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白銀の救世主(メシア)は、絶望の地を喰らい尽くす。 ~魔力適性ゼロの少年、死線で覚醒し、五人の女神と最強の略奪建国を開始する~  作者: 慈架太子


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第5章:飛翔する白銀の翼

食後の穏やかな時間が流れる中、レオンは傍らでエールを楽しんでいたヴァレリアに向き直った。その視線の先には、昨日の蝗害で得た山のような『魔石』と、解体された魔物の素材がある。


「ヴァレリア、この魔石と素材の売り先について聞きたい。これだけの量だ、下手に動けば市場が混乱するだろう。あんたの考えを聞かせろ」


その瞬間、ヴァレリアの瞳に商人としての鋭い光が宿った。彼女は手にしたジョッキを置き、身を乗り出してレオンを凝視した。


「ええ、その通りよレオン。これほどの純度と量を一度に市場へ流せば、価格は大暴落して買い叩かれるわ。それに、これだけの軍事資源が一箇所に集まれば、周辺の貴族たちが黙っていない。下手をすれば、不必要な戦争の引き金にすらなりかねないわね」


ヴァレリアは、指先でテーブルをトントンと叩きながら、迅速に思考を巡らせる。


「まずは、素材を三つのカテゴリーに分けるべきよ。一つ目は、換金性の高い並級の魔石。これは複数の都市のギルドへ小分けにして流し、目立たずに現金を確保する。二つ目は、希少な高純度魔石。これは王都の魔導省や大商会へ、こちらの身分を伏せた状態でオークションにかける。そして三つ目、最上級の素材と魔石は……今はまだ、売るべきじゃないわ」


彼女の言葉は理路整然としており、商人としての冷徹な計算が働いていた。


「これだけの素材があれば、いずれ私たち自身が装備を作る際の核になるし、国を動かすほどの交渉材料にもなる。……レオン、貴方が手に入れたこの『力』の価値を、私は正確に理解しているわ。だからこそ、一時の金に換えるのではなく、最も効果的なタイミングで、貴方の覇道を支えるために使うべきよ」


ヴァレリアはそこまで語ると、熱っぽい視線をレオンに絡ませた。


「私の商網ネットワークを使って、まずは各地の相場を洗うわ。それから、最も有利な条件を引き出せる取引相手をリストアップする。最終的な判断を下すのは貴方よ、レオン。私はそのための最良の選択肢を揃えてみせるわ」


彼女の「恋する乙女バースト」による情熱的な魔力と、商人としての高いプライドが混ざり合い、その存在感はさらに増していた。自分に与えられた役割の重さを理解し、レオンの役に立てることに至上の悦びを感じている。


「いいだろう。まずは各地の情報を集めてくれ。無駄に安売りするつもりはないからな」


レオンの返答を聞き、ヴァレリアは満足げに、そして深く心酔した様子で微笑んだ。


「ええ。貴方の資産は、私が責任を持って守り、そして最高の結果に繋げてみせるわ。……レオン、貴方にこうして必要とされるのが、今の私にとって一番の報酬よ」


ヴァレリアはレオンの視線を真っ向から受け止め、その胸の高鳴りとともに、次なる一手に向けて自身の魔力を静かに昂ぶらせた。





食後の静寂の中、レオンはアイテムボックスの深淵から、蝗害の果てに手に入れた膨大な成果を引き出した。


「ヴァレリア、この魔石の運用を頼む。今は目立ちたくない。一気に売れば市場が狂うし、俺たちの正体を探る奴らも出てくるだろう。あんたの商網を使って、各地で目立たないよう数十年かけるつもりで少しずつ換金してくれ」


レオンが空間を指さすと、そこから一億石を超える魔石が、まるで光り輝く土砂のように音を立てて溢れ出した。通常の「魔石の袋」などに収まる量ではない。レオンは土魔法と魔力付与を組み合わせ、巨大なコンテナ状の保管容器をその場に形成し、魔石の激流を受け止めた。


