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白銀の救世主(メシア)は、絶望の地を喰らい尽くす。 ~魔力適性ゼロの少年、死線で覚醒し、五人の女神と最強の略奪建国を開始する~  作者: 慈架太子


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第4章:全属性覚醒と銀月鋼の精製

焚き火の傍ら、ミレイユから『銀月鋼』の伝説を聞いたレオンは、即座に思考を巡らせた。深い地層に眠る未知の鉱脈を、手探りで探す時間は惜しい。


(土の深淵を読み、風の震えで密度を測り、水の流れで層の断絶を知る……。世界の鼓動を、俺の感覚と同期させるんだ)


その強い欲求に応えるように、レオンの魔力溜まりが激しく脈動した。水、風、土――三つの属性が混ざり合い、彼の意識は肉体を離れ、大地へと染み込んでいく。広大な森の地中を数キロ先まで透視する**『複合属性索敵魔法』**の覚醒。地中を流れる魔力の脈動が、地図のように鮮明に脳裏に浮かび上がった。


「……見つけた。ついてこい」


レオンは迷いのない足取りで森の奥、切り立った岩壁の前へと一同を導いた。彼は岩肌に手を触れ、土魔法を発動させる。


「『土』よ、理に従い門を開け」


凄まじい地響きと共に、巨大な岩壁が意志を持つかのように左右に割れ、地下深くへと続く道が形成された。その最深部、レオンが指し示した場所には、月光を閉じ込めたかのように青白く輝く純度の高い鉱石が、壁一面に群生していた。


「これが……銀月鋼の原石……! でも、これを精製するには王都の巨大な炉で数ヶ月は……」


ミレイユが驚愕に震える声を遮り、レオンは指先を突き出した。


「そんな時間は必要ない。……『ピュリフィケーションバレット・精製リファイン』!」


放たれた純白の光弾が、壁面の原石に次々と吸い込まれていく。光の波動が不純物だけを物理的に弾き出し、純粋な魔力銀のみを瞬時に再構成していく。熱線と浄化の力が渦を巻き、やがて光が収まった場所には、完璧な長方形に整えられた、眩いばかりの『銀月鋼のインゴット』が数十本、整然と積み上げられていた。


その光景を目にしたミレイユは、ついに膝をついた。魔道具技師として一生をかけても数本扱えるかどうかの伝説の素材が、目の前の男の手によって、まるでパンを焼くような手軽さで最高純度の輝きを放っている。


「……嘘。魔法の理も、錬金術の法則も、全部壊しちゃった……」


ミレイユの瞳から、ポロポロと涙が溢れ出した。それは恐怖ではなく、圧倒的な「至高」を目の当たりにした悦びだった。レオンが振り返り、汗一つかかずに不敵な笑みを浮かべる。


「ミレイユ、これで足りるか? 足りなきゃ、もっと掘り出してやるぞ」


その瞬間、ミレイユの心の中で、これまでの恋心を遥かに凌駕する爆発的な感情が弾けた。『恋する乙女バースト』。彼女の脳裏には、この男に一生を捧げ、この男のために最高の神話級武装を打ち上げる未来しか映っていなかった。


「レオン……! ああ、もう……好きとか、そんな言葉じゃ足りないわ! あなた、神様なの? それとも、私を狂わせるために現れた悪魔なの!?」


ミレイユは我を忘れてレオンに飛びつき、その胸に顔を埋めて叫んだ。傍らでは、セレス、ヴァレリア、エルザの三人もまた、レオンのあまりの万能ぶりに、呆れと深い愛着が混ざった溜息を漏らしながらも、ミレイユの猛烈なアタックに心中穏やかではない火花を散らしている。


伝説の素材、最高の技師、そして規格外の英雄。

レオンの魔力溜まりは、五人の情熱と伝説の銀光を吸い込み、もはや人知を超えた神々しい輝きを放ち始めていた。




深い森の夜、銀月鋼の精製を終えたレオンは、仲間たちの疲労を察して宿泊の準備に取り掛かった。野営の常識を覆す、彼の「創造魔法」が再び唸を上げる。


「夜は冷える。属性を固定して、まともな寝床を作るぞ」


レオンが掌を地面に向けると、周囲の水分が急速に結集し、透明度の高い巨大な氷のブロックへと変貌した。彼は「風」の刃でそれを一瞬にして切り出し、二棟の幻想的な氷の建屋を組み上げた。外気を遮断し、内側の熱を逃がさない魔法的な断熱処理が施された氷の家。月光を反射して青白く輝くその姿は、まるで森に現れたクリスタルパレスのようだった。


