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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第118話 決意を新たにってお前かよ!

前の話である第117話の内容を若干変更

助けた馬車の数が三台となってます

「その節は本当にありがとうございました」


 あの時助けた村娘の一人が、代表するように頭を下げて、俺達にお礼を述べてきた。


 そして頭を上げた彼女も含めて、女の子達の様子に目を向けるが、表情は決して明るくはないが、精神的には前よりは回復してるようにも思える。

 ただかなり窶れてるな……村はどこも貧しいとの事だしあの村長だしな……あまりいい食事にありつけなかったのかもしれない。


 ……何せあんな目にあって、村ではあの扱いだったからな――


「てかヒットの旦那知り合いなのかい?」


 俺達が村娘とニ、三言葉を交わした後、横からダイモンに問われたので、簡単に経緯を説明する。


「あの豚の盗賊団を壊滅させたのも旦那達だったのかよ! 全く俺の知らないところで随分活躍していたんだな」


 ダイモンが肩を竦めるようにしていう。 

 この様子を見るに、豚の盗賊団は随分と悪名を轟かせていたんだな。

 

「ところで、なんでこの子達が馬車に乗っているんだ?」


「あぁ、それに関しては、寧ろこの子達を助けるのが目的だったんだよ。シャドウがなんか変わったスキル持っていてな。それで領内で生存者のいる村を見つけてな。魔物たちが村々を襲ってるというんで救出隊が結成されたんだ。この子たち以外にも馬車には子供なんかも乗ってるぜ」


 ダイモンが並んでいる馬車を指さして言った。


 つまりダイモン達も含めて解放軍の何組かは、村を回って生存者の救助に回っていたということか。


「やったらもしかして、あの小憎たらしい村長も乗ってたりするんか?」


 言ってカラーナが鼻白む。

 メリッサも微妙な面持ちだな。

 アンジェに関しては、あの時は村には同行せずセントラルアーツに向かっていたので、怪訝そうではあるが。


「……村長は死にました」


 俺があの時の村長のセリフを思い出していた時、村娘からそんな告白を受ける。

 言葉もなかったが、少しはぎょっとした表情になっていたとは思う。


 ただ村娘の顔つきは悲しいというものとも少し違った。

 少しだけ目をそらしつつ、眉間に皺を寄せ表情を歪ませる。

 せいせいとしている、とまでは言わないが死んで当然とでも思ってそうな様相だ。


「シャドウの確認をもとに俺達も動いてるんだが、馬車でもそんなすぐに着けるもんじゃなくてな」


 村娘達はそこから何も言わず黙っていたが、代わりにダイモンからの補足が入る。

 すると他の冒険者も口々に語りだし。


「村についた時には既に魔物がやってきた後だったんだ」

「条件はよくわからないが、連中は攫う対象と処分する対象を分けてたみたいでな」

「村長はズタズタに引き裂かれていてな。ひと目で死んでるのが判ったさ」

「村長だけじゃなく他にも死体は散乱してたけどな……」


 救出隊の面々が思い出したように顔を歪める。

 もう少し早ければ……といった悔しい思いでいるのかもしれない。

 

「だがなぁ。正直この子達への仕打ちを考えたらそこまで俺は同情も出来ないけどな」


「仕打ち? なんやそれ? 何かされたんか? てか――」

 

 カラーナはそこまで言って言葉を切り、村娘たちを一瞥した。

 なんでその状況で彼女たちが助かったのか? と疑問に思ったのかもしれない。

 確かに話を聞く分には、救出隊が村に着いた時には魔物に襲われた後だったわけだしな。


「それなんだよ。この子達と後馬車にも何人か乗ってんだけどよ。皆村の地下室に拘束されて放置されていたんだ。俺はそれを見た時、村で人攫いでもやってんのかと思っちまったぜ」


 その後のダイモンの説明によると、どうやらあの銀行の連中がやってきた後、村長は俺達が助けた娘たちや元々連れて行かれる予定だった子供達を隔離して、他の村人にも、もう死んだものと思って諦めろと言い、生きていく上で必要最低限の食事だけを与えていたらしい。


