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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第121話 一二〇対二〇〇〇~西門の戦い~

 作戦決行まで後五分と迫った。ここで俺は改めて、各部隊について頭のなかで整理する。

 先ず俺とアンジェ、カラーナはそれぞれが西門、南門、東門攻略組として分かれることとなった。


 これにはカラーナから何故そんな面倒な事を? のような質問があったが、シャドウのカラスからの語りがその理由だ。

 シャドウは、俺とカラーナとアンジェがいることがこの戦いの鍵になるような事を言っていたからな。

 そしてこれは各部隊にそれぞれ伝えられた事項だ。


 そうなると一つの場所に三人が固まっていると、他の二部隊は最初から捨て石扱いされていると思われる可能性がある。

 そうなるとやはり士気に響くだろうしな。


 だからここはせっかく名前も三人上がっているわけだし、三箇所に分ける形にし、それぞれが各部隊の陣頭指揮を取る形にした。


 シャドウから宣言されたことで少なくともこの戦いでは、俺達三人は英雄扱いだからな。

 各部隊に英雄が一人ずつ付くとなれば冒険者達の自信に繋がる。

 

 それに東側の近接部隊は騎士のアンジェと相性がいいし、南側は多くが盗賊ギルドにいた者達だカラーナとは顔なじみというのも多いだろう。


 俺の方は俺の方で何人かは既に俺の戦いぶりを見ているし、後から合流した冒険者達にも話は伝わっているしな。


 そしてそれとは別にセイラはアンジェと共に東門攻略側へ、フェンリィも一緒だが流石にまだ戦えないのでは? と一応確認を取ってみたが、どうやら何か手があるらしいな。 

 セイラはフェンリィの躾に関して厳しいところもあるし感情の変化はわかりにくいが、しっかりと愛情も注いで接しているのは間違いないだろうし、心配はしてないけどな。

 でないとフェンリィもあそこまで懐かないと思うし。


 ダイモンに関してはカラーナの部隊の方へと同行してもらった。

 カラーナはどうやらスペシャルスキルも覚えていたようで、その効果とダイモンの召喚したあれは相性が良いと思う。


 俺の方に関してはメリッサが残っている。東門を攻略する俺達の部隊は圧倒的に遠戦に特化してるからな。

 それにメリッサが加わることで相当な力を発揮できることになる。


 各門へと攻め入る部隊は人数に関しては四〇名ずつ。

 アンジェ部隊のジョブの割合は八割が近接でファイター、ウォーリアが多いがその中にアンジェと同じ高位職のアーマーナイト(重装騎士)ブルーナイト(蒼騎士)が一名ずつ加わっているのは大きい。

 アーマーナイトはその名の示すように頑強な鎧に身を包まれた騎士で、ブルーナイトは魔法を行使出来る騎士だ。

 アンジェを筆頭にこの二名が脇を固める形になるだろう。

 そしてこの部隊には戦士以外の魔法系にリインフォーサー(強化魔法士)が数名いる。

 リインフォーサーは腕力の強化、体力増強、耐久力上昇などの強化魔法を使いこなせる。

 近接戦闘がメインのアンジェ隊の能力を底上げする効果が期待できるな。


 南側のカラーナ部隊は盗賊ギルド所属が多く、ジョブもやはり盗賊系のシーフ、ローグ、トラッパーが六割。

 ただソルジャーやランザー、シューターといったジョブ持ちも所属しておりバランスがいい。

 魔法系のジョブとしてソーサラー(精霊術士)ソーサリアン(精霊術師)も数名ずついるのも大きいか。 

 ちなみにソーサラーとソーサリアンは精霊の力を使用した魔法を操る。


 南門に関しては東西と違い領主の居城の鎮座する丘から伸びた川が二本、街を貫き南に向かって流れているのが特徴か。

 カラーナ部隊は南側の森に身を潜めているが、攻めこむときは両サイドの川に挟まれた状態での戦闘となるだろう。


 俺達の攻める西門側の部隊は、アーチャー、シューターが多く、次いでメイジとマジシャン。そして数名合流した中にウィザードとハンターが加わっている。

 そして盾役のシールダーが八名、彼らは基本は敵が遠距離部隊に近づかないよう壁役に徹するのが仕事だ。


 俺達の攻める西門前のは陣地としている丘が他より高いのが特徴だ。

 メリッサの新しく手に入れたジョブにとって最適な地形でもある。

 彼女のスキル天眼は視界を広げかなり遠方までその眼で視ることが出来るようになる。

 高い丘の上からなら更に視野は広がることだろう。


 さて頭の中で作戦を反芻していた俺だが、ふとメリッサから声が掛かる。


「ご主人様! 街の方で動きがありました!」

 

 メリッサが覚えた天眼のスキルがあれば、この位置から街の様子もある程度判る。

 どうやら始まったようだな。

 時間的にも丁度いい感じだしな……そう考えた直後、街から一羽のカラスが飛翔しセントラルアーツ上空を大きく旋回した。

 あれはきっと各部隊の全員が確認できるようにシャドウが創りだしたものだろう。

 