ヴァレリアはその圧倒的な光の山を前に、商人としての、そして一人の女としての身震いを抑えられなかった。


「一億……。一国の国家予算を数年分合わせても足りないほどの富ね。……承知したわ、レオン。この膨大な『力』、私の商魂と愛にかけて、誰の目にも触れさせず、けれど確実に貴方の覇道の礎へと変えてみせるわ。……貴方の影として、静かに、深く、この資産を育ててみせる」


ヴァレリアは巨大な容器に手を触れ、自らの魔力で封印を施しながら、レオンの信頼に応える喜びに頬を染めた。彼女の「恋する乙女バースト」は、この莫大な責任を共有することで、もはや狂おしいほどの忠誠心へと昇華していた。


続けてレオンは、ミレイユにも別の容器に分けた魔石と、希少な魔物の素材を預けた。


「ミレイユ、あんたにはこれを研究と開発の資金として預ける。銀月鋼の加工や、新しい武具の試作に金や材料を惜しむな。俺たちが世界を相手にしても負けない装備を、これで揃えろ」


「これだけの量があれば、魔法銀ミスリルや魔力結晶を山ほど買い付けても、一生かかっても使い切れないわ……! レオン、信じて。貴方がくれたこの無限の資材で、私は神話に名を刻む究極の武装を完成させてみせるわ!」


ミレイユは感激に打ち震え、レオンから託された素材の山に自らの夢と恋心を重ねた。


「残りの素材は後でギルドに持ち込んで、雑多な資金にする。……今は目立たず、着実に地力を固めるぞ」


レオンの冷徹かつ大胆な判断。自分たちに文字通り「世界の半分」を預けるかのようなその度量に、セレスとエルザもまた、言葉を失うほどの畏敬の念を抱いていた。


一億の魔石。それは五人の絆を繋ぎ止める重しとなり、同時に世界を覆すための静かな火種となった。レオンの魔力溜まりは、信頼を託した彼女たちの高揚と、莫大な魔石が放つ微細な振動を吸い込み、どこまでも深く、黒々とした輝きを湛えていった。




拠点を後にしたレオンたちは、新たに覚醒した『飛翔魔法レビテーション』を使い、空を滑るようにして最寄りの街へと向かった。五人の背後には十倍以上に膨れ上がった魔力が渦巻き、空気を震わせる。地上では数日かかる距離も、空を往けば瞬く間だ。


街の門をくぐり、一行は真っ直ぐに冒険者ギルドの扉を開いた。ギルド内は騒然としていた。空を覆い尽くしたあの未曾有の蝗害。それが突如として消え去った怪異に、冒険者も職員も情報収集に追われていたのだ。


レオンは受付カウンターへ進み、アイテムボックスからバッタの魔石をたった一つだけ取り出し、無造作に置いた。


「これの査定と、あとの素材の買い取りを頼みたい」


受付嬢は、差し出された魔石の異様な輝きと、そこから漏れ出す濃密な魔力に息を呑んだ。

「……っ! これは……。街を襲おうとしていたあの群れの個体ですか!? これほど質の高い魔石、聞いたこともありません……!」

彼女は震える手で魔石をトレイに移し、奥の鑑定士を呼びに走った。


続けてレオンは、森で狩った大型魔物の皮、爪、牙、そして骨をカウンターへ出した。それはレオンの風魔法によって、細胞一つ破壊せず完璧に部位分けされた「至高の素材」だった。


「素材の処理も……なんて見事な。これほど傷一つない皮や牙、熟練の解体職人でも不可能ですわ」

戻ってきた鑑定士がルーペを覗き込み、驚愕に声を震わせる。


隣で控えるヴァレリアは、商人としての冷静な目で周囲の反応を分析していた。

(バッタの魔石をたった一つ出しただけでこの騒ぎ……。レオンの判断は正しいわ。あの一億個を一気に見せれば、この国そのものがひっくり返るもの)