 その話を聞いて俺も皆も唖然としてしまった。

 窶れている様子から、食料の制限ぐらいはあったのかもしれないと思ったが、まさかそんな行為に及んでいるとはな……


 ただ、今回ばかりはそれが結果的に彼女たちを助ける事に繋がってくれたようだ。

 魔物たちは地下室までは調べようとは思わなかったみたいだな。

 連中はそこまで利口ではなく、そのおかげで手足を縛られた状態でありながらも何とか生き延びることが出来たらしい。


 尤も、ダイモン達の救出がなければそのまま餓死していた可能性もあるが……

 ちなみにシャドウは、生存者がろくな食べ物にもありつけず衰弱している可能性もあるということで、馬車にある程度食料を積んでから向かわせてるそうだ。


 それはダイモン達の馬車も例外ではなく、助けた後、干し肉や乾パンなどを分けると涙ながらに食料にかぶり付いたとか……


 あの村長、一体どんだけ彼女たちを冷遇していたんだが――


「うちは自業自得やと思うで。死んだんも、連れてかれたんも、この子らそんな目にあってるのに何も言わんかった連中やろ? ダイモンの言うとおりとても同情できへんわ。村長なんてボスに散々酷いこというたんやし」


「カラーナ。死んだ者の事を悪く言うのはあまり感心できないな。どんな人物であろうとこのような形で命を失うとは憐憫を催さずにはいられない」


「た、確かに多くの人が魔物に命を奪われてるのは事実ですしね……」


 大体の事情を聞き終え、カラーナはどことなくいい気味といった様子で語るが、それにアンジェが咎めるように口にする。

 メリッサも眉を落とし哀しそうでもあるのだが、ただ彼女たちにしてきた仕打ちに関しては、当然納得していないといった感じもある。


「アンジェはあの場にいんかったからそんな事いえんのや。寧ろあの場にいたら、アンジェやったら騎士の名において貴様らを許してはおけん! とかなんとかいうて暴れとってもおかしくないで」


 ……なんとなくその様子が想像できるが――ただ実際アンジェはいなくて正解だったか……ほぼ間違いなくゴールドに挑みかかっていただろうしそうなったら――


「そういえば……村長の息子が、確かゴロンだったか、彼は――どうなった?」


 ふと俺は思い出し、そして口にする。

 ……正直訊くべきじゃなかったかと後悔の念もあるが――


「馬車におります」


 え? と村娘の一人を振り返る。

 応えたのはダイモンではなくその女の子であり――


「……村長は自分の息子も私達と同じように隔離したんです――それで助かる事が……あ、あの宜しければ顔を出して上げてもらえませんか?」


「え? 俺がか?」


 思わず自分を指さし、恐らく困った顔を見せてしまっていた事だろう。

 俺なんかにあっても嫌なことを思い出すだけじゃないのか? とも思ったが、どうやらあの息子は俺と会いたがっていたらしい……


 そこまでいわれるとな。

 彼女たちの話だと、今は真ん中の馬車に乗っているようだ。だから俺は腹を決め馬車に向かい彼と再会のため乗り込んだ。





「なんか随分と久しぶりな気もするな――」


「あ、あぁ……」

 

 荷台の壁に背中を預けながら俺に顔を向ける彼に、俺はなんとも言えない気持ちになる。

 判ってたことだが、ゴロンの身体のうち、右脚、左腕、左眼の三箇所は欠損したままだ。

 俺に向ける視線も、左側は暗い闇穴のままであり、右目だけが俺の姿を見据えている。


 馬車の中には今さっきまでは子供も乗っていたが、今は気を利かせてか皆外に出されている。

 今馬車にいるのは俺と後ろに控えてるアンジェとメリッサだけだ。

 カラーナとセイラは外で待ってくれている。

 子供は食事も摂り、大分元気を取り戻しているのでフェンリルを相手に遊んでるようだ。


 ふたりが俺と一緒に入ってきたのは、アンジェはゴールドの所業によってどんな目にあってるのかを知っておきたいから、メリッサは、もしゴロンが苦しんでるようなら自分の能力が少しでも助けになればという思いかららしい。


 それにしても……妙に空気が重たい気がする。

ゴロンの痛々しい見た目も勿論あるけどな。

 実際アンジェは思わず酷いと声を漏らし、メリッサも改めて彼の様子を目にし、言葉も出ないといった表情で口を噤んだままだ。

 こちらからは正直掛ける言葉が見つからない。


 村娘達の話でいくと、彼が俺に会いたかったらしいが、一体何の話だろうか?

