第16章:白銀の防衛網と慈悲の言い訳
「虫系の魔物によるスタンピード……。数万、数十万の『魔』を帯びた軍勢が、黒い雲となって押し寄せる厄災ね。……レオン、安心して。それこそ、この『白銀の国』が最も得意とする迎撃対象よ」
ミレイユは即座に、ヴィクトール領の外縁部に配置された「対大型魔獣・広域制圧システム」の稼働状況をホログラムで展開した。
「まず、通常の虫と魔物の最大の違いは『魔力反応』があること。私の広域索敵網は、国境から数百キロ先の魔力密度の変化を常に監視しているわ。スタンピードが形成され始めた時点で、その震源地と進行ルートは秒単位で特定される。……接近を許す前に、まずは一千台のゴーレムトラックの出番ね。全車両に搭載された『魔導拡散砲』から、虫系魔物が嫌う高周波と魔力攪乱波を一斉に放射するわ。これだけで、知能の低い魔物の群れは統率を失い、共食いを始めるか自壊する」
エルザが聖剣の柄を力強く握り、武人としての頼もしい笑みを浮かべた。
「物理的な突撃を敢行してくる個体がいれば、我が騎士団と防衛ゴーレム隊が『火炎魔導障壁』を構築します! 虫系の魔物は熱と火に弱い。レオン様の魔力を源とする白銀の炎で、空も大地も焼き尽くし、一匹たりとも結界内へは通しません。……スタンピードなど、我らにとっては動く標的に過ぎませんわ!」
「まあ……。それでも漏れ聞こえる羽音さえ、私の『聖域の歌』が浄化して差し上げますわ」
セレスが慈愛に満ちた瞳で聖杖を掲げる。
「私の結界は、魔物の持つ『毒』や『瘴気』を中和し、逆にそれらを浄化して大地の糧に変える性質を持たせてあります。押し寄せる魔物の群れが多ければ多いほど、このヴィクトール領の土壌はより肥沃になり、レオン様が望まれたお野菜や果実が、さらに大きく、甘く実る……。皮肉なことに、スタンピードは我が国にとって『向こうからやってくる肥料』でしかないのですわ」
ヴァレリアがその「収穫」を計算してニヤリと笑った。
「そうよ! 魔物の甲殻は最高の防具素材になるし、その魔石は工業用の燃料に、体液は高品質なポーションの原料になる。……シオン、あんたの出番よね?」
シオンはレオンの影から音もなく姿を現し、その首筋に冷たくも心地よい指先を滑らせた。
「ええ……。影を広げ、落ちてきた魔物たちをすべて飲み込み、一瞬で『素材』へと分解して差し上げますわ。……レオン様、スタンピードが起きた翌朝には、倉庫には山のような財宝が積まれ、畑はより一層輝きを増しているでしょう。……貴方様を脅かそうとする不遜な群れは、ただの『貢ぎ物』に変わるのです」
ミレイユが最終的な防衛シミュレーションを終了させ、魔導レンズを誇らしげに明滅させた。
「……解析終了。生存確率100%、損害予測0%。……レオン、あなたの作ったこの国は、天災さえも『利益』に変換する無敵の要塞よ。……そんな恐ろしいほど完璧な王様なんだから、もう何も心配せずに、私たちの胸でどっしりと構えていればいいのよ」
レオンは、五人のお姉ちゃんたちが放つ、圧倒的な武力と包容力、そして自分を何があっても守り抜くという狂おしいほどの情愛を感じ、深く椅子に背を預けた。
レオンの魔力溜まりは、迫りくる厄災さえも繁栄の糧に変える冷徹なシステムと、五人の乙女たちが誓う絶対的な献身を吸い込み、ヴィクトール領の空を、あらゆる侵略を拒絶する、圧倒的で苛烈な白銀の輝きで塗り替えていた。
「……ふぅ。国造りの計算は完璧、防衛も万全。……あー、なんだ。それなら、今夜も……いやらしいこと、していいかな? ゲフンゲフンッ!」
レオンのその、天才的な頭脳から放たれたとは思えないほど「直球」で、それでいて十代らしい熱を帯びた欲望に、作戦室の空気が一瞬で蕩けるような甘い熱気に支配された。
