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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第一部 異世界での洗礼編

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第10話 小悪党は三人組と相場が決まっている

「お前たち一体何をしているんだ?」


 俺は御者台に近づいて、メリッサを無理やり連れて行こうとしている、いかにもガラが悪そうな三人組の前に近づき、睨めつけるようにしながら問いかける。


 てかあの盗賊といい、こういう連中は何故基本三人組なのか。


「あん? なんだ戻ってきちまったのかよ」

「たく馬鹿なやつだぜ。わざわざやられに戻ってくるんだからな」

「まぁ頭わるそうな顔をしてるしな、ぎゃははは!」


 うんお前たちのほうが明らかに頭悪そうだけどな。

 てかやられにとかなにいってんだこいつ? こんな道の真中で堂々と。


「ご主人様!」


 と、メリッサが心配そうに馬車から顔を出してきたな。でも――


「メリッサ。いいから馬車に乗ってろ。こっちは大丈夫だから」


 とりあえずこの三人組の意識も俺に集まってるしな。


「ケッ! 何が大丈夫だ! かっこつけやがって!」


「かわいい奴隷の前だからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」


 そろって顔を歪め暴言を吐いてくるな。

 

「どうでもいいがお前たちは何者なんだ? 俺はお前らの顔なんてしらないし、恨みを買われる覚えもないぞ」


「うるせぇ! そっちになくてもこっちにはあんだよ! 新人の冒険者なりたてのくせに、そんな奴隷なんて持ちやがって生意気なんだこら!」


 ……まぁ鎧を着ていたり、武器を携帯していたりする時点で予想はついたけどな。


「お前らもしかして冒険者なのか?」


 俺はとにかく呆れたという目つきで訊く。だがそんな俺の気持ちには気がついていないのか、鼻を鳴らして偉そうに一人がいう。


「そうだ! 俺達はこうみえて結構名の知れたアマチュア冒険者! てめぇなんかとは格が違うんだよ!」


 どこをどう突っ込めばいいかって感じだな。名の知れたアマチュアとか全然すごそうに思えないし。


「わかったらお前のとれる選択肢はふたつだ。俺達にぼこられてから女をとられるか、素直に女と身ぐるみ置いてこっから立ち去るかだ!」


 ……選択肢になってねぇよこの馬鹿。それをいうなら二つに一つだろ。

 てか女はどうしても欲しいのかよどんだけ飢えてんだ。


「答えはどっちもなしだ。そもそもお前たちにメリッサと身ぐるみを渡す理由もなければボコられる理由もない。第一冒険者は揉め事はご法度だろ? こんな事を知れたらあんたらだってただじゃすまないぜ」


「はぁ? お前こそ何いってるんだ? ちゃんと話聞いていたのか? 理由なく傷つけたり殺害したりする行為が駄目だとあるだろうが」


「まぁそうだな。だから今お前たちがやろうとしているのは理由なき暴力だろ」


「馬鹿をいうんじゃねぇ! 理由はある! 俺らがお前を気に入らねぇ!」


 ……なんだこいつ? 某ガキ大将か? 俺のものは俺のものお前のものは俺のものとかいうタイプか? いや確かに見た目太いが。


「そんな理由がまかり通るはずがないだろ」


「い~や通る! これまでも俺たちはそうしてきた!」


「ケケッ、新人潰しの冒険者キラーといえばここいらじゃ有名だぜ!」


 新人潰しなのか冒険者キラーなのかはっきりしろよ。


「まぁでも安心しろ。流石に武器は抜かねぇよ。そこまでしたら衛兵が飛んできてもおかしくねぇし、ギルドにも迷惑がかかるからな」

 

 ギルドの迷惑考えてるのかよ! だったらそもそもこの行為をやめろや!


「だから俺達は全力でお前を殴る!」

「まぁ死んじまっても恨みっこなしだぜ」


 恨むわ。てかいってることがメチャクチャすぎて最早何もいえないな。


「あぁもう判った判った。じゃあ取り敢えずあれだ」


「うん? 女を渡す気に――」

「キャンセル! キャンセル! キャンセル!」


「……あれ?」

「うん?」

「俺達……」


 さてと、これで全員疑問符混じりの顔で呆然としてるな。


「なぁ俺はもういいか?」

 

「え? あ、あぁ」


 三バカはきょとんとしてるがな。まぁそれを放っておいて俺は馬車に戻り、メリッサにいってその場から離れた――






◇◆◇


 俺が手を出せば、もしかしたら衛兵がやってくるという可能性もないでもないからな。


 あいつらは素手で殴るぶんには大丈夫みたいな勢いだったが、それも確実じゃない。

 

 そもそもあんな連中をのしたところで俺に得は一切ないしな。タダの時間の無駄だ。

 そう考えるならあの場はキャンセルして乗り切ったほうが楽だったというわけだ。


 ただやっぱりメリッサが不思議そうにこっちを見てるんだよな。

 まぁやっぱ何かしたんだろうぐらいには考えているんだろうけどな。


「あ、あの失礼ながら、もしかしてご主人様は何か魔法のような物をお使いになることが可能なのでしょうか?」


 魔法か。やっぱそこにいきつくかそうだよな。

 でもだったら――


「あぁ実は少しだけな」


 俺は仕方なくそう応える。既に彼女にならキャンセルの事を話してもいいかな? という気持ちにもなってはきているが、この世界にないものを説明するのも大変だ。

 ならば魔法ということにしておいたほうが無難だろ。


「やっぱり! やはり流石ですご主人様。あれだけの盗賊を相手にする武力をお持ちでありながらも、魔法までお使いになられるとは! 私ご主人様にお仕えになれて本当によかったと思っております」


 うん。まぁだからまだ正式ではないんだけどな。

 まぁでも本人が嬉しそうだし水を差すのはやめておくか。


「それにしても私は自分が情けないでございます」


 情けない?