さらにレオンは、その内部に「土」の魔法を注ぎ込む。床から滑らかな石が隆起し、一方の建屋には自分用のシングルベッドを、もう一方の広い建屋には四人が余裕を持って横になれるよう配置された四つのベッドフレームを作り上げた。


「次は仕上げだ」


アイテムボックスの虚空から、レオンは先ほど街で買い込んでおいた最高級のマットレス、清潔な綿のシーツ、そして柔らかな羊毛の毛布を次々と取り出した。マッスルの膂力で重いマットレスを軽々と運び、属性魔法の微細な操作でシーツの皺一つなく完璧にベッドメイキングを施していく。


「よし、これでいい。こっちは俺の部屋。隣はあんたたち四人の部屋だ。毛布は多めに出しておいたから、好きに使ってくれ」


冷たい氷の家の中に用意された、信じられないほど温かで清潔な寝床。そして、戦いだけでなく生活の細部に至るまで完璧にエスコートしてみせるレオンの包容力。それを見たセレス、ヴァレリア、エルザ、そしてミレイユの四人の内側で、ついに何かが臨界点を超えて爆発した。


――『恋する乙女バースト』。


「レオン様……っ! 強くて、万能で、その上こんなに細やかな心遣いまで……。私、もう一生、貴方以外の人の後ろを歩くなんて想像できません!」

セレスは潤んだ瞳でレオンを見つめ、シーツの端を愛おしそうに握りしめた。


「ちょっと、反則よレオン。商売っ気なんて全部吹き飛んじゃったわ……。私の人生、全部貴方に投資するって決めたわよ。……今夜、隣に来てくれてもいいのよ?」

ヴァレリアは頬を火照らせ、情熱的な視線を絡ませる。


「……負けたわ。騎士としての矜持も、女としての意地も、全部貴方の優しさに溶かされてしまった。レオン、私は生涯、貴方の盾となり、貴方の癒やしになりたい」

エルザは凛とした表情を崩し、恋に落ちた一人の女性として震える声で誓った。


「ああ、もうダメ! こんなの、どんな魔道具よりも完璧な『幸福の呪い』じゃない! レオン、私を責任持って幸せにしなさいよね!」

ミレイユもまた、銀月鋼以上の輝きを放つレオンに完全に心を奪われ、叫ぶように愛を告げた。


四人の爆発的な恋慕の情念が、静かな森の空気を熱く焦がす。無自覚な英雄レオンの魔力溜まりは、彼女たちの真っ直ぐな愛のエネルギーを吸収し、銀月鋼の輝きをも凌駕する、神々しくも温かな黄金の光を放ち始めていた。




焚き火の爆ぜる音と、氷の建屋が放つ幻想的な青い光。銀月鋼を精製し、完璧な寝床まで用意し終えたレオンは、ジョッキに残った最後のエールをぐいと飲み干すと、軽く肩を回して立ち上がった。