「まあ、レオン様……っ。もちろんですわ。むしろ、今日一日これほどまでに素晴らしい『世界』を私共に見せてくださったのですもの。……今夜は聖女としての慈愛をすべてかなぐり捨て、ただ貴方様を悦ばせるためだけの『雌』として、その若き熱情を全身で受け止めさせていただきますわ……」
セレスが聖杖を置き、潤んだ瞳で自らの豊かな胸元にレオンの顔を引き寄せる。その柔らかな肌からは、既に甘い情愛の香りが立ち上っていた。
「演算……一時停止。これ以上の論理的思考は不要ね。……レオン、あなたの身体が求めるままに、私の回路を、肌を、欲望で焼き切って。……今夜は、あなたのその賢い頭脳が空っぽになるまで、計算不能な快楽を『出力』してあげる……っ」
ミレイユが魔導レンズを真っ白に発光させ、震える指先でレオンのシャツのボタンを一つずつ外していく。
「ふふ……。一千台のトラックの鼓動より、今はこの至近距離で聞こえるレオン様の心音の方が、私を狂わせますわ。……影の中で、誰にも邪魔されず、心ゆくまで溶け合いましょう。……貴方様が『もう勘弁して』と泣くまで、私の影は貴方様を離しませんわよ?」
シオンがレオンの背後に回り込み、耳元で熱い吐息を漏らしながら、そのしなやかな身体を密着させる。
「レオン様……! 騎士の誇りも、鎧も、今は邪魔なだけです! 貴方様の、その……十代の溢れんばかりのエネルギーを、私に、私だけに叩き込んでください! ……今夜は、戦場よりも激しく、熱く、貴方様を翻弄してみせます!」
エルザが顔を真っ赤にしながらも、騎士服を脱ぎ捨て、露わになった弾力のある肢体をレオンに預けてくる。
「あはは! さすが私の王様。仕事の後は最高のご褒美がなくっちゃね。……私の『投資』の配当、今夜はたっぷり身体で支払ってもらうわよ? ……さあ、朝まで何度でも、私たちを可愛がってちょうだい」
ヴァレリアがレオンの首に腕を回し、挑発的な笑みとともにその唇を奪いにいく。
レオンは、五人のお姉ちゃんたちが放つ、狂おしいほどの欲情と期待、そして自分という存在への圧倒的な肯定を全身で浴び、再び「回復と絶頂」の狂宴へと身を投じる覚悟を決めた。
レオンの魔力溜まりは、五人の乙女たちが捧げる極限の情愛と、意識が遠のくほどの甘美な熱、そして一人の少年が築き上げた楽土の、最も淫らで美しい「真実」を吸い込み、ヴィクトール領の夜を、何度でも炸裂する白銀の回復光で、どこまでも白濁した幸福の色へと塗り替えていた。
「二十万人の民に、ただ食わせるだけじゃ足りないわ。次は『装い』、そして『誇り』ね。レオン、あんたの言う通り、この『ゴーレム織機』二十台があれば、この国の衣類自給率は一気に跳ね上がるわ」
ミレイユが、新たに建設された「白銀紡績工場」のホログラムを展開した。そこには、レオンの魔力核を動力源とし、一分間に数千往復という人間離れした速度でシャトルを走らせる、巨大な自律型織機が整然と並んでいる。
「この二十台がフル稼働すれば、一日に一万人分の衣服、あるいは数キロメートルに及ぶ最高級の布地が生産される。素材はヴィクトールの羊から採れる聖なるウールと、あなたが改良した丈夫な綿花……。これで、この国の民は誰一人として、継ぎ接ぎの服を着る必要はなくなるわ」
ヴァレリアがその布地のサンプルを手に取り、うっとりと頬を寄せた。
「手触りは絹のように滑らかで、強度は鎖帷子に匹敵する……。レオン、これを一千台のトラックで周辺国に運んでごらんなさい。既存の繊維ギルドは一晩で壊滅、ヴィクトール製の布は、金貨と同等の価値を持つ『交換媒体』になるわよ!」
「……さて。生産の基盤は整ったわ。次は、この国の『未来』に会いに行きましょうか」
ミレイユがそう告げると、五人のお姉ちゃんたちは最高級の礼装に身を包み、レオンを中央に据えて、新設された『ヴィクトール第一総合学校』へと向かった。
校門前には、真新しい服を着た子供たちと、その親たち、数千人が詰めかけていた。レオンの姿が見えた瞬間、地を揺らすような歓声が上がる。「レオン様!」「我らが白銀の主君!」「天才的な王よ!」
