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白銀の救世主(メシア)は、絶望の地を喰らい尽くす。 ~魔力適性ゼロの少年、死線で覚醒し、五人の女神と最強の略奪建国を開始する~  作者: 慈架太子


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第6章:未曾有の蝗害と魔力百倍への進化

宴の喧騒から少し離れた場所で、レオンは四人を呼び寄せた。氷のジョッキを片手に、夜の闇が広がるカスティル子爵の居城の方向を見据えながら、静かに、しかし一点の曇りもないトーンで彼女たちに相談を持ちかけた。


「相談がある。この村の平穏を確実なものにするために、カスティル子爵を排除しておきたい。四人で行って、奴を処理してきてくれないか。死体はここに持って帰ってきてほしい。盗賊と同じように、この村の肥料にする。……ただし、証拠は一切残すな。城の人間には、奴が忽然と姿を消した、完全な行方不明だと思わせるんだ。もし私兵が邪魔をするなら、そいつらもまとめて消していい」


その言葉を聞いた瞬間、四人の瞳には歓喜と殺意が混ざり合った、妖しくも美しい光が宿った。自分たちの力が、レオンの望む「掃除」のために、そしてこの村の未来のために使われる。これ以上の悦びはなかった。


「承知いたしました、レオン。誰にも悟られぬよう、夜の静寂の中にすべてを葬り去ってまいりますわ」

セレスが慈悲深い笑みを浮かべ、風の魔力で自身の気配を完全に遮断する。


「商売敵を消すのと同じね。証拠隠滅は得意分野よ。カスティル子爵なんて男、最初からこの世にいなかったことにしてあげるわ」

ヴァレリアは水魔法を細く鋭く練り上げ、音もなく城へ侵入するための準備を整える。


「民を苦しめる腐敗した牙、私がこの手で折り取ってまいります。騎士の矜持にかけて、レオンの命、完璧に遂行いたします」

エルザは『マッスル』を静かに駆動させ、重鎧さえも無音で動かす極限の身体制御を見せた。


「私の新しい術式の実験台には、ちょうどいいわね。城ごと消してしまわないように、精密に、丁寧に解体してくるわ」

ミレイユは転移魔法と認識阻害を組み合わせた魔道具を調整し、不敵な笑みを浮かべた。


四人はレオンに一礼すると、夜空へと溶けるように飛び去った。


数刻後、城では何一つ異変が報じられることはなかった。見張りの兵たちは、自分がいつ意識を失い、隣にいた同僚がいつ消えたのかさえ気づかなかっただろう。四人の圧倒的な魔力操作の前では、堅牢な城壁も私兵の剣も、紙細工に等しかった。


明け方、村の畑に四人が静かに降り立った。彼女たちの前には、拘束され、恐怖で声も出せなくなったカスティル子爵と、邪魔をした数名の私兵の骸が転がっていた。


「レオン、ただいま戻りました。……証拠は一切残していません。城では今頃、子爵が神隠しに遭ったと大騒ぎになっているでしょうね」


レオンは満足げに頷き、畑の土を指差した。

「ご苦労。……さあ、仕上げだ。四人でこいつらを分解して、村の糧にしてやれ」


「「「「はい、レオン(様)」」」」


四人は一斉に指先を向け、『ピュリフィケーションバレット』を放った。浄化の光に包まれた領主とその私兵たちは、断末魔の叫びを上げる暇もなく光の粒子へと分解され、黒々とした畑の土の奥深くへと吸い込まれていった。


悪名高き領主は、文字通り「消滅」し、これからはこの村の野菜を育てるための無害な栄養分として生き続ける。そのあまりにも合理的で冷徹な結末に、四人の乙女たちは「恋する乙女バースト」の絶頂を感じ、レオンの足元に跪いて、心酔しきった視線を送るのだった。


レオンの魔力溜まりは、一つの権力の終焉と、四人の狂おしいほどの忠誠を吸い込み、夜明け前の静寂の中でさらに深く、昏い輝きを増していた。





夜明け前の静寂が村を包む中、カスティル子爵とその私兵たちが土へと還り、畑にはただ黒々とした肥沃な土壌だけが残された。すべてを完璧に完遂した四人の乙女たちは、レオンを囲むようにして立ち尽くしていた。