「さて、準備は終わった。俺はもう寝るぞ。明日は朝から銀月鋼の加工やら移動やらで忙しくなるからな」


レオンは、熱い視線を送ってくる四人を一人ずつ見渡し、困ったような、それでいて親しみのある不敵な笑みを浮かべた。


「まだ飲むか? アイテムボックスにはエールもつまみも腐るほどある。好きにやってくれ。……あとは、まあ、四人でうまくやってくれよ。おやすみ」


そう言い残すと、レオンはひらりと手を振り、自分用に作った氷の建屋へと迷いのない足取りで消えていった。


残された四人の間には、一瞬、奇妙な沈黙が流れた。パチパチと焚き火が鳴り、レオンが去った後の空間に、彼の残した温かな魔力の残り香と、無自覚な優しさが漂っている。


「……『うまくやってくれ』、ですって?」


最初に口を開いたのはヴァレリアだった。彼女は氷のジョッキを弄びながら、妖艶な、しかしどこか好戦的な笑みを浮かべた。

「レオンはああ言ってるけど、あんな完璧なものを見せられて、ただ大人しく寝るだけなんて商売人として、いえ、女としてあり得ないわよね?」


「同感だわ」

エルザが低く、凛とした声で応じる。その瞳には、騎士としての冷静さではなく、標的を定めた狩人のような熱が宿っていた。

「レオンは私を仲間と呼んでくれた。だが、あの背中を独り占めしたいと思う不敬を、今の私は抑えきれそうにない」


「あら、騎士様も随分と情熱的ね」

セレスが眼鏡の奥の瞳を怪しく光らせ、魔導書を閉じた。

「レオン様の魔力の深淵、そしてあの包容力……。私、一番弟子として、誰よりも近くで彼を支える義務があると思っていますの。譲るつもりはありませんわ」


「ちょっと待って! 私なんて命を救われたばかりなのよ!?」

ミレイユが割って入る。その顔は真っ赤に火照り、恋する乙女バーストの余韻で肩を震わせていた。

「銀月鋼をあんなに簡単に精製してみせる男なんて、世界中どこを探したっていやしないわ! 私の技術も、私の人生も、全部レオンのものにするって決めたんだから!」


火花が散る。四人の美女による、レオンの「隣」という特等席を巡る、言葉なき聖戦の幕開けだった。レオンの「うまくやってくれ」という言葉は、彼女たちにとって「一番を競え」という合図に他ならなかった。


「ふふ、今夜はエールが足りなくなりそうね」

「ええ。夜通し語り合おうじゃないか。誰が一番、彼に相応しいかをな」


レオンが隣の建屋で心地よい眠りについている間、もう一つの建屋では、四人の乙女たちによる熱く激しい「レオン自慢」と、譲れない愛の火花が朝まで止むことはなかった。レオンの魔力溜まりは、隣り合う壁越しに伝わってくる彼女たちの強烈な思慕を受け止め、さらに強固に、そして優しく膨れ上がっていった。




深い森の朝、氷の建屋を通り抜ける柔らかな光でレオンは目を覚ました。隣の建屋からは、昨夜遅くまで盛り上がっていた乙女たちの穏やかな寝息がかすかに聞こえてくる。


レオンは一人、清々しい空気の中で竈の前へと立った。昨日、セレスが鮮やかな手つきで火を灯してくれた光景を思い出す。

(魔力を熱に、熱を収束させて焔に変える。光をさらに高密度に圧縮し、大気の精霊と共鳴させるイメージだ……)


その瞬間、レオンの指先に小さな、しかし驚くほど高熱な火種が宿った。**『火魔法』**の覚醒。彼はそのまま、昨日作った石の竈に手をかざす。薪が爆ぜ、理想的な火力が石板を熱し始めた。


レオンはアイテムボックスから、昨日大量に買い込んだ物資を取り出した。焼き立ての香りを閉じ込めていたパン、最高級の調味料、そして瑞々しい数千個の卵と分厚く切り分けた魔獣の肉。


「さて、最高の朝飯にしてやるか」


熱せられた石板の上で、肉がジューシーな音を立てて踊る。その傍らで、レオンは卵を次々と割り入れた。完璧な半熟の目玉焼きが、肉の脂を吸って艶やかに焼き上がっていく。パンも石板の端で軽く炙られ、外はカリッと、中はふわふわの最高の状態になった。


料理を終えたレオンは、昨日土魔法で作ったカトラリーと食器に手をかざした。

「『ピュリフィケーション(浄化)』」

純白の光が食器を包み込み、微細な汚れや雑菌を完全に消し去る。磨き上げられた銀製品のような輝きを取り戻した皿に、彩り豊かに料理を盛り付けていく。


森の冷気の中に、香ばしい肉の匂いとパンの焼ける幸せな香りが立ち込める。レオンは氷のジョッキに、今度は温かな果実水を満たし、四人が起きてくるのを静かに待った。


やがて、氷の建屋の扉がゆっくりと開いた。

「……ん、いい匂い……」

「レオン様、もう起きていらしたのですか?」

「嘘、これ全部レオンが……?」


目を擦りながら出てきたセレス、ヴァレリア、エルザ、そしてミレイユ。彼女たちは、朝日に照らされながら竈の前で微笑むレオンと、完璧に整えられた朝食の食卓を見て、再びその胸を熱く焦がした。