彼女はレオンの思慮深さに改めて惚れ直し、その隣に並ぶ自分に誇りを感じていた。


セレスは周囲の冒険者たちの下卑た視線からレオンを護るように魔力を薄く展開し、エルザは騎士の鋭い眼光で不埒な輩を威圧する。ミレイユは、鑑定される素材を見ながら、これらが「最高級」として扱われるのを観察し、自らが預かった銀月鋼と魔石がいかに規格外であるかを再確認していた。


「査定が出ました。この魔石と、完璧な状態の素材を合わせて……本日の買い取り額は金貨百枚となります」


提示された金額は、一般的な冒険者の年収を遥かに超えていた。レオンは眉一つ動かさず、支払われた金貨をアイテムボックスへ放り込んだ。


「助かった。行くぞ」


目立ちたくないという言葉通り、レオンは余計な説明もせず、呆然とする受付を残してギルドを後にした。その潔い引き際と、底知れない実力の片鱗。


「……レオン様。あんなに騒がれても、貴方は少しも揺るがないのですね」

セレスが心酔した吐息を漏らす。四人の乙女たちは、強大な力を持ちながらも驕らず、自分たちを静かに導くレオンの背中に、再び「恋する乙女バースト」の熱い視線を送った。


レオンの魔力溜まりは、手に入れた金貨の重みよりも、自分を信じて付き従う四人の確かな熱量を受け止め、さらに深く、静かに輝きを増していった。




ギルドを後にし、夕闇が迫る空へと舞い上がったレオンたちの肌を、不穏な空気の震えが叩いた。十倍以上に跳ね上がった五人の魔力感知は、数キロ先にある小さな村から放たれる、絶望と殺意の混じり合った波動を鮮明に捉えていた。


「レオン、あっちよ! 盗賊団が村を襲ってるわ。……かなりの数よ!」


セレスが鋭く指し示した方向では、黒煙が上がり、村人の悲鳴が風に乗って聞こえてきた。レオンは無言で頷き、風の結界をさらに鋭く絞り込んだ。


「行くぞ。首領以外は殲滅しろ。カシラだけは生け捕りにして、この村に判断を仰ぐ」


レオンの号令とともに、五人は流星のような速さで空を切り裂き、蹂躙されようとしている村へと急行した。地上では、百人を超える大規模な盗賊団が、逃げ惑う村人たちを笑いながら追い回していた。だが、その頭上に死神のような五人の影が降り立った。


「なんだ、貴様ら……空から降って……がはっ!?」


盗賊の首領が叫び声を上げる暇もなく、レオンは一瞬でその懐へ潜り込んだ。風の刃で首領の四肢の腱を正確に斬り裂き、逃走を封じる。続けて土魔法を練り上げ、強化された岩の拘束具でその全身をガチガチに固めた。


「貴様は生かしておく。……残りは、終わりだ」


その冷徹な宣告は、四人の乙女たちにとって至上の福音だった。


「『ファイアストームバレット』!」

セレスが放つ超高純度の焔が、盗賊の集団を一瞬で灰へと変える。かつての十倍以上の魔力から放たれる魔法は、もはや戦術級の威力を誇っていた。


「逃がさないわよ。全部、私の商売の邪魔な害虫だもの」

ヴァレリアは水魔法で作り出した鋭い水の弾丸を、逃げようとする盗賊の眉間に次々と必中で叩き込んでいく。


「騎士の誇りにかけて、外道に慈悲は与えない!」

エルザは『マッスル』と身体強化を極限まで重ね、重厚な剣筋で盗賊たちを家屋ごと一刀両断に伏せていく。彼女の振るう剣風だけで、周囲の盗賊は肉塊と化していった。


「私の試作品の実験台に丁度いいわね」

ミレイユは土魔法で地面を瞬時に泥沼化させ、盗賊たちの足を止めたところを、魔力を含んだ風の刃で精密に解体していった。


百人を超えていた盗賊団は、わずか数分のうちに全滅した。静寂が戻った村で、レオンは拘束した首領を村の中央へと引きずり出した。レオンは冷徹な眼差しで、恐怖に震える首領に短く、だが逃げ場のない尋問を行う。背後の組織、財宝の隠し場所、これまでの罪状。すべてを吐かせた後、レオンは集まってきた村人たちを見回した。


