第120話 セントラルアーツの英雄たち
カラスが俺達の傍に降り立つ。
ほぼ全員の視線がそのカラスに向けられた。
これは敵ではないだろう。
隣ではアンジェが、
「これはもしかして……シャドウの?」
と一人呟いている。
するとカラスがその嘴を大きくあけ、かと思えば鳥類の鳴き声とは違う人の声、そう、シャドウの言葉がその口から届けられた。
『皆様ご苦労さまです。先ずは皆様無事戻ってきてくれて良かった。ただ手放しで喜べる状況でもないことは、今皆様が見ている現状から察することが出来ると思います』
「まぁな。そっちはどうなんだシャドウ?」
「ヒット。このカラスからの伝言は予めシャドウが告げていたのを届けるだけで、こちらからの声が届いているわけではないのだ」
アンジェが教えてくれたが、なんだそうなのか。
でも確かにそんな便利なものなら、もっと前から連絡を取り合っていてもおかしくないしな。
『恐らくヒット様は、今アンジェ様から私のこれについて説明を受けているとは思いますが――』
……気持ち悪いぐらい読まれているな。
「てかなんで俺が来てるのが判ったんだ?」
『そして、何故私がヒット様がそこに来ているのが判るのか? と疑問にも思っているかと思いますが』
何この人怖い。
「ずばずば当てとるやん……」
「凄いですねシャドウさん――」
「……読まれやすい思考」
「アンッ!」
セイラの一言と、フェンリィの同意するような鳴き声が何気に傷つくな俺……
『ですが、それについてはそれほど難しい話ではありません。私の創りだしたシャドウナイトがヒット様の近くにおりますので、ある程度は情報が掴めます』
あぁそういえば……俺は改めて後ろに控えているシャドウナイトをみやり一人頷く。
確かにそう考えれば合点がいくな。
「それは判ったが、やはり気になるのは街の中がどうなっているかだな」
『次に気になるのはきっと街の様子がどうなっているかについてかとは思いますが――』
「…………」
「ヒ、ヒットの考える事は至極当然の事だ! 私でもきっとそのことを気にすると思うぞ!」
アンジェが必死にフォローしてくれているが、大丈夫、気にしてない……気にしてないさ。
『現在街では魔物の数が圧倒的に増えています。しかし、相手は銀行周辺の守りを重点的に固めている状態なので、攻勢がそこまで激しいというわけでもありません。勿論無傷というわけには行きませんが死者は〇です。こちらは中々優秀な人材も多いので心配は無用です』
シャドウの言伝を耳にし、安堵した。
他の皆も一緒のようだ。
魔物の大群を見て完全に腰が引けていた冒険者達の表情に僅かだが明かりが灯る。
『さて問題はここからです。私としては外にいる魔物を何とかして排除し、拠点まで戻ってきてほしいところですが』
「簡単に言うけどよ……」
「数が違いすぎるぜ――」
シャドウの発言に再び冒険者達の表情に影が落ちる。
俺としては勿論街に意地でも戻りたいとこだが。
『皆さんが思う一番のネックはやはり数の差だと思います。しかしこれに関してですが、貴方がた以外にも、救出隊として方々向かってもらっていたメンバー達が戻ってきており、街からある程度離れた周囲で同じような事を思っている筈です。一部隊だけでは確かに心許ないかもしれませんが、周囲に控えてるのは全部で一二部隊。それで一〇〇人は間違いなく超えます』
そんなに救出隊とやらが別働隊として活動してたのか――しかも申し合わせたように戻るタイミングが重なるとはな。
これも、シャドウが計算してやってるとしたら大したものだが……ただ、それでも単純な人数でみるならコチラ側の外の戦力では二〇倍近い差がある……そこを皆はどう考えるか。
『そして私達も内側から切り崩し、活路を見出すつもりでいます。作戦としては外側から襲撃してもらい、その間に私達の部隊が内側から挟撃し、魔物で埋め尽くされたこの壁をこじ開ける――』