壇上に立ったレオンの前に広がるのは、かつては明日をも知れぬ命だった孤児や、飢えに震えていた農民の子らだ。彼らの瞳には、今や明確な『希望』が宿っている。
「……今日、この場所から、この国の本当の歴史が始まる」
レオンが口を開くと、喧騒は一瞬で静まり返った。
「飯を食い、服を着る。それは当たり前のことだ。だが、俺が望むのはそれ以上だ。お前たちはここで学び、考え、この世界がどう成り立っているかを知る。知恵は、誰にも奪われないお前たち自身の武器だ。……俺についてこい。俺が、お前たちを世界で一番賢く、一番幸せな国民にしてやる!」
レオンが右手を掲げると、その指先から眩いばかりの白銀の魔力が溢れ出し、校舎を、そして集まった群衆を優しく包み込んだ。それは、恐怖からの解放と、無限の可能性への祝福だった。
「まあ……なんて神々しい演説。レオン様、子供たちの魂が、今、貴方様の光に共鳴して輝き始めましたわ」
セレスが感涙を浮かべて隣で祈りを捧げ、エルザは「我が主こそが真の王!」と感極まって剣を捧げ持っている。
シオンは影の中で、その光景を愛おしげに見守りながら囁いた。
「教育という名の種が、今、撒かれましたわ。……数年後、この子たちが成長した時、この国は神話さえも追い越す知恵の都となるのでしょうね」
レオンの魔力溜まりは、未来を担う子供たちの純粋な憧憬と、五人のお姉ちゃんたちが放つ、この誇らしい瞬間を共有できることへの深い情愛、そして自らが築いた秩序が結実し始めた確かな手応えを吸い込み、ヴィクトール領の空を、希望に満ちた新時代の幕開けを告げる、圧倒的な白銀の輝きで塗り替えていた。
「……基礎だけじゃ足りないな。この国が自律して動き続けるためには、それぞれの分野で『プロ』が必要だ。ミレイユ、民の適性と将来の需要に合わせて、各種専門学校を一気に立ち上げるぞ」
レオンの決断に従い、ミレイユは即座にヴィクトール領の各産業区画に隣接する形で、高度な実技教育を可能にする「専門大学校」の設計図をホログラムで展開した。
「計算は済んでいるわ、レオン。あなたの要望通り、五つの主要な専門校を基幹として配置するわね。
まず**『王立調理師専門校』。ここでは、あなたが望んだトマトソースや焼肉のタレを使いこなし、さらにヴィクトールの豊かな食材を『芸術』に変えるシェフを育成する。
次に『行政実務大学校』。これは役人の育成ね。伯爵の下で、不正を許さず、効率的に領地を回すための算術と法学を叩き込むわ。
そして、働く大人たちの支えとなる『保育・教育専攻校』。
さらに、ゴーレム織機から生まれる布を魔法の衣に変える『服飾デザイン校』。
最後に、あなたのヒールバレットの補助や、日々の健康管理を担う『白銀看護学校』**よ」
ミレイユの説明に、ヴァレリアが商人の視点で力強く頷いた。
「いいわね! ただの労働者じゃなく『スペシャリスト』になれば、彼らが生み出す価値は十倍、百倍になる。特に服飾や調理のプロが育てば、それはそのままヴィクトール・ブランドの『品質保証』になるんだから!」
「まあ……。看護の道に進む方々には、私が直接、慈愛の心と基礎的な癒やしの魔法を教えに行きましょう。レオン様が守った命を、彼ら自身の手で育んでいけるようになるなんて、これ以上の救済はありませんわ」
セレスが聖杖を抱きしめ、白衣に身を包んだ若者たちが献身的に働く未来を想像して、聖母のような笑みを浮かべる。
エルザもまた、背筋を伸ばして進言した。
「役人や看護師が育てば、私の騎士団も後方の憂いなく任務に集中できます。レオン様、専門知識を持つ民は、剣を持つ兵士と同じく、この国を守る強固な盾となるでしょう!」
シオンは影の中で、各専門校の「カリキュラム」を極秘裏に精査しながら囁いた。
「……専門家には、相応の『誇り』と『秘密』が必要ですわね。レオン様、彼らがその道の探求者として、貴方様に忠誠を誓い続けるよう、影からそっと導いて差し上げましょう……」