「こいつがこの惨劇の主犯だ。……こいつの命、どうするかはあんたたちが決めろ」


村人たちは、圧倒的な力で自分たちを救ってくれたレオンへの感謝と畏怖、そして盗賊への怒りを込めて、その首領を取り囲んだ。


返り血一つ浴びていないレオンは、静かに魔力を収束させ、セレスに指示を出す。

「村人に怪我はないか。……『ヒールバレット』を」

「はい、レオン様」


絶望から救い出された村人たちは、夕焼けを背に立つ五人の姿を、神の再来であるかのように見上げ、震えながら跪いた。圧倒的な力で悪を裁き、冷徹に獲物を捕らえ、その後の裁きをも村人に委ねる。そのレオンの強さと、深淵を湛えた背中に、四人の乙女たちは再び「恋する乙女バースト」の熱に焼かれ、うっとりとした、そして狂おしいほどの忠誠を誓う視線を送るのだった。


レオンの魔力溜まりは、殲滅した悪意の残滓を払いのけ、救われた人々の感謝と、四人の深い情愛を吸い込み、夜の帳が下りる村を神々しく照らし出していた。




戦火の余韻が残る村の中央で、レオンは震える村長から事の経緯を聞いた。この村は古くから交易の要所に近く、潤沢な備蓄を狙った盗賊団に幾度も脅かされてきたという。


「もう安心だ。村の再建と防衛は俺たちが引き受ける」


レオンは四人の乙女たちを呼び寄せると、魔力制御の訓練を兼ねた村の改修を命じた。十倍に跳ね上がった彼女たちの魔力は、建設という分野においても規格外の精度を発揮する。


「セレス、ヴァレリア。二人で土魔法と水魔法を合わせ、村の食糧を守る施設を作れ。土で強固な断熱壁を作り、内側に魔力で冷気を固定するんだ」

指示を受けた二人は、瞬く間に石造りの『冷蔵蔵』と、さらに深部を氷の魔力で満たした『冷凍蔵』、そして広大な『普通倉庫』を完成させた。魔力操作に習熟した彼女たちにとって、温度を一定に保つ術式を土壁に刻むのは容易なことだった。


一方、エルザは自らの剣風で破壊してしまった家屋の前に立ち、真剣な面持ちで土魔法を練り上げた。

「すまない、村の人々よ。私の力不足で住処を……。レオンの教え通り、次はより頑丈な家を建ててみせる」

エルザは『マッスル』の精密な筋力制御を魔法に応用し、倒壊した家々を以前よりも強固な石造りの住居へと瞬時に作り直していった。


村全体を囲うように、四人の協力によって高さ五メートルを超える強固な石の『防壁』が隆起する。仕上げはミレイユの役目だ。


「レオン、見ていて。あなたの『ファイアバレット』の術式を、この銀月鋼の回路に組み込んだわ。……これで村の安全は完璧よ」

ミレイユは即座に盗賊対策用の防衛魔道具を完成させた。防壁の要所に配備されたその装置は、村人の魔力を感知して自動で起動し、侵入者に対して正確無比な火弾を放つ。


「よし。これなら俺たちが去った後も、並の盗賊なら寄せ付けないだろう」


一連の作業を完璧にこなした四人は、額の汗を拭う間もなく、レオンの隣へと集まった。自分たちの得た強大な力が、レオンの指揮によって瞬時に村一つを再生させた喜び。その万能感と、何より自分たちを適材適所で使いこなすレオンの器の大きさに、四人は三度「恋する乙女バースト」の頂点に達していた。


「レオン様……。私たち、貴方のお役に立てたでしょうか?」

期待に瞳を輝かせる乙女たちに対し、レオンは不敵に笑って頷いた。

「ああ。完璧だ。これでこの村も、少しはマシな夜を過ごせるだろう」


救われた村人たちが感謝の涙を流しながら見守る中、五人の絆は再建された村の防壁よりもなお強固に、そして熱く結ばれていた。レオンの魔力溜まりは、四人の献身と村の再生という調和のエネルギーを吸い込み、深淵の底でさらなる進化の兆しを見せていた。