 やはり……俺のことを恨んでいるのだろうか? そんな事を頭のなかで考えていると、彼が口を開き次の言葉を紡ぎだす。


「あんたと会いたいと思ったのは、ちゃんとお礼を言っておきたかったからだ」


 え? と顔を上げ同時に思わず声が出た。

 そんな言葉が飛んでくるとは正直思わなかったからだ。


「……俺の親父は馬鹿だった。だけどあの時何もいえなかった俺も親父の事はいえないなってな。後悔してたんだ。だからしっかりお礼を言わせて欲しい。村の娘たちを助けてくれてありがとう。そして村の為にお金を出してくれたこともだ。結果的にこんな形にはなってしまったが、あの時の事は感謝している」


 深々と頭を下げられ、俺は正直困惑した。

 まさかお礼を言われるとは……


「……その様子だと、もしかして俺がまだあんたに恨みを抱いてると思ったか?」


 ……俺は、それになんと応えてよいか判らず彼に視線を固定させたまま、黙ってしまう。

 ただそれは、肯定に等しいだろうが。


 ゴロンもそれに気がついたのか、ふっ、とどこが自虐的にも思える笑みを零した後ぽつりと口にする。


「正直言えば、あの時全く恨んでなかったといえば嘘になるな。こんな事なら死んだほうがマシだという気持ちだってあったと思う……でもそれで、あんたを恨むのはやっぱりお門違いさ。あの時あのゴールドって奴に逆らったのは俺の意志だ。俺が納得行かねぇから、だから抗いたくなったのさ。これはその結果だ」


 そこまでいった後、だからあんたが気に病むことでもねぇ、と右目で俺をしっかり捉えながら続け。


「……俺からしたら、村長だった親父は愚かでしかなかった。逆らうことなど考えず、大人しく従うことが一番痛みを伴わないとそう考え、どんな無茶な条件でもとりあえずは受け入れる。その結果があの有り様だ。……まぁ親父だけじゃなく多くの村の連中がそうだったけどな。だから俺がゴールドに反発した時も、村の連中は何も言わなかった……けどヒットだったな。あんたは俺を擁護してくれた。嬉しかったぜ。自分の言ってることは間違ってないと後押しされたみたいでな」

 

「……そういって貰えて俺も少しは気が楽になれた。でも、あの村長のいうことも一理あったなとも思ってはいる。結局俺のやった事では一時しのぎにしか――」

「でもあの場では少なくともあの子たちを助けた。一時しのぎ? それがどうした。いやそれでも本来は十分なんだ。あの時ヒットの助けがなきゃ何も出来ずただ連れ去られて終わりだ。だがあれがあったから考える時間が出来た。やろうと思えば村の皆で考えて対策を練ることだって出来たはずだ……だからあの時の親父は、やはりただの愚か者だった。その後の事もな……」


 そこで俺から視線を外し目を伏せる。

 一瞬の沈黙。

 そして俺は気になっていたことを彼に訊く。


「どうしてゴロンは息子なのに彼女たちと一緒に地下に隔離されていたんだ?」


「……あんたが村から去ってすぐ村の主要なメンバーで話し合いになってな。折角助けてもらった娘や子どもたちを次の取り立ての時に明け渡そうって話になったんだ」


 それは俺も訊いたから知っている……

 俺からしたら信じられないような話だが。


「それが決まった時、俺はこんな状態だからな、完全に蚊帳の外だった。だから親父がその事を俺に告げた時反発したんだ。ふざけんなってな。もっと別な道があるだろうと、だけど親父は聞き入れないばかりか、俺を責めだしてな『お前みたいな奴は最早わしの息子でない。そんな化け物みたいな姿になって自ら死ぬことも出来ないのか汚らわしい! 本当に見てるだけで虫唾が走る。だからあの時忠告したというのに、素直にいうことを聞かないからそのような汚物に成り果てるのだ!』なんて罵られる始末だ」


「……酷い」

「くっ! ヒットよ。私は先ほど自分がいった台詞を撤回したくなったぞ!」


 メリッサが涙声で呟き、アンジェが吠えるように言った。

 その気持はよく判る。既に死んだ男のことではあるが、聞いているだけでムカムカしてきてならない。

 血を分けた息子にそこまで言えるものなのか?