 そして――当然これが作戦開始の合図であるわけで……俺がメリッサも含めた全員に向けて一つ頷くと、仲間たちも頷いて返してくる。


「ご主人様……どうかお気をつけて――」


 メリッサが祈るように言う。信頼と不安の入り混じった瞳。 

 だから俺は軽く頭を撫で、俺を信じろ、と言い残してから西門に向かってステップキャンセルで先ずは単騎で突っ込む。

 

 これが西門の俺達の作戦。キャンセルのおかげでスパイラルヘヴィクロスボウの射程距離までは苦もなく移動。

 だが流石にこの距離まで来ると魔物の軍にも気がつくのがでてくる。

 魔物の軍は、ゴブリン、ボブゴブリン、コボルト、レッドワンダー、オーク、オーグ、トレント、ウェアウルフ、キラーウルフ、ヘルハウンドか……これまで出会ったタイプが入り混じっているし二割ぐらいはあのジョブ持ちか――

 

 そして俺の存在に気がついた前列の集団が俺に向かって突撃を仕掛けてきた。

 流石に全員でやってくるほどは馬鹿ではないか――だが、この状況で突っ込んでくるなら好都合。

 既にトラップは仕込み済み。俺の今の能力だと半径五〇〇メートル以内で最大八ヶ所といったところだが、横に並べたので、一体が引っかかった時点で動きが止まり、後続の連中が止まった魔物に突っ込む形で隊列が乱れる。


 そこへ俺はシュートキャンセルで次々と連中に風穴をあけていく。

 貫通した分は縦列状態の魔物も次々と仕留めていく上、ショックボルトの効果でたとえ命を奪えなくてもその動きは封じ込められる。


 シュートキャンセルを繰り返し、瞬く間に魔物どもの骸の山が築かれた。

 恐らくこれで一〇〇体ぐらいは片付いたか。

 ただ、流石に相手はこれ以上は突っ込んでこない。

 いくら魔物でもここで突撃を繰り返すほど馬鹿ではないか。

 いやそれだけじゃないな。予めタワーシールドを持たせていたオークを前に出し、正面からの攻撃を防ぐ壁にしてしまった。 

 オークは脂肪が厚いし、鋼鉄の盾に鋼鉄の鎧とあってはこれ以上クロスボウだけというのも厳しいか。


 だが、俺としては骸の山がいい具合の障害物と化してくれればそれでいい。

 魔物の死体は何れは灰と化すがすぐではないしな。


 さて、俺は武器をクロスボウから双剣のセイコウキテンに変え、スペシャルスキルのセイバーマリオネットを発動。

 自動モードにして痺れているだけの連中をしっかり片付けつつ、骸の山を飛び越えオークの壁に向かって突撃する。


 魔物共から蛮声が上がり、単騎で挑む俺を左右からも取り囲みに入った。 

 相手が人語を喋れる奴らだったら馬鹿め! とでも言ってきそうな状況。

 一〇〇倒したと言っても相手はまだ六〇〇近くいるしな――普通に考えれば無謀だろうが、それでも俺は構うことなくクイックキャンセルを絡めたハリケーンスライサーで周囲の敵を斬り刻む。

 モードを追撃モードにも切り替えたから単純に威力は倍だ。

 この一撃で二〇体程片付いたと思う。勿論隙はキャンセルで失くすことを忘れない。


 それでも相手は俺に対する攻撃の手を緩めないな。

 防具の性能は高いほうだし、俺の身体能力は上がっているから、九割ぐらいは平気だがやはり多少の被弾は避けられない。


――チッ、特にジョブ持ちはやはり厄介か。ナックラーの真空正拳突きが俺の脇腹にめり込む。

 しかしこんなのは大したダメージじゃない。

 

 だがな――こいつらは俺に集中しすぎだ。

 音が段々と近づいてくるのが判る。

 そして、この魔物共にとって予想外の攻撃が、一気に上から降り注いだ。

 突然の砲撃に連中がパニックに陥っている。


 盾を持ったオークですらこの攻撃には反応が出来ていない。

 尤もそこで盾を上に向けるような事があれば、俺が即座に正面から斬り伏せるかキャンセルで動作を戻すが。

 