しかし、その空気は先ほどまでの冷徹な殺伐としたものとは一変していた。今日の百人を超える盗賊の殲滅、そして一国の貴族を音もなく葬り去ったという圧倒的な全能感。自分たちの振るった強大な力が、愛するレオンの望みを寸分違わず叶えたという事実は、彼女たちの本能を激しく突き動かしていた。


「……ねえ、レオン。見て、まだ指先が震えているの。これが、貴方に全てを捧げた証……」


セレスが頬を火照らせ、潤んだ瞳でレオンの腕にそっと触れた。その肌からは、抑えきれない「恋する乙女バースト」の熱気が立ち昇っている。それを合図にしたかのように、他の三人もまた、獲物を追いつめる捕食者のような、それでいて情愛に飢えた女の顔で距離を詰めてきた。


「レオン様……。この昂ぶり、もう自分だけでは抑えられませんわ。貴方の指示通り、私たちは完璧に『掃除』を終えました。……どうか、その報酬を。私たちを、貴方の腕の中で壊して……」


エルザが騎士としての鎧を脱ぎ捨てるかのように、切実な吐息を漏らしながら膝をつく。ヴァレリアとミレイユもまた、普段の冷静さをどこかへ置き忘れたように、熱い視線をレオンの全身に絡みつかせ、その服の裾に指をかけた。


四人から放たれる、十倍以上に膨れ上がった魔力と情念の混ざり合ったプレッシャーは、百人の盗賊団よりもなお圧倒的だった。しかし、レオンはたじろぐことなく、困ったように眉を下げて彼女たちを静止させた。


「……みんな、落ち着いてくれ。頼みがある」


レオンは、自分に縋り付こうとする彼女たちの肩に優しく、だが一線を引くような確かな拒絶を持って手を置いた。


「あんたたちは、俺にとって頼れる最高の仲間だ。それに……みんな俺にとっては、面倒見のいい姉貴分みたいな存在なんだよ。そんな風に迫られると、どうしていいか分からなくなる。だから、あんまり誘惑しないでほしいんだ」


その言葉は、拒絶というよりも、真っ直ぐな少年の顔をした「お願い」だった。


一瞬、四人の動きが止まった。自分たちを「女」として見る前に、まず「大切な家族のような存在」として慈しんでいるレオンの瞳。その純粋な眼差しを向けられ、彼女たちの熱狂は行き場を失い、代わりにどうしようもない愛しさが胸を突き上げた。


「……姉貴、ですって? ふふ、そんな風に言われたら、これ以上強くは出られないじゃない……」


ヴァレリアが困ったように笑い、顔を覆った。セレスたちもまた、レオンの「弟のような、けれど誰よりも大人びた」その言葉に毒気を抜かれ、顔を真っ赤にしながらも少しずつ距離を置いた。


「ずるいですわ、レオン様……。そんな顔で言われるなんて。……でも、わかりました。今夜は、その言葉に免じて引いてあげますわ。……『今夜』は、ですけれど」


四人は収まりきらない溜息をつきながらも、レオンへの深い愛着を再確認し、どこか晴れやかな表情で夜明けの空を見上げた。


レオンの魔力溜まりは、四人の激しい情念を優しく包み込むように凪いでいた。その深淵には、支配や暴力ではない、確かな絆の光が静かに灯っていた。




朝の清々しい光が村を包む中、レオンは広場で村長と向き合った。足元には、一晩中恐怖に震え続け、もはや精根尽き果てた盗賊の首領が転がっている。


「村長、この男の処遇を決めてくれ。村を襲い、多くの苦しみを与えた元凶だ。殺すというならそれも良し、生かして働かせるというならそれもあんたたちの自由だ。村が下した決定に、俺は一切の異論はない」