「おはよう。火魔法も覚えたから、今朝は俺一人でやってみた。さあ、温かいうちに食え。今日は忙しくなるぞ」


昨夜、彼を巡って火花を散らした四人の乙女たちは、レオンの無自覚な万能さと優しさを前に、もはや言葉もなかった。胃袋も心も完全に掴まれた彼女たちは、朝露に濡れる森の中で、至福の朝食を共にし始めた。


レオンの魔力溜まりは、新たに手に入れた「火」の情熱と、四人の深い愛情を糧に、太陽のような力強い輝きを放ち、さらなる高みへと昇り続けていた。




至福の朝食を終え、森に柔らかな陽光が差し込む中、レオンは一同を焚き火の跡地へと集めた。


「ミレイユ、あんたには俺がこれまでに取得した魔法のすべてを叩き込む。魔道具を作るにしても、魔法の理を知っているのといないのとじゃ、出来栄えが違うはずだ」


レオンはミレイユの背に手を添え、自らの膨大な魔力回路を同調させた。光、水、風、土、そして今朝覚醒したばかりの火。さらには『索敵』や『精製』の術理までもが、濁流となってミレイユの意識に流れ込む。

「くっ……あ、ああ……! 世界が、理が……私の中に溶けてくる……っ!」

ミレイユはあまりの情報の密度に、恋する乙女バースト特有の熱を帯びた吐息を漏らしながら、レオンの魔力に全身を委ねた。


続けて、レオンはセレス、ヴァレリア、エルザの三人に視線を向けた。

「あんたたちには、今朝覚えた火魔法を教える。ただし、ただの火じゃない。詠唱を省き、意思だけで発動させる『無詠唱』だ。実戦で一瞬の遅れは命取りになるからな」


レオンの手のひらから、言葉もなく小さな炎が灯る。それを見た三人は、驚愕しながらも自らの内に魔力を巡らせた。レオンの直接的な指導により、三人の指先からも次々と無垢な炎が咲き始める。これで四人全員が、あらゆる属性と身体強化を使いこなす「規格外」の戦闘集団へと進化した。


最後に、レオンは凛とした佇まいのエルザに向き直った。

「エルザ、頼みがある。ミレイユに剣の基礎を教えてやってくれないか。魔法は教えたが、いざという時に自分の身を護れる技術……本物の『騎士の剣』があいつには必要だ」


「……分かったわ、レオン。あなたの頼みなら、喜んで」

エルザは誇らしげに頷き、まだ魔法の余韻に浸っているミレイユの前に立った。

「ミレイユ、覚悟しなさい。私の指導は厳しいわよ。……でも、愛する人を守り、共に歩むための力だと思えば、耐えられるはずだわ」


「ええ、エルザ……。よろしくお願いしますっ!」

ミレイユは頬を赤らめながらも、決意を秘めた瞳でエルザから手渡された練習用の剣を握りしめた。


平原にエルザの鋭い叱咤と、ミレイユが必死に風を切る音が響き始める。

レオンはそれを少し離れた場所から見守りながら、自らの魔力溜まりがさらに深く、底知れぬ広がりを見せているのを感じていた。

仲間に力を与え、適材適所で役割を振る。その「導き」の経験こそが、レオンを単なる強者から、誰もが仰ぎ見る「頂点」へと押し上げていた。


「いい調子だ。……最高の装備、最高のチームで、俺たちはどこまで行けるかな」


レオンの独り言は、朝の森の風に乗って、熱心に剣を振るう美女たちの耳に心地よく響いていた。




エルザがミレイユに剣を教え、セレスとヴァレリアが火魔法の熱を指先に馴染ませていたその時、レオンは一人、森の開けた場所で空を見上げていた。


(風を知り、重力を理から切り離す。大気の流れを己の魔力で御し、大地に縛られた因果を書き換えるんだ……)


レオンが静かに集中を高めると、彼の周囲で風が渦を巻き、柔らかな白銀の光を帯び始めた。次の瞬間、重力という絶対的な法則が彼の手を放した。レオンの身体が、まるで羽毛のようにふわりと浮き上がり、そのまま音もなく数メートルの高さまで上昇したのだ。**『飛翔魔法レビテーション』**の覚醒。それは、人類が数千年の歴史の中で憧れ続けた「空」を、己の魔力だけで支配する力だった。


「……見える。風の道が、空の階段が」


レオンは空中で姿勢を安定させると、風の膜を全身に纏い、矢のような速さで森の上空を駆け抜けた。そのあまりに自由で神々しい姿に、地上で特訓していた四人は言葉を失い、ただ呆然と首を逸らして見上げた。