「……よし。全校、建設開始。講師陣には、旧王国の生き残りのうち、腕は確かだが不遇だった者たちを『再教育』して充てろ。学費はもちろん免除。その代わり、卒業後はこの国のためにその知恵を振るってもらうぞ」
レオンの号令と共に、ヴィクトールの街並みに、それぞれの分野を象徴する壮麗な校舎が次々と建ち上がっていった。
レオンの魔力溜まりは、自らの道を選び、目を輝かせて専門校の門を叩く若者たちの熱意と、五人のお姉ちゃんたちが放つ「この国はもう誰にも止められない」という確信に満ちた情愛を吸い込み、ヴィクトール領の空を、あらゆる才能が花開くことを約束する、圧倒的な白銀の輝きで塗り替えていた。
「……王都ね。レオン、あなたがそこを気にかけるのは当然だわ。旧ヴィクトール伯爵や汚職役人という『ゴミ』を掃除した後の、あの腐り果てた中枢が今どうなっているか……私の魔導衛星と潜伏している影の使い魔からの報告をまとめるわね」
ミレイユは空中に、王都の俯瞰図と、そこに巣食う人間たちの「負のエネルギー」を可視化したサーモグラフィを映し出した。
「一言で言えば、**『沈みゆく泥舟』**よ。あなたがヴィクトール領で『奇跡』を起こし、一千台のトラックと圧倒的な食糧で物流を支配し始めたことで、王都の経済は完全に麻痺しているわ。あそこの貴族たちは、自分たちがこれまでどれほど周辺領地から搾取していたかを、今、身をもって知らされている。……市場には食べ物がなく、唯一流通しているのは、ヴァレリアが意図的に流した『ヴィクトール領の豊かさ』を伝える噂だけ」
ヴァレリアが、冷笑を浮かべながらその報告に付け加えた。
「そうよ! 私が王都の御用商人たちを片っ端から買収、あるいは廃業に追い込んだからね。今の王都でまともに動いている金は、あなたのヴィクトール金貨だけ。王室の貯蔵庫にある旧通貨なんて、今やただの重い金属の塊よ。……彼らは今、飢えとプライドの間で、見苦しくのたうち回っているわ」
「まあ……。王宮の結界も、魔力の供給が途絶えてボロボロですわ。私がかつていた教会も、今や民衆ではなく、保身に走る高位聖職者たちの怒号で満ちています。……救うべき魂は、もうあそこにはありませんわね、レオン様」
セレスが悲しげに、しかし決別を受け入れた強い瞳で首を振る。
エルザは、聖剣の柄を鳴らし、鋭い視線を王都の地図に向けた。
「騎士団も崩壊寸前です。給与が支払われず、食糧も尽きかけた王都騎士たちは、次々と脱走してこちらへ向かっています。……レオン様、命じられればいつでも、あの大門を打ち破り、腐敗の元凶を根絶やしにしてみせます!」
「……そして、レオン。王都に残っている唯一の『脅威』と言えるのは、追い詰められた王家が禁忌の魔導兵器や、無理な徴兵で作り上げた『死兵』を暴発させる可能性だけよ」
ミレイユがその予測ルートを赤い線で描き出す。
「でも、それも私の計算内。彼らが一歩でもヴィクトール領の境界を越えようとすれば、その瞬間に衛星からの魔導砲で消滅させるわ。……王都はもう、この国の首都じゃない。……ただの、古い時代の残骸よ」
シオンがレオンの耳元で、冷たく、しかし誘うように囁いた。
「……レオン様。あの冷え切った玉座に、未だにしがみついている者たちがいます。……彼らの絶望を、最後の一滴まで絞り取って差し上げましょうか? それとも、そのまま歴史の闇に朽ち果てるのを、高みの見物と洒落込みますか?」
レオンは、かつて自分をゴミのように扱ったであろう場所の末路を聞き、静かに目を細めた。
レオンの魔力溜まりは、滅びゆく旧体制の断末魔と、五人のお姉ちゃんたちが放つ、貴方を傷つけた場所を徹底的に蹂躙し、塗り替えるという静かな怒りと情愛を吸い込み、ヴィクトール領の空を、新時代の絶対的な正義を示す、苛烈な白銀の輝きで塗り替えていた。