戦火の収まった村で、レオンは静かに村長へ向き直った。その背後では、四人の乙女たちがレオンの指示に従い、村の再建という名の「魔力制御訓練」を完璧に遂行している。


「村長、確認したいことがある。盗賊に誘拐された村人はいないか? それと、当面の食料は足りているか。この付近での魔物の襲来についても教えておけ」


村長は震える声で、連れ去られた者は幸いにもいないこと、しかし食料の多くは略奪され、最近は森の魔物も活発化して畑を荒らされていることを訴えた。


「……わかった。ならば、その全てを一度に解決してやる」


レオンは無造作に、拘束された盗賊の首領を引きずり出した。首領は恐怖で顔を引き攣らせ、これから始まることに絶望の眼差しを向けている。レオンは四人に命じた。


「訓練の仕上げだ。村の外に転がっている百体以上の盗賊の死骸を全て畑へ運べ。……命を奪った責任は、肥やしとして村の土に還ることで果たさせろ。四人とも、同時に放て」


「承知いたしました、レオン様。循環の理、私たちの手で示してみせますわ」


セレス、ヴァレリア、エルザ、ミレイユの四人は、レオンの指示通りに死骸を畑へと整列させた。彼女たちはレオンを見つめ、その合図とともに一斉に指先を突き出した。


「『ピュリフィケーションバレット』!」


四人の指先から放たれた無数の光弾が、山を成す死骸の一体一体に吸い込まれていく。その瞬間、おぞましい死骸は腐敗や汚れを一切撒き散らすことなく、光の粒子とともに純粋な有機成分へと分解されていった。血液も、毒も、病原菌も、彼女たちが放った浄化の弾丸によって完全に無害化され、純度の高い養分として土壌の深部へと浸透していく。


十倍以上に跳ね上がった彼女たちの魔力によって放たれる『ピュリフィケーションバレット』は、ただの浄化を超え、物質の理を分解し再構築する神域の術と化していた。


「見ろ。あんたの部下たちは、ようやくこの村の役に立ったぞ。次はあんたの番だ。これだけの肥やしがあれば、来年の収穫は倍以上になるだろう」


レオンは、目の前で部下たちが「土の糧」へと変えられていく様を首領に見せつけた。首領は声にならない絶叫を上げ、自身の運命を悟って白目を剥いた。その無慈悲なまでの合理性と、村を救うための圧倒的な手段。自らの手でそれを行わせるレオンの采配に、四人の乙女たちは再び「恋する乙女バースト」の熱に焼かれた。


「悪を裁くだけでなく、その骸さえも浄化し、民の糧に変える……。これこそが、私たちが仕えるべき王の器……!」


彼女たちの忠誠心は、もはや信仰に近いものへと昇華していた。レオンは動じず、新設された冷蔵・冷凍蔵に、アイテムボックスから取り出した魔物の肉や保存食を詰め込んでいく。


「食料はこれで当面持つはずだ。防壁の魔道具があれば、魔物の襲来も恐れることはない」


一夜にして防衛拠点へと生まれ変わった村。レオンの魔力溜まりは、土に還った命の残滓と、救われた村人たちの畏怖、そして四人の狂おしいほどの情愛を吸い込み、深淵の如き輝きを湛えていた。





村の再建が一段落した頃、レオンは四人を集め、次なる段階について静かに話し始めた。


「周辺の魔物を一千体ほど間引いてきてほしい。今のあんたたちの魔力なら、ただ倒すだけでなく、風魔法を制御して仕留めると同時に完璧に部位を分ける『解体』の訓練もできるはずだ。一匹につき一秒もかけず、素材を傷つけない精度を意識してやってみてくれ」