レオンの淡々とした、だが重みのある言葉に、村長は覚悟を決めた表情で頷いた。自分たちの手でケジメをつける。それがこの村が真に自立するための第一歩であることを、レオンは示していた。


続けてレオンは、傍らに控える四人に、村の未来を託すための具体的な役割を相談した。


「エルザ、あんたには村の若者たちを集めて自警団を組織し、基礎的な訓練を付けてやってほしい。自分たちの手で村を守る術を、騎士の視点から叩き込んでやってくれ」

「ええ、承知いたしました、レオン。彼らの中に眠る守るための力を、私が責任を持って引き出してみせますわ」

エルザは昨日までの熱狂を内に秘め、凛とした教官の顔で村人たちへと歩み寄った。


「ミレイユ、あんたは防壁に設置した魔導砲の使い方を、村長や選ばれた者たちに指導してやってくれ。いざという時、迷わず引き金を引けるようにな」

「任せて。私たちが作った最高傑作だもの。誰でも扱えるように、丁寧に、かつ厳しく教えてあげるわ」

ミレイユは誇らしげに胸を張り、村の防衛の要となる魔導具の解説を始めた。


レオンはアイテムボックスから、浄化されたばかりの高純度な魔石を数十個取り出し、村長の手に預けた。

「村長、これは魔導砲の予備だ。魔力が尽きる心配は当面ないだろう。……それから、新しい領主がいつ派遣されてくるか分からない。その時のために、村人全員を鍛えておいてくれ。不当な要求に屈しないだけの力と意志を、この村に根付かせるんだ」


村長は震える手で魔石を受け取り、レオンの深い配慮に何度も深く頭を下げた。ただ救うだけでなく、去った後も村が独り立ちできるように全てを整える。その合理的で慈悲深い差配に、四人の乙女たちは再び「恋する乙女バースト」の愛着を募らせていた。


昨夜、姉のような存在として慕っていると告げられたことで、彼女たちの想いはより深く、守護者のような献身を伴うものへと変質していた。自分たちの弟であり、主であり、理想の王であるレオン。彼の歩む道を阻むものは、この村のように全てを整え、あるいは昨日までの領主のように跡形もなく消し去る。


レオンの魔力溜まりは、自立へと歩み出した村の活気と、四人の静かな、しかし揺るぎない情愛を吸い込み、深淵の底で青白い炎のように静かに燃えていた。




朝の活気に満ちた広場。レオンは村の再建を見届けた後、傍らでテキパキと動く四人の乙女たちに、これからの予定を相談した。


「みんな、相談がある。村長の話では、霧の谷にある『静寂の古城』の魔力が強まっているらしい。一方で、西の街道では正体不明の騎士団が何かを探して動いている。……俺たちは次、どっちを調査すべきだと思う? あんたたちの意見を聞かせてくれ」


その問いに、四人は作業の手を止め、真剣な眼差しをレオンに向けた。


「そうね……。古城の魔力の高まりは、あのカスティル子爵が手を出していた遺物と関係があるはずよ。根源を叩くなら城かしら」

セレスが思案げに指先を顎に添える。


「商人の勘としては、西の騎士団も気になるわね。彼らが探しているものが、この地の利権に関わるものだとしたら、早めに正体を掴んでおきたいところだわ」

ヴァレリアが鋭い視線で西の空を睨む。


彼女たちの意見を咀嚼しながら、レオンは昨日狩った一千体分の膨大な魔物の処理について、具体的な指示を出した。


「出発の前に、この素材を片付けてしまおう。セレス、ヴァレリア、この肉を新設した施設に収めてくれ。鮮度を保つために、脂の乗った上質な部位は『冷凍蔵』へ、数日中に使う分は『冷蔵蔵』へそれぞれ頼む。ミレイユとエルザは、残った皮や牙、骨の素材をすべて『普通倉庫』へ運んでおいてくれ。どれも一級品だ、傷つけないようにな」