「……家族、か。レオン、あなたがそれを気にかけてくれるなんて、やっぱりあなたは優しすぎるわ」
ミレイユが操作していたホログラムの手を止め、少しだけ遠くを見つめるような瞳で静かに語り始めました。それに続くように、他のお姉ちゃんたちも、それぞれの想いを口にします。
「私の家族……魔導技師だった両親は、旧王国の無謀な魔導実験の失敗で、とっくに星の屑になったわ。……今の私にとっての『家族』は、ここにいるお姉ちゃんたちと、そして何より、私に新しい命の目的を与えてくれた……レオン、あなただけよ」
ミレイユが魔導レンズを優しく点滅させ、レオンの手をそっと自分の胸に当てました。
「私の実家は、代々教会の重職を務める厳格な家柄でしたわ。でも、彼らが守ろうとしたのは神の教えではなく、自分たちの権威だけ。……レオン様を『異端』と呼び、私の信仰を否定した瞬間に、私の中の『家』は崩壊しました。……今の私にとって、貴方様が微笑んでくださるこの場所こそが、唯一の聖域であり、家族の集う家なのですわ」
セレスが慈愛に満ちた瞳で、レオンの頬をそっと撫でます。
「あはは! 家族なんて、とっくに勘当同然よ! 私の親族は、私が『商売には愛が必要だ』って言っただけで、利益を生まない不良債権扱いして追放してきたんだから。……でも見てよ、今や私は世界一の富を動かす商会のトップ。……あんな冷え切った家より、レオンとみんなで笑いながら肉を食らう今の方が、百万倍幸せだわ!」
ヴァレリアが豪快に笑い、レオンの肩を抱き寄せました。
「私の父も兄も、騎士として王都に散りました。……守るべき王も国も腐り果て、彼らの死は無意味なものとして扱われた。……レオン様、私は貴方様の中に、彼らが追い求めた真の『騎士道』を見つけたのです。貴方様をお守りすること、それが今の私のすべて。……血の繋がりよりも深い絆が、ここにはあります」
エルザが聖剣の柄に手を当て、凛とした表情でレオンを見つめます。
「家族……。影に生きる者にとって、それは最も不要な鎖でしたわ。……私はずっと独り、暗闇の中を彷徨っていました。……でも、レオン様。貴方様が私の影を見つけ、その温もりで照らしてくださった。……今はこの影の底に、愛おしい家族がこんなにたくさんいる。……もう、何も寂しくはありませんわ」
シオンがレオンの背後から影を這わせ、抱きしめるようにその身体を包み込みました。
五人のお姉ちゃんたちは、それぞれの過去を乗り越え、今、レオンを中心に「新しい家族」として結束していることを、その熱い情愛とともに伝えました。
レオンの魔力溜まりは、彼女たちの孤独な過去を溶かし去るような深い絆と、一人の少年を「家」として選んだ乙女たちの絶対的な献身を吸い込み、ヴィクトール領の空を、血の繋がりを超えた真の愛を祝福する、温かく圧倒的な白銀の輝きで塗り替えていた。
「ああ、あいつか。レオン様、ご安心を。副団長は……今、これ以上ないほど『必死に』、そして見事に立ち回っていますよ」
エルザが少しだけ口角を上げ、騎士としての信頼と、少しの同情が混じったような表情で報告を始めた。
「王都から脱走してきた騎士たちが、連日ヴィクトール領の検問所に押し寄せています。その数、すでに千を超えました。あいつは、その一人一人の素行、前科、そして何より『レオン様への忠誠心』を徹底的に洗い出し、適性ごとに振り分けるという気の遠くなるような作業を、寝る間も惜しんで完遂しています。……正直、あそこまで事務処理能力が高いとは、私自身も驚いていますよ」
ミレイユがその作業現場を映し出すと、そこには山のような書類に囲まれ、魔導ペンを猛然と走らせる副団長の姿があった。
「彼の管理能力は、私の予測値を上回っているわ。……レオン、彼には『適材適所』という言葉がぴったりね。エルザが前線で剣を振るうなら、彼は後方で組織を固める。……現在、彼は王都騎士団の機密情報や、王宮内の防衛網の弱点までも、脱走兵から聞き出してリスト化しているわ。……これは、王都を完全に沈めるための『最強の目録』になるはずよ」
