二話 THE・勇者セット!
「は、はじめまして、勇者様! 私はサクラ・グーグニールと申します!これからよろしくお願いたします!」
「あぁ、どうも、八代・悠です。こちらこそよろしくお願いします」
「はい!……いやぁ、よかったです、恐い勇者様でなくて……。あ、おじいちゃん!そこ段差あるから気を付けてね」
「……ふぉ、ふぉっ…ありがとの…ほんとに、さくらはええこじゃわい…ほれ、おこづかいをあげようか」
「……おじいちゃん。それ入れ歯だぜ?」
「ありがとう!おじいちゃん!」
「いや、貰うのかよ!?」
さて、前文を読んでお分かり頂けたかと思うが、あれから一夜明けて、俺を召喚した巫女、サクラさんと対面した。
もちろん、おじいちゃんも一緒に。
ちなみに、俺がこっちに召喚されたのはこの国の夕方。
時差ボケみたいなのがあって、未だちょっと眠い。
サクラさんは、俺の二つ年上で、巫女兼おじいちゃんの介護係なんだとか。
国公認のおじいちゃん介護……
んで、昨日顔合わせしなかったのは、俺を召喚して、ものすごく疲れていたからなんだとか。
サクラさんは、流れるような銀色の髪。通った鼻筋に、大きな黒い瞳が印象的な女性。
しかし、身長が小さいので、実年齢より幼く見えたのだろう。
いやぁ、昨夜から期待してただけあって、可愛いし、性格もよさそうだ。
小動物のように慌てる姿も、これまた可愛い。
モテるだろうなぁ…。
まっ、それは置いといて。
今日は仲間の顔合わせと、旅の準備らしい。
あ、ちなみに王様とはもう挨拶してきた。
「じゃじゃ馬な娘を頼む」
とか。
結構疲れきった顔だったので、相当苦労してるんだろうなぁと、心の中で同情しといた。
「では、必要な物は倉庫から取って行っていいと聞いていますので、まずは倉庫に向かいましょうか」
「結構遠いいんですか?」
「いえ、すぐそこなので大丈夫ですよ?あ、おじいちゃんはここにいてくださいね?」
ちなみに、ここは俺の部屋だ。
「では、行きましょうか、勇者様」
俺たちはおじいちゃんを残して、倉庫に向かった。
*
その倉庫は、圧倒されるものだった。
まず目に入るのはその大きさだ。
ここに来る前は都会に住んでいたので、大きいものは見慣れているが、それでも気圧されるほど。デパートが丸々入るんじゃないか?
そして、中も凄い。
壁一面は武器や旗で埋め尽くされ、床にも、所せましと大きな木箱が置かれている。
俺の身長と同じくらいまで積まれた木箱。その大きさは様々だ。
通路は一本道で、人一人がギリギリ通れる程度。
「へぇー、これが、倉庫か……。スゲェな」
俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
「そうでしょう?三年前まで戦争してましたからねぇ、武器や道具は大量に余ってるんですよ」
なるほど、人は疲弊しても、物資は余裕があったわけだ。
「あっ、ここですよ、勇者様!」
「え?ここって……」
特に変わった様子のない場所なのだが…
「あのぉ、そこの木箱とってくださいます?私じゃ届かないので……」
「あぁ、はいはい……えっと、これですか?」
「いえ、その隣の―――あ、それ!その木箱です!」
俺は、ギターケースぐらいの木箱を下におろした。
「これ、なんなんですか?」
「それは開けてのお楽しみですよ」
サクラさんはいたずらな笑みを浮かべ、木箱をあけた。
そこに入っていたのは、
「……剣、と服?」
「はい!勇者様に必要なモノですよ」
まあたしかに、俺は制服のままだし、剣も旅護身用に必要だろう。
が、これは明らかにおかしい。
俺は、剣を取り出して脇に置き、服を広げる。
「あの、サクラさん?」
「はい。なんですか? あ、あと、さん付けしなくてもいいですよ?敬語もなしで」
「じゃあ、サクラ」
「はい」
「これなに?」
「……なにって、勇者様セットですけど?」
ああ、そうだろう。サクラの言う通り、これはどう見ても勇者セットだ。
嫌なくらいな!
青のマント!
緑の一張羅!
茶色い皮のブーツ!
極め付けは、一張羅の前面に大きく書かれた
『私が勇者です』
の文字。
THE・勇者って感じだ。
なんてったって、勇者ですって書いてるもんな。
「こんなんで外歩けるか!!」
「ひぇ!?そんな!かっこいいじゃないですか!」
「どこがだよ!」
サクラの感性は少しおかしい様だ。
「とにかく、これは着ないからな! 剣だけもらう」
俺は、剣を抜き、高々に宣言する。
狭い通路なので、ゆっくりと抜いたのだが。
『ぱっぱらぱー! 勇者がやってきたぞ!』
静かな倉庫内に、軽快な声が鳴り響く。
発生源は剣だ。
「あ、それ、魔術師の方が宴会用にと作られたモノでして……実はその服も魔術師の方が作られたんですよ?」
「おもちゃじゃねぇか!!」
だから、こんな倉庫におかれてたんだな……。
おかしいと思ったぜ。
勇者セットがこんな所にあるわけないもんな、普通。
「そんなことないです! その剣はこの国で一、二を争う切れ味と耐久性をもっているんです! 服だって攻城戦用のバリスタで撃たれても大丈夫なつくりになっているんですよ!」
「無駄に高性能だな!?」
てか、魔術師スゲェ―な!
「……とにかく、これは全部しまっておこう」
「えー、そんなぁ……かっこいいのに……」
名残惜しそうなサクラに少し罪悪感を感じながら、俺は、木箱を詮索する。
「この辺、全部衣類系なんだよな?」
「……はい。そうですよ、―――あの勇者様?」
「ん?なんだ?」
「あれが嫌なら、せめてこれはどうですか?」
サクラが取り出したのは、黒の全身タイツ。
顔の部分には、白い変な仮面がついている。
「ぜっっったい着ねぇよ!!!!」
俺の叫ぶ声が倉庫に木霊する。
……おじいちゃんといい、サクラといい、ホントに大丈夫なのか? 俺たち……
はいどーも!
今回は旅の準備ということで!
色々妄想が膨らみましたねー……
ではでは、誤字脱字、感想などお待ちしております!