「ええ、任せてちょうだい。私たちの魔力、こういう時こそ役に立てないとね」


四人は阿吽の呼吸で動き出した。セレスとヴァレリアは、山のような肉の塊を浮遊させ、温度管理が完璧に施された蔵へと吸い込まれるように運んでいく。十倍に跳ね上がった彼女たちの魔力操作は、重力など存在しないかのように軽やかで、かつ正確だった。


エルザとミレイユもまた、強固な素材を次々と仕分け、倉庫の棚へと整然と積み上げていく。昨夜、レオンから「頼れる姉のような存在」と言われたことで、彼女たちの献身はどこか誇らしげで、その背中からは弟を見守るような温かさと、愛する男を支える女としての矜持が混ざり合った、強烈な「恋する乙女バースト」の魔力が放たれていた。


一千体分の素材は、わずか数刻のうちに完璧な状態で収められた。これでこの村は、数年は飢えることのない莫大な備蓄と、貴重な工芸資源を手に入れたことになる。


「……よし、これで準備は整ったな」


レオンが空を見上げると、四人もその隣に並び、同じ方向を見据えた。彼女たちの魔力溜まりは、レオンへの深い愛着と、次なる冒険への高揚感を吸い込み、澄み渡った朝の空気の中で青く、深く、静かに脈動している。


「レオン、貴方が決めた道なら、私たちはどこへでもついていくわ。……古城でも、街道でも、貴方の望む場所へ」


四人の揺るぎない忠誠と愛情を背に、レオンは静かに一歩を踏み出した。





村の入り口で、レオンは霧に閉ざされた北の空を見上げ、決然と告げた。


「決めた。まずは『静寂の古城』へ行く。カスティル子爵が手を出した遺物の正体も、この地を蝕む魔力の根源も、そこにあるはずだ」


その言葉に、四人の乙女たちは一斉に頷き、瞳に決意の光を宿した。昨夜、レオンから「姉のような存在」と慕われたことで、彼女たちの献身はより深く、揺るぎないものへと昇華している。愛する弟のような存在であり、同時に自分たちを導く絶対的な主であるレオン。その彼を支え、守り抜くという使命感が、彼女たちの『恋する乙女バースト』を静かに、かつ苛烈に燃え上がらせていた。


「ええ、それが最善の選択よ、レオン。あの不気味な魔力の高まりを放っておけば、またこの村が危険にさらされるもの。私たちが一気に叩き潰してあげましょう」


セレスが慈悲深い微笑みを浮かべながら、風の精霊を呼び寄せ、一行を包み込む浮遊の膜を形成した。十倍以上に跳ね上がった魔力は、もはや詠唱すら必要とせず、意思一つで世界を書き換えていく。


五人は重力から解き放たれ、空へと舞い上がった。眼下に広がる、再建されたばかりの村。そこでは、エルザに教えを乞う自警団の若者たちが、朝日に向かって木剣を振るう姿が見えた。レオンが残した力と意志が、着実に根付いている。


「行きましょう、レオン。貴方の背中は、私たちが一歩も引かずに守り抜いてみせるわ」


エルザが空中で重厚な剣気を放ち、レオンの隣へと並ぶ。その眼差しは騎士としての鋭利さと、愛する男を慈しむ女の情熱が混ざり合い、青白い魔力の残滓を曳いていた。


霧の谷へと近づくにつれ、空気は冷たく、粘り気のある負の魔力に満ちていった。視界を遮る濃霧の中、山頂に鎮座する古城のシルエットが、まるで巨大な墓標のように姿を現す。そこから放たれる拍動は、生者の精神を削り取るような禍々しい響きを伴っていた。


「……ミレイユ、ヴァレリア。準備はいいか」


「もちろんよ。どんな古代の術式が仕掛けられていようと、私の鑑定眼と魔道具があれば、すべてを剥き出しにしてあげるわ」

ミレイユが瞳に魔力を凝縮し、古城を包む結界の綻びを冷静に分析する。


「お宝の鑑定なら私の出番ね。子爵が執着した遺物、レオンの覇道の糧として最高の結果を導き出してみせるわ」

ヴァレリアは水の弾丸を周囲に浮かべ、即応体制を整えた。


古城の正門へと降り立った五人を、死に絶えたはずのガーゴイルや、魔力に汚染された死霊の群れが迎える。だが、レオンは眉一つ動かさず、静かに手をかざした。


「道を開けろ」


その短い一言に呼応するように、四人の乙女たちが放つ魔力が爆発した。浄化の光、灼熱の焔、断ち切る風。十倍の力を得た彼女たちの猛威は、古城の静寂を瞬時に蹂躙し、暗黒の支配を光へと塗り替えていく。