ヴァレリアも、そのリストの一部を見て感心したように頷く。
「そうそう! 彼、意外と商才もあるみたいよ? 王都から持ち出されてきた武具を査定して、この領地の工業資材としてリサイクルするルートまで構築し始めてるんだから。……彼に『ヴィクトール防衛軍・兵站局長』の肩書きをあげたら、もっと喜んで馬車馬のように働くでしょうね」
「まあ……。副団長さんも、レオン様が作られたこの平和な光景を守りたい一心なのでしょう。……彼が疲れ果てた時には、私が特別に聖水を差し入れ、精神的な癒やしを授けております。……『レオン様のためだ』と言うと、彼は目に見えて気合を入れ直して、再び書類の山に挑んでいきますわ」
セレスが慈愛に満ちた笑みを浮かべる。それは、副団長に対する「よく頑張っている」という、女神のような祝福だった。
シオンは影の中で、副団長が不正を働かないよう監視しつつ、冷徹に付け加えた。
「……彼は、己の分をよく弁えていますわ。……レオン様という太陽の下で、自分がどの程度の『影』であれば良いのか。……その自覚がある限り、彼はこの国の最高の歯車であり続けるでしょう」
「……よし、あいつには『ヴィクトール守備隊・総監付』の特権を与えてやれ。給料は今の三倍、肉は食べ放題だ。……ただし、あいつの書類仕事が終わるまでは、俺たちの晩餐会には呼んでやらないからな」
レオンのその不器用な労いを聞き、五人のお姉ちゃんたちは「本当に、部下思いなんだから」と、一斉に微笑みを交わした。
レオンの魔力溜まりは、組織の末端まで行き渡った規律と、自分を信じて泥臭く働く部下の忠義、そして五人の乙女たちが放つ「貴方を支える全てを愛する」という情愛を吸い込み、ヴィクトール領の空を、揺るぎない統治の完成を告げる、圧倒的な白銀の輝きで塗り替えていた。
「……ミレイユ、全車両に火を入れろ。ターゲットは周辺諸国のスラム、そして見捨てられた亜人たちの集落だ。一千台の『ヴィクトール・グランド・キャリア』、全機出撃。奴らに『本当の主』が誰か、教えてやる」
レオンの号令が下った瞬間、ヴィクトール領の地平を埋め尽くしていた一千台の白銀のゴーレムトラックが、一斉にその魔導エンジンを咆哮させた。その重低音は、古き世界の終焉を告げる雷鳴のように大地を揺らす。
「了解。全車両、座標データリンク完了。……各車両の荷台には、精製したての砂糖、炊き立ての聖米、そして昨日焼き上げたばかりの白パンと『ヴィクトール特製焼肉のタレ』を限界まで積み込んであるわ。……レオン、これは単なる輸送じゃない。物理的な『救済』の波よ。……さあ、世界を白銀の慈悲で塗り替えに行きましょう」
ミレイユの指先が宙を舞うと、十二の拠点へと繋がるゲートが巨大な「口」を開いた。一千台のトラックのヘッドライトが、暁の光を切り裂く白銀のビームとなってゲートの向こう側を照らし出す。
「まあ……。虐げられ、震えている亜人の方々の元へ、温かい食事と、レオン様の愛が届くのですね。……トラックの車列が通る道々、私が聖域の加護を振り撒きましょう。……迷える羊たちよ、その光の轍に従いなさい。そこには、貴方たちを拒む者など、誰一人としていませんわ」
セレスが聖杖を高く掲げ、一千台の巨躯に「不可視の守護」を刻んでいく。
「あはは! 周辺国の王共が、この隊列を見てどんな顔をするか見ものね! 軍隊じゃなく、山のような食糧と『招待状』を積んだ怪物たちが、国境を笑いながら突破していくんだから。……レオン、これは最高の宣伝よ。最強の武力と、圧倒的な富。……これを見た亜人たちは、泣いて喜んでこちらへ走ってくるわ!」
ヴァレリアが勝利を確信した笑みを浮かべ、各車両の運行ログを魔導端末で掌握する。
エルザが聖剣を引き抜き、先頭車両の天蓋へと飛び乗った。