「……俺は親父にはむかってばかりだったからな。それに愚かな親父が嫌いだった。まぁ俺だって結局何が出来たわけではないから一緒かも知れないがな……その時だって結局その後すぐ村の者に縛り上げられてあの子たちと一緒に地下室に閉じ込められた」


 全くどうしようもねぇよな、と再び自虐的に笑う。

 そんな目にあって一体どんな気持ちだったのか……考えるだけで心が痛むが――


「……どうしようもないなんて事はないさ。だってゴロン、あんたは村の為を思って動いたんだ。何もしていなかった連中よりあんたの方がよっぽど勇敢だ、それにな今回助かった皆は判ってくれてると思う。だから俺にあって欲しいと頼んできたんだろう」


 俺がそう告げると、そうか……とゴロンが小さく呟いた。

 

 ……なんとかしてやりたい、そう思える。


「ゴロンちょっと、嫌かもしれないが、怪我してる箇所をみてもいいか?」


「別に構わないさ」


 ゴロンは、失くした箇所については、既にある程度受け入れる覚悟が出来ているのかもしれない。

 だが、出来ることなら戻してやりたいが――


「やはり駄目か……済まない」


「なんだよ。別にもう気にしてはいない謝るなって」


 自分の気持ちを吐露したからなのか多少はすっきりした面持ちではあるが……

 やはりキャンセルではどうする事もできなかった。

 判ってはいたが時間が経ちすぎてい――


「ご、ご主人様!」

「うわ! どうしたのだメリッサ急に大声出して?」


 突然のメリッサの叫ぶような声にアンジェが問いかけ、俺もその顔を見やる。

 

「そ、それが、今ゴロンさんの鑑定結果を見たら……そ、その失った部分について、担保として回収となってまして……」


 担保として、回収?


「メリッサちょっと良くわからないのだが、それは?」


 アンジェがメリッサに尋ね返す。

 だが俺はなんとなくメリッサの言っている事が判った気がした。


「あ、あのゴロンさんの鑑定ではそこまでしか判らないのですが、ただもし、あのゴールドの能力で完全に失った物であるなら――」

「そもそもその鑑定結果は出てこない、そうだろメリッサ?」

「は、はい!」

「!? そ、そうかなるほど!」


「? おいおいどうやら俺に関係してる話のようだが、さっぱり理解できないんだが……」


「つまりだゴロン。失ったと思われたその箇所は、ゴールドの能力で担保として取られているだけという事だ」


「……それはつまり失ったということではないのか?」


「近いようで違う。この場合恐らくゴールド自らが部位を返すか、奴を倒すことで奪われた部分は戻ってくる可能性が高い。そうでなければ鑑定結果でわざわざ表示されないはずだからな……ただ確実とは言えないということだけは念頭に入れておいて欲しいが」


「……俺の身体が戻る可能性が――」


 ゴロンの肩がプルプルと震えた。

 僅かでも希望が出てきたことで嬉しさが込み上げてきたのかもしれない。


「いや、でもな。あのゴールドは……よく考えたらそう簡単には……」


「元々俺達の目的はセントラルアーツに向かって銀行と対決する事でもある。そうなればゴールドとやりあう事にもなる――だから、俺はあんたの為にも全力を尽くす。そしてこれは俺の決意だ……絶対になんとかしてやる」


 場合によっては無責任にも思える言葉かもしれない。

 でも、それぐらいの気持ちが無ければ俺達の目標は達せられない。


「勿論私も全力だ。特にそのゴールドという男は、絶対に許しては置けない、悪だ!」


「わ、私は鑑定で必ず能力を探ってみせます!」


 俺達が決然たる態度でゴロンに告げると、ゴロンは一度鼻をすすり、全く、と口にし。


「やっぱあいつは愚か者で見る目がなかった。お前たちは……やはり俺達の救世主だよ。銀行を相手にか、だったら俺のためなんかじゃなくていい、苦しめられた皆のためにあいつを討ってくれ頼む!」