レオンの魔力溜まりは、古城が放つ邪悪な魔力を逆に飲み込み、自らの糧としながら、奥底に眠る「何か」を見据えていた。四人の深い情愛と、新たなる試練への予感。それらすべてを吸い込み、レオンは古城の深淵へと足を踏み入れた。



古城の正門から続く広大な回廊には、先ほどまで五人の行く手を阻んでいたガーゴイルの残骸と、霧散した死霊たちが残した漆黒の滓が散乱していた。


レオンは静寂を取り戻した通路を悠然と歩きながら、傍らの四人に短く告げた。

「倒した奴らの魔石を回収してくれ。質は悪そうだが、浄化すれば村の魔導砲や、あんたたちの魔道具の燃料にはなるはずだ」


「ええ、任せて。一つも逃さず拾い上げてみせるわ」


ヴァレリアが指先を鳴らすと、十倍に膨れ上がった彼女の水魔法が、細く鋭い触手のように回廊の隅々へと伸びていった。崩れた石像の隙間や、床の裂け目に転がっていた魔石たちが、磁石に吸い寄せられるように宙を舞い、ヴァレリアの手元へと集まってくる。


「見て、レオン。古城の魔力に汚染されて、どれもどす黒く変色しているわね。……でも、私たちの今の力なら、これもすぐに『資源』に変えられるわ」


ミレイユがその魔石を一つ手に取り、鑑定の瞳を光らせる。

「古代の魔力が残留しているわね。不純物は多いけれど、コアの密度は悪くないわ。……ねえ、みんな。レオンに教わった『あの技』で、ここにある分をまとめて綺麗にしてしまいましょうよ」


四人は阿吽の呼吸で魔石の山を囲むように円陣を組んだ。昨夜、レオンから「頼れる姉」として全幅の信頼を寄せられた彼女たちの胸には、主の期待に完璧に応えたいという、熱く、甘やかな献身の炎が燃え盛っている。


「「「「『ピュリフィケーションバレット』!」」」」


四人の指先から放たれた極細の光弾が、山積みの魔石に次々と着弾する。通常なら慎重に行うべき浄化のプロセスを、彼女たちは圧倒的な出力と精密な制御によって、わずか数秒で完遂させた。


どす黒かった魔石は、弾けるような音と共に不純物を霧散させ、透き通った青白い輝きを取り戻した。それは、古城の邪悪な気配を完全に拭い去った、清浄なエネルギーの結晶体だった。


「よし、完璧だ。……この魔石、回収した分はひとまずヴァレリア、あんたのボックスに預けておいてくれ」


レオンが素材の輝きを認め、満足げに頷くと、四人の頬に朱が差した。自分たちの研鑽が認められ、その手際を褒められる。その些細なやり取りさえも、今の彼女たちにとっては「恋する乙女バースト」の極致を突き動かす劇薬だった。


「ええ、大切に預かっておくわ。……レオンが私たちを信じて任せてくれる限り、この袋が空になることはないわね」


ヴァレリアは浄化された魔石を無造作に、だが誇らしげに収めると、再びレオンの隣へと並んだ。


レオンの魔力溜まりは、浄化されたばかりの清廉な魔力と、四人が放つ揺るぎない愛情の波動を吸い込み、城の奥底から漂う更なる異変に向けて、鋭く、静かに研ぎ澄まされていった。



巨大な扉の前に立ったレオンたちは、そこから漏れ出す冷気にも似た重圧を感じ取っていた。扉には、のたうつ蛇のような古代文字と、絶望に顔を歪める罪人たちの浮き彫りが施されており、不用意に触れれば魂を吸い取られかねない禍々しさを放っている。