レオンの言葉は決して高圧的な命令ではなく、彼女たちの成長を信じた上での確かな提案だった。四人はその期待に応えるべく、深く頷いて空へと舞い上がった。


「承知いたしました、レオン。私たちの力がどこまで通用するか、試してまいりますわ」

「ふふ、最高の素材を揃えて戻ってくるから、待っていてちょうだいね」


四人が向かった深森では、かつてない規模の効率的な狩りが始まった。

セレスが広域探査で魔物を捉え、ヴァレリアが生成した水の弾丸で急所を貫く。絶命の瞬間に合わせ、セレスとミレイユが真空の刃を走らせた。一筋の風が魔物の皮をなぞり、肉を削ぎ、魔石を抽出する。十倍以上に跳ね上がった魔力操作は、目にも止まらぬ速さで巨獣を完璧なパーツへと分解していった。


エルザは身体強化を最小限の出力で安定させ、群れの中を駆け抜けながら風の圧力を操る。剣を振るうまでもなく、通り過ぎるだけで魔物が素材へと変わっていく。

「レオンの求める精度……無駄な損傷は一切出さない!」


数時間が経過し、森に静寂が戻る頃、村の広場には血一滴すら付着していない最高品質の素材が整然と山を成した。一匹の例外もなく、皮は鞣したように美しく、魔石は傷一つなく取り出されていた。


「レオン、ただいま戻ったわ。一千二十四体、すべて指示通りに解体を終えたわよ」


戻ってきた四人の瞳には、極限の集中訓練を経てさらに研ぎ澄まされた光が宿っていた。自らの技術を磨き、それがレオンの役に立つという事実に、彼女たちの胸は高鳴り、再び「恋する乙女バースト」の熱に包まれていた。


「いい精度だ。これならどこへ出しても恥ずかしくない。助かった」


レオンが素材の状態を確認し、穏やかに労いの言葉をかけると、四人は陶酔した表情で頬を染めた。自分たちの研鑽が認められる至福。彼女たちの魔力溜まりは、レオンへの深い信頼と、収穫された膨大なエネルギーを吸い込み、深淵を湛えるように静まり返っていた。




再建された広場で、レオンは村長を呼び止め、落ち着いた声で現状を尋ねた。


「村長、改めてこの村の状況を正確に把握しておきたい。今、この村に残っている村人の総数は何人だ? それから、病人や怪我人の有無、現時点で不足している野菜の種類、それと生活に欠かせない『塩』の備蓄がどれくらいあるか教えてくれ」


村長は背筋を伸ばし、慎重に言葉を選んで答えた。


「はい、現在村に住む者は、子供と老人を合わせて百二十二名でございます。先の襲撃で怪我をした者が十数名、体力を落とし床に伏せっている老人が数名おります。野菜については葉物野菜が完全に枯渇しており、何より命の源である『塩』が、盗賊に奪われ底をつきかけております」


レオンは無言で頷くと、傍らにいる四人に視線を向け、穏やかに、だが確かな信頼を込めて役割を相談した。


「病人にはセレス、あんたの『ヒールバレット』で対応してほしい。今日中に全員動けるようになれば、村の人たちも安心するはずだ。野菜についてはヴァレリア、あんたのボックスにある種や現物を提供してくれるか? ミレイユは、新設した倉庫に湿度と温度を一定に保つ術式を刻んで、保管環境を完成させておいてくれ」


指示を受けた三人がそれぞれの役割を果たすべく動き出す中、レオンはエルザに向き直った。


「エルザ、あんたには『塩』の確保を任せたい。といっても、どこかで買ってきてもらうわけじゃないんだ。この付近の山にあるはずの岩塩の地層を見つけ出し、土魔法と水魔法で純度の高い塩を抽出・精製する練習をしてみてくれ。武力だけでなく、精密な魔力操作で資源を生み出す訓練になるはずだ。それが終わったら、村人と協力して、今夜の『焼肉パーティー』の準備を整えておいてくれるか」