周囲の冒険者がざわめき始めた。そんな事が可能なのか? と疑問視する声も多い。
しかし条件は最初に比べるとかなりよくなっている。
人数に差はあるとはいえ十二の部隊がセントラルアーツを包囲するような状況で待機していて、街の内部も皆が無事であることを確認できた。
更に外側からと内側からで挟撃を仕掛けるという作戦も提案されている。
後は俺達以外の彼らをどう鼓舞するか……それは別の部隊にも言えることだがな。
『――ここまで聞いてもまだまだ不安は拭いきれないというのが現実でしょう。単純な人数でみた戦力差は歴然としております。しかし今あなた方の近くには英雄が控えております。その一人のヒット様は今も一緒に行動する仲間達と共に、あのイーストアーツのチェリオ伯爵やその側近であったザック、ジュウザ、ガイドを見事討ち倒しました』
て、おいおい俺達かよ。
「ヒットってスナイプリザートから助けてくれた男だよな?」
「チェリオ伯爵を討ったってマジかよ……」
「ザックといったら奴隷壊しで有名な、更に気に入らない奴がいたら同業者でも容赦なく殺してたあのキチガイだよな?」
「ジュウザとガイドってのも不気味な力を使い、ザックよりも実力は上って話があったよな確か……」
「そいつらを全員倒したのか、あのヒットという男が――」
しかもシャドウのこの話に再び周りがざわめき始めたな。
ただ、今度は驚愕といった様子が強いが……彼らの中でもチェリオ伯爵というのは畏怖してしまう存在だったという事か。
『更に元シャドウキャットメンバーであり、銀行での現金奪還の立役者でもある、皆様もよくご存知のカラーナも控えております』
「て! またうちかい!」
カラーナが苦笑いを浮かべながら吠えるように言ったな。
どうも銀行の件は、殆どカラーナの手腕によるものといった扱いになってるようだ。
「そ、そうだカラーナ様も俺達の仲間に……」
「シャドウキャットのカラーナ様がいるのは確かに心強い――」
カラーナについても囁かれ始めたな。それだけシャドウキャットの活躍は大きかったって事か。
『そして忘れてはいけないのが――わけあって単身でご足労頂いた形ではありますが、王国軍正騎士たる戦乙女アンジェ様も共に戦う意志をみせてくれているという事です。エレメンタルナイトという希少なジョブを有し、先のイーストアーツでの戦いでもヒット様の助けとなりました』
「ちょ! ちょっと待て! おまっ! それをここでばらすのか!」
アンジェが血相を変えてカラスに詰めより、掴みかかる。
激しく前後に揺すり、消えるんじゃないかと心配になるほどだ。
「落ち着けアンジェ! カラスに掴みかかっても意味は無い!」
なので俺は一応止めに入るが……息が随分と荒くなっている。
アンジェとしてはまだ知られたくはなかったのかもしれないが――だがもう遅い。
「お、おい聞いたか?」
「あの方が王国軍の正騎士だったなんて――」
「旅の騎士じゃなかったのか?」
「つまりあれだ、お忍びで視察に来てたって事じゃないのか?」
「その女騎士様が戦いに参加されるって事は――」
「王国軍が解放軍の後ろ盾に……」
周囲の雰囲気が一変し、冒険者たちの相貌に希望が宿り始めているのが俺にも判る。
一人とはいえ正騎士がきたとあって恐らくここだけじゃなく、他の部隊の士気も上がってきてることだろう。
『さて皆様ここまで言えばもうお判りでしょう。既にイーストアーツを解放した勇者に、銀行に一泡吹かせ奪われたお金を取り戻してみせた英雄。更に王国軍の凄腕の正騎士様まで皆様の中に加わっているのです。どれか一つであればただの偶然かもしれない。しかし三つ重なればそれは必然。この戦い、流れは我々解放軍に来ております。今こそ一致団結し、この苦難を乗り越える時!』
「そ、そうだ!」