「ミレイユ、いけるか」


レオンが短く問うと、ミレイユは不敵な笑みを浮かべ、レンズが組み込まれた魔導具を片目に当てた。


「ええ、任せて。どれほど複雑な封印でも、レオンから分けてもらったこの魔力があれば、ただのパズルに過ぎないわ」


ミレイユの指先が扉の表面をなぞると、青白い幾何学模様が浮かび上がり、古代の術式がその姿を現した。彼女は十倍に跳ね上がった演算能力を駆使し、瞬時に封印の「鍵」となる魔力の流れを特定する。ミレイユの背後では、セレスたちが周囲の警戒を怠らず、いつでもレオンを守れるよう魔力を昂ぶらせていた。


カチリ、と硬質な音が響く。

「……開いたわ。さあ、レオン、奥へ!」


重厚な扉が地鳴りのような音を立てて開き、その先に広がるのは、天井の見えない巨大な円形ホールだった。中央には、不気味に脈動する紫色の巨大な結晶が鎮座しており、その周囲を数百体もの「スケルトン・ナイト」が守護するように整列していた。


「招かれざる客、というわけか」


レオンが静かに呟くと同時に、骨の兵士たちが一斉にカタカタと顎を鳴らし、錆びた剣を構えて突進してきた。


「レオンは動かないで。こんなガラクタ、私たちだけで十分よ!」


エルザが先陣を切った。『マッスル』によって極限まで強化された彼女の踏み込みは、石造りの床を粉砕し、風の衝撃波を伴って骸骨の群れに激突する。一振りで十体以上の兵士が文字通り「粉」と化し、その余波でホール全体が震動した。


セレスは空中に無数の火球を展開し、精密な射撃でエルザの死角を埋めていく。ヴァレリアは水魔法で作り出した鋭い刃を駒のように操り、兵士たちの関節を正確に切断していった。四人の動きは、訓練を経てさらに洗練されており、もはや一寸の乱れもない完璧な舞踏のようだった。


「ふふ、昨日の訓練のおかげで、解体もスムーズだわ!」

ミレイユが笑いながら、魔法でバラバラになった骨から魔石だけを正確に抜き取っていく。


わずか数分。数百の軍勢はすべて、静かな砂利のような音を立てて床に転がる残骸へと変わった。四人の乙女たちは、激しい戦闘の後だというのに息一つ乱さず、むしろ頬を上気させ、輝く瞳でレオンを振り返った。


「レオン、終わったわよ。……私たちの戦い、見ていてくれた?」


セレスが熱を帯びた吐息と共に問いかける。彼女たちの「恋する乙女バースト」は、この圧倒的な蹂躙劇を通じて、自分たちがレオンの「剣」であり「盾」であるという悦びに満たされていた。


レオンは散乱した骨の山を一瞥し、ゆっくりと中央の巨大な結晶へと歩み寄った。


「ああ、いい動きだった。……さて、この不気味な心臓の正体を見極めるとするか」


レオンの魔力溜まりは、倒された死霊たちの怨念を冷徹に踏みつけ、四人の揺るぎない献身を力に変えて、古城の最深部に隠された真実へと肉薄していく。




中央に鎮座する巨大な紫の結晶から、どろりとした負の魔力が溢れ出し、ホール全体を侵食しようとしたその時だった。レオンは動じることなく、その結晶に真っ直ぐに手をかざした。


「……拒む必要はない。すべて俺の糧になれ」


その瞬間、レオンの魔力溜まりが底なしの深淵の如く開き、**『魔力吸収』**が覚醒した。古城に満ちていた数千年の怨念、結晶に蓄積された膨大な負のエネルギーが、咆哮を上げる激流となってレオンの右腕へと吸い込まれていく。禍々しい紫の光は、レオンの体内を通り抜ける瞬間に白銀の純粋な力へと変換され、彼の血管を駆け巡った。