「レオン様……空を、飛んでいらっしゃる……」

「嘘でしょ、あの高度。重力を無視するなんて、魔法の歴史がひっくり返るわよ」


レオンは優雅な曲線を描いて着地すると、興奮冷めやらぬ四人のもとへ歩み寄った。

「これで移動の制限はなくなる。……全員、こい。空の歩き方を教えてやる」


レオンは四人を輪にするように立たせ、一人一人の背中に直接、風の術式と重力を遮断する魔力の波長を刻み込んだ。

「セレス、魔力で風の翼を編め。ヴァレリア、恐怖を捨てて大気に身を委ねろ。エルザ、ミレイユ……足の裏で空を蹴る感覚を掴むんだ。……行くぞ!」


レオンが魔力を爆発させると、四人の身体が同時にふわりと浮き上がった。

「きゃっ……! 浮いてる、本当に浮いてるわ!」

「すごい、視界が……世界がこんなに広いなんて……!」


最初は不器用にもがいていた四人だったが、レオンが空中で彼女たちの手を引き、魔力の流れを調整してやると、次第に自由自在に空を舞い始めた。二十五歳の美女騎士エルザが少女のように瞳を輝かせ、魔道具技師のミレイユが感激のあまり空中で涙を流し、知的なセレスと商人のヴァレリアが手を取り合って空を泳ぐ。


「レオン、あなたという人は……。地上だけじゃ飽き足らず、空まで私の心と一緒に奪っていくのね」

ヴァレリアの言葉に、他の三人も深く、情熱的に頷いた。彼女たちのレオンに対する想いは、空を舞う開放感とともに、限界を知らない高みへと昇華していく。


地上に縛られない『起点オリジン』の五人。

空を征した彼らの前には、もはや越えられない障壁など存在しなかった。レオンの魔力溜まりは、果てしない大空の広大さを飲み込み、銀月鋼のインゴットすら共鳴させるほどの、底知れぬ深淵と輝きを放ち始めていた。


「よし、空からの索敵も可能になった。次は、空を飛びながら銀月鋼を加工できる高度な工房を作るか」


レオンの不敵な提案に、空を舞う四人の乙女たちは、さらなる期待と愛着を込めて、彼に寄り添うように下降していった。




空を舞う自由を謳歌していた五人の肌に、突如として刺すような悪寒が走った。地平線の彼方から空を塗り潰すように迫る、不気味な漆黒の雲。それは異常な魔力を帯びた巨大なバッタの群れ――**『蝗害』**であった。


一匹一匹が魔力を持ち、鋼のように硬い顎を持つその群れは、通り道にある全ての緑と命を食い尽くす動く災厄だ。その数は数千万、あるいは億を超えていた。


「レオン、あの数……! このままじゃ、ふもとの街も村も全滅するわよ!」


エルザが剣を握り、鋭い視線でレオンを見た。レオンは空中で不敵に目を細め、全員に命じた。


「迎撃する。一匹も逃がすな。全属性、全出力だ!」


レオンの号令とともに、空中で五人が陣を組む。レオンは覚醒したばかりの火魔法と風魔法を練り合わせ、掌を前方に突き出した。


「『ファイアストームバレット』!」


無詠唱で放たれた数千の火弾が、風の渦を伴って空一面を焼き尽くす。猛烈な熱風がバッタの羽を焼き、次々と炭化させていく。だが、敵の数は絶望的だった。一波を焼き払っても、すぐ後ろから漆黒の壁が押し寄せてくる。


戦いは一瞬では終わらなかった。押し寄せる群れは途切れることなく、夜になっても、翌朝になっても、空を覆う漆黒の影が消えることはない。二日目、仲間に疲労が滲む。レオンは無言で四人の手を引き、自らの膨大な魔力溜まりから、絶え間なく純粋な魔力を供給し続けた。


三日目の夕暮れ時、ついに最後の一群がレオンの『ファイアストームバレット』によって灰となり、空に静寂が戻った。三日三晩、休むことなく魔法を放ち続け、五人はついに、一国を滅ぼしかねない災厄を自分たちだけで食い止めた。