「確かにこれは千載一遇のチャンスなのかもしれない――」
「そうだ! あのシャドウがこれだけはっきり言っているんだ!」
「今やらなくていつやるってんだ!」
カラスから発せられたシャドウの宣言が、周囲の冒険者の気持ちを奮い立たせ、その瞳からは烈々たる気迫が光のように放出されている。
先ほどまでの尻込み具合が嘘のようだ。
これは……俺とカラーナの事も関係はしてるだろうが、アンジェが王国の正騎士だった事が相当に効いているようにも思える。
「残念ながらこのカラスでは私の言葉を届けることしか出来ません。ですが私は皆さんを信じております。きっと事を成し遂げられることをね。作戦は一時間後に決行致します。我々もそれに合わせて動きます。それとヒット様、シャドウナイトは一度回収させて頂きますね。それは少々魔力を喰うもので――それでは……再び合流できると信じております」
最後にそう言い残しカラスとシャドウナイトが消えた。
これは……シャドウ自身がシャドウナイトに込めた魔力を必要としているって事か。
「うぅ……これではもう言い訳のしようもない」
ふと、隣に立っていたアンジェが肩を落として嘆くように言う。
そしてアンジェの口端はぴくぴくと引きつってもいた。
確かに、これはもう後戻りできる状況でもないしな……
「アンジェ……気の毒だがこれはもう諦めるほか無いな」
「し、しかしヒット! あの男、最初私とあった時は、散々余計な事はしないでくれだの、大人しくしててくれだの言っておったのだぞ!」
「シャドウはきっとアンジェの地位を役立てるタイミングを見計らっていたんだと思う。それでその時がくるまではおとなしくしておいてくれって事だったのではないかな?」
「む、むぅ、そういう事か……しかし、やはりいいように利用されたみたいで納得が――」
……アンジェは納得行かないといった様子で口を尖らせブツブツ言っているが――シャドウはもしかしたら、そういう風にいえばアンジェの性格なら逆に動くと予想していたのかもしれない……
そしてあのカラスのような物で俺達の様子をちゃっかり観察してもいたのかもな……だからこそアンジェの実力が高いという前提で宣言したのだと思う。
そしてこのタイミングでの暴露……それも当然計算のうちなのだろうな。
実際タイミングとしてもここしかないといった感じだしな。
圧倒的な戦力の差があるにもかかわらず、勝機があると思わせるのには十分すぎる効果があったようだ。
「まぁ、しゃあないやん。それに知られたからって別に減るもんやないやろ?」
「あはっ……でもアンジェの事を知って皆さんのやる気は相当に上がってるようですね」
相変わらずのお気楽なカラーナの発言にメリッサが苦笑しつつも、周囲の様子をみて印象を述べる。
そして確かに周囲の様相はすっかり一変、気炎万丈といった感じか。
恐らく他の部隊も一緒だろうな。
後は一時間後どう動くかといったとこだが――一時間といったな……それだけあれば。
「皆、シャドウは大体の作戦を告げただけで消えたが、恐らく細かい話はこの一時間で煮詰める必要もあるだろ。幸い俺のスキルがあれば別部隊の様子を見に行くのにそう時間は掛からないし、ある程度は集まるよう誘導したほうがいいと思う」
俺がそれを告げると、アンジェも同意した上で。
「ならば私も動こう。ふた手に分かれたほうが速いだろうしな」
そう提案してきた。確かにシャドウの話では各方面に散っていた救出隊が戻ってきているということだしな……
「判った。それじゃあ俺は南から東回りで、アンジェはここから北の方に声を掛けて回ってくれ」
「それだとヒットの負担が大分大きい気もするが……」
「まぁ移動なら俺のスキルの方が速いし、この位置が西側に当たるからそれは仕方ない。だけどそれでもかなり助かるよ」
それに一時間後には作戦開始だ。決して余裕があるわけでもないしな。