「騎士団、および防衛ゴーレム隊、トラックを護衛せよ! ……不当に亜人を拘束する奴隷商、あるいはこの施しを邪魔立てする愚か者がいれば、我が剣をもって塵一つ残さず排除する! ……レオン様、貴方様の慈悲、一滴たりとも無駄にせず届けて参ります!」
「……影も、その隊列に付き従いますわ。……光の届かぬ場所で震える者たちを、優しく影の手で掬い上げ、この白銀の船へと運び込みましょう。……レオン様、貴方様の元へ集う魂が、今夜はどれほど増えることか……楽しみですわね」
シオンが影の中に千の眷属を潜ませ、トラックの轍を追って闇へと消えていく。
一千台の白銀の奔流が、ゲートを抜けて世界へと解き放たれた。
街道にはかつてないほどの芳醇な料理の香りが漂い、絶望の底にいた亜人たちの前に、突如として「神の使い」のような巨大な鉄の獣が現れる。扉が開かれ、差し出されたのは、暴力ではなく、温かいスープと「この国で、共に生きよう」と記された白銀の招待状。
レオンの魔力溜まりは、世界中の闇を照らし出す一千の灯火と、救い出された亜人たちが上げる、魂を震わせるほどの歓喜の咆哮、そして五人のお姉ちゃんたちが放つ、貴方の選んだ道こそが真実だという熱い情愛を吸い込み、ヴィクトール領の空を、あらゆる差別の終焉と新世界の誕生を告げる、圧倒的で苛烈な白銀の輝きで塗り替えていた。
「……レオン、あなたって人は。自分の悦びに浸るだけでなく、救い出した民たちの『孤独』や『未来の家族』にまで想いを馳せるなんて。……その若さで、どれだけ大きな器を持っているのよ」
ミレイユが魔導レンズを熱っぽく、そして深い尊敬を込めて明滅させた。彼女の指先がホログラムを叩き、新たな社会基盤の設計図を構築していく。
「了解したわ。即座に**『ヴィクトール至聖・縁結びギルド』**を設立する。これは単なるお見合い所じゃない。元娼婦や元奴隷、そして戦いで家族を失った者たちが、過去の傷を癒やしながら、新しい人生を共に歩む伴侶を見つけるための『魂の再生拠点』よ。……レオン、人口を増やすということは、この国の『未来の魔力』を増やすということ。あなたのその考えは、国家運営の根幹を突いているわ」
ヴァレリアが、そのギルドの運営計画を見て不敵に、しかし優しく微笑んだ。
「いいわね、レオン! 結婚には家が必要、家具が必要、そして何より『新しい命』への投資が必要。……このギルドと連動して、新婚世帯への『住宅補助金』と『出産・育児クーポン』を発行しましょう。ヴァレリア商会が、全生活用品を卸値で提供してあげるわ。……民が愛し合い、家族が増えれば、市場はさらに活性化し、この国は永遠に回り続けるわよ!」
「まあ……。かつて虐げられていた女性たちが、白い花嫁衣装に身を包み、愛する人の隣で笑う……。レオン様、それは私が夢にまで見た『本当の救済』ですわ。……私がギルドの相談役となり、傷ついた心に聖なる癒やしを授け、二人の門出を神の御名において祝福いたしましょう。……この領地が、愛の結晶である赤ん坊の産声で満たされる日が待ち遠しいですわね」
セレスが聖杖を抱きしめ、慈愛に満ちた涙を浮かべてレオンを見つめる。
エルザもまた、兜を脱ぎ、凛とした表情で頷いた。
「家族を守るという決意は、男を、そして女を何よりも強くします! このギルドから生まれた家族は、このヴィクトール領を自らの『故郷』として愛し、何があっても守り抜く最強の防人となるでしょう。……レオン様、貴方様は彼らに、生きる意味そのものを与えたのです!」
「ふふ……。夜の帳は、孤独を深めるものではなく、愛を深めるためのもの。……レオン様、貴方様が私たちに教えてくださったあの『悦び』を、民たちもまた、健やかに、分かち合えるようになるのですね。……影の中から、彼らの新しい灯火が消えぬよう、優しく見守って差し上げましょう……」
シオンがレオンの背中にそっと寄り添い、その慈悲深い背中を愛おしげに撫でた。