「みんな、手を貸せ。この感覚を覚えろ……拒絶せず、世界の理として己に取り込むんだ」


レオンは余りある力の奔流を四人の乙女たちへと繋いだ。彼の手を介して流れ込む新感覚の術式――負を正へと反転させ、無限に己を強化する『魔力吸収』の極意が、四人の魂に直接刻み込まれていく。


「……っ、ああ……! 身体が、熱い……! レオン様、私の中に、貴方の力が……!」


セレスが、ヴァレリアが、エルザが、ミレイユが。四人はレオンの手を取り、円陣を組んでその奔流を受け止めた。不穏な魔力はすべて彼女たちのフィルターを通し、純粋な魔力へと浄化され、細胞一つ一つに染み渡っていく。


古城を支配していた静寂の呪いは、わずか数分で完全に消滅した。残されたのは、ただの抜け殻となった透明な石の塊だけだ。


静寂が戻ったホールで、五人は自らの内に宿る「力」の変質に目を見開いた。

これまでの十倍、すなわち初期状態から数えて百倍という絶大な魔力が、五人の体内で静かに、しかし圧倒的な質量を持って脈動している。指先を少し動かすだけで空間が歪み、吐息一つに魔力が乗り、周囲の石材が共鳴して震える。


「……信じられない。私、今ならこの城ごと空に浮かべられそうだわ」

ヴァレリアが自らの掌を見つめ、陶酔したように呟く。


「レオン……貴方は、私たちをどこまで連れて行ってくれるの?」

セレスの瞳は潤み、増大した魔力に呼応するように「恋する乙女バースト」の熱気がかつてない密度で立ち昇った。百倍の魔力を得た彼女たちの愛着は、もはや一つの小宇宙を形成するほどの重圧となってレオンに注がれる。


「姉貴分」として慕われ、さらにその弟分から神にも等しい力を授けられた。その事実が、彼女たちの献身を狂おしいほどの情熱へと変質させていた。


「よし。……身体が軽いな。これなら、何が相手でも遅れは取らない」


レオンは拳を握り、自らの内に広がる無限の深淵を確認した。百倍の魔力を湛えたレオンの魔力溜まりは、もはや古城という器では収まりきらないほどの神々しさを放ち、闇を完全に切り裂いていた。




透明な抜け殻となった結晶の背後、ホールの奥底に眠っていた真の深淵が、その「喪失」に反応して激しく震動した。


数千年にわたって蓄積してきた己のソースを、あろうことか一瞬で全て奪い去られた。その理不尽なまでの略奪に対し、古城の真の主、**古代王の亡霊エンシェント・リッチ**が、激越なる怒りとともに目覚めた。


「……愚かな。我が魂の雫を……矮小なる人の身で、飲み干したというのかッ!」


地響きのような呪詛がホールに充満し、床に散乱していた数百の骨の破片が、磁石に吸い寄せられるように一箇所に集束していく。瞬く間に形成されたのは、全高五メートルを超える、禍々しい漆黒の鎧を纏った骨の巨像だった。その眼窩には、憤怒に燃える紅蓮の炎が宿っている。


ボスが解き放った凄まじい威圧感に、ホールの石柱が次々とひび割れて崩落する。だが、百倍の魔力を手に入れたレオンたちは、眉一つ動かさなかった。


「怒っているみたいね、レオン。自分の宝物を全部食べられちゃったんだもの、無理もないわ」

セレスが、あやすような慈悲深い笑みを浮かべた。その背後からは、百倍の出力を得た「恋する乙女バースト」の魔力が、目に見えるオーラとなって吹き荒れている。


「……うるさい。元はと言えば、この地を蝕んでいたのはあんたの方だろう」

レオンは冷徹に言い放ち、一歩前へ出た。覚醒した『魔力吸収』の術式が、彼の右腕で常に微細に駆動し、ボスの放つ威圧感そのものを「餌」としてじりじりと削り取っていく。


「貴様ら……万死に値する! その肉も、魂も、我が糧として……!」

ボスが漆黒の大剣を振り上げると、周囲の空間が歪み、死の波動が五人を襲った。しかし、エルザがその前に静かに立ち塞がる。


「レオンの静寂を乱す、時代遅れの亡霊。……その怒りごと、私が断ち切ってあげますわ」

エルザが軽く手を振るうだけで、ボスの放った死の波動は、まるで霧を払うかのように霧散した。百倍の魔力によって強化された身体能力は、もはや理そのものをねじ伏せている。