地上には、打ち落とされた膨大なバッタの残骸が山を成している。レオンはすぐさま風魔法を全開にした。


「『風』よ、理に従い分かて。掃除の時間だ」


レオンが指を振ると、地上を覆い尽くしていた数千万の死骸が一斉に宙に舞い上がった。目にも止まらぬ速さで吹き荒れる真空の刃が、バッタの死骸を一瞬にしてバラバラに解体していく。硬い外殻、脚、肉、そして体内から抽出された**『魔石』**。それは一匹一匹が凶悪な魔力を秘めていた証か、ずっしりと重く、鈍い輝きを放つ塊となって次々と現れた。風の渦は巨大な選別機となり、不要な部位を塵として吹き飛ばし、価値ある大量の魔石だけをレオンの手元へと整然と集めていく。


「嘘……この量を一瞬で解体して、これほど立派な魔石だけを抜き取るなんて……」


ミレイユが驚愕で目を見開く。三日間、一度も弱音を吐かずに自分たちを守り抜き、最後にはこれだけの富と成果を出す。その徹底した合理性と、仲間を導く力強い背中。それを見た四人の乙女たちは、疲労の限界を超えて再び心臓を高鳴らせた。


四人の内側で、恋する乙女の熱情が限界突破バーストする。彼女たちは、レオンが作り出した魔石の山を前に、もはや彼以外の存在が目に入らなくなっていた。


レオンの指先から、温かく透き通った琥珀色の光が次々と放たれる。


「『ヒールバレット』!」


放たれた光弾が四人の体に吸い込まれると、三日間の激闘で磨り減った筋肉の痛み、魔力枯渇による倦怠感、そして精神的な疲労までもが、春の陽だまりに溶けるように消え去っていく。細胞の隅々にまで行き渡るレオンの癒やしに、四人は思わず蕩けるような吐息を漏らした。


レオンは空中で風魔法を操り、一同を拠点である氷の建屋へと導いた。すでに「土」の魔法で整えられたベッドには、清潔なシーツとふかふかの毛布が待っている。


「今日はもう、これ以上一歩も動かなくていい。……おやすみ」


レオンが告げると、四人は吸い寄せられるように自分たちの建屋へと入り、それぞれのベッドに潜り込んだ。三日間の緊張から解放され、レオンが与えてくれた極上の安らぎに包まれた彼女たちは、あっという間に深い眠りへと落ちていった。


レオンもまた、自らの建屋で横になり、静かに目を閉じた。一国を救うほどの功績、手に入れた莫大な富、そして何より、命を預け合える四人の絆。レオンの魔力溜まりは、激闘と仲間たちの愛を吸い込み、月光を反射する氷の建屋を内側から照らすほど、神々しく、静かな輝きを放ち続けていた。




三日三晩にわたる死闘と、レオンから注ぎ込まれた純粋な魔力の癒やし。それらは四人の女性たちの肉体と精神を極限まで作り変えていた。


氷の建屋を透かして差し込む朝日の眩しさに、セレスが最初に瞼を持ち上げた。その瞬間、彼女は自分の内側から溢れ出す圧倒的な「何か」に息を呑んだ。


「……何、これ……。体が、熱い……!」


彼女が驚愕の声を上げると、隣で眠っていたヴァレリア、エルザ、ミレイユも次々と跳ね起きた。四人は互いの顔を見合わせ、その肌から漏れ出す濃密な魔力の光に目を見開いた。


これまでの彼女たちが持っていた魔力溜まりが小さな池だったとするならば、今のそれは底の見えない深淵な湖に等しい。血管の一つ一つに魔力が奔流となって駆け巡り、意識せずとも周囲の大気が彼女たちの意思に呼応して震えている。レオンの魔力を受け入れ続け、死線を越えたことで、彼女たちの魔力容量は10倍以上という異常なまでの増加を遂げていた。


