「次男編」~俗に言うキャラ紹介~
「そりゃそうだ」
「畜生、無念だ・・・」
「もっと練習をきつくするべきだな」
「いや、それは駄目だ、ついていけるわけねぇ。 だろ?」
「面目無い」
俺らは何を話しているかというと、身体能力面での成長が乏しい俺の友人、松田良平が「どうすればバスケットが上手くなるのか」という談義だった。
練習をきつくするという案を出したのが二人目の友人、飯浜弘である。
そしてこの俺、福山滝春はシビアな現実を目の前にしているわけである。
「大体何でバスケなんてできないのにバスケ部に入ろうとしたんだよ」
「モテそうだったから」
「幻滅だ」
一応言っておくが、今は部活終わりの部室。皆とうに下校している。
「スマン良平、弘、俺の兄弟が腹をすかせて待ってるからそろそろ帰るわ。しかも校門でユイもずっと待ってるらしいし」
「おーおーお熱いこって」
「そのノリやめろ」
「もーハル君遅いよー」
「スマン」
コイツは古沢唯奈といって、俺の幼馴染。俺は唯奈をユイと呼び、唯奈は俺をハルくんと呼ぶようにしている。付き合ってはいない。が、いつも登下校を共にしている。
おそらくだが、お互いに『友達以上恋人未満』までの感情しか持っていないだろう。
そんな俺を友人はこう呼ぶ。『リア充』と。リアル(現実)が充実しているヤツのことを言うのらしいが、モテるイケメンである俺は確かにそうなってしまうな、といつも思う。
てくてくと歩きながらユイと俺はいつもどおり会話をしながら家路を辿る。
「ねぇ、校門に来るまで何してたの?」
「バスケ部の奴等とちょっとした談義に花を咲かせていた」
「何それ?」
「ちょっと松田が・・・(ry」
「ああー、松田君バスケット露骨に下手だもんねー」
「露骨とはなんともまぁ・・・その通りなんだけど」
「そういうハル君はどうなの?」
「バスケ部一かな」
「謙虚じゃないねー。まあ今更引くようなことじゃないんだけど。」
「悪かったな。俺は正直なんだ。自分が完璧すぎる故・・・だ。」
「・・・」
こんな軽い会話を交わし、しばらくした後家に着いたには六時半のことだった。
そこで、俺は家にあった"それ"を見て驚愕する。
「何だコレ・・・」
「お、おかえり滝春。今日はちょっと僕が夕飯を作ってみたんだ。ど・・・どう?」
声をかけてきたのは"それ"の手前にいる三男の夏香だった。
「こ、これは・・・」
「湧季には"ゴミ"だって言われちゃったけどね。」
兄に同意だ。いつも毒舌な湧季であるが、こればかりは目の前にある"それ"を100%言い表していると思う。
「あ・・・味見はしてみたのか?」
「不味かった」
「じゃあ捨てろよ!」
「ごめんなさい」
「もう夕飯は俺が作る。」
「へ~い」
夏香はふて腐れた様子で自分の部屋に入っていった。
そしてその向こう側にある長男、湧季の部屋から声が聞こえてくる。
「腹減ったーさっさと飯作れ滝春ー」
「わーってるよー」
というわけで料理に取り掛かろうと冷蔵庫を開ける。そしてまた驚愕。
冷蔵庫は空に等しかった。おそらく夏香がほぼ消費したのだろう。
買出しに行かなければならないが、何故か管理担当の秋徳が帰ってきていないのでそれもできない。
(福山家には買出しのためだけに使う金の金庫がある。それを管理しているのが秋徳なのである。)
そういえば朝、秋徳は言っていた。
「今日は遅くなるから俺の分の夕飯は作らなくていいぜ。」
と。
八方塞がりだ。どうする。
次回、「三男編」に続く