なので、申し訳無さそうにしてるアンジェに、気にするなそれより急ごう、と告げふた手に分かれて全部隊に声を掛けて回る。
どの辺りにいるかは、地図で身を潜めつつ様子を探れそうなところにあたりを付けたので、それほど苦もなく声を掛けて回ることが出来た。
そして、やはりこれはしておいて正解だったな。全員シャドウのカラスから話は聞いていたようで士気は上がっていたが俺達に関しては、本当にいるのか? と不安に想っていた部分も少なからずあったようだ。
それが俺が顔を見せたことで一気に解消された。
シャドウの言っていたとおり、救出隊の数は一〇人ずつの一二部隊。
ただ馬車の数はそれぞれ三台ずつ抱えているので、一箇所に集めるのは無理があるか。
実際の戦闘では北門は無視する他ないので、東門、南門、西門の三箇所への攻めとなる。
なので三つに分かれる形で部隊が集まるよう調整をした。
人数は均等に四〇ずつに分かれたな。ただ特色がそれぞれ異なる。
東は近接戦闘系の戦士が多く、南は盗賊ギルドの連中で実際そういった軽装で身軽なタイプ、西に関しては弓や魔法系といった遠距離タイプが多い。
それから更に俺はアンジェ、メリッサ、カラーナ、セイラと作戦を話し合う。
冒険者達の配置を指定するだけでも三〇分は使ってしまった。
実際はまだ移動してるのも多いので、冒険者たちの戦闘準備が整うのは恐らく作戦決行直前になる可能性が高い。
「出来たぜヒットの旦那!」
すると、俺達がどう動こうかと相談しているところへ、ダイモンが駆け寄ってきた。
「あ、そういえば居たんやったな」
「ちょっと酷くない!?」
まぁ実を言うと俺もちょっと忘れかけていたが……この満足気な表情を視る限り、何かの召喚に成功したってところか?
「その顔もしかして上手く言ったのか?」
俺の想っていた事をアンジェがそのまま問うと、ダイモンが喜色を満面にし、おう! と応じた。
「まぁちょっと見てくれよ」
ダイモンが先の尖った石を取り出し、地面に魔法陣を描いていく。
陣の中には異世界語や複雑な記号やらも刻まれていき、一分ほどでそれは完成した。
召喚士はこうやって地面などに魔法陣を描くことで召喚魔法を発動させる事が出来る。
ダイモンはまだ基本職のサモナーである為、それなりの大きさの魔法陣を地面に描く必要があるが、上位のコンジャラーであれば、予め紙に魔法陣を記入しておき持ち歩く事で召喚に掛かる時間の短縮が可能だったりする。
「さて……それじゃあやるぜ!」
ダイモンは張り切って宣言すると、自分が描いた魔法陣の上に手を翳し、召喚に必要な呼びかけを行った。
「聞け幻界の住人よ我が呼びかけに応えよ……そしてその力を持って――」
ダイモンの詠唱は続くが、しかし……よくよく考えるとダイモンの今の格好はいかにも門番といった感じの鎧や兜であり、その姿で召喚の儀式に挑んでいるのだから違和感が半端ない。
「顕現せよ霊獣モキュー!」
ダイモンが声を張り上げ、かと思えば魔法陣が発光し光の粒子が渦を巻くようにして上昇した。
そして、その光景も一瞬にして収まり――すると魔法陣の上には、確かにダイモンの召喚したそれが存在していたわけだが。
「……もきゅ?」
召喚された霊獣が訊ねるように鳴いた……うん、なんとなくそうかなとは思ったけど、やっぱ普通にモキューだったな――
「か……可愛い――」
メリッサが思わず呟く。頬も薄紅色に染まってる。
かなりキュンキュンきてるご様子。
「こ、これはまた随分と愛らしい霊獣が現れたものだな……」
アンジェも真面目な表情は崩さないが、顔に熱を帯びてるのは判る。
愛玩動物を見ているようなそんな視線をモキューに向けていた。
……まぁでも判らないでもない。
モキューは大きさがダイモンの握りこぶしより一回りほど大きいぐらいで、まんまるとしてフワフワと宙に浮かんでいる霊獣だ。