「嘘でしょう……。魔法を使わなくても、世界の理が見える……風の動きも、大地の鼓動も、全部……!」


セレスが呆然と呟き、指先に小さな火を灯した。それは詠唱も、魔法陣も必要としない。ただ「願う」だけで、かつての大規模魔法に匹敵する純度の焔が空中で踊る。


「ふふ、これならどんな商売敵も、魔物も……指先一つで片付けられそうだわ」

ヴァレリアが濡れたような瞳を輝かせ、手のひらで渦巻く水の弾丸を凝視する。

「騎士として、これほどの力を得るとは。……レオン、貴方は私たちを一体どこまで連れて行くつもりなの」

エルザは己の鋼のような肉体に宿る『マッスル』の恒常的な出力向上を実感し、身震いした。


そして、ミレイユは自分の震える両手を見つめていた。

「これだけの魔力があれば……銀月鋼シルバー・ムーンを、ただの金属じゃなく、神の領域の武具に打ち変えられる……!」


四人がその劇的な変化に昂ぶる中、隣の建屋からレオンが静かに出てきた。彼もまた、昨日までとは比較にならないほどの神々しい威圧感を纏っている。彼の魔力溜まりもまた、四人との共鳴によって計り知れない高みへと昇華していた。


「……起きたか。魔力の感覚が変わってるはずだ。馴染ませるのに時間はかかるだろうが、これからはそれが『普通』になる」


レオンの不敵な言葉に、四人の乙女たちは再び「恋する乙女バースト」の熱に浮かされた。自分たちを救い、鍛え、ついには世界の常識すら塗り替える力を与えてくれた男。


「レオン様、どこまでも……どこまでも、ついてまいります……!」


四人は膝をつき、朝日を背負った唯一無二の英雄に、心からの愛と忠誠を誓った。

かつてない魔力を手に入れた五人の歩みは、もはや一つの国家、一つの軍隊を凌駕する「伝説」そのものへと踏み出そうとしていた。




三日三晩の激闘を終え、魔力が十倍以上に膨れ上がった翌朝。レオンがいつものように竈に向かおうとすると、四人の女性たちがそれを制するように前に立ちふさがった。


「レオン様、今日からは私たちに任せてください。貴方にはこれまでずっと、戦いでも生活でも支えていただきました。今度は、私たちが貴方を支える番です」


セレスが凛とした声で告げ、ヴァレリア、エルザ、ミレイユも深く頷いた。彼女たちは話し合い、これから食事の準備は四人が交代で担当することを決めていたのだ。


最初の一歩を踏み出したのは、知的な魔導師セレスだった。

「まずは私から。魔力操作を応用して、素材の旨みを最大限に引き出してみせますわ」

彼女は覚醒した火魔法の出力をミリ単位で調整し、石板の温度を食材ごとに最適化していく。風魔法で余分な脂を飛ばし、水魔法で野菜の鮮度を極限まで保ちながら、計算し尽くされた「至高の朝食」を作り上げた。


翌日はヴァレリアの番だった。

「商人のネットワークで仕入れた最高の調味料、使いこなしてみせるわ」

彼女はアイテムボックスから希少な香辛料を取り出し、肉の旨みを爆発させるような情熱的な味付けを施した。エールの冷やし加減も絶妙で、食卓には彼女らしい華やかさが溢れた。


その次はエルザだ。

「騎士の食事は質実剛健だが……貴方の好みに合わせて、力が出るものを作った」

彼女は『マッスル』を料理の工程に応用した。重い石板を軽々と扱い、巨獣の肉を完璧な厚さに切り分ける。シンプルながらも豪快で、レオンの肉体に直接活力を注ぎ込むような、愛に満ちた肉料理を並べた。


最後は、新たに加わったミレイユである。

「魔道具技師の精密さ、料理でも発揮させてもらうわね」

彼女は土魔法で作られたカトラリーの重心まで微調整し、最も食べやすい角度で料理を盛り付けた。まるで一つの芸術品のような、繊細で美しい一皿がレオンの前に運ばれた。


四人が交代で作る食事。それは単なる空腹を満たすためのものではなかった。レオンから与えられた強大な魔力、そして彼への溢れんばかりの恋心が、一皿一皿に「隠し味」として込められていた。


「……美味いな。どれも最高だ」


レオンが満足げに笑い、四人の料理を平らげていく。その姿を見守る彼女たちの瞳は、恋する乙女の熱情で潤んでいた。レオンに喜んでもらうために腕を磨き、競い合うように工夫を凝らす。その過程すらも、彼女たちにとっては至上の喜びとなっていた。


レオンは、四人の作る温かな食事と、彼女たちの真っ直ぐな想いを受け止めながら、自らの魔力溜まりがさらに穏やかに、そして深く満たされていくのを感じていた。


食事を終えると、四人は満足げな表情で食器を片付け、次の行動に向けてレオンの言葉を待った。








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