 レインアローによる矢雨が的確に何体ものゴブリンの脳天を捉え、降り注ぐフレイムショットやフレイムランスがオークを丸焼きにしトレントを燃やし尽くす。

 ロックシュートによる岩石はキラーウルフやヘルハウンドをぺちゃんこにし、サンダーストライクによる雷撃がコボルト共を貫いた。


 ついでに沢山の投石が降り注ぐ。


 しかしこれだけの矢と魔法の攻撃にも関わらず、連中は全く警戒せず、まさかそんな攻撃が飛んでくるなどと微塵も思っていなかった事だろう。


 何せ今上空から降り注いできている攻撃は、二km後方の丘の上から発射されているものだ。

 当然連中が気づくはずもない。普通に考えれば完全に射程外だからな。


 だが、それを可能にしたのが、メリッサが新たに覚えたスペシャルスキル【ターゲットロック(目標補足)】による効果だ。


 このスキルは個人、もしくは範囲を指定してロックする事で、ロックされた対象への遠距離攻撃は必ず着弾するようになる。

 例え明後日の方向に矢を射ったとしても軌道を変えて、目標に向かって飛んで行く――そんなスキルだ。


 しかもこのスキルの効果時間中は飛距離による制約を受けない。

 本来二、三〇〇メートルの射程距離しかないアーチャーやシューターの矢が二km先の目標に向かって淀みなく降り注いでいるのもその効果によるものだ。

 勿論これは魔法も一緒で炎や岩石が降り注いでいるのもそのおかげ。

 ついでに言えば、投石は救出した村人や子供が投げたものだ。

 メリッサのスキルはそういった物でもしっかり相手に届ける。


 ちなみに効果時間は八分――当然使用後は暫くは使用不可となるが、それでも効果は絶大。

 既に俺が倒した数より多くの魔物が倒れ屍とかしている。

 これで残りは三〇〇ぐらいだとは思うが――


「ヒットに続けーーーー!」

「うおぉおおぉおおおおぉお!」


 と、どうやら敵が一斉砲撃でパニックに陥ってる間に、俺を追いかけるようにして前進してきたシールダーの集団が左右から魔物たちを挟み込みに入ったな。


 盾による圧力を高めるスキル、シールドプレスの効果が大きいのか、魔物たちはぐいぐいと中心に押し込まれていく。


 さっきまで完全に囲まれていた俺だが、今は後方には魔物の骸しかない状況だ。

 既にメリッサのスキルの効果は切れているが、敵はそれに気がついていないのか未だ混乱をきたしており、この状況なら攻め入るのも容易いだろうな。


 そして俺はシールダー達に合図を送り、少し距離を離させる。俺は正面の敵を双剣で次々と斬り捨てていきつつ、今度はキャンセルアーマーを発動。


 これで俺への攻撃は一〇秒間無効であり――そこへ第二波の攻撃が迫る。

 ハンターのスキルの乱れ射ち、それに、

「空に舞う炎蛇、それは大蛇、天を喰らう大蛇、しかし満たされ膨れそれは変わる、破裂せし炎蛇、滅炎の炎蛇、八頭炎蛇が舞い降りる、餌を求めて舞い降りる――」

と、この詠唱はウィザードの中級炎魔法ヒュドラムだ。

 

 勿論これはどちらもメリッサのスキルの恩恵は受けていない。

 つまりシールダーと同じく、射程距離内まで接近してきた仲間たちによる攻撃だ。

 屍の山を上手いことカーテンにし、気付かれずに魔法やスキルを発動できたようだな。

 勿論相手がパニックに陥っているというのも大きいが。


 俺がキャンセルアーマーを発動したのは魔物の攻撃も勿論だが、仲間たちからの攻撃の巻き添えを喰らわない為でもある。

 俺のことを気にせず撃たせる為というのも狙いとしてはあるけどな。


 ハンターの武器スキル乱れ射ちはその名の通り敵の集団に向けて矢をやたらめったらと射まくるもので、俺の正面にいる魔物達の身体に次々と矢が突き刺さっていく。

 そしてヒュドラムは一度上空に打ち上げられた炎弾が途中で分裂し、八の炎弾となって降り注ぐ魔法。

 威力はファイヤーボールよりも一段階上で、着弾後に爆発もする。

 

 耳に響く八つの爆音が重なりあい、俺の視界を爆炎が覆う。

 だがキャンセルアーマーの効果で俺自身へのダメージはない。

 視界に映るは爆轟によって粉々に吹き飛ぶオークやコボルト、火達磨となり地面を転げまわるウェアウルフやレッドワンダーの姿。


 そして更にウィザードの中級魔法やハンターによる追撃は続く。


「凍てよ生、冷気の輪、零度の輪、血も凍る、肌も凍る、この氷輪の中では大気も凍てつく――」


 フリージングの魔法が輪となって広がり、ダメージを与えると同時に喰らった相手を凍てつかせ、そこにハンターのインパクトアローによる衝撃で凍てついた身体が粉々に砕け散る。


 アーススパイクによって地面が伸長し針となって敵を貫く。


 彼らの魔法やスキルの破壊力はかなりのものであり、魔物達に大打撃を与えたのは間違いない。

 

 既に魔物数は残り二〇〇を切っている。更にこっちは誰一人として離脱者がいない。

 ここまでくると西門側の制圧も近いな……それはいいとして、南門と東門は果たしてどうなってるだろうか――


 

 

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