理解が出来ないって顔だ。


「いや、ここが男湯なのは理解してるか?」

「はい」

「で、女湯があっち」


 俺は反対側の入口を指さす。

 するとそれにも理解を示すように頷いた。


「だったらメリッサがどっちにいくべきか判るよな?」


「えぇまぁ。ご主人様に同行するのが奴隷の務めですから」


「いや、ちげーよ! 男湯に女連れて入ったらおかしいだろ?」


 だがメリッサは心底理解できないといった顔で。


「あのご主人様。奴隷は基本お風呂であっても性別に関係なくご主人様についていきお世話をするのが普通です。むしろ奴隷が単体で湯浴みするという事の方がありえないのですが……」


 ……マジで? はぁ?


「て、それじゃあメリッサは俺に付き合って、そのなんだ、その他大勢の男がいるなか、その、なんだ、ぬ、脱ぐのか?」


「ご主人様が望めばそうすることもありますが、普通は下着のままか、湯浴み専用の服に着替えてという事もあります」


 そういう事か……いや、まぁそうだよな。だれが好き好んで自分の連れの裸を他人にみせたがるというのか。

 

 ただ望めば脱ぐってのがちょっと理解できないが。


「とにかく俺といる時にそれはなしだ。メリッサも女湯の方へいってさっぱりしてくるといい」

「え? ですがそれは――」


「お客様」


 ん? メリッサが何かを言いかけたところで、後ろから声をかけられたな。


 で、振り返ったらにこにこと愛想笑いを浮かべたおっさんが立っていた。

 みたところこの宿の使用人みたいだけどな。


「何か?」


「あぁいえ、今少しお話を耳にして気になったのですが、いえ聞き間違いかとは思いましたが、まさかそこの奴隷をお一人で浴室へ向かわせる気ではありませんよね?」


 何だこいつは? おかしな質問をしてくる奴だ。


「そのつもりだが何か問題はあるか? メリッサは女性だ。女湯に入るのが当然だろ」


「そんな! いやまさかと思いましたがご勘弁ください! そんな真似されては困ります!」


 はぁ? 困る? いっている意味がさっぱりわからん。


「なんだ困るって? 別に風呂にはいるぐらいいいだろ?」


「それは確かにお客様が入られたり一緒についていくぐらいは宜しいですが、湯浴みされるなどは、それに奴隷が単独で浴室に入っては他のお客様の迷惑になりますし――」


 はぁ? と思わず不機嫌全開で声に出してしまったぞ。


「何いってるんだ? なんでメリッサがお風呂に入るだけで他のお客の迷惑になるんだ?」


「それはお客様だってご理解されているのでは? 汚れ物が入っては湯船が汚れてしまいま、ぐぇ! ぐ、ぐるじ……」


 俺は思わずこいつの襟首を捕まえて持ち上げてしまっていた。

 いくら俺でもそれぐらいの力はある。


「ご、ご主人様おやめください! そんな事をされては!」


 メリッサが腕に抱きつくようにしていってくる。

 使用人も脚をバタバタさせてるが……確かにこれ以上はまずいか――


 俺はそいつを床に落として解放する。

 ゲホッゲホッ咳き込んだ後、俺を見上げて、短い悲鳴を上げながら逃げていってしまった。


「くそ! なんなんだ一体!」


「……私にはご主人様がなぜそんなに腹を立てているかわかりません。奴隷は人間とは違います。ですから人と同じ湯船に浸かるのも許されておりません。それはこの世界の常識で――」