綿毛のような体毛を生やしているため、その色は白く、顔に当たる箇所にはつぶらな瞳を備えている。
その見た目の可愛さから、実際召喚獣としてはマスコット的人気が高かった霊獣だ。
そして召喚出来る幻界の生物で呼び出すのが最も簡単なタイプでもある。
「……いや、確かにかわえぇとは思うけれどな。今欲しいのは戦力やろ? これ戦えるんか?」
「……え~と鑑定してみた限り、せ、戦闘とは無縁なタイプなようですね」
「いや~そうみたいだな。なんか記憶辿って召喚してみたけど、全く戦う力は持ってないんだよ。あっはっは――」
「あっはっは、あるかいこんぼけぇ! もうしばく! 今直ぐしばいたるわ!」
「ぐ、ぐるじぃい~絞まる首がしま……旦那、た、助け……」
カラーナがいよいよ堪忍袋の尾が切れたのか、ダイモンの首を掴んで締め上げている。
必死に助けを求めてるダイモンだが、それぐらい余裕あるなら大丈夫だろう。
「……しかしヒット――これは戦力としては確かにあまり役にはたたないだろうな」
「う~んそうでもないと思うぞ」
アンジェが溜め息をつくように言ってきたけどな。
しかしこれは確かに戦う力こそ持ってはいないが、その代わり少し変わった能力を持っている。
それを活かせばもしかしたら――
「あ、ご主人様!」
「うん? どうしたんだメリッサ?」
俺の言葉に不思議そうな顔を見せているアンジェに考えを説明しようと想っていたら、メリッサが俺に向けて声を上げてきた。
なので先ずはそっちを振り返り、彼女に反問する。
「え~と、実は私も次のジョブに――」
ジョブチェンジか!? そうか……そういえばメリッサはここに来て集まってきた冒険者を良く視ていた。それにくわえて召喚獣のモキューを視たことでランクアップの条件を満たしたのか。
「もしかして高位職か?」
「は、はい! スポッターというジョブに……」
スポッター?
……これはまた、俺の知らないジョブが出てきたな――なのでどんなジョブか聞いてみたが、どうもチェッカーの上にあたるような感じか。
その為か鑑定が複数同時にも出来るように進化している。
ただ複数同時の場合はやはり数が多いほど鑑定に掛かる時間は伸びるようだな。
それ以外ではヒーリングアイというスキル……これは別に相手を回復するというわけではなく、目が疲れにくくなるようだが、あとはパワーアイで視力が良くなり、メジャーアイは視たものの正確な距離や長さが判るなど、眼に関するスキルが多い。
透視や天眼というのも増えてるようだな。
そして後は――スペシャルスキル……これは通常ジョブを手にした直後は覚えていないという場合も多いみたいなんだけどな。
どうやらメリッサの場合は、ジョブとの相性がかなりいいのか、直ぐに覚えることが出来たようだ。
しかもこれ……かなり使えるな。
特に今回のような戦いでは間違いなく役立つ。
「凄いぞメリッサ! これで俺達がこの戦いに勝てる確率がぐんと上がる!」
「ご主人様……う、嬉しいです――私が、戦いでお役に立てるなんて」
感慨深そうに語るメリッサ。
……恐らく自分でも、チェッカーのままでは少なくともこの戦いでは役に立てないかもしれないと考えていたのかもな。
チェッカーの鑑定はある程度は相手に近づく必要がある……しかしあれだけの魔物がいる中、メリッサにそんな危険な真似はさせるわけにはいかない、と確かに俺は考えていたからな。
だが、スポッターになった事でその心配は無用になり、更に西側の門を攻める隊にとってもかなりのアドバンテージになる。
なので俺はそれを踏まえ、再度主要な面々と作戦について話し合う、勿論ダイモンの召喚したモキューの活用方法も含めてだ。
そしてそれが終わってからは、全員が戦闘配置につく。
よし、これで後は――作戦の決行を待つだけだ。
 