「なんでだ? どうしてそんな事を思う?」


「だって――馬車を守るという任をうけていながら、あんな連中に何の対処も出来ないなんて、これではご主人様の奴隷失格です!」


 そんな事を考えていたのか。まぁ確かに馬車を頼むとはいっておいたけどな。

 あれだって本来はあんな荒くれ者の冒険者の中にひとり残しておくのが心配だったからだしな。


 まぁ結果的に外にいても絡まれたわけだが。街なかの治安を過信するのは危険だなやはり。


「馬鹿だなメリッサは」

「ふひゃ!」


 まぁとはいえ、しょげるメリッサに俺はなんとかしてやろうと、頭に手を置きちょっとなでてみる。


「あ、あぁ、ご主人様――」

 

 最初変な声出してたけど、直ぐに目がトロンとして頬も薄紅色に染まったな。

 

「俺は君に感謝しているよ。今こうやって馬車が動かせているのもメリッサのおかげだし、商人ギルドの事も色々教えてくれただろ? 冒険者ギルドでも一生懸命メモをとってくれた。メリッサは既に十分役に立ってるよ」


 俺が感謝の言葉を告げると、メリッサが目に涙を溜め、ウルウルとした瞳で俺をみながら。


「ご主人様――私などに勿体無いお言葉です……」


 恭しくそんな細い声を返してきた。

 俺は改めてメリッサの可愛らしさを痛感した。

 おまけにかなり従順だ。こんな娘を俺の奴隷に出来るのか――と思わず良からぬ妄想が頭を過るが、それはぶんぶんっと打ち消し。


「ま、まぁあれだ。とにかく残りの品物の売却を済ませてしまわないとな」


「あ! はいそうですね! ご主人様それに関してですが――」




「ありがとうございました――」


 メリッサに聞いた店では、彼女の言った通りの値段で宝石を売ることが出来た。

 あのトルネロというのが指に嵌めていた指輪だ。


 それにしても彼女の鑑定能力と情報力に改めて感服する。

 何せメリッサいわく、下手な店で売ろうとしても足下を見られる可能性がある、とのことだ。


 どうやら税が高くなってからというもの、多くの商店は売値は高く買値はとことん安くという方針に切り替わっているらしく、下手な店にいってしまうと、貴族でもない限り二束三文の値で買い叩かれてしまうらしい。


 だが、そんな中でもまだ一部の店はその姿勢を変えず、お客様第一主義で頑張っているところもあるとメリッサはいう。


「次は装備品の売却ですね」


「そうだな。みたところ立派な佇まいの武器屋や防具屋みたいのは多そうだが」


 俺はメイン通り沿いに並ぶ店を指さしいう。確かあれはゲームでもあった装備屋の筈だが。


「ご主人様、あれらの店は全て先ほど商人ギルドにいたボンゴルの経営する、もしくは息のかかった店でございます。ですので正直お勧め致しかねますね。それよりも――」




 メリッサの案内で来たのはメインの通りから外れ随分と奥まったところに存在した。

 途中の道は整備のされていない土が剥き出しの路地といった感じのもので、馬車がなんとか一台ぎりぎり通れる程の物であった。

 逆から馬車がきていたらすれ違うことも出来なかっただろう。


 そんな道のどん詰まったところに、そのボロボロの家屋はあった。


 いや実際には店らしいのだが、パッと見は本当におんぼろの長屋といった感じで、申し訳なさげに掛けられているやはりぼろぼろの看板がなければそれとは気づかないだろ。


 というか、メリッサに教えてもらわなければそのままスルーしてしまいそうなほどだ。


 とはいえとりあえず店の前で馬車を止め、メリッサと共に建物の中に入る。

 扉は木製でこの世界では珍しい引き戸のタイプだ。


 ゲームでもこれはなかったなと思いつつ中に入る。というか、あの通り沿いの武器屋や防具屋がボンゴレの経営する店というのも当然初耳だ。

 やはり俺の知っているゲームの設定とはかなり異なってきている。


「いらっしゃい」


 俺達が店の中にはいると、カウンターにいた店主がぶっきらぼうにそんな声を掛けてきた。


 しかしこれは――


 俺はその店主をまじまじと眺める。ずんぐりむっくりとした体型。もさもさに蓄えた口髭に顎鬚。

 背は低いが筋肉がパンパンにつまったような逞しい身体。


 うん、これはドワーフだな。

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