 その真剣な物言いに深く頷いて返し、俺達は馬車を下りた。





 馬車を下りると意外にもセイラの傍にも子供が集まっていた。

 理由としてはフェンリルの子供に触れ合いたいというのが大きいのかもしれないが、セイラはセイラで子供の遊び相手になってあげてたようだ。

 相変わらずの無表情だが、フェンリルに懐かれるようになったセイラだ、子供の心にも懐きたくなるような何か響くものがあったのかもしれない。


 ちなみにカラーナに関しては、他の冒険者に囲まれながら何か話を聞かせていた。

 耳に届く情報から察するに、シャドウキャット時代の思い出を語っているのだろう。


「ダイモン、こっちの話は終わった。そろそろ出発しよう」


「うん? あぁそうだな。セントラルアーツももうすぐだしな。いやでもなぁ、なんか懐かしいなぁ」


 懐かしい? 俺はダイモンの言っている意味が理解できず小首を傾げた。


「あぁ、いや懐かしいってのは。ほらあれ、フェンリルだろ?」


 ダイモンがフェンリルを指さし言った。


「ほう見た目の割にそんなことを知っているのか」


 気持ちは判るがアンジェが中々失礼なことを言う。


「まぁ俺の家、爺ちゃんがサモナーだったからな。それでそういう資料みたいなのは多かったのさ」


「へぇお祖父様がですか」


 メリッサが相槌を打つが、サモナーねぇ……


「そうそう、結構優秀だったみたいでな。あ、ちなみに俺もその血が濃いのかわかんねぇけど密かにジョブはサモナーなんだぜ」


 ダイモンが得意がって言った。

 ふ~んサモ――


「はぁ!? お前がサモナー!?」


「いや、そこまで驚くことないだろ?」


「アホか! 驚くに決まってんやろ! 何嘘ぬかしとんねん! ど突き回したろか!」

「えぇええぇえええええぇ!」


 いつの間にか話を終え、俺達の近くまで来ていたカラーナが、まくし立てるように文句を言う。

 ダイモンもびっくりだ。


「いやいやいや! 本当だって! こんな事嘘言っても仕方ないだろ?」


「はぁ? なんやねんそれ! おまんどうみてもファイターとかそんなやろ! なんでサモナーやねん! ありえへんわ! なんや! 岩でも召喚すんかい!」


「なんで岩だよ! 生き物でもねぇし!」


「カラーナ、さすがにそれは失礼だろ。きっとあれだ肉の塊でも召喚するのだろう」


「なんで肉の塊なんだよ! だったらせめて生きてる肉を召喚させろよ!」


「セイラもアンジェもそれは流石に……山とかを召喚するのかもしれませんし」


「それって逆にすごくねぇ!」

 

 確かに凄い……


「……オークとしてだろ、お前が」


「やっと召喚ぽい名称出たと思ったら俺かよ! 無表情で酷くないこの子!」


 フェンリルの事があってからセイラにも変化が見えるな、いいことだ。


「いや旦那、なに一人で納得したように頷いてんの?」


「というか、そもそもその話を聞いても何故懐かしいのかがよくわからないんだが」


 俺がそう返すと、あぁ、と思い出したように口にし。


「そうそう、いやだからな、子供の頃よぉ、爺ちゃんには止められてたんだけど召喚の方法が書かれた書物持ちだしてな、ダチ連れてコンボ大森林まで行ったんだよ」


 ……何だろか、凄く嫌な予感がするぞ。


「それでよぉ、森の中でその召喚試してみたらなんか成功しちまってな、そこのフェンリルの子供そっくりのが出てきたんだよな~」


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 ……おい、なんかきな臭くなってきたぞ。


「でもな、そこからが問題でどうやっても送り返す事が出来なかったんだよな。そしたら近くの藪がガサゴソ! て蠢きだしてな。魔物かと思って全員で一目散に逃げちまってな。そういえばあいつどうしてんだろうな……」


「犯人はお前かーーーーーー!」

「な、なんだ! なんだ! なんだぁああああ!」


 全員が声を揃えて怒鳴った。当然だ。

 てか犯人がこんなに身近にいたとはな――


ダイモンお前かよ!



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