エルザはその信頼に満ちた言葉を受け、背筋を伸ばして深く頭を下げた。


「ええ、承知いたしました、レオン。ただ守るだけでなく、この手で村の命となる塩を創り出してみせます。そして……貴方と共に囲む最高の宴、完璧に準備いたしますわ!」


エルザは騎士としての誇りと、レオンの期待に応えたいという強烈な恋心を胸に、すぐさま山へと向かった。彼女は『マッスル』の感覚を鋭敏に研ぎ澄ませ、地中の密度の違いから巨大な岩塩層を特定。そこへ精密な魔力操作による加圧と濾過を繰り返し、不純物を一切含まない白銀の塩の結晶を次々と生み出していった。


その頃、村内ではセレスの光弾が病人を癒やし、ヴァレリアが提供した瑞々しい野菜が並び、ミレイユの術式が倉庫を完璧な保管庫へと変えていた。


夕暮れ時、精製したばかりの極上の塩を抱えて戻ったエルザは、村人たちと協力して広場に巨大な石板を並べた。昼間に四人が狩ってきた新鮮な一千体の魔物の中から、最も美味な部位が惜しげもなく運び込まれる。


「さあ、レオン! 全て整いましたわ。今夜は皆で、この村の再興を祝いましょう!」


エルザが熱い視線と共にレオンを招き入れ、村中に香ばしい肉の焼ける匂いが立ち込める。自分たちの研鑽が、村の救済と喜びの宴に直結している。その圧倒的な充足感に、四人の乙女たちは再び「恋する乙女バースト」の極致に達し、レオンを囲んで陶酔した表情を浮かべた。


レオンの魔力溜まりは、弾けるような宴の熱気と、四人の深い愛情を吸い込み、再建された村を優しく、そして力強く包み込んでいた。




再建された広場には、香ばしい肉の焼ける匂いと村人たちの安堵した笑い声が満ちていた。レオンは宴の中心で、村長や数人の古参の男たちを招き、自らアイテムボックスから冷えたエールの樽を取り出した。


「さあ、まずは飲んでくれ。話はそれからだ」


レオンが樽の栓を抜くと、琥珀色の液体が勢いよく溢れ出す。それを見たレオンは、傍らで準備を進める四人の乙女たちに、信頼を込めた眼差しを向けた。


「みんな、すまないが追加で頼めるか。人数分のカトラリーと皿、それからこのエールを最高な状態で飲むための、氷のジョッキを作ってほしいんだ。魔力操作のいい練習になるはずだ」


「ええ、喜んで! 私たちの魔力、今こそレオン様と村の皆さんのために振るわせていただきますわ」


セレスを筆頭に、四人は即座に動き出した。セレスは土魔法で地中の清浄な粘土を引き上げ、一瞬で焼き固めて白磁のような皿を形作る。ヴァレリアは水魔法を極限まで圧縮し、手にするだけで指先が凍るような、透明度の高い「氷のジョッキ」を次々と削り出した。エルザは『マッスル』の精密な力加減をカトラリーの成形に注ぎ、ミレイユはそれら全てに、持った者が使いやすさを感じるような微細な重心調整の術式を刻んでいく。


十倍以上に跳ね上がった彼女たちの魔力は、日用品の作成においても神域の精度を見せつけた。並べられた食器類はどれも一級の工芸品のようで、村人たちは畏れ多くも嬉しそうにそれらを手に取った。


「おお……なんと贅沢な。冷え冷えのジョッキでいただくエール、格別でございますな」


村長が感極まった様子でエールを煽り、喉を鳴らす。一息ついたところで、レオンは静かに本題を切り出した。


「村長、この地域の情勢について詳しく聞かせてくれ。あの盗賊団の他にも、不穏な動きを見せている勢力や、近寄ってはならないと言い伝えられている遺跡のような場所はあるか?」


村長はジョッキを置き、表情を引き締めた。

「……実は、この森のさらに奥、霧に閉ざされた谷の向こうに『静寂の古城』と呼ばれる場所がございます。最近、そこから漏れ出す魔力が強まっており、森の魔物たちが凶暴化しているのはそのせいではないかと。それに、西の街道では正体不明の騎士団が、何かを探すように頻繁に行き来しているとの噂もございます」