「そんな常識知るか糞食らえだ。俺は俺の思うようにやる。もういい、とにかく風呂は止めだ。戻ろう」


 たく、本当イライラする。

 奴隷制度がそうだと言われても俺にはやっぱり納得が出来ないな。


 第一連れが汚れ物扱いされて腹が立たないわけがない。


「……私ご主人様が何を考えていらっしゃるのか理解が出来ません」


 風呂場から離れる途中メリッサがそんな事を呟いた。

 奴隷としての扱いが完全に染み付いてしまっているのか――いや、それも当然か。

 よく考えればメリッサはこの世界で長いこと奴隷を続けていたのかもしれない。


 そうなるとすぐに考えを改めろといっても戸惑ってしまうのだろうが、でも、それでも何かさっきからおかしな気はするんだよな――






◇◆◇


 風呂は諦めたが腹がそういえば減ってきたなと思い、部屋に一旦戻りマジックバッグを持った後、夕食を食べにメリッサと食堂に向かうことにした。


 てかメリッサが元気になればと思って風呂に向かったのに、むしろ俺のほうが嫌な思いしてしまっただけだったな。


 明日からは個室の風呂がある宿を探すとしよう。

 今日はもう仕方がないが。


 食堂には一〇卓ほど木製テーブルが並べられている。

 すべて円卓だな。

 今は半分ぐらいが埋まっている。


 で……一組奴隷連れの男がいた。

 戦士風だから妙に目立つ。同業者だろうか?

 

 それ以外は商人ぽいのやカップルみたいのだな。

 まぁいいか、とりあえずメリッサと適当な席に座る、んだけどな。


「メリッサ。だから床じゃなくてそこの椅子に座ってくれ」


「え? ですが――」

「いいから頼む。俺が落ち着かないんだ」


 そこまでいって、メリッサも相変わらずの落ち着かない様子で席に座った。

 俺はなんとなくいっただけだが、指差した対面の椅子に座ってる感じだな。


「あの、お水をどうぞ……」


 水をもってきたのは、エプロンを纏った女の子だが、変な目でこっちをみてるな。全く。


「これが俺のやり方なんだ」

「はぁ……」


 すげぇ気のない返事で奇異な目は変わらない。

 はぁ、もういい。


「食事は選べるのか?」

「いえ、メニューは決まっております」

「そうかじゃあそれを頼む」


 判りましたと頭を下げて戻っていく。

 厨房は奥に見えるな。

 で、何かひそひそ囁き合ってる。感じ悪いなマジで。


 そして俺とメリッサは……どうも何を話していかわからず黙ったままだ。

 参ったなこれは本当に。


 それに――なにか強い視線を先ほどから浴びている。

 相手は、あの戦士風の男だ。気のせいかこっちをじっと睨めつけてきてる。


 なんだアレは? 恨まれる覚えもないが。

 てかあっちは奴隷を床に正座で座らせているな。

 奴隷は女でメイド服を着せられている。姿勢がいいな。なんか凛としてる感じで瞑目しピクリとも動かない。


 う~んでも、もしあれが正しい奴隷のあり方だと言われても俺には違和感しかないな。


「お待たせいたしました」


 そんな事を考えていたら料理が来たな。まぁとにもかくにも腹ごしらえって――


「おい! なんで料理が一人分しかきてないんだ? あとからもう一人分くるのか?」


「え? いえお客様の分しかご用意してませんが……」


「いや、目の前に俺の連れがいるだろう。その分はどうした?」


 そこまできくと、えぇ? て顔してきたぞ。

 やれやれまたかよ……


「まさか奴隷だから用意しなかったというのか?」


「はい、そうですね」


 あっさりいってくるな。悪いとも思ってないようだ。


「おいおい、それじゃあ流石に納得しかねるな。こっちはチェックインの時に二人分を支払っているんだ。それなら料理もしっかり二人分用意して貰う必要があるだろ。違うか?」


 出来るだけやんわりと俺は問いかけたが、女は更に、えぇ~て眉を寄せ、何か厄介なクレーマーでも相手してるような顔を見せてきやがった。


 冗談だろ? 俺がおかしいとでもいうのか?


「ご主人様もうおやめください。お食事は余り物で私は大丈夫ですので」


「馬鹿言うな。そんな事で栄養失調で倒れられても困る」


 てか、そんな事をいいつつも、まわりの視線が痛いな。

 完全に俺が変人あつかいだ。くそ正直納得出来ないが。


「判った。もういい。だったら別料金で払うから彼女の分も運んできてくれ。それなら問題ないだろ?」


「そんな! 私そこまで」

「いいんだ。それに俺はよく食うからこのままじゃ余り物は出ない」


 そして俺は改めて、出来るか? と問いかける。


「えぇそれでしたら問題は――」

「ふざけるなァアアアァア!」


 て、納得してもらえそうかと思ったら突然怒号が飛んできやがった。


 何かと思って声のした方をみると、あの奴隷を連れた戦士が立ち上がり鬼の形相でこっちにやってきやがった――




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