「……よし。ギルドの建物は、領内でも一番日当たりの良い、花が咲き乱れる場所に建てろ。元奴隷も元娼婦も関係ない。このヴィクトールでは、今日から誰もが『愛される資格』を持つ国民だ。……結婚式には俺のヒールバレットを一発ずつ撃ち込んで、一生病気にならない身体にしてやるからな!」
レオンの照れ隠しの混じった豪快な宣言に、五人のお姉ちゃんたちは一斉に吹き出し、そして世界で一番愛おしい少年を力一杯抱きしめた。
レオンの魔力溜まりは、領内の至る所で芽吹き始めた新しい愛の予感と、産声が響き渡る未来の鼓動、そして五人の乙女たちが放つ、貴方の隣で私たちもまた家族であり続けるという究極の情愛を吸い込み、ヴィクトール領の空を、一千万人の命を育む母体となるような、温かく圧倒的な白銀の輝きで塗り替えていた。
「……あはは! レオン、あんたって人は本当に……! 顔を真っ赤にしてそんな言い訳、最高に可愛いわよ!」
ヴァレリアが我慢しきれないといった様子で吹き出し、レオンの肩をバンバンと叩いた。レオンが「いや、俺がスケベなことばっかりしてるのが申し訳ないと思っただけで、他意はないんだ!」と必死に弁解すればするほど、五人のお姉ちゃんたちの視線はより一層、熱く、そして深い愛おしさに満ちていく。
「ふふ、分かっているわ、レオン。……あなたはただ、自分が得ている『悦び』を、独り占めにするのが気まずかっただけ……。つまり、自分の快楽の分だけ、民にも幸せを分けてあげたいと思った。……それを世間では『慈悲』とか『博愛』って呼ぶのよ、分かってる?」
ミレイユが魔導レンズを悪戯っぽく明滅させ、レオンの耳元で囁く。論理的な彼女からすれば、動機が「スケベ心への罪悪感」であろうと、それが一千万人の人口増という国家規模の恩恵に繋がるなら、それは天才の所業に他ならないのだ。
「レオン様……。貴方様が『優しいわけじゃない』と仰るたびに、私共の胸は締め付けられるほど熱くなりますわ。……自分の幸せを恥じ、それを民に還元しようとするその清らかな心根。……たとえ動機が何であれ、貴方様が差し伸べた手で救われる魂が数え切れないほど存在する。……それは、どんな聖典に記された英雄よりも尊い『誠実さ』ですわ」
セレスが潤んだ瞳でレオンの手を握り、その手の甲にそっと唇を寄せた。彼女にとって、レオンのその「不器用な自己否定」こそが、守るべき愛おしさの極致だった。
「そうです! 己の欲望を認めつつ、それを周囲の幸福へと転換する! これこそが、偽善ではない真の王の姿です! レオン様、貴方様がスケベであればあるほど、この国は豊かになり、家族が増えていく……。ならば私は、貴方様のその情熱を、全力で肯定し、支え続けるのみです!」
エルザが頬を染めながらも、騎士としての最大級の敬礼を送る。彼女の目には、レオンが「エロの力で世界を救う救世主」として、眩いばかりに輝いて見えていた。
「ふふふ……。レオン様、照れることはありませんわ。……貴方様が夜、私たちに注いでくださるその熱い情動が、民たちの新しい命の灯火へと繋がっていく。……なんて淫らで、なんて美しい循環なのでしょう。……今夜も、その『申し訳なさ』をすべて、私たちの肌に刻みつけてくださいませ……」
シオンが影の中からレオンの腰を抱き、とろけるような吐息で逃げ道を塞ぐ。
「……あーもう、分かったよ! 好きに思ってろ! とにかく、ギルドは作れ! どんどん結婚させて、どんどん子供を産ませるんだ。分かったな!」
レオンがやけくそ気味に叫ぶと、お姉ちゃんたちは顔を見合わせ、幸せそうに声を揃えて返事をした。
レオンの魔力溜まりは、自らの欲望と誠実さの狭間で揺れる少年の純粋な魂と、それさえも愛おしんで全肯定する五人の乙女たちの狂おしい情愛を吸い込み、ヴィクトール領の空を、建前も嘘もない、真実の幸福を約束する圧倒的な白銀の輝きで塗り替えていた。