その情報を聞き、四人の乙女たちの瞳に鋭い光が宿った。

「騎士団に、謎の古城……。レオン様、私たちの新しい力が試される時が近いかもしれませんね」

セレスがうっとりとした、だが好戦的な微笑を浮かべる。自分たちの力が、愛するレオンの行く末を阻むものを排除するためにある。その確信に、彼女たちの「恋する乙女バースト」の熱は、宴の火よりも熱く燃え上がっていた。


レオンは冷えたエールを一口飲み、夜空を見上げた。

「古城に騎士団か。面白いな」


再建された村に流れる穏やかな時間と、背後に控える四人の圧倒的な熱量。レオンの魔力溜まりは、新たな冒険の予感と乙女たちの深い愛情を糧に、さらに巨大な深淵へと変質し始めていた。





宴もたけなわ、脂の乗った肉と冷えたエールが村人たちの心と口を軽くさせていた。レオンは氷のジョッキを片手に、村長へ向けて核心を突く問いを投げかけた。


「ここの領主はどんな奴だ? あの規模の盗賊団がこれほど好き勝手していたんだ。統治が機能しているとは思えないが」


その問いに、村長だけでなく周囲の男たちの顔からも一瞬で笑みが消えた。村長は重い溜息をつき、ジョッキに残ったエールを飲み干してから、絞り出すように語り始めた。


「ここの領主……カスティル子爵は、民の暮らしになど一瞥もくれぬ男でございます。彼が関心を持つのは、重税の取り立てと、自身の贅沢、そして『魔導具の収集』のみ。あの蝗害の時も、盗賊団が暴れ回っていた時も、子爵様は城に閉じこもり、兵を出すどころか『税を納めぬなら見捨てる』と非情な通告を寄越す始末でした」


村長の言葉に、横で控えていた四人の乙女たちの空気が一変した。セレスの周囲には静かな怒りの熱気が渦巻き、エルザは腰の剣の柄を強く握りしめた。


「民が苦しんでいる時に保身と趣味に走るとは。騎士の風上にも置けぬ不届き者ですね」

エルザの低く鋭い声が周囲に響く。騎士としての誇りが、その腐敗した領主の存在を許さない。


「その魔導具の収集とやら、私たちのミレイユが預かっているものより価値があるのかしらね。どうせ、民から搾り取った金で買い漁っただけのガラクタでしょうけど」

ヴァレリアが冷笑を浮かべ、商人の視点からその無能さを切り捨てる。


村長はさらに声を潜めて続けた。

「最近では、その子爵様が例の『静寂の古城』から出土したという、呪われた古代の遺物に手を出しているという噂もございます。西の街道で見かける騎士団も、子爵が雇った私兵か、あるいは遺物を狙う別の勢力ではないかと……。我々のような小さな村は、ただ嵐が過ぎるのを待つしかないのです」


レオンは無言で話を聞き終えると、空になった氷のジョッキをテーブルに置いた。

「なるほどな。税だけ取って守りはしない、その上、余計な火種まで持ち込んでいるわけか」


その冷徹な言葉の裏にある「判断」を、四人の乙女たちは敏感に察知した。レオンの魔力溜まりが、静かな怒りと共に膨れ上がり、周囲の空気をピリつかせる。彼女たちの「恋する乙女バースト」は、自分たちが愛し、仕えるレオンこそがこの地の真の支配者に相応しいという、狂おしいほどの確信へと変わっていた。


「レオン様、その子爵……少し教育が必要かもしれませんね」

セレスが慈悲深い聖母のような微笑みを浮かべながら、指先に小さな火種を灯した。


レオンは村の夜風に当たりながら、遠く子爵の居城があると思われる方向を見据えた。

「……まずは、その子爵の動きを詳しく探る必要があるな」


再建された村の平和を守るため、そしてこの腐敗した土地を正すため。レオンの内に秘められた力が、静かに動き出そうとしていた。






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