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秋華学園物語

恋か友か

作者: 大空渚
掲載日:2026/05/19

先輩の所作はいつも美しかった。


ひとつひとつの動作に華があり、部員全員が見入ってしまうほどだった。


ここ秋華学園茶道部は、お免状の取得のために稽古に励んでいた。


谷口先輩もその1人で、あと一歩でお免状が取得できるところだった。


「先輩、お茶美味しかったです!」


そう言ってお茶碗を戻した。


「ありがとー、でもいつもどっかしら間違えちゃうんだよねー」


そう言って先輩はお茶碗を受け取り片付けを始めた。


お茶碗を洗っている先輩の姿は美しかった。


ずっと先輩が合格せずに茶道部にいてくれればいいのに、と心の中で思っていた。


しかし現実はそう簡単にはいかない。


先輩は1週間後、あっさりとお免状を取得し、茶道部を去ってしまった。


先輩は今年高三、受験生だから仕方ないと自分に言い聞かせていたものの、どこか心にポッカリと穴が空いたような気がした。


先輩が部活を引退してから1ヶ月、7月になって少しずつ暑くなってきた。


親友であり同じ茶道部の藤原に好きな人ができたと小耳に挟み、放課後の自習中に聞いてみた。 


心の中で、谷口先輩じゃないといいなーとうっすら思っていた。


しかし現実は無常だった。



「谷口先輩」



藤原の口から出た言葉に絶望したと同時に、あることに気づいた。


俺、谷口先輩が好きなんだ。


しかし気づいた時にはもう遅かった。


親友の話を聞いた以上応援しないわけにもいかないし、先輩は受験生だった。 



「…がんばれよ」



藤原には、心から思ってもないことを言ってしまった。


その日はそのまま下校時刻となり、帰宅することになった。


帰宅後、絶望と後悔が押し寄せてきた。


なんで藤原とかぶるんだ、なんでもっと前からアタックしなかったんだ。


藤原に「実は俺も谷口先輩のことが好きなんだ」とカミングアウトするべきかどうか考えている時に、一通のLINEが来た。



「藤原のこと応援しような!」



同じ茶道部の横山からだった。


正直どう返していいかわからなかったが、藤原の恋を応援しようと決めることにした。 


そんなこんなで、季節は学園祭の季節になった。

うちの学校は進学校を気取っているので高三は学園祭に参加できず、僕たちにとっては最後の学園祭だった。



「俺、谷口先輩を学園祭に誘うわ」



藤原はそうやって僕と横山に話しかけてきた。


高三は学園祭に参加できないものの、見学には来れるため、藤原は誘うと言い出した。



「じゃ、なんか手伝うよ」



横山がそう言うと、谷口先輩へ送るLINEをみんなで考える流れになってしまった。



その時間は辛かった。



親友である藤原の恋路を応援しようと決めたのに、ずっと心にモヤがかかっている感じだった。


そんなこんなで谷口先輩を誘えた藤原は、先輩と軽く学園祭を回り、ツーショットを撮って帰ってきた。


そのあと、横山と2人で藤原の学園祭の思い出話を聞くのは、とても辛かった。


学園祭後、僕は谷口先輩ともちろん何も進展がないまま3月になり、先輩はあっさり卒業してしまった。


しかし藤原は学園祭後に先輩をご飯に誘い、何回かデートを重ねたあと、先輩の卒業後にそのまま付き合ってしまった。


親友に初彼女ができたことはとても喜ばしいことだったが、本心から藤原を応援、そして祝福できなかった自分が、心から嫌いになった。

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