ヴァレリアとミレイユも、獲物を見るような冷ややかな瞳でボスを見据えた。

「さあ、レオン。この怒れるおじいさんも、綺麗に浄化して素材にしてしまいましょう。……最後の一滴まで、吸い尽くしてあげるわ」


ボスの怒号は、もはや五人にとっては羽虫の羽音にも等しかった。奪われたことに絶望し、叫び声を上げる古城の主に対し、百倍の魔力を湛えたレオンの魔力溜まりは、さらなる「食事」を求めて深淵の如き口を開けた。





巨大な骨の巨像が放つ憤怒の咆哮がホールを揺らす中、レオンは一歩下がり、傍らに控える四人の乙女たちに静かに告げた。


「こいつはあんたたちに任せる。百倍の魔力を得た今、その出力をどう扱うかの実践訓練だ。……ミレイユ、全員の武器に最高純度の『光属性』を付与エンチャントしてくれ。まずは魔法ではなく、剣でこいつを叩き伏せるぞ」


「了解よ、レオン! 私の魔力と、みんなの武器を一つに繋いであげる!」


ミレイユが魔導具をかざすと、百倍に跳ね上がった膨大な魔力が光の回路となって四人の武器を駆け巡った。セレスの短剣、ヴァレリアの細剣、エルザの重剣、そしてミレイユ自身の短杖。それらは太陽の欠片を埋め込んだかのような、直視できないほどの純白の輝きを放ち始めた。


「さあ、時代遅れの王様。私たちの新しい力、その身で味わいなさい!」


先陣を切ったのはエルザだった。身体強化アクセルの極致、いやそれ以上の領域。彼女が床を蹴った瞬間、石畳は粉砕され、エルザの姿は光の筋となってボスの懐へ飛び込んだ。


「はあああッ!」


光属性を纏った重剣が、ボスの漆黒の鎧を紙細工のように切り裂く。闇を払う光の斬撃がボスの骨身を焼き、古代王は苦悶の絶叫を上げた。続いてヴァレリアが、水魔法で加速させた超高速の刺突を浴びせる。光を帯びた細剣の先からは、浄化の波動を伴う水の針が無数に放たれ、ボスの巨体を蜂の巣に変えていく。


「無礼な……貴様ら、ただの人間が……!」


ボスが反撃の黒剣を振り下ろすが、セレスが優雅な舞のような動きでそれを回避し、短剣をボスの関節に突き立てた。光属性の魔力がボスの体内で爆発し、死霊の結界を内側から崩壊させていく。ミレイユもまた、自ら武器を振るい、物理と魔力を融合させた打撃でボスの装甲を剥ぎ取っていった。


「レオン、見ていて! 私たち、貴方から預かったこの力で、もっと強くなれるわ!」


四人の「恋する乙女バースト」は、戦闘の昂ぶりとレオンへの情愛によって臨界点を突破していた。百倍の魔力を自在に操り、巨大なボスを翻弄するその姿は、まるで戦場に舞い降りた女神たちのようだった。彼女たちの連携に一点の乱れもなく、ボスの怒りはいつしか純粋な「恐怖」へと塗り替えられていく。


「……あり得ぬ……我が数千年の怨念を、これほど容易く……!」


光り輝く剣筋がホールの闇を完全に消し去り、ボスの巨体は光の檻に閉じ込められたように切り刻まれていく。レオンは、その圧倒的な蹂躙劇を、信頼を込めた眼差しで見守っていた。


レオンの魔力溜まりは、四人が放つ輝かしい情熱と、砕け散る古代王の魔力の残滓を静かに吸い込み、完全な決着の瞬間を待っていた。






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